アジアインフラ投資銀行設立の世界的意義

アジアインフラ投資銀行設立の世界的意義

凌 星光


 4月15日、中国財政部はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創始メンバー国は57カ国で確定したと発表した。域内国は37カ国(中東10カ国、中央・西アジア6カ国、東南アジア10カ国、南アジア6カ国、東アジア・オセアニア5カ国)で、域外国は20カ国(ヨーロッパ18カ国、アフリカ1カ国、中南米1カ国)。常任理事国では中、仏、英、ロ4カ国が参加、先進7カ国では英独仏伊の4カ国が参加、G20では14カ国が参加、国際金融機関として全く遜色ないメンバーが集まった。
 AIIBは習近平国家主席が2013年10月にインドネシアで提唱し、約1年間の準備を経て、2014年10月24日、21カ国が設立覚書(MOU)に署名した。2015年3月末までに申し込んだ創設メンバー国は57カ国に達し、6月末までにこれら創設メンバー国の協議を経て定款が作成される。年度後半に銀行スタッフの募集も含めた組織作りが行われ、年末までに貸出業務が展開される。予想を遥かに超えた創設メンバー国及びその進展の速さに世界は驚きの目で注視している。本論文は、中国の「一帯一路」戦略及びAIIB設立が提起された背景を論じ、主要国のAIIBへの思惑と態度を分析し、AIIB誕生の世界経済と既存国際金融システムへの影響を考えてみる。

====================
 一、中国の「一帯一路」戦略とAIIB
====================

 習近平は2013年に「一帯一路」構想を打ち出し、同時にAIIB設立を提案した。「一帯」とは中国をスタート地点として、中央アジア5カ国を通ってさらに西へ延び、終点を欧州連邦(EU)とする「新シルクロード経済ベルト(帯)」を指す。「一路」とは中国の東海岸にある福建省や広西チワン族自治区をスタート地点として、東シナ海、南シナ海、インド洋を通って、中東やアフリカに向かい、やはり終点をEUに置くもので、新シルクロード海路のことである。この広大な建設計画を資金面で支えるのがAIIBである。では、このような構想が打ち出された背景にはどのような要因があるのであろうか。

◆ 1.中国経済の質的転換を図る国内事情

 現在、中国経済は二桁の高度成長から一桁の中高速度成長に転換する過渡期にあり、多くの過剰設備を抱えている。それを国内経済の範囲で解決しようとすると多くの困難を伴い、周辺諸国の経済建設に活用しようという思惑がある。過去30年間、高速道路、高速鉄道、港湾・空港、エネルギー開発など経済発展に必要なインフラ整備の能力が急速に高まった。その経験を活かして、陸海シルクロード地域の経済基盤を固め、更に生産財や消費財など製造業の移転も図り、中国と周辺諸国との経済貿易を更に発展させようとするものである。これは戦後日本が経験し、中国がそれに学び、今後はそれを更に周辺諸国に伝播させようというのである。

 中国経済は発展方式の転換、つまり量的発展から質的発展への転換、産業構造の第一次、二次産業から第三次産業への転換、労働集約型産業から技術集約型産業への転換などが新しい課題となっている。このような転換を国内経済だけでなく、周辺諸国経済との一体化を図りつつ成し遂げようとしている。それは国際収支における大幅な黒字及び4兆ドルに及ぶ外貨準備高という対外経済バランスの回復とも関連している。
 1986年に前川春雄、大来佐武郎氏らがまとめた前川レポートは、内需主導型成長への転換、対外経済アンバランスの是正、規制緩和の徹底的推進、金融資本市場の自由化と円の国際化、積極的産業構造の転換、海外直接投資の推進、発展途上国からの輸入促進、経済技術協力の推進などを謳っている。改革開放政策をとって間もない中国は、当時、日本のこの政策転換で大きなメリットを受けた。現在、中国政府の打ち出した「一帯一路」構想とAIIB設立は、当時の日本に次いで、発展途上国の経済発展に貢献しようとするものである。

◆ 2.中国外交の受動性から主導性への転換

 毛沢東時代は西側諸国と対決する革命外交であった。小平時代に入ってからは、国際協調外交に転換し、既存の国際経済政治機構の合理的な面は謙虚に学び、不合理、不公平な面は時間をかけて改革していこうということになった。過去30年間余りは貧困から抜け出すこと、先進国に学ぶことが主要課題であった。外交面においても自己主張は抑制し、専ら自国の国内建設に努めてきた。
 ところが、2007年の世界金融経済危機を境にして、中国の存在感は急激に高まり、今までの内向き志向、受け身の姿勢では対応できなくなった。国際的責任、国際的公共財の提供を求められるようになったのである。以来、7−8年の試行錯誤を経て、より積極的な外交を展開する政策体系が出来上がった。それが集中的に現れているのは、昨年11月に開かれた外事工作会議である。

 習近平はこの会議で行った講話の中で、次のように語っている。1)協力ウイン・ウインを核心とする新型国際関係を構築する、2)「実務的協力を強化し、一帯一路の建設を積極的に推進していく」、3)「中国的特色のある大国外交」、「中国の特色、中国の風格、中国の気迫」ある外交を展開していく、4)「国際秩序の係争の長期性を十分念頭に入れ」、「国際的公平と正義を守り、広範な発展途上国のために発言していく」、5)「多国間外交を展開し、中国と広範な発展途上国の発言権を強めていく」。これらの発言から言えることは、「一帯一路」構想及びAIIB設立は、「中国的特色のある大国外交を展開する」重要な手段でもある。

 思えば、1980年代半ばに、小平が既存の国際政治経済秩序の発展途上国にとって不合理、不公平な点を改革していこうと呼びかけたことがある。しかし、先進国が絶対的優位を占めていた当時において、この呼びかけは国際社会で殆ど相手にされなかった。30年後の今日においては、中国をはじめとする新興国が経済成長し、先進国との差を縮めてきた。AIIBに欧州の先進国を含む57カ国が加盟したことは、この変化を如実に示している。

◆ 3.ユーラシア大陸への文明回帰:海洋時代から海陸提携時代へ

 文明史から見た場合、ユーラシア大陸は人類文明の発祥地であった。エジプト文明、メソポタミア文明、インド文明、黄河文明の四大文明はユーラシア大陸から起こった。そしてこの四大文明は、千数百年にわたって、陸のシルクロードと海のシルクローで結ばれていた。ところが近代になって航海術が発展し、ヨーロッパの大航海時代が始まり、海洋時代がやってきた。ユーラシア大陸の内陸部は後れを取るようになり、ヨーロッパ帝国主義による植民地化の影響もあって、世界政治の中で全く日の目を見ることができなくなった。
 中国は大陸国家であると同時に、長い海岸線を持つ海洋国家でもある。500年前に明の鄭和は7回にわたって大航海を行い、東南アジアばかりか、インド・中近東、果ては東アフリカまでその航海を広げていった。海のシルクロードの開拓者であったと言える。鄭和の大航海はヨーロッパの大航海より百年早かったが、清の時代には鎖国政策がとられ海の交流は途絶えることとなった。そして清国自身が半植民地化され、国力は衰退の一途をたどっていった。中国の海洋進出は完全に閉ざされ、中国近海も西太平洋も、長い間、日本及びアメリカのコントロール下にあった。

 今世紀に入って、中国の科学技術の発展は目覚ましく、造船技術も近代化が進んだ。近年、中国は海洋進出が目覚ましく、500年前の海のシルクロードを再び復活させようとしている。それは「協力ウイン・ウインの新国際関係」をつくるためで、決して覇権を求めるものではないと言明している。しかし、近代国際政治は覇権の交代であり、中国の海洋進出はアメリカの覇権に挑戦するものと見られがちである。「一帯一路」を実行していく中で、人類運命共同体理念を体現し、徐々に国際的信用を得られるようになっていこう。
 高速道路、高速鉄道の発展によって、ユーラシア大陸に横たわる砂漠や山脈も人類の交流を妨げるものではなくなってきた。北の陸のシルクロードによって、ユーラシア大陸の東西両文明が融合していく条件が今までになく整ってきた。アメリカ大陸文明からユーラシア大陸への文明回帰が進む。世界は海洋時代から海洋・大陸提携時代に入りつつある。中国は地政学的に有利な位置にあり、「一帯一路」構想はそれをフルに活用しようとするものである。

◆ 4.発展途上国主導の国際金融機関設立の必要性

 2013年の新興国・途上国の投資額(総資本形成:設備投資、公共投資などの合計)が、先進国の投資額を上回った。GDPの規模でみると、先進国と新興国・途上国の割合はまだ6対4であるが、投資規模は後者が前者を上回ったのである。世界銀行のデータをもとにした試算によると、2014年には貯蓄額でも新興国・途上国が先進国を上回った。それは主として新興国、とりわけ中国の貯蓄率が高いからで、国内だけでは消化しきれないとなれば、当然、中国の投資が国外に向かうことになる。これからは、先進国からばかりでなく、中所得の新興国から低所得の途上国への直接投資も増加すると見られている。(日経、5月11日)
 ところが現実の国際金融は、完全に先進国、とりわけアメリカに牛耳られており、新興国や発展途上国の意見は反映されにくい。2008年、先進国と新興国が参加したG20会議が開かれるようになり、新興国の意見も若干反映されるようになった。2010年のIMF総会で新興国のシェアを増やすことが決まり、既存の国際金融組織が健全なる発展を遂げるのではないかと期待された。しかし、IMFで一票拒否権を持つアメリカの議会がイェスと言わないため、今に至っても実行されない。そのため、多くの新興国及び発展途上国は既存の国際金融機関に強い不満を抱いている。

 日本が主導するアジア開発銀行(AIB)は、設立当初、発展途上国の経済発展を支えることによって、日本経済の発展及び世界経済の発展に寄与しようという理念を持っていた。ところが米国に疑念の目で見られ、米国にすり寄るほかはなかった。アメリカの支持を得られるようになったお蔭で、日本の独自性を十分に発揮することができなくなってしまった。つまり、アメリカの意に沿うものとなったために、当初の理念は形骸化してしまったのである。そこで融資対象国は、アメリカの言う通りにならない、発展途上国が主導する国際金融機関が誕生することを期待するようになった。
 多くの発展途上国が創設メンバー国としてAIIBに参加したのは、正にこのような要望に応えたからであった。今年4月にトルコで開かれたG20会議で、議長国トルコのババジャン副首相は17日の記者会見で、米日などに配慮して「G20全体ではAIIBを取り上げていない」が、「トルコとしては歓迎する」と語った。また24ヶ国の新興国や途上国で構成する「G24」は16日、「われわれはAIIBの設立を楽しみにしている」との共同声明を発表した。(読売、4月19日)

◆ 5.中国主導の国際金融機関AIIBの設立

 AIIBは年内設立を目指して、創設メンバー国の57カ国が組織の枠組み作りを協議する代表者会議が4月末に北京で開かれた。続いて、5月下旬にシンガポールで開かれ、投票権を左右する出資比率が決まる。中国はこの二回の会議で設立協定の合意に持ち込み、6月25日に北京で調印する予定となっている。金立群をトップに協定原案の策定を担当する準備事務局が設置されているが、そこには米国人の世界銀行元顧問弁護士ら複数国の専門家20人以上が加わっているとのことだ。(読売、4月16日)
 現在、1)出資比率の基準となる経済規模は、各国の名目国内生産と購買力平価ベースのGDPを6対4の割合で反映して算出してはどうか、2)アジア域内の出資比率を75%にするか70%にするか、3)英国、ドイツ、フランスなど20カ国近くが参加した欧州勢に理事12人の3ポストを与えるか、それとも4ポストを与えるか、4)理事を本部に常駐させるか、それともメールなどで持ち回り決議を行う「非常駐」方式にするか、5)参加国が予想より多くなったため、発足当初の資本金500億ドルを1000億ドルに引き上げたらどうか、などが議論されるテーマとなっている。(日経、5月16日)

 AIIB参加国が57と初期の予想を大きく上回ったため、様々な問題を取りまとめるのは極めて大変で、今後、多くの難題に直面することを中国は覚悟している。石建勲氏は「AIIBは任重く道遠し」という小論を発表し、「AIIBの『友達圏』はますます大きくなったが、ここではっきりと認識すべきは、創設メンバー国が確定したことは『万里長征』の第一歩を踏み出したに過ぎず、未来に向けてのAIIBは任重く道遠しである」(人民日報、4月16日)と述べている。
 中国には既存の国際金融システムを改革発展させようとする長期目標があり、AIIBでの中国主導を有名無実化しようとする動きには断固として反対するであろう。とりわけ先進国欧州勢メンバーが外部の日米と連絡をとって中国主導を妨げるのではないかと警戒している。これは譲れない一線であり、一部の先進国が6月末の調印を見合わせるような事態が起こったとしても、それは想定内であろう。

===================
 二、主要国のAIIBへの思惑と対応
===================

 AIIB設立に当たって、昨年9月の21カ国参加も予想を上回るものであった。それが3月12日の英国の参加表明によって、ヨーロッパ諸国参加の雪崩現象が起きた。その結果、先進国の加盟を阻止しようとしていたアメリカと日本が逆に孤立するという羽目に陥った。この誰もが予想しなかった現象が起きた原因はどこにあるのだろうか。ここで主要国の思惑と実際にとった行動を見てみよう。

◆ 1.米国の行政部門と議会の矛盾

 米政府内では当初から様々な意見があったようだ。元政府高官は「ホワイトハウスの数人の強硬派の意見が強く、財務省や国務省とうまく連絡がとれていなかった」と指摘する(朝日、4月1日)。つまり、行政部門内部でも完全に意見が一致していたとは言えない。それに加えて、議会は断固として反対する頑固派だ。オバマ政権がAIIB設立に一定の理解を示していたとしても、議会が反対するので米国の参加は不可能である。こうした錯綜した矛盾の中で、アメリカはどのような思惑でどのような対応をしたのであろうか。

 先ず、昨年10月に21カ国が覚書に調印する前は、同盟国の韓国やオーストラリアに参加しないよう圧力をかけた。ところが、11月APEC会議で長時間の米中首脳会談が行われ、習近平がオバマにAIIBは決して既存の国際金融システムに挑戦するものではなく、補完するものであることを理解して欲しいと働きかけた。そこで一定の内部協議を経て、今年の1月7日、シーツ米財務次官が高い国際基準を満たすのであればAIIBの設立を歓迎するという小論を発表した。その後、2月27日、シャーマン国務次官が講演の中で、再度、AIIB歓迎の意を表した。AIIBの設立は避けられないと見て、オバマ政権は米中関係の大局的見地から反対の度合いを弱めたのである。
 それが英国の3月12日参加表明をもたらし、ドイツ、フランス、イタリアの加入が続いた。米国はこのような事態が起きることを予期していなかったようで、英国を強く非難することとなった。しかし、今やどうしようもなく、米国は日本と共に外部から影響を与え、英独仏伊は内部から意見を出し、AIIBを国際基準順守の方向に導くということとなった。

 米財務省のシーツ次官は22日、「米国は国際金融の枠組みを強化する新しい多国籍の金融機関を歓迎する」と語り、「世銀やアジア開発銀行などの既存の国際金融機関との共同事業は質の高い基準を維持することに繋がる」として、米国が主導する世銀などを通じ間接的に協力する姿勢を示した(朝日、3月24日)。この発言は米国が反対から、止むを得ず容認に変わったという見方が中国や海外で言われているが、実際には1月7日当時の本人の発言と殆ど変らない。何れにしても、アメリカ政府は米中関係の重要さが分かっており、AIIB設立に断固反対するという姿勢ではない。

◆ 2.英国の短期的及び長期的思惑

 G7は昨年夏、AIIBが一定の基準を満たなければメンバーに加わらない方針で合意し、水面下で統一基準作りに入った。ところが今年2月下旬、英政府内で5月の総選挙をにらんで経済成長を重視する声が優勢となり、AIIB参加に傾いていった。欧州の結束が乱れることを懸念したドイツが必死に英国を説得したが、英国は最終案を受け入れず、3月12日、AIIB加盟を表明した(読売、4月13日)。英国が米独の反対を押し切って決断した背景には、選挙対策としての思惑以外に、次の二つの理由があった。
 一つは国際金融面での利益確保である。資本主義の発祥地イギリスは、今や製造業は全く衰退し、イギリス経済は多分にロンドンの金融街に依拠している。海外に分布するシティーバンクの金融収益は膨大なものであり、その利益を持続的に確保するには、これからますます成長していく中国をはじめとするアジア諸国に傾注せざるを得ない。イギリスの経済利益確保、これが短期的要因としてイギリスの決断を促した。オズボーン財務相は「雇用を増やすには、中国のような高成長を遂げる国へ輸出を増やすことが重要」と語り、欧米主要国で初めて中国の通貨人民元建て国債を発行することや、外貨準備の一部を人民元で持つことも決めた。(読売、4月16日)
 もう一つ長期的戦略として、国際通貨政策調整がある。王義危氏は「英国はなぜ中国の勃興を抱擁するのか」の小論を著し、「プラグマティックな英国は金融サービス業の支柱産業であり、AIIB創設メンバーとなることの、将来の国際金融局面での地位と意義」をよく理解しており、更には「第二次世界大戦終結の前夜、英国が出したケインズ案がホワイト案に否定され、ポンド国際金融システムがドル主導のブレトンウッズ体制に取って代わられた」という歴史を忘れていないと論じている。(人民日報、3月14日)

 著名なケインズは国際共通通貨を創出して戦後国際金融秩序を打ち立てるよう提案した。これは科学的、合理的であると同時に、英国の国際金融ノウハウを活かせることができ、国益にもかなっていた。他方、ホワイト案はドルを中心とした国際金融システムを主張した。結局、ケインズ案は拒否され、現在のドル覇権の国際金融システムが形成された。1960年代後半、ドル中心の国際金融システムは行きづまり、国際共通通貨SDR(特別引き出し権)が考案された。しかし、ドル中心の変動相場制が定着し、ドルの垂れ流しによる国際金融の膨張が続いた。2007年の国際金融経済危機は、正にこのような土台無き金融システムの脆弱性を露呈したものであった。
 2008年中国中央銀行総裁の周小川氏はSDRのような国際通貨を重視し、ドル中心の国際金融システムを改革すべきだと主張した。これは基本的にはケインズ案であり、英国としては賛同できるものである。英国の利益のために、過去70年間、米英協調によってドル国際金融システムを支えてきたが、今や時代は大きく変わって、SDRの時代がやってくる。「勝ち馬」の中国に便乗して新国際金融システムを構築し、英国の国益を持続的に確保していこうというのが、英国の長期的思惑なのである。

◆ 3.ドイツの中国・EU協調戦略

 英国が3月13日に加盟を決めたことにドイツは大きなショックを受けた。オズボーン財務相の声明から5日後の3月17日、独財務相のショイブレはベルリンで中国側副首相馬凱氏と向き合い、AIIBへの出資を盛り込んだ21項目に及ぶ経済協定に署名した。ショイブレ財相は「長年の経験を役立てたい」と申し出た。EUの「盟主」ドイツの加盟に続いて、フランス、イタリアなど欧州のユーロ加盟国が雪崩を打って参加を表明した。
 新聞報道によれば、EUはすでに昨秋から、AIIBへの参加を水面下で議論してきた。「資金負担はどの程度になるのか、透明性は確保できるか」、ブリュッセルのEU本部で、時には激論が交わされたという。「頭ごなしに拒否する意見はなかった」「米国への配慮」という視点は薄く、オーストリア財務相のシェリングは「参加するかどうかは自分で決めた」と明かしている(日経、4月16日)。欧州勢はそれぞれインフラ事業に強みを持つ有力企業が多く、中国市場でしのぎを削っている。自国の企業が不利にならないよう、独仏伊も参加を表明したのである。

 ドイツはメルケル女史が首相になって間もないころ、ダライラマと会見したため、一時、中独関係は悪化した。それを教訓に、中国の核心利益を尊重する、ダライラマとは二度と会わないと約束し、中独関係は速やかに改善し、ますます緊密な関係を築いていった。日中関係のぎくしゃくをこれ幸いと、得意とする製造業の対中進出を強めていった。1980、90年代には中独貿易は終始、日中貿易の25%程度であったが、現在では57%と60%近くにまで迫っている。この製造業の強い協力関係をバックとして、ドイツはフランクフルトのユーロ本部を中心に人民元の国際化に協力していくとしている。
 EUはギリシャ債務問題などさまざまの経済問題を抱えているが、中国はそれに協力的姿勢を見せ、国際通貨面での中国とEUとの関係を強化し、ドル一極体制の改革を共に推進しようとしている。ドイツもまた、英国に倣って[勝ち馬]に乗ろうとしているのである。

◆ 4.ロシア及び域外ブリックスメンバー国が参加

 当初、中国は域外ブリックスの参加を予定していなかった。が、欧州先進国が雪崩を打って加入してきたことから、急きょ、ロシアや域外ブリックスメンバーの加入を促したと思われる。ブラジルと南アフリカの加盟は3月末の期限まで、全然、話題に上っていなかったが、最終認定が行われる4月15日というこの僅か半月間に、突然、加入が決まったことからその切迫性が伺える。中国側の思惑には、先進国主導への防御措置と「ブリックス新開発銀行」の設立促進があったと思われる。

 ロシアは中国と共にブリックスの代表格であるが、中国の影響力が強まりすぎることへの警戒があった。だが、ウクライナ問題で先進諸国の経済制裁を受け、経済的に大変困難な状況にある。先進国の経済制裁に対抗するためにも、またIMFや世界銀行が米欧主導になっていることに対抗するためにも、更に中国が進めるシルクロード経済ベルト構想に参加して中国の突出した経済力を活用するためにも、AIIBに加わった方がよいということになった。
 ブラジルと南アフリカが続いて参加を決めたのは、ブリックスの新開発銀行の発足を促すためであろう。上海協力機構の開発銀行とブリックスの新開発銀行は、中国のリーダーシップが発揮しにくく、一時期、思うような進展を見ることができなかった。AIIBが急速な進展を見る中、ブリックス新開発銀行もその影響を受けて、割合スムーズに進むようになった。本部の所在地は上海浦東地区に決まり、初代総裁はインド、その後はブラジル、ロシア、南アフリカ、中国の順で回すことになった。7月初めにロシアで開かれるブリックス首脳会議で新総裁ら経営陣が正式に任命され、年末にも運営が開始される。AIIBの経験を新開発銀行に活かす、また後者の経験を前者に活かすという相互促進の関係が築かれる可能性が出てきた。

◆ 5.日本の拒否反応と対応の立ち後れ

 以上見てきたように、アメリカも含めて、時代の流れに順応し、程度の差こそあれ、前向きの姿勢を示してきた。ただ日本だけは例外であった。中国の加入勧誘に対して終始拒否反応を示してきた。
 中国側は、AIIBの臨時事務局長で初台総裁と目されている金立群氏が木寺昌人大使を訪ね参加を要請し、2014年5月のADB総会では国際協力銀行総裁渡辺博史氏に「日本にもAIIBに是非、参加して欲しい」と話しかけた。6月には金立群一行が訪日し、東京で古沢満宏財務官と会って参加を促した。しかし、日本の拒否反応は変わらなかった。そこで、欧州の国々に働きかけ、今年2月ごろからその手ごたえを感じるようになった。それでも、日本の早期加入に期待をかけていた。それは、楼継偉財政相が3月7日の記者会見で「欧州の一部の国が参加の意向を示している」「比較的大きな国も含まれる」、しかし「すでに参加表明している27カ国の総意として、まずは域内の国を優先する」、欧州など域外からの参加については「しばらく待っていただく」と述べたことに表れている。

 3月12日、イギリスが加入し、5日後にドイツ、フランス、イタリアが加入の態度を表明したとき、日本は大きなショックを受けた。自民党のある中堅議員は「中国の銀行に先進国は参加しないという希望的観測にもとづいて情報を集め、対中強硬を好む官邸の意向を忖度して、議論を避ける空気があった」と反省している(朝日、4月12日)。また、日経は社説で「G7のうち4か国が構想支持に回り、先進国の日米欧と中国が対峙するという構図は完全に崩れた。流れが変わった以上、現実的な目線で中国の構想と向き合うべきではないか。AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出して行く道があるはずだ」(3月20日)と姿勢の転換を求めた。
 しかし、日本の政府及び世論の大勢は、引き続き静観すべきというものである。原因は次のような諸点にあろう。1)「日本はアジア第一」の優越感があり、中国主導のAIIBに入りたくないという心理的要因、2)安全保障面での対中国警戒感を煽ってきた手前、やすやすと加入するわけにはいかない、3)アメリカ主導の国際金融システムへの信仰が依然として続いている、4)中国は経済的にも政治的にも大きな問題を抱えており、AIIBはそのうちに行き詰まると見る。日中関係は歴史認識問題や尖閣諸島問題など複雑な政治的要因があって、経済的利害関係だけでは済まない。経済的には日本が早期に加入すべきだと分かっていても、世界の流れに逆らう現在の対応が、今しばらく続かざるを得ないであろう。

========================
 三、AIIBの世界経済と国際金融秩序への影響
========================

 本論考の初めの部分で1986年の前川レポートに触れ、中国が今同じような問題に直面していると述べた。当時日本は発展途上国と先進国の橋渡しをしようとする意欲に燃えていた。ところが、アメリカの支持を得られず挫折した。中国も同じような運命をたどるという見方が日本では強く存在する。しかし、中国と日本とは次の点で異なるため、アメリカと上手くやり合って、世界経済と国際金融システムに大きな影響を与えていく可能性が高い。1)安全保障面で米国に従属しておらず、自主的決定をなすことができる。2)経済潜在力と実力は米国を凌駕することができる。3)協商民主の政治制度は効率的且つ戦略的であり、アメリカの一極体制打破に柔軟に対応できる。ではどのような世界的影響を及ぼすのであろうか。

◆ 1.擬制経済から実体経済への転換

 前述したように、1960年代後半にドルを中心とした国際通貨体制は危機に瀕し、SDRが誕生した。しかし1973年以降、金を後ろ盾としない変動相場制が採用されることになり、ドル札は米国一国の一存で大量に刷り発行できるようになった。その結果、投機資金があふれ、お金は実体経済に回らないで、マネーゲームに奔走する状況が生まれた。オイルダラー、日本や中国の外貨準備は、その多くがアメリカの国債を購入し、米国国際収支の巨額の赤字を補填した。それが米国の擬制経済を膨張させ、2007年の国際金融経済危機に繋がった。新自由主義の影響を受けた世界的金融の自由化も、マネーゲームを助長する役割を果たした。国際金融制度において、市場原理の働く金利メカニズムの構築は必要だが、金融の自由化であってはならない。

 日本は1990年代にアメリカの圧力を受け、金融の自由化を進めた。その結果、バブルが発生し、その崩壊と共に[失われた20年]を体験することとなった。中国も新自由主義の影響を受けたが、政府の役割を放棄したことはなく、金融の自由化にはずっと慎重な姿勢をとってきた。2007年の世界金融経済危機が発生してからは、新自由主義の危険性をはっきり認識し、金融は実体経済に奉仕しなくてはならないというテーゼを提起した。胡錦濤国家主席は国際的首脳会議でもはっきりとこのテーゼを提示し、国際金融システムの改革を訴えた。
 中国は1990年代後半、とりわけ今世紀に入って急増していく外貨準備について、当初、どう活用したらよいか分からなかった。日本と同じく、米国の国債を購入していった。それは実体経済と関係のないところでマネーゲームに利用される可能性が多分にあった。中国の余剰資金を如何に運用するか、如何に実体経済に投入するか。この問題に応える形で生まれたのが、世界のインフラ整備に投資するという方針であった。インフラが整備されれば、周辺のモノと人の流れが活性化し、需要と供給が拡大していく。つまり、AIIBは「域内の相互アクセスを加速化し、内生的発展能力を高め」、実体経済の発展を促す。それは、世界の余剰資金が擬制経済から実体経済に回る大転換を引き起こすきっかけになり得る。

◆ 2.世界経済の好循環形成に貢献

 先進国には余剰資金や余剰設備があるにもかかわらず、経済的社会的条件が大きく変わり、利潤を生む投資分野はますます狭くなっている。少子高齢化社会に入っている日本などは、潜在成長率が低く、ゼロ金利状態が長期にわたって続いている。他方、発展途上国は潜在成長力が高いにも拘わらず、資金不足で経済が発展しない。経済的貧困が社会の安定を崩し、経済の発展を阻む。このような悪循環を断ち切るためには、国際協調の資金援助が必要であり、その投資先はまずインフラ整備である。
 南北問題の解決が語られて久しいが、多くの地域で格差がなかなか縮小しない。ただ、東アジアにおいてはアジアニーズや中国などの例外があり、低所得国から中所得国に発展し、シンガポールや韓国など先進国になった国もある。先進国へのキャッチアップに成功した国、及び成功しつつある国がその経験を総括した結果、最も重要なことはインフラ整備による経済発展環境の整備であることが分かった。即ち、先進国経済と発展途上国経済を結びつける要はインフラ整備にある。新興国は、その要に力を注入することによって、先進国経済、新興国経済、低発展途上国経済間の好循環を形成する役割を果たすことができる。「アジア資本の利用効率を高め」、「世界の総需要を拡大し、世界経済の成長を促す」ことになるのである。

◆ 3.既存の国際金融システムの改革促進

 前述した如く、既存の国際金融機構は欧米に牛耳られ、往々にして先進国の利益本意、とりわけ一票拒否権もつアメリカの利益本意の運営がなされる。AIIBを設立する目的の一つは「国際通貨システムの改革を促す」ことにある。現に、AIIB参加国が57カ国になったということで、IMFへの改革圧力とADBへの改革圧力が大いに高まった。
 今年4月にワシントンで開かれたG20財務相会議で、IMFの改革後れに不満が噴出し、2010年の新興国の出資比率を高める改革案を是認しないアメリカ議会への批判が高まり、「米国抜き改革案」を主張する声さえあった。G20共同声明には「IMF改革の進捗が遅れ続けていることに深く失望している。米国に可能な限り早期に批准するよう強く促す」という文言が入れられた。また、5月2日に開かれたADB年次総会では、新興国の出資比率を高めること、各国の事務所に企画から実行までの決定権限を委譲し、審査期間を2年から半年くらいに短縮することなどが議論された。

 AIIBがまだ発足していない段階で、すでに競争が始まっている。日本は、中国にはノウハウがない、信頼が置けない、透明性に欠けるなどを口実に、アメリカと共に参加を拒否しているが、タイ財務相ソンマイ氏は次のような厳しい言葉で批判している。「AIIBの設立は、ADBの官僚主義的な部分を取り除くのに役立つ」「日米が参加すれば、AIIBがより良いものになるとは思わない」「国際金融の競争を歓迎する」。(読売、5月13日)
 中国の指導者は再三にわたって、「AIIBは既存の国際金融機関に挑戦するものではなく、それを補完するものである」と語っている。また中国人民大学金燦栄教授は、現行国際基準を90%継承し、後の10%は改善を図るとしている。中国の楼継偉財政相は3月20日、国営新華社に答える形で次のように語った。「AIIBは既存の国際機関の運営体制や環境政策などの経験を十分に学ぶが、それと同時に既存の国際機関が通ってきた回り道を避け、低コストで効率の高い運営を目指す」。(日経、3月21日)
 中国の既存の合理的な点は継承し、一票拒否権のような非合理的な点は改革していく。このような姿勢は、発展途上国ばかりでなく、欧日の賛同も得られるはずだ。日本や欧州ができなかったことを、中国は敢えてやろうとしているのである。

◆ 4.発展途上国の発言権拡大と共通通貨体制への移行

 前述した如く、習近平は中国及び発展途上国の発言権を強めていくと宣言した。これは一部の人が言うように夢物語ではなく、現実味のあることなのである。20−30年後には、経済規模は中国が世界一、インドが世界第二になると見られている。その二大潜在経済大国の間には、イギリス帝国が残した国境問題が存在するが、経済協力を強めて発展途上国の発言権を強めようとしている。AIIB出資比率について、40%は購買力平価のGDPで計算するというのは、インドへの配慮である。先進諸国の中には、中国の台頭を抑制するために、インドを中国と対決させようとする計略が練られているが、それは失敗に終わるであろう。
 新興国と発展途上国の発言権を拡大するということは、先進国の持つ優位性を否定するものではなく、先進国主導の国際金融システムを国際協調主導の国際金融システムに変えていこうというのである。ここで大変注目されるのは、今年後半のIMF理事会で人民元がSDRの構成通貨になれるかどうかである。

 SDRはIMFが加盟国の準備資産を補完するために1969年に創設した一種の合成通貨である。外貨不足の国はSDRと引き換えにドルなどを入手できる。現在、この合成通貨は、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円で構成する通貨バスケットで価値を決められる。何れも先進国の通貨である。5年毎に経済情勢などに応じて構成通貨を見直すことになっている。今年はその見直しの年で、中国人民銀行の易網副総裁は、「人民元がSDRの構成通貨に加われば、国際通貨システムの改革にとっても有益だ。IMFは人民元の国際化の進展を十分考慮し、遠くない将来に人民元をSDRに加えて欲しい」と語った。2010年にも人民元の採用が議論されたが、取引の自由度が十分ではないとして見送られた。
 2014年12月の世界の資金決済に占める人民元建ての比率は2.17%と、2.69%の日本円に迫る第五位に浮上した。2年弱で1.5ポイントも上がり、世界13位から5位に上昇し、数年内に日本を追い抜くと見られている。中国経済の規模の拡大に加え、中国政府が国際的な貿易や投資に人民元を使えるように規制緩和を加速しているからである。(日経、3月16日)

 楼継偉財政相は「AIIBは発展途上国が中心の国際機関であり、途上国のニーズをより考慮する必要がある」と述べ、既存の枠組みとの違いを強調した。人民元がSDRの構成通貨になれば、中国が発展途上国を代表して発言する重みが大幅に増していく。AIIBは人民元の国際化を促し、国際通貨としての存在感を増していく。その結果、SDRの構成通貨となり、人民元の国際的地位をさらに高めていく。AIIBは当面、ドル建てで計算されるが、人民元の国際化が進むにつれて、人民元建てを普及していくとしている。ドル一極体制はSDR共通通貨体制に徐々に移行していくことになろう。

◆ 5.近代国際政治のパラダイムの転換

 ドル一極通貨システムがSDR共通通貨システムに移行するということは、経済分野にとどまらず、政治外交安全保障分野にまで改革が拡大していく。習近平は昨年5月にアジア相互協力信頼醸成措置会議で、「共同、総合、協力、持続可能の安全観」を提起した。通貨体制の政治学者のイアン・プレマー氏は「中国主導の枠組み作りが成功すれば、米国主導の国際秩序を弱体化させることに繋がる。長期的に見れば、自国の基準を変えなければならなくなるのは米国だろう」と述べ、危機感を表した(朝日、4月1日)。アメリカ主導の軍事同盟を軸としたパワーポリティックスの安全保障体制は、国連を中心とした敵のない共同の、伝統的安全分野ばかりでなく非伝統的安全分野も含めた総合の、対決し合うのではなく協力していく、一時的でない持続可能な21世紀型安全保障体制に移行していく。近代国際政治のパラダイムの転換である。

 もちろんこれは一朝一夕にして為し得るものではなく、30年、50年、或いは更に長い期間を必要とするかもわからない。しかし中国的特色の社会主義を提唱する中国が、国際政治の主要舞台に出てきたことは、世界政治経済に大きなインパクトを与える。オバマ大統領は4月17日の記者会見で、米国が国際的ルールを築かなければ、「中国が(自国の)企業や労働者に有利となるルールを確立する」と述べ、日米主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を推進する必要性を強調した。しかし、中国はASEAN10+1(中国)からRCEP (東アジ地域包括的経済連携)、RCEPからAPEC(アジア太平洋経済協力機構)、APECからFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の道を考えている。中国を排除しようとしているTPPについては、殆ど無視する姿勢をとっている。
 「日本にとって気がかりなのは米国主導のTPP交渉の参加12カ国のうち、5か国がAIIB参加を表明し、オーストラリアとカナダも参加を検討していることだ。中国がTPPへの対抗手段として重視するRCEP構想の交渉参加国16カ国で見ると、日本を除く15カ国がAIIBに参加を表明または検討している。中国はTPP陣営の切り崩しに成功し、貿易・サービスと金融という経済の両輪で日米を脅かしている。」(日経、5月25日)こういった低次元の論調は、今起きている国際政治の地殻変動に全然気づいていないことを示している。

========
 結びに代えて
========

 李克強首相は河野洋平氏に、3月末で創設メンバーの受付を締め切ったAIIBについて、「後から参加した国が発言権を得られないわけではない」「アジア開発銀行の歴史と経験も学びたい」「ある国が他の国を飲み込むことはない」と説明し、日本の参加に期待を示した(日経、4月15日)。日本が6月末に参加を決定するかどうかはまだ分からない。しかし、既存の国際金融秩序の欠陥を最もよく知っているのは日本であり、それを改革しようとして失敗した経験を持つ。中国の国際金融秩序を改革しようとする意気込みを心から支持する国は日本のはずだ。
 中尾武彦ADB総裁は、「中国はインフラ事業での入札のルールや物資の調達方法などを照会してきた、経験やノウハウ、専門的な知識を中国側と共有し始めている、実際に設立されれば、AIIBとの協力は考えられる」と語っている(日経、3月17日)。日本が旧い政治思考方式から脱皮して、真に中国の目標を理解する時代、AIIB加入または協力関係強化を通して、日中両国が協力して国際金融秩序の改革を促進する時代が、そう遠くない将来において必ずやってくると信じたい。  2015年5月18日

 (筆者は(社団法人)日中科学技術文化交流センター理事長・福井県立大学名誉教授)


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧