『危険、危険、危険!』

深センから 

『危険、危険、危険!』 佐藤美和子

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  数日前、東莞で働く中国人の友人が、引ったくりに遭ったというニュースを聞きました。
  バイク2人乗りの後ろの人間が、通りすがりに歩いている人のバッグや通話中で手に握っている携帯を引ったくるという、東莞ではごくポピュラーな(?)手法です。 
  しかし!たしか今年の夏くらいから、東莞中心部では、バイクは禁止になっているはずなのですよ!バイクを利用した引ったくり事件が余りに多いので、それを防止するために一般市民が通勤や生活に使っていたミニバイクも含め、問答無用で乗り入れ禁止!となってしまったのです。なのに、なぜ今頃バイク強盗に???

 彼女が被害に遭ったのは、朝8時ごろの出勤途中。中国の警察官は、たとえ退勤後に違反者や事件など目撃しても、見て見ぬ振りをしちゃうのです・・・・・。だって、勤務時間中じゃないもーん!ということらしいです。そのため、深夜や早朝には、未だにバイクが出没するのだそうです。
  オマケに、私など何度説明されても把握できないのですが、中国の警察はひどく分業化?細分化?されています。同じ警察官とは言え、自分の管轄内容や管轄エリアでなければ、これも無視!自分は殺人事件専門だから、窃盗関係はノータッチ!という感じです。こんなだから、えー?もう交通警官は退勤してるから、シートベルトしなくても捕まらないよ?なんて事を言う人が出てくるんですよね・・・・・。

 私の友達の場合、後ろから来たバイクに肩がけハンドバッグを引ったくられそうになったのですが、けっこうシッカリと小脇に抱えていたために、バッグごと!数メートル引きずられてしまいました。しかし、カーブした道路で彼女を引きずって遠心力がかかったのか?バイクの2人も、あおりを食らって転倒。このときの犯人たちは、結果的にバッグも盗らずに逃げていったのですが、うまく引ったくられなかった事に逆ギレして、ナイフを出してくる輩も多いそうなので、本当はこんな時は素直に引ったくらせておいた方が身のためなのだそうです。

 話を聞いてさっそく彼女にお見舞いの電話をしてみると、怪我自体は擦り傷と打撲だけで何とか大丈夫なんだけど、ただ精神的ショックで今は外に出るのが怖くてね・・・・・それに近所の小さな診療所で貰った痛み止めの薬を飲んだら、なぜか打ってもいないはずの頭がクラクラふらふらしてきて、まっすぐ歩けなくなるの・・・・・だから今日は仕事も早退したのだけど、薬を飲むたびにかなり長時間、前後不覚になるまでぐっすり寝込んじゃってなかなか起きあがれないのよね・・・・・って、おいっ!

 中国には、小規模であまり衛生的には見えない診療所が、住宅エリアなどに点在しています。問題は、そういう診療所の医師の技術が往々にしてイマイチなことと、そういうところで処方される安い薬には、ニセ薬が混じっているかも知れないことなのです。医者自身が、その薬がニセモノである事に気付いていなかったりもします。

 彼女が普段と全く違う、生気のない声でそんなキケンな話をするのを聞いてビックリ仰天、翌朝東莞へ駆けつけて、彼女に付き添って大きな総合病院へ行ってきました。引き倒されて肩を打撲したというのに、まぁ元々そんな設備もないので仕方ないですが、診療所ではX線すら撮っていませんでした。さらに問題の薬を見せてもらったら、なんと錠剤が数粒、小さな紙包みにじかに!入れられているのですよ。錠剤を閉じ込める、アルミやプラスチックのシート包装すらもない裸の状態で!中国では時々あるのですが、こういう処方の仕方では、薬のメーカー名はおろか、何のための薬かもサッパリ分かりません。これで薬の身元、怪しさ倍増です。

 総合病院での検査の結果、幸い怪我のほうは大事なかったのですが、やはりその診療所で処方された薬は飲まないように、との事でした。怪我を治そうとして飲んだ薬で病気になってたんじゃ、本末転倒ですよね・・・・・。

 私の友達は20代半ばと若いものの、高校卒業後に専門学校を出た、ある程度の学歴を持つ子です。なのに、やはり田舎の出身のためか、外国人の私ですら知っている村の診療所の問題を、全然知りませんでした。こういう診療所は病院より治療費が安いので、よその土地から出稼ぎに来ている低収入層の患者が多くて衛生面が保たれにくいこと、検査のための設備がないので的確な診断を受けられる保証はないこと、コストを下げるために安い薬を処方されがち=つまりニセ薬の可能性が高くなること、注射器なども使い捨てでない所があって、エイズだの肝炎だのに感染する恐れもあること等など、東莞の地元民が診療所へ行かないのにはちゃんと訳があるのだと滔々と説明し、彼女の勤務先はしっかり社会保険に加入してくれていて医療費はタダ同然なのだからと、これからはきちんとした病院に行く事を約束させました。

 もちろん、そういう診療所の存在も必要である事は、私も知っています。診療所がなければ、高額治療費を恐れる低所得者は、不必要な検査を受けさせてまで儲けようとする医者も居る病院には、なかなか足を向けようとしないでしょう。それに、家の近くにあって並ばずにすぐ診てもらえる診療所は、いざという時に安心です。でも、今回のケースのように、引ったくりに遭って怪我をし、精神的ショックを受け、更にヘンな薬で体を壊しでもしたら・・・・・3重ものキケンですからねぇ。

 あ、そうそう。昼間はバイクに乗れなくて稼げなくなったバイク強盗を生業とする人達、今では路線バスのスリに転職した人が多いのだそうですよ。こんな事書くと「東莞って一体どんな所なんだ?!」と思われるかもしれませんが、外国人には東莞の路線バスは危険すぎて絶対無理!ですので、皆様おいでの際にはタクシーに乗ってくださいね~。

                       (在中国深セン 日本語教師)

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