【オルタの視点】

オルタ170号なぜ新潟地区共闘は成功したか。----中山均さんに聞く。

私は新潟市会議員の中山均です。新潟の野党共闘成功の事をよく聞かれるのですが、これは一朝一夕で成功したのではなく、そして市民団体と各野党の単純な足し算でもありません。新潟では古くから農民運動の歴史があり、また社共系の共闘の歴史もありました。比較的最近でも社民系の平和団体と共産党系市民団体とが各種の集会で行動を共にしたり、年に1回は共闘をやろうという相互信頼がありました。それを基礎に、安保法制や共謀罪反対運動で市民グループも形成され、そこに直接・間接的に民進系や連合などとの共闘が積み重ねられ、信頼関係がより強固になってきたという経緯があったのです。

参院選に向けて、候補者決定についていろいろとありましたが最終的には森ゆう子さんに決まり、それを各野党・市民連合が支えるという枠組みがつくられました。ただ、この間の政治的な経緯から、民進党と共産党がいつも一緒の選対の中にいるというのはなかなか難しいこともありました。連合の幹部には理解のある方は沢山いましたが、組合の中には共産党系に対する反発なども結構あったので、お互いに配慮しながら、単純に同じ選対に入るのではなく、選対の外側に「連絡調整会議」という枠組みをつくり、そこに民進党の幹部が参加して貰うことにしたのです。

この中であった象徴的なエピソードをお話しますと、共産党はものすごく組織力がありますが、それでも彼らがポスティングするときに手の届かない地域が出てくるので、そういう地域のリストを出してもらうのです。その空白地域を私たち緑の党や社民党のグループなどがここはわれわれがやろうと分担するのです。こういうことは手の内をさらけ出すことになるのでよほど信頼関係がないとできないと思いなす。街宣活動などでもお互いに知恵を出し合って計画を進めていきました。後になって他の地域や都知事選などの話を聞くと、必ずしもうまくいっていなくて、街宣車をこの日は共産党、この日は社民党と単純に決めているところが多かったようです。そういう意味でも、新潟では単純な足し算ではなく、蓄積された信頼関係をもとにして選挙戦が組まれたことが大きな成果を上げたのだと言えます。

それからわれわれ緑の党や新社会党のように国政に議席を持たない政党も非常に尊重され、私も参院選や知事選で政策担当として重要な任務を担うことができましたし、新社会党の代表もずーっと選対に張り付いて頑張っていました。そういう人々の頑張りが蓄積され相乗効果を生みだし、いろいろなところで、表には出せないさまざまなエピソードも積み重なって、結果的にはわずか二千数百票の差でしたが勝利をもたらしたのだと思います。

その参院選で勝利したことが契機となり、当選した森ゆう子さんが知事選に向けて強烈なイニシアチブを発揮しました。候補者は知事選の直前にかなり押し詰まって決まりましたので、連合はすでに対立候補である自民党の森民雄さんを応援することを決めており、民進党は自主投票という形になりました。客観的に新潟地域以外からこの状況を見るとかなり負けの構造になる、と危惧された方が多いいと思うのですが、当事者としての私たちはそうでもなく、感触としては非常に良かったのです。
立候補が直前だったにもかかわらず、参院選で形成された信頼関係と蓄積された共闘選挙のノウハウがあったので、私たちは瞬く間に臨戦態勢を整えることができました。

民進党が自主投票を決めたことに県外からは批判も強かったと思いますが、逆に、結果的には原発問題などでは民進党のスタンスを気にすることなく、明確で鮮明な主張ができたという非常に大きなメリットがありました。実際に選挙戦に入ると新潟県民は自民党支持者をふくめて柏崎・刈羽原発再稼働に非常に反対意見が強いこともわかったので、米山候補も一歩踏み込んで「こういう状況では絶対に再稼働できない」と明言するようになりました。それが一層原発を争点化することになり、マスコミもこれを報道し、最終的には人々の関心が集中して、参院選より大きな差で知事選を勝つことができました。
この知事選の勝利は、そもそも薄氷を踏むような参院選の歴史的な勝利がなければありえなかったし、数々の偶然のような要素がありつつも、その偶然を生み出した力、その偶然を勝利に結びつけた新潟の県民や各政党の努力は非常に大きかったと思います。それは非常に感慨深いものです。

そこから続いて秋の衆議院議員選挙になるのですが、参院選と衆院選の結果で明らかなように「新潟では野党共闘でなくては危ない」ということをみんなが実感を持って認識していました。また、希望の党行きを表明したらすぐ市民サイドから対立候補の動きが出たりもして、結果として新潟ではすべての選挙区で希望の党に行った人は一人もいません。そして野党共闘の動きが活発になり、衆院選では残念ながら2議席を落としましたが6議席のうち4議席をとるという大きな成果につながったと言えます。

最後に、蛇足的に言いますと、野党共闘で当選した米山知事は原発問題で前任の泉田知事より一歩踏み込んだ検証作業を進めていて、東京電力や自民党とも闘いながら頑張っていることを付け加えておきたいと思います。
        (新潟市会議員・緑の党グリーンズジャパン共同代表)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧