『マヂソンと姉妹都市』

■【北から南から】 [#bf37d9ab]
   米国 マジソン便り          石田 奈加子

『マヂソンと姉妹都市』

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  マヂソンには十の姉妹都市があるようです。まず、市の広報版に載っているの
を並べてみましょう。

  アイナロ   (東チムール)   アルカタオ  (エルサルバドル)
   バックジアン (ヴェトナム)   カマゲイ   (キューバ)
   クスコ    (ペルー)     フライブルグ (ドイツ)
   マナガ    (ニカラグア)   マントバ   (イタリア)
   帯広     (日本)      ヴイルニウス (リトアニア)

 姉妹都市活動の歴史は結構長くて、主にヨーロッパの国々で活発なようです。
目的は市なり町なりの地理上のそして政治上の違いを越えて市民と市民の自由な
交流、文化と商業上の協力、促進を図るというもの。都市と都市との交流ですか
ら、公からの承認が必要ですが設立の要請から活動の運営はまったく民間により
ます。マヂソンでは市会に申請して市議会員の多数決で承認されるのですが、運
営はまったく市民のボランテイア活動にかかっています。

 市の広報サイトに寄りますと、それぞれの姉妹都市の連絡先は事務所があるわ
けでもなく、個人の自宅、及びメールアドレスになっているのがほとんどです。
帯広とどんな活動があるのか知りたいと思い問い合わせたのですが大変残念なん
ことにさっぱり返事がありません。マヂソンの姉妹都市の大半がヨーロッパの国
々よりラテンアメリカの国々及び所謂後進国であるのは'進歩的'の代名詞のよう
なマヂソンの性格をよく表していると思います。

 それぞれの姉妹都市連合がいつ成立したかは特に知りませんがカストロのキュ
ーバ革命以来の アメリカ合衆国のラテンアメリカ政策、政治、軍事介入, 特に
  '80年代の対ニカラグア政策に反対する進歩派が動機になっていると思いま
す。ですから、同等の社会が同等に交流するというよりは、後進国、あるいは被
圧迫国援助の赴きがあります。一般市民にはあまり興味がないのか姉妹都市の活
動は二、三の例を除いて、(例えばリトアニアの独立を記念して二月にヴィル二
ウス姉妹都市グループが講演会をします、)記事にならないのですが、一番活発
なのはアルカタオ(エルサルバドル) とカマゲイ(キューバ)組です。

 アルカタオには毎年代表を送り、単なる経済援助だけでなく最近は環境にやさ
しい農業、小規模農業、所謂Sustainable Farming の技術やアイデアをおしえ
て、一緒に働く方向にむかっています。カマゲイ組は半世紀にのぼる合衆国のキ
ューバ経済封鎖で不足する物資、特に医療品、薬品等を人道保護の名目で届ける
のに専念しているのですが、数年前からのG.W.ブッシュの市民交流の規制政策で
人道保護という名目のためにさえキューバに代表を送ることがままならない有様
です。

 2003年にイスラエルの政権下にあるガザのラファ市を援助するためにマヂ
ソンラファ姉妹都市計画(Madison Rafah Sister City Project (MRSCP))
が出来ました。それ以来数回マヂソンの市議会に姉妹都市認可の申請をしたの
ですが毎回市議会では多数を得たのに、市長が拒否権を行使して認可されていま
せん。認可されたところで、市からはちょっぴりの補助金が出るくらいで、活動
はすべてボランテイアによりますから、実際上の便利は特にないのですがラファ
そのものの自治体としての正統性が成立します。

 万事進歩的な市長が進歩的なマヂソンでなんで認可できないの?と聞きました
ら、60年代の反ヴェトナム戦争以来の進歩派はユダヤ系のインテリに主導され
ているから、とのことでした。合衆国のイスラエル・パレスチナ政策の縮図です。

 そういえば、昨秋の中間選挙でその進歩的思想のゆえに共和党の追い落としに
あってウィスコンシンの議席を失った上院議員(三期勤めた)もユダヤ人なのです
が、国内政策や戦争反対に関する限り超進歩的なのに、ことイスラエル・パレス
チナ問題になると議論なくプロイスラエル政策に投票しています。理性をこえた
人間の業のようなものを感じます。

 だから、MRSCPでは'Progressive Except For Palestine'という標語まで作り
ました。ただ、問題がそう簡単でないのはMRSCPの発起人から大半のメンバー、
ボランテイアはユダヤ人だということです。MRSCPはチャリテイ/非営利の認可
を合衆国政府から得ていて、寄付は税金控除になります。ガザは長年の国境封
鎖、経済封鎖下にあって、まともに代表を送るわけにもいかないのですが、全国
的組織を通して細々ながら色々な援助をしています。数年前にラファ市に子供の
遊園地を作るのに成功しました。

 '08-'09のガザ攻撃で折角作った遊園地が破壊されるかと心配しましたが
幸い遊園地は残ったそうです。'09年にはイスラエルの爆撃で負傷した少年を
一人招聘してマヂソンの大学病院をはじめいくつかの病院の協力をえて、治療す
ることができました。今一番力を入れているのはガザ住民に衛生的な飲み水を供
給するための濾過タンクを設置すること。その他、経済援助と女性の教育、経済
的自立を促進するために、当地の組織(女性のためのユニオン)を通してパレスチ
ナの伝統工芸品、とくに独特の手の込んだ刺繍をほどこしたショールや袋物等を
買い付けてマヂソンで売る活動をしています。

 商業促進にはラファからではありませんが西岸(ウエストバンク)のオリーブ油
も輸入しています。マヂソンでの販売は一年に何回かあるお祭りとか講演会など
の会場にテーブルをだしてやります。マヂソンの平和促進会とか大学の学生組織
と提携して国内、国外からの講演者を招聘して市民の意識向上にも力をいれてい
ます。

 丁度先週国連安全保障理事会でイスラエルの西岸及び東エルサレムでの植民を
国際法上違法であるという宣言に15の理事国のうち14が賛成したのに合衆国
政府は拒否権を行使しました。エジプトでの民衆蜂起がムバラク大統領を失脚さ
せるのに成功している今日この頃というのに。その反面、イタリア南部の小都市
(Villacastelli)がガザ市と、イギリスのロンドン郊外のHOUNSLOW が西岸のラ
マラとTwinning(ヨーロッパで姉妹都市の呼称です)を決定したというニュースも
入っています。


◆追伸


  三月の初めにインターナショナル・フェスチヴァルが開催されました。その会
場で「マヂソン・帯広姉妹都市」のテーブルが出ていましたのでちょっと話を聞
いてきました。この姉妹都市は両都市の市長たちの間の合意で2006年に成立した
そうです。責任者の話ではマヂソンの姉妹都市グループの中では帯広姉妹都市が
一番活動しているとのこと。すでに数回両都市の間で代表訪問がなされている。
マヂソンの現市長も帯広に行ったそうです。今この八月学校の夏休みの間帯広訪
問をするべく、高校生を募集中です。

         (筆者はアメリカ・ウイスコン州・マヂソン市在住)

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