【自由へのひろば】

「コカリナ」が響く四半世紀―― 東京2020に向けて、子どもたちが燃える

羽原 清雅

 「コカリナ」というハンガリー生まれの民族楽器が、日本に来て音程、音色、音域を高め、子どもたちをはじめ各層に普及して四半世紀。新築に伴って伐採された国立陸上競技場のヒマラヤスギ、東日本大震災で一時ながら生き残った陸前高田市の「奇跡の一本松」などから、楽器として第二の人生に蘇った「オカリナ」です。
 美智子妃に愛され、ウイーンやカーネギーホールで万雷の拍手を受け、各地の復興祭などのイベントで喜ばれ、次第に拡大、定着してきました。
 東京オリンピック・パラリンピックの会場となる新宿の国立陸上競技場に近い小学生たちはいま、2020年に向けて、世界のアスリート、大観衆を歓迎する一助になれば、とその成否はまだ不明ですが、練習に余念がありません。

*コカリナとは ハンガリーをはじめ東欧の民族楽器で、演奏家の黒坂黒太郎さんが20数年前から音程・音色などを進化させ、楽器としての精度を高めて、『コカリナ』と名付けました。
 広い音域で演奏できるよう改良を重ねて、さまざまな種類とかたちの楽器となり、音楽的にも豊かな表現がで''''きるようになりました。 楽器全体が木製で、直径2.6センチ、長さ8センチほどのものから、一升びんほどのものまで、大小さまざまで、ソプラノ、バリトン、コントラバスなどのコカリナがあります。
 また、多くの人々が演奏するコカリナの音は、かなり大きく、音響拡声は不要で、十分な迫力を醸し出します。

*趣旨は 演奏活動の趣旨は、単にコカリナの普及と多くの人々の参加ばかりでなく、災害などからの復興、自然環境の保全と活用、平和な社会の構築、また子どもたちの情操教育への協力などです。『国立競技場や被災地などの伐採木』からの製作にこだわる理由も、そこにあります。
 2020年のオリパラの基本的なテーマである『鎮魂と再生』、あるいは『次世代へのポジティブな継承』、さらには『木材活用』などの目標にふさわしい「コカリナ」イベントです。

*素材は 新設中の新宿区内にある国立陸上競技場で伐採されたヒマラヤスギ、ケヤキ、カエデ、シイなどの樹木、東日本大震災で一本だけ生き残りながらも枯れてしまった岩手県陸前高田市の「津波に耐えた奇跡の一本松」、福井豪雨で伐採のサクラ、中越地震被災の新潟・山古志小の被災木など、復興の祈りと環境保護のサンブルとなるよう、活用しています。
 また伊勢神宮、春日大社、熊野速玉神社、長野の生島足島神社等のご神木もコカリナに変身しました。

*演奏者は わずか20余年ながら、演奏は小学生からお年寄りまで、広範な層に広がっています。現時点では東京周辺を中心に、ざっと大人で600人、子どもたちで1,300人ほどいますが、2020年には小学4、5、6年生中心に2,000人規模の演奏が可能になります。大人たちを含めれば、約3,000人の人々が参加できるようになります。
 新宿区立四谷第6、渋谷区立千駄谷、江東区立第4大島の各小学校、新宿区立新宿養護学校の1,500人以上の子どもたちにコカリナが順次プレゼントされ、コカリナ合奏の『子どもコカリナアンサンブル』が生まれました。
 ほかに、全国の愛好家による『ザ・コカリナアンサンブル』、戦前、戦中生まれをメンバーとするコカリナ合奏団『LIFE』があり、さらにコカリナに合わせたダンスを披露するさくら国際高校ダンス部も活動しています。このダンスでは、「奇跡の一本松」の一部を織り込んだ布を使っており、また演奏者たちもこの布を身にまとうようにしています。

*実績は 演奏者が全国的に増えて、次第にあちこちで愛好者による演奏会が開かれたり、各種イベントに参加したりするようになってきました。
 全国育樹祭(2004・徳島)、全国植樹祭(09・福井、16・長野)、全国海づくり大会(13・熊本)をはじめ、各地のイベントで演奏。東日本大震災7年の2018年には、長野善光寺、東京、神戸、東京芸術劇場などでコンサートを持ちました。
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団の拠点であるウイーンで約120人の愛好家によるコカリナ・コンサート(2012)、さらにNYカーネギーホールでの日本人学校児童や日本からの愛好家約300人による演奏(2017)など、海外での経験も持てるようになりました。

*皇后さまも演奏にご参加 皇后さまは、長野オリンピック(1998)の際に、コカリナのやさしい音色にご興味を持たれ、福井での全国植樹祭(2009)には福井豪雨の際に伐採されたサクラで作られたコカリナを胸にご出席。また、黒坂さんの演奏20周年にあたる2016年、東京芸術劇場にお越しの皇后さまは、約300人の子どもたちが唱歌「ふるさと」の演奏を始めると、コカリナを取り出して合奏に参加されました。
 黒坂さんの夫人で、コカリナのコンサートではいつも独唱を披露される声楽家の矢口周美さん。その20周年コンサート(17)にもコカリナを身に着けてご出席、『一本の樹』の合奏・合唱になると、ご一緒に口ずさまれておいででした。

*広がりの輪 コカリナの仲間が各地に増えていますが、その輪をつなげているのが『コカリナ通信』で、60号までに成長しました。また、黒坂さんのコンサートニュースとして『NANJAMONJA なんじゃもんじゃ』を発行、こちらも121号までになっています。

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<連絡先>
  特定非営利活動法人 日本コカリナ協会 ≪黒坂音楽工房内≫ 
   〒171-0044 東京都豊島区千早1-16-14 現代ギタービル2F   
    Tel 03-6909-3383 / Fax 03-6909-3536
   日本コカリナ協会 HP・アドレス http://www.kocarina-k.or.jp
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