『参議院選挙を政治部OB記者が斬る』

■第20回参議院選挙特集;

『参議院選挙を政治部OB記者が斬る』

   元毎日新聞政治部記者・編集局長 細島 泉
   元NHK政治部記者・ 政治部長 飯島 博
                   司会 加藤 宣幸
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【司会】 本日は暑いなかを御出席いただき有難うございます。政治部記者と して長いキャリアーをお持ちの御二人にお出で戴いたのは、今回の選挙結果や 今後の政局について現役の方では言い難い率直・大胆な御意見を聞かせ願いた いのと、この選挙の結果が持つ意味について、少し長い眼で評価(戦後政治史 のなかでの位置付け)をして戴くこと、そして最後に躍進した民主党への警鐘 ・提言で締めたいと考えたからです。  まず選挙結果についてどのような印象・お考えを持たれましたか。細島さ ん、飯島さんの順で御発言願い後は自由に話し合って戴くことにします。

【細島】 ひとつの感じは今までの選挙とちょっと違って「山が動いた」と言 うか正確に言えば「山は動き始めた」と言うことで戦後政治の一つの曲がり角 を示したように思います。ただ、「動き始めた」といってもどういう方向に動 くのかと言えば非常に微妙なものがあって山が動いたから嬉しいというような ものでもない。 逆の場合もあるわけです。すこし具体的に言えば自民党が若 干衰え始めたと言うか、体力をなくしつつあることは否定できない。 昨日あたりから、ほかの連中は黙っている中で加藤紘一なんかも安部幹事長は この責任をとって辞めるべきだと言い出し始めている。 自民党の体力が衰弱してきた状況のなかで9月に向けて執行部の責任 ・人事問題があると同時に小泉個人のパフォーマンスのマイナス要素という問題も 明らかになり、前の選挙までは小泉は大変な人気があったのが今やマイナスに転じ ている。今度の選挙の争点は明らかに年金、イラクであったのだが、この二つとも その根っ子では小泉のまずさ、リーダーシップのなさが問われた。これを有権者は かなり確りと見ていたように思う。いままでは小泉のパホーマンスはかなり上手く 絶妙で国民も乗せられてきた。こんな調子では日本の有権者も駄目なのかと思った が今回の選挙ではパフォーマンスはうまいが中身はないということを見抜かれてい た。有権者も見るべきところは見ていたという感じです。  他方、民主党は大幅に躍進したが民主党自体にそれだけの力があったかと言え ばそうではない。「人生いろいろ」発言に見るように小泉が軽い言葉で堕ちれ ば堕ちるほど逆に岡田の真面目さ、ひたむきさ、生真面目さがプラスになっ た。民主党が勝ったと言うよりも自民党の敵失による所がかなり大きいように 思う。  だから民主党にとってはこれからが大事になってくる。

【飯島】 今年の4月頃の政治状況では、いわゆる「ベタなぎ」で参議院は自 民の楽勝、選挙は当分なく、小泉は安泰で中曽根より長い総理大臣になり、 いったい日本の政治はどうなるのだと言う感じでした。一方の民主党には戦う 気力を感じないし、去年の総選挙のあと、なんとなく"物分りが良くなって"1 年生議員も元気が良さそうにも見えるが統制も取れていない。  私はこの調子だと「自民楽々」で国民も政治に関心を持たなくなり、投票率もガタ ガタに下がると考えていました。現に、今回の第20回の選挙では候補者が320人で 歴史的に数が少ないのです。いつも大体500人くらい立つのですが、がたっと減っ ていて、衆議院のコピーである参議院に魅力がなくなっている。アメリカの上院の ように外交問題では大使の任命までチエックできる権限があるとか個性的でなく政 党の影響のもとに完全に埋没してしまっている。  だから参議院の存在理由がないのではないか。野球ではないが一院制が良い のではないかという世論が高まる中の選挙で選挙にならないのではないか。国 費600億円を使う意味があるのかとさえ思われた。  しかし、国会末期の自民党のやり口はすざましかった。これはすぐれて公明党の力 がけしかけたというかリーダーシップをとったというか、自分たちの大臣がいるう ちに「100年もつ年金をつくる」ということで精力的に動き、スピードも上げた。 ところが御承知のように基礎数字は雑で、しかも今日の報道では40箇所くらい条 文にミスがあったというのです。こんなことは前代未聞です。裏からみると政治が あまり急がせたので役人も投げやりでやったのではないか。政治の力が官僚に及ば ないお粗末さということも出来る。こんなのは民主党でなくともやり直しすべきで す。しかも質問中に参議院の強行採決というのもいままでなかった、決まっていた スケジュールでやったとしても成立する時間的余裕はあったのです。なんであんな 焦ったやり方をするのか考えられない。何らかの特別な力が加わったのかと思わざ るを得ない。公明党の発言力が強まるということがこういう所に現れるのかと考え ています。さすがに国民もこれにはふざけるなと反発し、小泉さんの「いろいろ」 発言などもあって民主党は菅さんがアウトになり小沢さんが引っ込み、惨たんたる 状態になると思っていたのが結果は細島さんが言われたように菅でなくて、ひたむ きさがあって岡田で良かった。小泉は色あせたという感じです。  小泉の第一声はいつも渋谷でやるのですが3年前の選挙では3000人も集めま した。こんどは警察調べで800人ですから3分の1以下ですよ。勿論3年前はブー ムと言うよりバブルでしたね。田中真紀子の騒ぎといい、まさに狂気でした。 当時の国民はなんとか変わって貰おうという素直な気持ちで彼に期待をかけた のです。その反動がこの選挙に表れたとも言えます。  10年後に今回の第20回選挙がどういう意味を持つのかと考えたとき、数字も さることながら、二大政党化の方向性が確定した選挙ということになるのでは ないか。  先回の総選挙では二大政党化の兆しが見えたと言われたのですがこれで確定 したと思います。土井さんが山は動いたと言った89年の時、自民党は初めて敗 れたのですがその後の得票率を統計で見ますと、橋本さんが大敗した時でも得 票率としては負けていない。それを今回は民主党が上回ったのです。しかも比 例ばかりでなく選挙区でも得票率で自民党は抜かれました。こういうことは参 議院の歴史始まって以来なかったことです。  外国の特派員や政治学者が戦後日本の政治について分析する時、独裁国家で はないが自民党と言う支配政党があって、スキャンダルがつづいたり、色々な ことがあっても人が変わるだけで倒れない。まことに不思議な政治体制で研究 に値すると言って研究する人も多いのです。今回はそういうことを否定する二 大政党化の方向が確定したと私は見ます。勿論、これで安心かと言えばそうで はない。  昭和の初期には政友会・民政党の二大政党対立で凄かった。スキャンダルが 続発し軍部が出てきた。この2・3年内に総選挙があれば、おそらく民主党が政 権をとる可能性があると思います。そのとき初めて政権担当能力が問われま す。国民の期待に充分応えられるのかどうか。もしこれで失敗すると自民党に 戻るのではなく国民は行く所がなくなってしまう。非常に大事な段階に入って きたという感じを持ちます。これが私の印象です。

【司会】 細島さん今の飯島さんの御意見について何かございますか。 【細島】 共産党と社民党の打撃は大変大きいし、確かに議席の数という形の 上では二大政党化しました。ただし、これは参議院であるということと、この まま二大政党が定着するかどうかということになると多少問題があります。

【飯島】 しかし、将来の二大政党制という方向ずけをしたということは出来 ると思います。  問題は自民党も単独政権ではないことにある。本音は単独政権・56を狙っ たに違いないのだが取れなかった。自民党は非常に衰弱してきて、今度比例区 で農協が一本で推した農林省のOBが落ちた。こんなことはかってなかった。 防衛庁関係も落ちた。業界と官僚が組んで確保してきた議席が相当なくなっ た。その組織にだいぶガタがきたのは間違いない。自民党もその上に乗っかっ ていたわけですからそれが弱くなったということは土井さんの時の様に消費税 問題などのようなバブルで票が動いたのとは違って今度のは年金とイラクとい うけれどそれ以外にも色々と小泉にたいする個人的批判も多かったのです。そ ういう意味では小泉に対する陰りが出てきたのですが、そのわりに自民党が静 かなのはポスト小泉がいない。ようするに替わりが誰もいない。小泉さんはま だ支持率は高いから使えるだけ使おうという機運が一方にある。だから小泉を 下ろそうというところまでいかず、せいぜい幹事長が責任とりなさいという声 にとどまっている。しかし、もう少したてば段々に危機感が出てきてたとえば 今度の歯科医師会のスキャンダルで橋本派に1億円渡った問題など何かをきっ かけとして党内に動きが起きる可能性もある。選挙の後の記者会見では小泉さ んは負けたという実感がない。あの記者会見を見ていると「われわれも一寸 減ったけれど友党である公明党が少し増えたし、前とあまり変わらない、何の 変化もないよ、国民は小泉政権を支持して改革をどんどんやりなさいといって いるのに力を得てやってまいります」と言った調子です。知らない人が聞けば そうなのかと思いますよ。しれっとして自民党がそうだそうだと手を叩いてい ると、もう明日はわが身だと内心、皆思っている筈ですから、これはえらいこ とになるぞ、解散総選挙になれば俺はどうなるのかという声が実感になってく れば何かのきっかけで党内の動きになる。  それを民主党が傍観しているようだと駄目ですね。  負けたという実感がないのですから傲慢無礼な自民党の体質そのものが変わ らなければ駄目だということが今度はっきりした。公明党の力なくしてこの政 権は生きていけないということが良く分かっていない。  たとえば民主党が天下とるにも公明党もしくは何らかの第3党の力なくしては  比較多数であっても安定多数にはならない。公明党はどっちつかずでやって いくのかどうか。ちょうど欧州の第3党みたいな立場で公明党といえども正念 場にきている。

【細島】 公明党が悩み苦しむ時もあるということですね。

【飯島】 公明党も議席は一つ増えたが票は10万票くらい減っている。公明党 の言い分は創価学会の言い分ですが「自民党はふざけた奴だ。人に頼んでおい て何の協力もしない。われわれは自民党の力を高く評価していた。1000万はで きるだろうということで池田大作は1000万を必ず確保せよと号令した。  ところが票は800万そこそこで総選挙の方が良かったくらいです。自民党に対し 内向的なものですが相当腹を立てている。  もう一つ、共産党は惨敗ですね。これはどういうことかと言えば「われわれ の主張は正しかった。主張が正しいのだから責任はない」ということです。  これは国民に対する自民党の「傲慢無礼」にたいし、共産党の「慇懃無礼」 だ。こういう姿勢からは選挙で天下取ろうとする気はなく、やはり革命を狙っ ているとしか考えられない。選挙はただ赤旗が売れればよいという党勢拡張の 手段で昭和の始めと少しも変わらない戦略戦術がそのままつづいている。運動 すること自体に生きがいがあり、運動するだけで生活が保障されるという彼等 だけの村の論理で生きていて国民との関わりはない。志位さんという人は委員 長にふさわしくなく書記長格です。良く知らないけれど市田さんのほうが党首 には感じがよいと思います。国民から支持を受ける、票を貰うということが非 常に大事なんです。そういう意味で共産党に猛省を促したい。あのグループが なくなることは困るし淋しい。  同じように社民党もなくなって欲しくない。ただ、この党は人材を育てようとす る意思がきわめて乏しい。ヨーロッパの党にもそういう傾向があるが土井さん福 島さんとちょっと国民に顔が売れた人でつないで行く。この党には、まず人材を 育てる気があるのかを問いたい。昭和の初期に政友・民政がスキャンダルをお こし軍部の台頭を許した状況は歴史に残っている。勿論スキャンダルがなくと も軍部は出てきたかもしれないが政党の腐敗堕落があったのは事実です。  これを繰り返さないためには国民が政党を糾弾し政党を鍛えていく必要がある。  これについて一寸甘いかもわかりませんが、こんど投票率がやや上がり、少し脈 があるのかと感じています。投票率は40%台かと思っていたのですが3年前のブ ームより少し良かった。この数字は小さくても大きな意味をもっていると考え ます。つまり僕らの現役のころは大体、衆議院70%参議院60%と言ってい たのが10%ずつ下がって50%台になり、95年の時に44.52%になっ た。こんど40%台に落ちると見ていた。ところが56.57%で(前回01年 56.44%)ちょっと上がったのです。県選管とかNGOなどの努力もあっ たのでしょうが有権者の意識がささやかでも育ちずつあると見たい。 【細島】  一人一人にとっては生活の問題ですから投票率には「年金」が相 当響いている。それにイラクでしょ。理屈以上に手続きがまずいです。なんの かんのと言ったって一種の独裁的なやりかたです。年金プラス手続きミスで す。

【司会】 60年安保の時、盛り上がったのも安保の中身よりもその手続きに多 くの国民は反発したので安保反対・反米というより、民主主義破壊に対する国 民の抵抗感だったと思う。

【細島】 そうです。5月19日の強行採決に対してでした。

【司会】 今回も自民党は手続きに問題があった。イラクや強行採決だけでな く出生率の後出しなんかも相当酷い手口です。

【細島】「年金」・「イラク」・「手続き」と相乗的に働いたと思います。 【飯島】 民主主義とは手続きですからね。民主主義が壊されているのです。

【細島】 民主党は、たしかにある程度、玉を選んだり準備もしただろうけれ ど、この敵失があったために、今まで弱かった「西」のほうで予想以上に勝て たのだと思います。

【飯島】 一人区は27あって、この前は2勝25敗だったのが14対13で 五分です。  この間の総選挙では西は全然駄目でした。今回は相当補われています。官僚の若手 が職を賭して出たり、NPOの若い娘さんたちが活発に動いたりしていました。  それらがきちんと組織化されるかどうかがこれからの民主党の課題です。

【司会】 選挙戦では民主党の幹部は意図的に西を攻めていたようですね。と くに小沢一郎のホームページを見ると西の農村を細かく歩いて「小泉さんから 農業の話を一度でも聞いたことがありますか」と訴えていた。 【飯島】 彼は自民党の幹事長として大金も動かし、選挙の勝ち方を知ってい るからね。そういう点では市民運動一本できた菅君とは違うね。こんど岡田が なったというのは天の配材というのか当たった。菅さん自身がショックでし ょ。  ある人が岡田は勝っても渋い顔しているのはちょうど西尾がえらいことになったと 言ったのと同じような思いで引き締めを決意しているのだと言っていた。  そういう姿勢が立派ですよ。おそらく菅だったら舞い上がったでしょう。今日の新 聞だと御遍路に行くそうですが自分で実感したのではないか。 

【細島】 岡田はよくやった。若さもあるけれど遊説日程見ても各党のなかで 群を抜いて動いた。

【飯島】 最後の打ち上げは四国の高松でした。香川は保守王国で名もない女 性がいいところまでいった。東京・神奈川・愛知など大都市で複数当選させ、 かっての自民を彷彿させるのですが、全国の地方選挙区で自民党を得票で抜い たのは歴史的に初めてでこれは大きいと思う。あと、北陸・山陰だけです。

【細島】 大体新人が多く比較的に若い。岡山の江田は強かったが、四国や九 州で勝ったのは皆そうです。自民党もこれから9月の人事で党の建て直しとい うことになる。

【司会】 政局はどうなりますか。

【飯島】 みんな9月の役員人事・内閣改造を見ている。その前には臨時国会 で歯科医師会のスキャンダル・橋本派の献金問題・強引に通した年金法の出直 しをどうするかなどの声がどこまでになるか。  簡単ではないが一方では小泉が強気で改造の人参をぶら下げ郵政民営化の法 案を飲ませようとする。与野党それぞれ緊張した局面を迎える。そして秋の予 算編成がどうなるか。なにしろ官僚国家ですから、これからは役人も足元を見 て、なかなか言うことを聞かなくなる。政治が強くなると田中角栄であろうと 何であろうと強いところについていきます。  小泉体制のなかでは公明党はこの9月には閣僚2人要求するのではないか。 そういうことになると自民党は何であんな者にというのと、いや、あそこには 世話になっているからというのが出てきて変なことになる。それを国民はじっ と見るという格好になる。  そこで、イラクの情勢はどうなるか。もう一つ、今年は不思議と世界中が選 挙の年です。11月2日にアメリカの大統領選挙がある。これによっていろん な展開になる。現にアジアなんか台湾・韓国・フィリッピン・インドネシアも そうであった。いい意味でも悪い意味でもガタガタしている。いわば激動する 内外情勢ということです。占い師に言わせると9月11日、3月11日(スペ インの爆破事件)7月11日(参議院選挙)というのは非常に大きな意味を 持っているという。(笑い)それはともかく何が起こっても可笑しくないとい うのが今の情勢です。  いつ爆弾が落ちてくるか分からないからイラクの自衛隊は今昼間はジットし ていて水配りもろくにしていないらしい。しかしマスコミを中まで入れないか ら報道もされない。もし、あそこで一発あれば大騒ぎになる。大統領選挙もあ り、政局はどうなるか分からない。ただ小泉がこの参議院選挙が終われば俺の 任期中は何もないと言っていたのは消費税の議論だけはどうぞ、憲法は案ぐら い作りましょうといった調子でまるで他人ごとだからなんです。  塩川(塩爺)が小泉に君は起承転結の起と結はあるが、承と転がない。こと には起には承があり、転があって結があるのだ。承と転が抜けているから国民 は何だか分からない。もっと丁寧に親切にしなさいと言ったそうです。内外か ら小泉に対する批判は厳しくなってきている。

【細島】  文春でも塩爺が小泉は年金を全然分かっていないと書いていま す。ほんとに先行き混沌としてきた。少なくても小泉の天下泰平、楽々ムード はなくなった。  当面、国内では9月に自民党の組織整備・人事の問題があり、その前の臨時 国会では民主党が、おとなしく自民党の2週間くらいと言うのを聞かないと思 う。ここで何か手を打っかどうか。それから国際的にはアメリカの大統領選挙 が大きな問題だ。  総裁任期は2年、衆議院は3年だが、それまでにもう一発あると思う。どの 時点かで解散総選挙が必ずある。 【飯島】  そんな気がします。

【細島】  こんな情勢のなかで二大政党というのがすんなりした形で行くか どうか問題もある。

【司会】  二大政党制の方向性だけははっきりしてきた。自民党の衰弱が進 み、次の総選挙では民主党が多数になる可能性もでてきた。それだけに昭和初 期の二大政党制による失敗を繰り替えさないためにも、つねに国民が政党を監 視し、鍛えていくべきであるとの御意見です。そうなると民主党の責任が非常 に大きい。今回の選挙を踏まえて民主党に対する政策・組織・次の選挙に対す る人材発掘などについてどうあるべきか警鐘・提言など率直な御意見を御聞か せ下さい。

【細島】  たしかに今回、民主党は良い成績を上げたが肝心の衆議院で勝つ ためにはどうするかが大事になる。特に候補者の玉選びが重要だ。

【司会】  比例区では労組の大単産代表が多かったが彼らの指定席にすべき ではない。労組の本質は本来、自分たちの身分・雇用条件を守るのを目的とす る保守的な組織で政策の対案を出して争うという体質ではない。民主党が政党 としての政策提起能力を磨き、国民の支持を得ていくためには人材の労組依存 率をあまり高めない方が良い。旧社会党の失敗は明らかですし、多くの所謂 「革新自治体」の行き詰まりは労組の支持によって改革ができなくなるのが原 因の一つです。

【飯島】 こんど、小泉は郵政民営化で民主党の泣き所に勝負をかけてくる。  20数万人の郵便局員を公務員にしておいていいのかと提起する。その時、 民主党がそうだと言えるのかどうか。  参議院選挙は表徴的で衆議院選挙は50%とらなくてはならないから、よほ どの人でないと労組出身の候補者にはなりにくい。だが参議院の場合は組織か ら出てOKだから国会に出てくる唯一の手立てであり彼らの出世の窓口になの です。  郵政民営化で攻めてきたとき、民主党が旧全逓出身の議員を中心とした勢力 にきちんとした工作ができるのかどうか。国民の前に見せて貰うことになる。

【細島】 民営化について朝日の調査だと賛成より反対が多い。民主党はどう するか。

【飯島】 候補者の話に戻ると、参議院の場合は労働組合の委員長の最後の上 がりとしてなりふりかまわず確保したがる。民主党としても眼をつむるところ もある。しかし衆議院では組合で多少弁が立つからといって候補者にはできな い。最後まで組合として残るのは自治労でしょうがこれが結構保守的です。長 野県政で田中知事に組合が対立しているのでも分かる。  いずれにせよ候補者の発掘は大変で簡単ではない。ただ、こんど議員がふえ政党交 付金が増額になり、民主党に勢いがついたし、発想を変えて探せば多少新人を見つ けやすくなる。 【細島】  こんど「西」で勝ったといっても自民党のなかで反乱が起きてい るのですし、参議院と小選挙区の衆議院はまた違う。

【飯島】  だから自民党は公明党を引き寄せる取引材料にいつも選挙制度を 変えようとささやいている。

【細島】  やはり、玉選びがポイントになる。こんどの選挙でも、民主党の 候補だといっても実は元自民というのも多くいたし自民と同じようなことを 言っている例も沢山あった。だから二大政党化といっても同時に流動化の可能 性も指摘する必要がある。  国会でいろいろ渡り合いながら自民党的なものを民主党的なものに変えて行 く運動が必要であり、この努力は至って重要です。

【飯島】  政策的に言えば安全保障問題です。幅はあっていいが、きちっと したテーゼがない。   君が代か国旗の時のようにふわっとしておいて投票は自由にというのでは駄目だ。 そういう意味で共産党が減ったのは参議院だからまだいいけれど会派交渉にもなら ないのは困る。黙っていても二つの政党なので変に物分りが良いのが集まってなあ なあになると彼らは解散がなく緊張感がないから危険です。こういうのを岡田体制 は全体的に統制がとれるかどうか。 

【細島】  民主党は内部に大きな問題を抱えていることになる。

【司会】  民主党はたしかに若手のなかに有望な人材もいるようですが、若 手幹部の動きには「責任野党」ということで妙に大人ぶっていただけないとこ ろがある。先日の「年金」でも前の「金融」のときでもドタン場で物分りの良 さを発揮し、それに菅氏などが迎合する局面があった。修羅場をくぐってきて いないから喧嘩の作法を知らない感じです。これからどのように成長するの か。

【飯島】  三党合意は菅がやったのです。彼はこれで党内の点数を落とし た。金融の時と2回ですからね。ヨーロッパに記者団を連れて行って総理大臣 になったようなつもりになり、あげくは三党合意です。小沢でなくても怒りま すよ。

【細島】  自民党は臨時国会でこれを認めろというところから攻めてくるで しょう。  朝日の世論調査ではいまだに80%は年金法撤回だといっている。この支持をバッ クに臨時国会で岡田民主党がどう戦うか。野党共闘でも何でもして撤回させること で総選挙に向けて民主党が固まれるかどうかが決まってくる。

【飯島】  なにしろ法律に40箇所のミスが見つかった欠陥法です。

【細島】  法制局長官が処罰されるという異常さで、これも公明党がごり押 しし、自民党がサミットの日程で急がせた結果なので、わずかでも撤回させる スキはあるように思える。

【飯島】  どう撤回させるか非常に難しいが最後は小泉と岡田の党首会談で 高度な政治取引になる。岡田にとっては初仕事になるが小泉・岡田二人の性格 から見てともに幅がないから難しい。与党が数の論理でくるのを世論の力を背 にどう戦うのか。  国民は期待と不安の入り混じった眼で岡田民主党を見つめている。 (この記事は長時間の座談会を編集部で要約したもので文責は編集部にあります