『養犬登録への、ながーい道のり』

深センから             佐藤美和子

『養犬登録への、ながーい道のり』

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  子犬を飼いだしてから、2ヶ月が経ちました。
ものすごい勢いで育つあまり、まだ4ヵ月半の子犬だと言うのに、ナゼだかすで
に成犬サイズになっています(小型犬は約1年で成犬)。子犬にとって今が一番の
成長期なので、あと2ヶ月はまだまだ育ち続けると思われ・・・・・「もしやオマ
エさん、ミニチュア・シュナウザーではなくて、中型犬のスタンダード・シュナ
ウザーじゃないのかい?!」と、本犬にしょっちゅう問いかけてしまいます。あ
ーあ、犬用ケージも一回り大きなものに買い換えなきゃです~。

 そんな並みより少々でっかい子犬との生活にはすっかり慣れましたが、ペット
を飼うための手続き方面ではこの2ヶ月間、本ッ当~に大変でした。中国ではペ
ットを可愛がる動物好きな人が増えて、ペットとしての犬に対する知識も広まり
つつある、なーんて事を以前の記事に書きましたが、まだまだ中国をそういう風
に判断するのはちょっと早計だったかも知れません・・・・・。

 子犬を貰い受けた日は、オルタ46号に書いたように、元・飼い主さんは少々私
生活問題でテンパっていたためか(笑)、子犬の誕生日やこれまでに受けさせた予
防接種日などをハッキリ覚えていないということだったので、後日、連絡をもら
う約束を取り付けました。誕生日はともかく、ウチに来るまでにどんな種類の予
防接種をいつ受けさせたのかが分からないと、こちらも困ってしまいます。しつ
こく携帯メールで催促し続け、やっと注射は2種混合と6種混合の2回が済んで
いる、という連絡がもらえました。後から聞いた話では、フラれた香港人彼女に
復縁を迫るために香港での就職を目論んでいた元の飼い主さん、結局どんな強力
なコネがあっても香港では高卒者には労働ビザが下りない事が判明し、道を絶た
れた彼は意気消沈の余り、しばらく携帯の電源も切って、家に引きこもっていた
のだそうで・・・・・全く、ヤレヤレな話です。
 
2回が済んでいると言う事は、あと1回の数種混合予防接種プラス、狂犬病の予
防注射を受けさせれば、『養犬登記(飼い犬登録)』することができ、やっと外の
散歩に連れ出せるようになります。早速3度目の予防接種に獣医さんへ連れて行
ったところ・・・・・元飼い主の言う「2回分の予防接種済み」という話は本当か
どうか分からないから、念のために血液を採取して抗体検査をした方がいいと言
われ、日を置いてそれも受けさせました。結果は、抗体は全然できていないので、
たぶん予防接種はこれまで受けていないだろうとのこと・・・・・そんなぁ~!

 実は、何度も催促して彼がやっと教えてくれた接種日をカレンダーで確認する
と、2回目の接種日はなんと我が家に子犬を引き渡した日と同日でした。1回目の
接種日は覚えていないというのならわかりますが、普通どんなにテンパっていて
も、当日に2回目の接種に連れて行ったことすら忘れちゃうだなんて、おかしな
話ですよねぇ。しかも本当に接種済みなら、獣医師発行による接種済み証明冊子
があるはず。それもこちらに引き渡してくれない等いくつか不審な点があったの
で、もし一度も受けさせていないのなら、私たちでちゃんとやるから本当のこと
を言ってくれ、絶対に怒ったり文句言ったりしないから!と、何度も彼に念を押
しているんですよね~。それなのに、一旦ついた嘘は撤回しにくかったのか?彼
は「ちゃんとやってあるよ、しかもワクチンは質の悪い国産じゃなくて、輸入物
の高いヤツを使ったんだから!」などと、嘘を重ねていた訳で・・・・・彼のツ
マラナイ嘘のお陰で、我々は無用な血液検査費用に100元支払い、子犬も抗体検
査のために一本余分に痛い注射を打たれ、かわいそうな事をしました。

この他にも、中国の予防接種事情や飼い犬登録についてよく知らなかった我々、
犬を散歩させている人や獣医さん、ペットショップなどの色んなところで質問し
てきました。ところが・・・・・まぁ中国ではよくあることなのですが、なぜか
10人に尋ねたら10通りの答えが返ってくるのですよ!全員が故意に嘘をついた
のではないと思いますがねぇ(あ、獣医師は我々から費用を騙し取るために、故
意に嘘をついていました)。登録についても、えっ登録?必要ないよ~、どうせ散
歩だってマンション内の庭で事足りるのだから、外に連れて行かなければ公安に
見つかることもないもの、みんなそんなのやってないよ!という人がいれば、飼
い犬登録は生後1年くらいですればいいよ、子犬はすぐ死んじゃうから、登録後
に死なれたら費用が勿体無いしね~という人(これはこれでスゴイ考え方です)、
尋ねれば尋ねるほど違う情報が増えるばかりで、本当に困りました。

 さて、そんな紆余曲折を経て一般予防接種のやり直しが済んだら、次は狂犬病
の予防接種、そして『養犬登記(飼い犬登録)』です。
  数軒の獣医さんやペットショップで登録方法について確認したところ、検疫所
で飼い犬登録する時に狂犬病注射は打ってもらえるが、そこで使われるのは半年
しか効果が持続しない国産ワクチンだし、毎日たくさんの犬が登録に訪れるので
順番待ちで数時間かかる、ぜひウチで1年有効の質の良い輸入物を打っていきな
さいなどと言いながら、事前に費用の告知もせず、しかも飼い主がOKを出す前
に打とうとする勝手な獣医師がいたり、獣医師でもないのに、うちでもワクチン
あるから打てるわよ~などというペットショップ店員がいたり、ビックリするこ
とがたくさんありました。国産ワクチンは深セン市の条例でタダと決まっている
が輸入モノは有償だという獣医や、国産でも料金を取ろうとする獣医がいたり、
あぁもう何がなんだか分かりません!ペットの飼育ですら普及し始めたばかりの
中国ですから、ある程度は仕方ないものの、まだきちんとした法規制のない獣医
業ではやりたい放題のようです・・・・・。

 中国都市部では、飼い犬登録をしていない=犬鑑札がない=ことが公安局に見
つかれば、かなりの額の罰金もしくは犬を没収ののち保健所行き、となってしま
います。特に都市部ではむやみやたらな犬の飼育を制限するため、飼い犬登録の
年間費用が数千元と、かなり高く設定されているのです(千元=約15,400円、登
録費は都市によって違う)。なにしろ〔犬の平均寿命10~15年x年間数千元〕も
かかるのですから、かなりの負担ですよね。登録費用が高すぎて勿体無いからと
登録せず、たとえ無登録がばれても罰金を払うより、ペットショップで新しい子
犬に買い替える方が安上がりだと、捕まった飼い犬を見殺しにしてしまう心無い
飼い主もいます。
幸い私の住む深セン市は、「登録費を安くすればちゃんと登録する人が増えるはず、
そうすれば登録とセットになっている狂犬病の予防接種率も上がって狂犬病が減
る」という考えで、登録費用は年間300元(約4,600円、日本の登録費用とほぼ
同額)と、中国他都市に比べてずいぶん格安になっています。

 いざ検疫所の場所を調べて連れて行ってみれば、獣医師に言われたような、た
くさんの登録待ちの犬なんて一匹も見当たりませんでした。よほど訪れる人がな
くてヒマなのか、係員たちはパソコンゲームで遊んだり、ノンビリお茶を飲みな
がらおしゃべりに盛り上がっていたりするんですけど?狂犬病の予防接種も、ワ
クチンは国産か輸入物かは自由に選べてどちらも無料、検疫所のその場ですぐに
打ってもらえたんですが?結局、これまで何人もの獣医師に尋ねた情報、見事な
までにすべて嘘っぱち情報でした・・・・・。

 その日は検疫所で狂犬病の予防注射を打ってもらい、飼い犬登録の申請をし、
犬の固体識別ができるマイクロチップを首の皮下に注射針で埋め込むところまで
終了しました。私はてっきりその場で『深セン市養犬登記手冊(飼い犬登録証明
手帳)』と犬鑑札をもらえるのかと思っていましたが、発行には申請から1ヶ月も
かかるのだそうです。えー、なんでそんな時間がかかるの?と尋ねると、それら
を発行する部門はここ検疫所ではないから、私たちには管理できないのよ、だそ
うで・・・・・そういやあちこちの獣医師で騙されかけた事を話すと、町の開業
獣医についても検疫所の管轄ではないから、私たちにはどうしようもないわ!と
のことでした。
こんなに登録費用が安い深センですら登録しない人が意外と居たのは、費用の問
題ではなく、まだこういう手続きがきっちりマニュアル化されておらず情報が錯
綜し、登録までの道のりが大変だからかも知れません。登録方法や規則について
も、市民が気軽に調べて分かるようには開示されていないし、そういえば辺鄙な
ところにある検疫所の場所も、調べるのに一苦労しましたっけ。
  検疫所の壁に貼られたポスターに、深センではマスチフやボルゾイ、土佐犬に
秋田犬など27種の大型犬の飼育が禁止されていると書いてあったのですが、あれ
れ、確か深セン在住の知人が、禁止犬種であるはずのジャーマンシェパードを飼
っていたような?どこぞのペットショップでも、ボルゾイの子犬を見かけたよう
な気がするぞ~?

検疫所の壁に条例ポスター貼っておくだけで、一般市民が目にするところで告知
していなければ意味ないよな~と思いましたが、これもやっぱりお役所仕事とい
うことでしょうか。都市によっては、種類に関わらず飼育許可されているのは小
型犬のみで、中~大型犬は一切禁止、というところもあるようです(ウチみたい
な、規格サイズ外に発育の良い小型犬だとどうなるのかしら?)。そんなことは知
らずに連れてきちゃったよ・・・・・という事のない様に、中国へペット連れで
赴任や移住予定の方が居られましたら、どうぞ現地の条例を事前によーく調べて
くださいね。それらの手続きに、人間の滞在ビザ手続きなどよりずーっと煩雑で
イライラさせられるだろう事は、私が保証いたします、なーんて(笑)。
                   (筆者は中国・深セン在住日本語教師)

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