「評論出版訪中団」の20年

■視点 

「評論出版訪中団」の20年    鶴崎友亀(評論家) ─────────────────────────────

 中国の変貌は急激である。私が始めて訪中したのは1972年である。文化 大革命の最中で、王府井のデパートはがらんとし、人々の乗り物は自転車、全 体が暗鬱だった。それから在野の評論家や出版人をまとめて「評論出版訪中 団」を編成して、中国との交流を始めたのが1984年、ようやく経済改革が 始まったばかりだった。当時、中国の経済発展には50年かかるといわれたもの だが、あれから20年たった今、中国はアジアの「盟主」の地位に迫りつつある ようだ。

 訪中団の提携先は、劉遅さんの肝入りで中国国際交流協会となり、公式団7回、 その他の訪中の度に表敬交流した。その間、張香山、趙安博、段元培、劉徳有さ んらにお世話になった。当方の団長には金子勝昭、袖井林二郎さんにご苦労をか け、団員は加藤宣幸、細島泉、黒岩義之、照井千郷、樺山三郎、渋谷裕久、立山 学、中村一利、嶋田普吾さんなど延40人近くになる。とにかく、同行者は仲良く なるものである。

 私たちの訪中の意義を要約すると次の三点となろう。第一はソ連の社会主義と は一味違う中国社会主義の壮大な実験である「改革・開放政策」の展開と軌を 一つにし、まさに中国現代化の歴史を中国人民とともに歩いてきたこと、第二 は常にチベット、ウイグル、雲南などの辺境を視察し、都市部や沿岸部との格 差を重視しつつ、グローバルな視点から中国を見てきたこと、第三に中国と日 本との友好関係の樹立をさらに信頼関係へと発展させることを目指してきた。 事実、われわれが訪中している時、教科書問題、靖国問題などで冷水を浴びせ られたこともあった。

 しかし今、中国は20年前の中国ではない。国内経済格差の深刻化など問題を 抱えつつも経済発展につれて政治的威信も高まってきている。冷戦後の世界的 な情勢変化として、EU拡大により、アメリカに匹敵する大国ができた。そうし て世界はEU圏とアメリカ圏と中国を軸とする東アジア圏に分極化しつつある ように思う。これから西アジアの雄インド、アラブさらにアフリカがどう変化 するかによって、世界はさらに激動するだろうが、21世紀の半ばはこの三極の 台頭を直視するべきであろう。なかでも東アジアにおける中国圏のもつ文化 的、思想的 経済的影響力には大きなものがある。日本は自らの発展のために も、北東アジアの平和確立を目指し、自立と連帯の立場を明確にしつつ、中国 との関係を単なる「友好」から「相互信頼関係」の構築に発展させることが望 ましい。わが訪中団も高齢化が進み、若者の交流が必要だ。そこで、私たちは 日中関係の新しいステージを創るため、この秋、劉徳有さんを招き、改めて日 中文化交流について新しいあり方を探ろうと計画している。おおかたの参加を 期待したい。