【沖縄の地鳴り】

「辺野古」埋め立て大幅修正 

平良 知二

 昨年末、国(防衛省)は「辺野古新基地」建設について、工期、工事費の大幅修正を発表した。新年度(2020年度)予算の閣議決定の6日後であった。埋め立て海域の軟弱地盤問題が浮上して、従来主張のままでは通らなくなったためである。軟弱地盤があることを公式に認めたことになり、今後議論になっていくだろう。軟弱地盤について国はほとんど問題視してなかった。建設反対の市民団体などの強い指摘が続いていた。

 当初計画は「基地」完成まで8年、総工費は3,500億円以上であったが、今回の修正で完成まで12年、総工費は2.7倍の約9,300億円に膨らんだ。大幅な見直しである。完成まで12年というのは、設計変更が承認された時点から数えて、ということだから、沖縄県が設計変更を承認しなければさらに延びることになる。玉城デニー知事は当然、不承認の考えであり、変更をめぐり裁判となるのは確実だ。

 現在、県の抗告訴訟が那覇地裁で争われている。
 この問題の国と県の訴訟は8つに及び複雑である。すでに6つは和解、取り下げ、県の敗訴で決着がついている。現在は2つの訴訟が続いている。
 現在の訴訟までを大雑把に整理してみる。①仲井真知事時代に「新基地」建設のための埋め立てを承認したが、②翁長知事がその承認を撤回。③撤回に対し、国(国土交通大臣)は沖縄防衛局の訴えを認めて「撤回取り消し」を裁決。それに対し、④今度は県が「裁決は国の違法な関与である」として抗告訴訟を起こしている。昨年11月下旬、初回弁論で玉城知事が意見陳述に立った。

 これまでの裁判では県の主張はほとんど容れられてない。「辺野古新基地」反対の県民意思は知事選や国会議員選挙、そして県民投票でそのつど示されてきているが、これら県民意思が判決に影響を与えたことはほぼない。国の主張を追認するような判断ばかりである(県の訴えを「裁判の対象とならず不適法」と却下した事例も)。
 このため「辺野古新基地」問題をめぐる裁判への、県民の期待は大きくはない。それでも裁判に提起する。建設の不合理、理不尽さに耐えかねないからである。

 今回の国の軌道修正は、当初計画を大きく変える工事となるだけに、裁判がどのような考えを示すか、関心を集めることになる。
 玉城知事は設計変更を認めない方針であり、「不合理、理不尽さ」が増す計画に、「こういう公共工事は直ちにやめた方がいい」と強い姿勢である。県の不承認に国は対抗措置を取ることになり、結局は法廷に持ち込まれるだろう。大幅な修正をどう判断するか、特に軟弱地盤の改良工事をどう見るかなど、これまでにない争点が注目される。

 県は工事期間を最低でも13年と試算していた。このため普天間基地の危険性除去は「辺野古」とは別に早急に進めるべきだと主張してきたが、工事期間が県の予測通りになって「普天間」との兼ね合いをどう見るか、も焦点となろう。普天間の危険性除去を何度も何度も繰り返す国だが、危険性はさらに延びるばかりである。

 軟弱地盤について、海洋関係の建設会社に勤める若い青年によると、「とんでもない工事となる」と否定的見方であった。報道される地盤改良策で順調に進めることができるか、難しいと話した。完成後も20年間で26センチの沈下が予測されるというから、ばく大な工事費を考えると無駄な“投資”と言わざるを得ない。当初計画から2.7倍も膨らむ工事というのを、無理やり通そうとする国の政策とは何なのか、真剣に考えるべきだろう。

 (元沖縄タイムス記者)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧