「青年よ 再び銃をとるな」

■6、歴史資料

□ 「青年よ 再び銃をとるな」

  -鈴木茂三郎・社会党委員長就任挨拶(昭和26年1月21日)
────────────────────────────  
私は皆さんの御推薦によりまして中央執行委員長の重職を汚すことになり ましたことについては、感激にたえないものがございます。  私は自分の分をよくわきまえておるつもりでございますが、せっかく皆さ んのご期待に副い得るやいなやに関してはひそかにこれを憂えるものでござい ます。しかしながら私があえて火中の栗を拾う決意をもってこの重職をになう 決意をもちましたことは、ご承知のように、内外の情勢に対しまして社会党と いたしましては、この危局を乗り切って日本を救い日本の民族を救うものは社 会党よりないという固い決意をもっておるものでございます(拍手)。この際 社会党はこの情勢に対する確固不動の方針を確立いたしますと同時に一歩も動 かない不退転の態勢を確立したいと思いまして、この際委員長を空席とするこ とを許さざる客観的情勢にあるから、私はあえて皆さんのご推薦によって、皆 さんのご期待に沿い得ないことをおそれながらもお受けいたした次第でござい ます。

 内外の情勢に関しましては大会において皆さんが十分審議、討議されたよう に、第一に国際的な情勢に関してはいわゆる軍備拡張が行われ、第三次大戦はア ジアにおいては朝鮮に起るとみるものがあり、ヨーロッパにおいては七月ごろ ユーゴの国境においてみるであろうといわれておりますが、しかしこうした世 界大戦の危機がだんだんと深まってまいるに対しても、ただいまは平和機構と しての国連の内部における二大勢力の対立でございまして、この国連の内部ま たは外部においては、一たん戦争が起れば人類を破滅に陥れる戦争を絶対に防 止しなければならないという強い運動がまき起こっておるのであります(拍 手)。こういう情勢に対しては、私は大会後、新しい執行部と協議いたしまし て、幸いにして機関の御決定を得ることができれば、この際世界における私共 と同じ民主的な勤労大衆と固く結合するために、コミスコを通じて提携を深め るために、その背景となっておる勤労大衆の支持を受けるために、社会党は正 式に各国に対して代表を派遣いたしたい、と存じておるものでございます(拍 手)。

   国内の情勢に関しては、占領後六ヵ年欧米と同じような資本主義的な再建 の方式がとられておりまするが、わが国は欧米と経済的に根本的に事情を異に いたしておりまして、敗戦後ご承知のように領土は狭隘となり、産業は中小企 業を主体とする弱い産業態勢でございまして、その中にたくさんな国民の生活 を保障いたしますには、こうした条件の根本的に違う欧米と同じ資本主義的な 態勢によって、国民の生活を安定させ、行動させるということは不可能だとい うことは、今日の事態が証明いたしております。資本主義的な再建方式をとっ てきた政府ならびに資本家階級は、この不可能なことを可能ならしむるため に、朝鮮の事変を利用して、朝鮮の事変によって利得を上げて資本主義的な態 勢をささえようとしたり、これがむずかしいとみると世界戦争への危機に便乗 いたしまして、戦時利得を上げて軍事産業によって資本主義を再建しようとし て、資本家階級は再軍備を主張しておるではありませんか(拍手)。これは明 らかに資本主義の本質を暴露したものであるではありませんか(拍手)。

 この中へ、幸いにして講和の目的のために近くダレス氏が来朝されると聞い ております。ダレス氏は一部に伝えられるように、そんなに講和がさしせまっ たという用件ではなくて、アメリカのヨーロッパとアジアにおける政策の調整 などに関連して来朝され、その際日本の国民のあらゆる方面の率直な意見を、 率直な要望を検討し調査することが目的であるように存じておりますが、この 際、ダレス氏の来朝を前にしておりますが、わが社会党の第七回大会は皆さん によって新たに講和に対する原則、平和に対する方針、具体的の方針を確立さ れましたが、私は皆さんによって確立された講和、平和に対する原則、その具 体的の方針をあくまで追求することと、これこそわが日本の民族をして、日本 の独立を確保するただ一つの道であるということを確信をいたします(拍 手)。  私はこの皆さんの決定を遂行いたしますために、私はとって五十七歳、日本 の民族を救い、日本の独立を確保いたしますために、私一個の命はきわめて軽 いものでございまして、私は死を決して日本の独立と平和を確保するためにこ の大会の決定を確保せんとするものであります(拍手)  私はこの際、特に党の青年の諸君、婦人の諸君に一言訴えてその奮起を促し たいと思いますが、青年の諸君に対しましては、ただいま再武装論がございま す。再武装を主張する当年六十余歳の芦田均氏が鉄砲を持ったり背嚢を背負う のではないのでございます。再武装をするとすればいわゆる青年の諸君が再武 装しなければならないことは当然でございます。私は青年諸君がこの大会の決 定を生かすためには断じて銃を持ってはならない。断じて背嚢をしょってはな らない(拍手)。青年諸君は確固とした方針をもって、ただ党内の問題、組合 の中の問題にとどまらないで、党の問題は私ども新しい執行部におまかせを願 いまして、青年諸君は広く青年大衆の中に入って党の方針を諸君が中心に確保 願いたいのであります(拍手)。

 婦人に対しましては、労働階級の犠牲によって資本主義的再建のとられてお る今日、勤労大衆の家庭生活を通じて、働く人たちの生活がいかに蹂躙されて おるかということの現実を凝視してもらいたい。あるいは不幸にして戦争に なったような場合に、五千四百万人――女、子供に合せて五千四百万以上のこ の婦女子を戦争の惨害からこの爆撃の下からどうしてこれを守ろうとするので あるか(拍手)。私は幸いにして一党の代表者がダレス氏と会見する機会を得 たならば、世界の第三次戦争に対して、国際的な紛争に対して何ら関知しない ところの日本が、こういう国際的な紛争のために日本が、不幸にして戦争に巻 き込まれた際、ダレス氏は日本の五千四百万の婦女子をなにによってこの戦禍 から防衛してもらえるかということを聞きたい(拍手)。

 私はこの困難な段階に重要なる任務を担いましたが、しかし幸いにして新しく 顧問になられた先輩の諸君、あるいは中央執行委員会の諸君、こういう方々の ご協力によって任務をあやまちなく遂行いたしたいと存じますが、とりわけわ が意を強くいたしてこの重圧を負いましたのは、前の五回、六回の大会におけ る講和の三原則を、朝鮮問題から起ってきたあらしの中から、皆さんの大会の 決定を、委員長のないもとにおいて確守されてきた大書記長・浅沼稲次郎君 が、同じように書記長としてご協力していただくことができるということと同 時に、なおそれより私がこれをお引受けいたすことのできましたのは、皆さん の御承知のように、片山前委員長は同士的な友愛と信義の道を私どもに説かれ 実践をされ、かつ、いわゆる派閥解消に関して今日この大会にみられるような 効果をあげてこられた。きわめて公正な立場をとり堅実な識見をもっておられ まする前委員長・片山さんが、私の最高顧問として重要な問題についてはお力 ぞえを受け、私の足りないところを補っていただくことができるということ、 今日ここに病中ながらそれがために御列席を得ました片山前委員長が、私に全 力の御協力をしていただくということと、そのために私はあえてこの重任をお 引受けいたした次第でございます(拍手)。  新しい役員を代表いたしまして一言ごあいさつ申上げ、皆さんのご協力を お願い申してやまない次第であります(拍手)。

 -『第七回大会議事録』より-