『ショートショート・4』

【中国・深セン便り】

『ショートショート・4』

佐藤 美和子


 最近ちょっと面白かったことを、二つばかり。

◇ 自宅で、相方とTVのニュース番組を見ていたときのことです。
 日中関係に関するニュースをやっていたのですが(内容はいつでも、日本の事件・事故・災害といったネガティブ報道か、もしくは日本の政治・政治家を批判するものばかりです……)、相方がふと、こんなことを言い出しました。

相方 「この間ニュースで見たんだけどさ、日本の政治家のナントカ大臣の人、えーっとあの人なんて名前だっけ? シャオイエ……シャオイエ……」
私  (ん? 中国語発音のシャオイエといえば小野さんだけど、日本の大臣に小野さんなんていたっけ?)
相方 「シャオイエ……そうそう、スーウーディエン! ほら、あの防衛大臣の!」
私  「は? 4時か5時って、なにが?」

 お互い顔を見合わせたまま、一瞬、時が止まりましたよ。私は政治家の話の最中にとつぜん、『四、五点(スーウーディエン。中国語で4時か5時頃、という意味)』と言われて訳が分からないし、相方は相方で、私がなぜ突然『4時か5時』などと言い出したのかと、こちらもキョトンとしています。

 数拍を置いて、私、はたと閃きました! あなた確かいま、防衛大臣って言ったよね? 日本の防衛大臣は小野さんじゃない、小野寺さんじゃーい(笑)!

 相方には日本人の知り合いが大勢いますが、どうやらその中には『小野さん』はいても、『小野寺さん』はいなかった模様です。そのせいで、防衛大臣の小野寺五典さんのことを、勝手に『小野』姓として区切り、名前が『寺五典(これを中国語読みをすると、スーウーディエン。偶然にも、4時か5時頃、という意味とまったく同じ発音!)』だと思っていたのです。

 訳が分かって、二人で大爆笑! やだなぁ、あの人の名前はシャオイエ・スーウーディエンじゃなくて、シャオイエスー・ウーディエンだってばー。でもそうかぁ、きっと多くの中国人が、日本の防衛大臣は変な名前だと思っているんだろうな〜。
 あら? そういえば、謎が解けてスッキリして爆笑もしたので、相方が『小野寺さん』の何の話をしようとしていたのか、すっかり聞きそびれました。ま、いいや(笑)。

◇ 我が家の固定電話、なぜか間違い電話がめちゃくちゃ多いです。いまどきですので、友人知人との連絡はたいてい携帯電話、もしくは微信(英語名 WeChat。日本の LINE と同じ、無料のスマートフォン向けコミュニケーションアプリ)を利用しています。よって、固定電話にかかってくるのは、私の実家からの国際電話以外、9割9分がセールス電話か間違い電話です。これ、すごい割合だと思いません?

 ディスプレイに出ている相手の番号が、我が家に縁もゆかりもない他省他市からであれば、出ずにほうっておくこともあります。だって、ウチには○○さんなんて居ません、番号違いますよと言って切ったのに、二度三度と繰り返しかけてきては、あれぇ? この番号、○○さんじゃないの? なんて不思議がる人が結構いるんですもん、電話とるのも嫌になります。すでに一度、番号違いですといわれたのに、繰り返しかけてくる人って、知り合った相手に嘘の電話番号でも教えられたんでしょうか。なんにせよ、何度も対応させられるこっちはいい迷惑です。

 そのほか、お年寄りが親族にかけてきたらしい間違い電話もちらほら。お年寄りの場合は、着信履歴や電話帳メモリなどの機能が使いこなせず、いちいち番号を打つときに、数字をいくつか打ち間違ったりするものだと思われます。近い将来、自分も行く道なので、まぁ仕方ないですね……。

 中でも一番多くて迷惑なのは、宅配便屋への集荷依頼や配達予定時刻の問い合わせ電話です。どうやら我が家の電話番号、元は宅配便業者が使っていた番号のようなのです。この番号を我が家が使い始めてもう10年経つというのに、いまだにこの間違い電話が絶えません。うんざりすることに、朝の7時台でも平気でかかってくるんですよねぇ。

 「もしもし? 発送荷物があるんで、集荷頼みたいんですけど」なんて電話には、大抵の場合は「番号間違いです」の一言で済ませるのですが、それに対する相手の反応はさまざまです。「あぁ……」と声を漏らしたっきり、ブチっと電話を切っちゃう無礼な人が過半数。「えっ、この番号じゃないの? ホントに? なんでだろ、困ったな」と、ぶつぶつ文句を言う人が3割。かろうじて残りの2割が、「これ、宅配便屋さんの番号じゃないの? あら、ごめんなさい」と、謝ってくれる人たちです。ゴメンの一言があるのは、ほとんどが女性ですね。男性は、無言で切っちゃうパターンが多いです。

 ある日、中年男性かけてきた間違い電話は、ちょっとしたコントのようでした。
相手 「あー、宅配便屋さん?」
私  「(またかー)いえ、違います」
相手 「違うの? だって、この番号って宅配便屋さんの番号でしょ?」
私  「(はぁぁ〜)あのですね、この電話番号はもう10年近く、一般家庭が使っているんですよ。だから宅配便屋さんとかじゃないですし。その宅配便屋さん、かなり前に番号変えたとかじゃないですかね」
相手 「えー! 番号変わっちゃったの? じゃあおたく、なんで変わったことを俺に教えてくれなかったのさ?!」

 なんですとー! 将来間違えてウチに宅配の集荷を頼んで来そうな番号を見つけては、片っ端から「ウチのこの番号は、もう宅配便屋じゃないですよ〜」と告げて回れとでも言うんかいっ(笑)! さすがにこの自由すぎる返答パターンは初めてで、想定外でした。思わず苦笑して、「そんなん知らんがな」と突っ込んじゃいました。

 実際のところ、利用客たちに広く告知もせずに、番号を変えたか商売を畳んだかしたその宅配便業者が悪いのであって、間違い電話をかけてきた人たちが悪いのではないことは、私も承知しています(ただし、朝8時前にかけてくる人は、さすがに非常識だと思います。中国では、早いところだと8時始業の会社もあるので、8時以降ならまぁ仕方ないかなと)。
 けれど、どういう理由があっても、無関係の私を煩わせたことに変わりありません。番号違いだといわれたら、反射的に「あ、すいません」くらい、自然に口をついて出るようになって欲しいものです。ま、なんで番号の変更を教えてくれなかったんだーと無茶振りしてきたオジサンは、ちょっと面白かったですけどね〜(笑)。

 (筆者は中国・深セン在住・日本語教師)


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧