アジアにつながるリユース・リサイクル

藤井 あや子

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 女性たちの行動がはじまり
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 1996年、生協・ワーカーズコレクティブ・地域政党・学者らによる「アンペイド・ワーク欧州視察」で、世界有数の国際協力NGO/Oxfam(オックスファム)のチャリティショップと出会ったことがWEショップ活動を始めるきっかけになりました。WE21ジャパン設立は1998年に、NPO法人格取得は2000年に行いました。また、2014年度は市民の皆さんから、多くの協力をいただいた結果を生かし、パブリックサポートテストの一つを活用して「認定NPO法人格]を取得したいと考えております。認定NPO法人格を取得することで、市民の意志ある寄付社会を広げることが可能になり、さらに市民社会の力が強まることに繋がればと期待しております。

 私たちWEショップの日常は、市民から寄付された、衣類やバック・食器類・おもちゃなどの日用雑貨を販売する、リユース・リサイクルショップ「WEショップ」を市民のボランティア参加で運営し、その販売収益を活動の主な資金源としています。 神奈川県内の各行政単位ごとにある36のWE21ジャパン地域NPO(以下WE21地域NPO)と中間支援組織、調整組織としてのWE21ジャパンが連携して、現在57のショップを運営しています。神奈川県内のユニクロの店舗数が現在64と聞きますので、私たちの動きがそれなりの規模にまで成長できたようにも思います。

 WE21ジャンパン・グループ全体を見ますと2012年度の総事業高は約3億5千万円です。その収益の中から民際協力事業へ20,028,030円、東日本大震災復興支援へは10,830724円を活用することができました。寄付品購入者数462,000人、参加ボランティア延べ人数41,000人(2013年度がまだ集約できていませんので2012年度とさせていただきました)と、この運動が、今では多くの市民に浸透し、そして多くの市民に支えられていることを実感しています。

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 WE21ジャパンの動き
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 私たちの名称WE21ジャパンには、≪Women's Empowerment≫、女性たちが21世紀を主体的に生き、力を発揮することで社会をより豊かに変えていくことができるという、可能性への期待がこめられています。市民が地球規模で考え、地域で行動する、ささやかと見える活動の積み重ねが≪公正で平和な社会≫に貢献できる。過去の歴史から学び、二度と戦争を起こさないため、アジアの人々とのネットワークづくりをすすめ、平和な社会をめざした行動をすすめる。環境・人権・貧困等をテーマにしたビジョンを持っています。活動の4本の柱として、リユース・リサイクル環境事業、民際協力事業、政策提言活動、共育(ともいく)活動を掲げています。

 リユース・リサイクル事業は基本となる活動で、WEショップの運営のほか、携帯電話(携帯ゴリラ)・廃油などのリサイクル(WE油田)を進めて、身近なものから世界をのぞく活動ツールに活用しています。最近は特徴的な衣類のリユース・リサイクルの活用として、長野県、広島県などの県立美術館との連携や古布繊維を活用した若手芸術家とのコラボレーションで、市民が参加できる芸術活動への資材提供も行なっています。

 また、横浜近在の美術大学やでデザイン学院とは同じように芸術活動への資材提供行い、リメイク品のファッションショーや、定期開催のWEフェスタでの作品展示や販売を行い、福島県内の復興協力に共に協力しあっています。

 民際協力事業は、アジア地域で「people to people, local to local, coop to coop」のつながりをつくり、26カ国の70のプロジェクトに女性たちの自立のための協力活動や行い、フィリピン・ベンゲット州山岳地帯で自生するジンジャーから生産された「ジンジャーティ(生姜糖)」フェアートレード事業にも取り組んでいます。これらの交流活動を通じてそこから見えてきた環境や貧困、人権などの問題を市民とともに学んでいます。

 政策提言活動では、神奈川県における基地問題、原子力核問題等での調査と情報提供のリーフレット作成、脱原発社会に向けた、自然再生エネルギーへの転換をめざした神奈川県内の水資源と市民事業エネルギーの調査を進めています。さらに、日本に住み暮らす外国籍市民の子弟が抱えている教育問題の共有、3・11後の復興協力は、福島県いわき市の市民団体と連携で進めています。

 市民の声を集め、市民目線で共に学び合う。世界の環境破壊や貧困、人権、平和の問題に関心を持つ人を増やす。そのための講座、ワークショップ、スタディーツアー等の“場”の提供や各種キャンペーンを行う共育活動はWE21ジャパンの大きな特徴だと思います。WE21はこのWE21地域NPOの活動を更に推進するための研修や講座を開催して人材育成に努めつつ、世界で起きているさまざまな問題は私たちの暮らしとつながっているという視点から、各活動に取組んでおります。

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 少しずつ進化しています/していきます
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 多文化共生の地域拠点「みんな de Café」(平塚)、多目的活動拠点「スペースWEWE」(相模原)など、各地域NPOでも新たな拠点づくりが始まっています。WEショップの拠点活動は、単にリユースショップ事業にとどまらず、地域のおじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、お父さん、若者、子どもたち、孫たちとともにアジアやアフリカの人々と一緒に学びながら、平和のネットワークをつくること、それが世界と日本で同時に起こっている環境破壊や戦争の動きに対して「おかしい」という普通の人々の層を広げていくことにつながっていると思います。

 世界の中の一市民の小さい生活の大切さがつながることで、自分たちの地域の生活課題を見つけ、分かちあうことにつながります。それが戦争や社会的な不公正の犠牲になるひとの苦しみに共感を生み出し、その原因をつくりだしている私たちの社会を変えるための現実的な市民の集いの場として、WEショップは拠点機能を発揮してくれていると思います。

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 設立から15年たち、見えてきた課題
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 2013年はWE21ジャパン設立から15年目になりました。これまでの活動を振り返り、今後の活動発展のために年間を通じて4つの大きな事業を進めました。

 9月に開催した平和シンポジウムは平和を脅かす基地や核、オスプレイ問題を沖縄から、韓国から、神奈川からのゲストを招くことが出来、「へいわってすてきだね」をテーマに開催できました。大勢の市民の共感を呼び、市民に向けた平和フォーラム開催の役割が期待されていることを確認しました。

 10月に開催したフィリピンの女性たちを招聘したスピーキングツアーでは、ベンゲット州のNGO/NPOとの交流を通じた信頼関係と日頃のジンジャーティを通じたつながりの積み重ねが、平和な社会を築く一歩一歩だと実感しました。people to people という個と個の細い糸のつながりから、現地NGO/NPOとWE21地域NPOとのつながりに広がりに進んでいます。

 12月の環境フォーラムでは初めて国内の社会貢献型リユースショップが一堂に会し、互いに学び合うという貴重な機会を持ちました。情報共有の動きも始まり、今後のネットワークの広がりが期待されます。白書作成では、これまでの道筋を振り返ると共に、これからを展望することになりました。これらの15周年記念事業を通じて、今後の新たな方向性を確認できたことは、大きな収穫でした。同時にこの意志ある女性たちが始めた活動を次の世代にどのように受け渡しつないでいくかは、大きな課題でもあります。

 新たな展開を生み出しています。一つは東京への出店です。使用済み天ぷら油の廃油を回収してバイオ燃料などに再資源化する株式会社ユーズの呼びかけから、墨田区の「油田モール」に出店しました。知名度がない東京でのWEショップ運営には困難が伴いましたが、年度後半から地域市民の信頼感も広がり始め、これからの県外展開への足掛かりにしていきたいと考えます。

 さらに、地域NPOの認定取得があげられます。これまでたくさんの市民からの寄付品を寄付金換算するためのハードルが高く、認定NPO取得はWE21にとって厳しいと思われてきましたが、神奈川県の指定NPO法人制度により、認定への道が開けました。今年度は7つの地域NPOが認定NPO法人格を取得しました。これはWE21の活動に対し社会的な評価が得られた出来事だとおもいます。同時に、組織運営の適法化への責任を担うことになり、労務管理を始めとして、今後の組織運営の精度を高めていく必要が生まれています。

 最後に、日本の政治が右傾化する中で、市民活動の自由を守るために、WE21の姿勢を明らかにし、独自で声明を出すと共に、中間支援組織が呼びかけるさまざまな声明に賛同しました。また、原発再稼働への社会の動きや特定秘密保護法案については、市民活動団体として反対の声をあげ、アピール活動にも積極的に参加しました。特定秘密保護法案の制定に伴い、発言や行動を自主規制する団体や市民が増えることが予測されますが、憲法に保障された市民の権利を守るためにも、今後も、社会の動きに対して、NO!はNO!として発信する活動はさらに必要なのでしょう。

 (筆者はNPO法人・WE21ジャパン理事長)


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