『中国・我が家の家電事情』

中国・深セン便り

『中国・我が家の家電事情』   佐藤 美和子    

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 我が家では最近、大物家電にトラブルが相次いでいます。いえ、やっぱり訂正
します。中国では家電に住居は常にトラブル続き、何事もなく無事に過ごせてい
る時はあんまりない、というのが正しいです(笑)。

 私が中国で初めて買った家電は、洗濯機でした。91年の北京留学時代、同じ寮
に住む留学生仲間数人でお金を出し合って買ったものです。当時、50人弱がいた
留学生寮には2台の古ぼけた共同洗濯機があったのですが、なかなか順番が回っ
てこないことや古すぎて清潔な感じではなかったので、自分達専用に中国製日系
N社製品を買うことにしたのでした。

 この洗濯機はとてもよく働き、故障することもなくとても丈夫だったと思いま
す。なにしろ初夏には一面を舞い飛んでいる柳絮(白い綿毛の付いた柳の種)が
頭や服にくっつき、冬は黄砂が吹き荒れる北京なので、衣服ははらってもはらっ
ても砂をかんでしまってジャリジャリです。その砂が洗濯機を徐々に蝕むために、
北京では洗濯機の故障は避けられないと聞いていたのですが、旧式の二層式は構
造が単純だからか、みんなで大事に使っていたせいか、毎日よく働いてくれまし
た。

 その5年後の二度目の留学時も、やはり留学生仲間と一緒に同じく中国生産の
日系N社製全自動を買いましたが、この時も故障トラブルはナシ。マイ洗濯機メ
ンバーは、アメリカ人留学生一人を除いて全員が日本人でした。アメリカのホー
ムドラマで、スニーカーを洗濯機で洗うシーンを見て驚いたことがあったので、
洗濯機で洗うのは衣類のみで靴を洗うのは止めてねとさえお願いしておけば、何
の問題もありませんでした。

 その96年には、ヒアリング力強化のため、9インチほどの卓上白黒ブラウン管
テレビも買いましたが、まるでラジオのようにチャンネルの周波数を合わせるの
は大層難しかったものの、故障することは一度もありませんでした。

 問題は、2000年以降です。
 東莞市に住んでいた頃、中国メーカー製VCDデッキを買いました。VCD
(ビデオCD)とは、中国を含むアジア諸国でDVDの前に普及していた動画音
声再生規格のことです。今のように発展する前の東莞では、当時まだ高価なDV
Dがほとんど普及しておらず、品質はDVDにかなり劣っても安価なVCDしか
ありませんでした。一枚のVCDに記録できるのは、せいぜいドラマ一話分がや
っとです。画像や音質はひどく荒く、ストーリーの最初や最後がぶち切れていて、
ドラマは観たけれど結末が分からず仕舞い、なんてことも良くありました。

 このVCD自体も低品質なのですが、VCDデッキもなかなか酷かったです。
何度VCDを差し込んでもべぇ~と勝手にリジェクトする、気分によって?ロー
ドしてくれない、鑑賞中にとつぜん倍速再生しだす、何も触っていないのに自動
停止する……。自分で購入したものとは別に、知人に譲ってもらった中古デッキ
も持っていたのですが、どちらも似たようなものでした。観れば観るほど逆にス
トレスが溜まるという、娯楽にならない娯楽です。その後、深センでDVDデッ
キは2度購入していますが、一度目の無名メーカー品はやはり早々に故障してし
まいました。

 東莞で住んでいた賃貸アパートでは、部屋に据付のクーラーが、なんと、ネズ
ミの巣になっていました。私の入居直前まで別の人が住んでいたので、廃墟だっ
たわけではありませんよ(笑)。私が何度言っても大家さんは信じてくれなかっ
たのですが、無理やり修理に大家さんを立ち合わせたところ、修理工がクーラー
のカバーをはずした途端、ネズミだけでなくヤモリも2匹!ぴゅっと飛び出して
きて、心臓が止まるかと思いました。どうやら排気ダクトから進入して、巣作り
していた模様です。

 その中国メーカー製クーラー、外部から虫などが入るのを防ぐような機能が、
一切ついていなかったのです。結局、適当に巣を撤去して(消毒などの作業は一
切なし)、大家さんが買ってきたガーゼを排気ダクトにかぶせ、輪ゴムでパチン
と止めただけで終わりでした。そんないい加減な修理?だったので、クーラーを
使えばネズミの持ち込んだ病原菌を部屋中に撒き散らすことになるのではと薄気
味悪く、その家ではずっとクーラーを使えませんでした。

 その後引っ越した先の賃貸でも、やっぱりクーラーはトラブル続きでした。中
国空調最大手のG社製品が付いていたのですが、設置したばかりの新品だったに
も関わらず、最初から故障していたのです。その後、何度修理してもフロンガス
がすぐに抜けてしまうとかで、全く部屋が冷えない使えないクーラーでした。

 インターネットにつなげるADSLルーターやさまざまな充電器に掃除機など、
中国の家電は、使用していると驚くほど熱をもってしまうものがとても多いです。
ウチは年間1800元(約23000円)のインターネットつなぎ放題で契約しているの
ですが、数時間つなげたままにするとルーターが発熱しすぎて故障してしまうた
め、定期的に電源を切って休ませてやらねばなりません。実質つなぎ放題には出
来ないという、なんだか騙されている気分……。

 そういえば、東莞市に住む日本人の友人宅では恐ろしいことに、電球が爆発す
ると言っていました。賃貸マンションの照明器具の電球が、いちいち破裂して寿
命を終えるのだそうです。友人は、バチッ!パンッ!という乾いた破裂音に驚か
されることや、ガラス破片の掃除が大変だとこぼしていましたが……いやいや、
そんな簡単な話じゃないですよね??? もし間が悪くて頭上の電球が破裂した
ら? 頭にガラス破片が降り注ぐって、ものすごく怖いじゃないですか! 万が
一、食事中に食卓の照明が破裂したとしたら? ガラス破片がトッピングされた
食事、全部パァですよね……。

 我が家の照明電球は破裂こそしないものの、寿命が恐ろしく短いです。使用頻
度が全く同じ電球を、いっせいに交換しても寿命がてんでバラバラになるという
点も不思議なのですが、リビングの天井照明、半年も持ちません。平均4ヶ月と
いったところでしょうか。中国で一番と言われるO社製の電球を買っていますし、
購入店も華南地方最大手家電ショップで、もしくはイギリス系ホームセンターや
照明器具専門店で買ってみる、ワット数を変えるなど色々試しても結果は同じ。

 あるときは小さな雑貨店で買ったところ、ものの数日で切れたこともあります。
ある程度使った中古品を、箱に入れなおして売ると言う悪徳商売があるんだそう
です。日本では電球交換なんて数年に一回という程度だったので、あちらこちら
と頻繁に切れてしまう中国の電球、そのたびに脚立を出してきて交換せねばなら
ない生活はなかなかにストレスフルなのです。

 そして現在、我が家が一番困っているのは、洗濯機とクーラーです。
 我が家では、家電の7~8割は日系P社製を使っています。クーラー4台、洗濯
機に電子レンジはそれぞれ買い換える前の先代と共に、掃除機、テレビ、ドライ
ヤー、電動歯ブラシ。日系P社製でないのは、扇風機・オイルヒーターに湯沸し
ポットと冷蔵庫くらいです。

 なぜ我が家にこれだけP社製が集中しているかというと、ウチの相方の選択だ
からです。1950~70年代生まれの中国人には、P社をとても信仰、いや信用して
いる人が多いのですよ。彼らが若かりし頃は、品質が良いとされる日本メーカー
家電は高嶺の花で、なかでも日本メーカーの家電といえばN社(現P社)だった
のです。90年代初頭まではN社製のテレビを購入しようものなら、配達は最もご
近所の耳目を集められるであろう時間帯を選び、わざと大騒ぎして鼻高々で家に
運び入れたんだとか。

 その年代に属するウチの相方、P社信仰の刷り込みがなかなか抜けず、パソコ
ンでも何でもとりあえずP社製を選ぶ癖がついてしまっていました。中国メーカ
ー品よりずっと高いけれど、P社製なら高かろう良かろう、という意識です。

 ところが、いま我が家の家電の故障頻度を見るに、P社製はまったくお値段に
見合わないほどのお粗末さなのです。掃除機は、購入1ヶ月目から、ホース手元
の電源スイッチの入りが悪くなりました。ちょっとした接触不良なので、何度も
カチカチすればそのうち点くから大丈夫!と言われました。狭い我が家のこと、
掃除機なんてせいぜい使うのは一度に20分程度なのですが、掃除し終わった頃に
は思わずアチッ!と手を引っ込めてしまうほど、電源プラグが熱く熱を帯びてい
ます。この掃除機、本当に使い続けても大丈夫なのでしょうか?

 2006年購入の20万円もしたリビングの据え置き型クーラーは、数ヶ月で本体の
スイッチボタンが陥没して使えなくなりました。リモコンがあるのでこれはまぁ
いいとして、4年目には送風口が開かなくなり、使用7年目の今はすでに手動で開
けてやらないと作動しません。手動ということは、タイマーが使えないのですよ、
困ったもんです。修理に呼んだのは既に10回前後、全くなおる気配なしです。

 洗濯機のほうはもっとひどく、1年目ですでに異音がしはじめ、2年目には内部
のプラスチック部分がこそげられてゆき、洗濯物にギザギザしたプラ破片がまみ
れるようになりました。こちらも、洗濯層まるごと交換を含め、もう何度修理を
呼んだことか。

 元々、製品は1年しか保証されていなかったところ(洗濯機の保障がわずか1年
というのも、どうなんだって話ですが)、購入時にプラス365元(約5000円)し
て保障2年延長というオプションもつけていたのですが、その3年のうちに何度修
理しても直らなかったため、購入後4年目の今は修理代がいちいちかかるのです。
しかも、取り替える部品が杭州の工場からいちいち取り寄せだとかで、修理もす
ぐには来てくれません。この全自動洗濯機、購入当時は上位機種で、邦貨にして
7万数千円もしたのですがねぇ。

 私が問題だと思うのは、修理工が漏らした言葉です。もちろんクーラーも洗濯
機も、修理は毎度違う人がやってきます。なのにクーラー・洗濯機どちらの修理
でも、同じことを耳打ちされました。

 「あなたには気の毒だけど、内緒の話、この機種は元々問題があるんだよ。け
れどメーカーはリコール絶対認めないし、正直言って私がいま修理しても、その
場しのぎにしかならない。根本の設計に問題があるから、またすぐ故障するはず。
それにこれ、もう保障期間切れたでしょ? 悪いことは言わないから、諦めて別
機種なり別メーカー品なり、すっぱり買い換えちゃったほうがいい。故障するた
びに不便だろうし、そのつど修理代を払い続けるのは勿体無いよ」

 クーラー購入5年目、洗濯機は3年目に言われた言葉です。中国では、『安かろ
う悪かろう』の反対の、『高かろう良かろう』の理屈は通用しない模様です。

 その後冷蔵庫を買い換えるときは、相方の勧めるP社製を無視して日系T社製
を買ったのですが、これは全くトラブルもなく、今も絶好調です。違う家電を比
べる事に意味がないのは百も承知ですが、このP社とT社の品質の違いを私がく
どくど言い続けたお陰で、やっと最近、相方のP社信仰洗脳が解けてきました
(笑)。次に買い換えるときは、別のメーカーを選ぶ!と言っています。家電を
使うのはほとんど私なので、故障するたびに困っているのも私。本当に、洗脳が
解けてくれてヤレヤレです。

 この洗脳が解けるまでは、日本じゃ、こんなに頻繁な故障で不便な思いをする
ことなんて無かったのに!と私が愚痴るたび、相方はこう言っていました。

 「あのさぁ、モノは故障しないと、世の中経済は回っていかないんだよ。故障
するから修理工は生活の糧が得られるし、商品の回転が速ければメーカーや家電
店もどんどん商売が成り立つ。日本は確かに製品は何でも丈夫で壊れないけれど、
だから日本の家電メーカーは今、経営難に陥ってるでしょ。日本のモノは長持ち
しすぎて誰も買い換えないから、不景気なままなんだよ」

 初めてこの奇妙な理屈を聞かされたときには、冗談が半分、残りの半分は中国
製品が故障ばっかりすることを正当化するために屁理屈をこねているのだと思い
ました。しかし、他に2人の中国人の友人、しかも製造メーカー勤務の人が同じ
ことを言っているのを聞いて、驚きました。日本人とは、根本的にモノの見方が
違う!という驚きです。

 日本人なら、性能に限らず、サイズの縮小化、寿命、コストパフォーマンス、
リードタイム短縮といった生産効率などなど、さまざまな面から常に今より上を
目指します。ある意味、どこまで進んでも満足しない、欲張りな国民性です。

 でも、中国人がウチの相方や2人の友人のような思考でモノを作っているのだ
とすれば、この低品質な中国製品にも納得できます。いくら外資系メーカーがハ
イテク技術を持ち込んだとしても、現場の人が壊れて当然、という気持ちで仕事
をしているのですから仕方ありません。

 機能性の低い製品しかなかった90年代ですが、あの頃はこんなに頻繁に故障ト
ラブルに見舞われることはありませんでした。90年代に使っていた洗濯機も、今
の壊れかけ洗濯機も(そういえば、先代洗濯機も!)、ずっと同じメーカーなの
に、製品の丈夫さは90年代より確実に劣ってきています。モノは壊れて当然であ
り、頻繁に壊れなければ次が売れないという考え方が中国において一般的である
限り、残念ながら私は今後もずっと頻繁な家電故障に悩まされ続けるのでしょう。

 (筆者は中国・深セン在住・日本語教師)

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