■ 【緊急新刊紹介】

『「米軍のグアム統合計画」沖縄の海兵隊はグアムに行く』吉田健正著

                (高文研刊・本体価格1200円)
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  「オルタ」に寄稿していただいている吉田健正氏が、高文研から『「米軍の
グアム統合計画」 沖縄の海兵隊はグアムへ行く』を上梓した。
  「在日米軍再編ロードマップ」の中で普天間基地移設だけが取り沙汰され、普
天間移設が進まなければ在沖海兵隊のグアム移転はないと米国政府高官が主張す
る中で、日本の主要メディアも政府もグアム移転については沈黙したままである。

 ところが、米国のグアム基地建設計画にもとづく「環境影響評価案」を詳細に
調べて書かれた本書によると、グアムでは基地建設計画のための調査が完了し、
日米両政府とも一部の工事についてはすでに入札を済ませている。しかも、沖縄
から移転するのは海兵隊の司令部と指揮部隊だけという「ロードマップ」の言葉
とは裏腹に、普天間基地で行われている飛行訓練も、キャンプ・シュワブの射撃
演習、都市型戦闘訓練、キャンプ・シュワブ沖の強襲揚陸訓練も、グアムで実施
するという計画が進んでいるというのである。米軍の計画では、普天間基地の機
能はグアム北端のアンダーセン空軍基地に移される。時を同じくして、グアムに
は原子力空母寄港埠頭が新設、陸軍ミサイル防衛任務隊も配備されて、グアムは
米国最先端における一大軍事拠点になる。グアムの北に位置するテニアンも、海
兵隊の射撃訓練場として使用される。

 このような計画も、計画の進捗状況も、グアム住民の反応も、なぜか日本では
報道されてこなかった。本書は、こうした「情報の穴」を埋めるだけでなく、米
国政府(ブッシュ政権)がなぜグアム軍事拠点化計画に踏み切ったのか、日本政
府(小泉政権)がなぜ巨額の資金を提供してそれに協力することになったのかに
ついても、論じている。著者によれば、米国(ブッシュ政権)の世界戦略と日本
(小泉政権)の日米軍事同盟強化路線を理解する一助にもなるはずだという。

 本書は、「はじめに」「米軍再編とグアム」「米国の軍事拠点・グアム」「『
SACO』合意から『米軍再編ロードマップ』へ」「在沖海兵隊グアム移転への
経過」「海兵隊移転を含んだグアム軍事拠点構想」「グアム住民はどう見ている
か」「あとがき」で構成されているように、「ロードマップ」と在沖海兵隊のグ
アム移転(→軍事拠点化)に焦点を合わせつつ、軍事基地としてのグアムの歴史
や基地建設に対するグアム住民の声も伝えている。「ロードマップ合意」とは何
だったのか、いまグアムで何が起きているのか、お知りになりたい方々に、ぜひ
ご一読をお勧めしたい。
                           編集部

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