『日本人移民はこうして「カナダ人」になった』

【書評】

『日本人移民はこうして「カナダ人」になった』

  田村紀雄/著 芙蓉書房出版/刊 定価2300円

鳥井 一平


 折しも『バンクーバーの朝日』が上映中である。「実在した日系カナダ移民二世」の野球チームの姿を追った映画らしい。「日本人としての誇り」を鼓舞するんだろうと斜めから見ている私だが、本書についても読むまでには同様の予断を持っていた。しかし、私自身の不知不明を恥じることになった、

 私は、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の活動に参加している。この移住労働者とは、とりわけ「ニューカマー」(1980年代以降に日本に移住してきた人びと)を指している。「移民」と同意だが、「移民」と言う単語を使わなかった理由のひとつが海外へ移民していった日本人をイメージするということであった。カナダに限らず、日本は「送り出し国」として移民問題を抱え、時の日本政府は、移民への差別に反対する国際的な働きかけも行っていた。

 私たちの日本社会は移民の労苦や移民先社会への活力への貢献も知っているはずである。その意味で、本書は、今の日本における移民政策の貧困(移住労働者とその家族の課題 )と切り結ぶ内容となっている。和歌山、福岡、鳥取、神奈川、滋賀からカナダへ渡った日本人が森林労働者などとしてカナダ社会で直面していく姿を膨大な資料に基づいて描く本書は大変興味深いだけではなく、今のこの社会における移民政策の方向を示唆すると言っても過言ではない。

 今、「人口減少社会問題」=人手不足の危機感から、東京オリンピック開催決定を契機に「外国人労働者受入」論議が進行している。しかし、論議の中心は使い捨て労働力としての「外国人材の活用」である。この社会の一員としての考えが見られない。本書を是非一読してもらいたい。この社会に求められる移民政策のヒントがある。また、本書のそこかしこに、私たちが普段感じている問題意識に通じる、或いは重なる単語、文章が出てくる。

 つまり私たち市民社会における運動のヒントもある。民族コミュニティの役割、労働組合の役割、活字(ニュース、機関紙、今日ではインターネット、SNSになるだろうが)の役割などを再認識することになった。カナダにおいても移民への排外主義的施策があった。しかし、今日に至って、カナダと日本の違いはどこにあるのか。移民政策はひとつの国だけではなく地球的課題でもある。本書は、「日本人」移民の姿を通した、労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会への道筋の書でもある。


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