【宇治万葉版画美術館】(3)

宇治 敏彦
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(11)秋の七草を広めた山上憶良
 秋の野に繁る代表的な7種の植物で、山上憶良のこの歌で世間に広まるようになった。朝貌(あさがお)とは今の桔梗のこととされる。また藤袴(ふじばかま)は、万葉集の中では、この歌のみ。ちなみに万葉集に登場する植物のベスト3は萩(142首)、こうぞ・麻(138首)、梅(119首)とされている。

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(12)玉桙(たまほこ)の道は遠かった
 万葉集の編纂者の一人といわれる大伴家持が叔母の大伴坂上郎女に会いに行った時の歌。叔母は耳成山の東北方面にあった竹田庄に住んでいたようだ。「遠い道のりだったが、会えてよかった」と喜びをストレートに吐露している。

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(13)万葉期から鯛は御馳走だった
 醤酢(ひしほす)とは小麦と大豆を麹(こうじ)に塩水を加えてつくるモロミのような調味料。古代の醤油というところか。水葱(なぎ)の羹(あつもの。水アオイ)も刻んで醤酢とともに刺身の鯛につけて食したのであろう。

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(14)「大和よ頑張れ」と叫んだ大伴家持
 磯城島(しきしま)は元来、奈良県桜井市近くの地名だったが、後に「大和」を讃える時に枕言葉のように使われるようになった。「名前に背くな一族よ。大和の国の繁栄のために頑張れ」と自らを鼓舞している。家持は父親・大友旅人とともに名門の大伴一族の繁栄を願っていたに違いない。だが万葉集の4466番と巻末に近いところに掲載されている歌なので、政争の末に傾きかけた大伴家を憂慮しつつ歌い上げたのかもしれない。
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(15)厚見王(あつみのおおきみ)の一首
 のど元を膨らませて鳴くカジカカエルは、河鹿の鳴き声に似ているところから、そう言われる。甘南備川に影を映して、今頃は山吹が咲いていることだろう、と作者は想像する。厚見王は従五位の官職にあったようで、万葉集には3首の短歌を残している。

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