アメリカのBSE

◇覆い隠されたアメリカの「狂牛病」    John Stauber and Sheldon Rampton 「アース・アイランド・ジャーナル」1996年夏号

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 数年間、合衆国農務省と食品医薬品局、それに何十億ドル規模の動物家畜産業 は、互いに協力し合って、アメリカの動物や人々にとてつもないリスクを与え ていることをひた隠しに隠してきた。

 英国での狂牛病の勃発に先立つ10年間、合衆国農務省は同じ病気のアメリカ版 が合衆国の家畜にも存在している科学的な証拠を持っていた。しかも最近に なってさえ、"牛の共食い"(caw cannibalism)の実施を禁止していない。  英国で数年間禁止されているこの共食いの実施は、全米を通じて続いている。

  事実、米国では他のいかなる国よりも附属、広範に広がっている。そして、合 衆国農務省の調査専門家のMark Robinson博士は、「英国で使われているレン ダリング過程(家畜の脂肪を煮つめて精製する過程)も合衆国で使われている 過程も事実上同じですよ」という。何十年間も、海綿状脳症の挙が合衆国レン ダリング工場を通過してきたことを合衆国農務省は確証している。

 英国政府は、狂牛病の存在を10年間公的に否定してきたが、遂に今年3月20日、 認めた。この間16万頭をこえる家畜を死に至らしめた狂牛病は、汚染された肉 を食べ、今CJD(狂牛病が人間に現れた場合、ドイツの医師たちの名前をとっ て、クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれている)で横たわっている人々へう つっていったらしいことを認めた。

 

 英国政府は、狂牛病に感染した牛肉が10人の異例に若いCJD犠牲者の死を招い たらしいと白状するに至ったが、これは英国の指導的微生物学者である Richrad Lacey博士の真実を貫く不屈の精神がもたらした帰結であった。

 とい うのも、BSE(牛海綿状脳症)の恐怖は「AIDS以上に深刻だ」との博士の必死 の警告も、過去7年間、公的に破棄きれ続けてきたからである。  レイシー博士は次のように予言している。政府がいま直ぐ行動を起こさない ことは、狂牛病の長い潜伏期間とも結びついて、西暦2000年のいつの日か5000 人から、50万人の人が毎年、英国で死ぬことになるだろうと。

 ウィスコンシン州マドソン市の「メディアと民主主義のためのセンター」が 発行している季刊PR Watch誌が、情報公開法を通して入手した農務省の内部文 献とPR計画は、合衆国政府が他方では動物と人間へのリスクの存在を否定しな がら、有力な食肉動物飼料産業の経済的利益を守ろうと一貫して努めてきたこ とを示している。 1991年の農務省のPR文献で、農務省は牛の病気に対しては専門用語を使うよう に役人たちに指示している。

 「"狂牛病"という用語は有害だ」「われわれは" 牛海綿状脳症"とか"BSE"という用語を使う必要のあることを強調すべきだ」と 米農務省の内部文献は説いている。

 狂牛柄は"レンダリング・プラント"のひとつの結果として流行病となった。 レンダリング・プラントというのは、家畜の死体やクズ肉の製品を溶かして、 動物の飼料に使う蛋白質や、化粧品、栄養補給軌医薬品、その他の製品にする 工場である。

 

 合衆国にある複或のレンダリング・プラントは、死んだ牛や羊、豚、鶏、そ の他の動物からとった何十億ポンドもの蛋白質を動物の飼料用に加工する。

 1990年、合衆国農務省と食品医薬品局は、家畜・酪農、羊に関係する産業、 及びレングリング産業によって支配されるひとつの委員会を召集した。

 彼らは PR危機運営計画を打ち上げた。そして、それは今でも続いている。  この計画の一番悪い点が、1996年3月30日の新開発表となって表れた。食肉産 業は政府の祝福とともに、食肉産業はレンダリング工場で牛を処分して作った 蛋白を牛の餌にすることは"自発的に禁止します"と公言したからである。

 これ は単にPRのための作戦行動に過ぎなかった。同様の自発的禁止は英国でも無惨 に失敗した。反芻動物の蛋白質の餌を単に与えることは、1日何百万ポンドの 割合いで続いている。

  合衆国政府も業界も、その代表者たちは、今なお、狂牛病は合衆国には存在 しないと主張している。不幸にも、この共同路線は科学的証拠というよりも希 望的観測に基づいている。  合衆国政府がレンダリング工場で作られた蛋白質を牛に食べさせるのを禁止 する行動を速やかにとらなければ、アメリカでの狂牛病が突発するのほ極めて ありそうなことだ。

 牛の肉を食べて発生したCJDはすでに合衆国の国民の中へ広がっているのだ ろうか?連邦政府の否定にもかかわらず、統計的にCJDの警告が出ているいく つかの人の群は合衆国で報告されている。  過去において、CJDの犠牲者はアルツハイマー病だと誤診されてきた。アル ツハイマー病にかかっているアメリカ人は約400万人だと言われている。

 した がって、CJDのごく初期のものは、この膨大な人口の痴呆症患者の中に隠され ている。  長い問、政府と家畜産業は、アメリカのマスメディアと彼らが大衆に提供 する情報に覆いをかぶせ続けてきた。不幸にも、ほとんどのメディアは、狂牛 病伝染病はアメリカでは起こり得ないという政府の公的なPR保証と業界のPR保 証をオオム返ししている。

  合衆国農務省の1991年の"狂牛メモ"  以下のメモは情報公開法にもとづいて、1991年合衆国農務省資料から抜粋し たものである。そのメモは、農務省の関心事が国民の健康へのリスクに立ち向 かうよりは、"危機管理"に重点をおいていることを示している。 「BSEには2つの問題があって、農業はメディアの根ほり案ほりの詮索に弱い。 2つの問題とは、ひとつは、反芻動物の脂肪を溶かして精製した蛋白質を餌に して反芻動物に与えること。

 もうひとつは、そのことが人間の健康に及ぼすリ スクという点である。」 「BSEが合衆国に存在するかもしれないという憶測的な認知は、米国内の食肉 市場や酪農製品市場に大打撃を与えるだろう。・・・だから、メディアに対す るわれわれの関係は、実に生死に関わるほど大きな役割をこの問題で演ずるこ とになるだろう・・・。」

 「英国の新聞のニュース記事は綿密に検討された。・・・広報活動を展開する ために・・・合衆国でBSEは潜在的に起こるのか、あるいは実際に起こるのか を取り扱うた桝こ・・・英国で実際に起こってしまったかのような広報活動を 避けるために・・・「BSE」はアメリカで速やかにひとつの問題となりう る。

」  

 不幸にも、合衆国農務省は、農務省自体の警告に注意を払わなかった。再び、 農務省内部の資料から引用しよう:  「事実、絶対的な安全性が証明され得ない時、そして英国の牛肉の安全性は 20年間、あるいはそれ以上の長期間、実際に論証され得なかったという時、 (英国の農業)大臣が一般大衆に牛肉を食べても危険ではないと保証した。・ ・・(英国の)農務省の役人たちはその問題を最初に避けたので、彼らは覆い 隠しに巻き込まれたと邪推され、このことが彼らの信用を傷つけたのだっ た。」          

 1  政府が行動を起こさなかったことの説明は、"BSEレンダリング政策"と題する 1991年からの合衆国農務省のもうひとつの内部資料に含まれていた:  「投機が存在している。・・・・海綿状脳症エイジェントは合衆国の家畜集団 に存在している。」その報告は次のように結んでいる、「羊と家畜を原料にし た蛋白質製品を飼料としてすべての反芻動物に与えることを禁止すれば、・・ ・BSEのリスクを最小限に減らせる。

しかしその不利益は家畜にかかるコスト が高くつくようになり、レンダリング産業にかかるコストも相当なものになる だろう。」

 

(訳:野村かつ子) 著者紹介:John StauberとSheldon Ramptonは"Toxic Sludge is Good for you!   Lies,Down Lies and Public Relations Industry"を共著でPH Watch誌に   (1996年春季号)に掲載している。

出典:'The US"Mad Cow"cover-UP'by John Stauberand Sheldon Rampton,   Earth Island Journal,Summer 1996.

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◇畜産処理加工処理工場(レンダリング・プラント)の戦慄

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『アース・アイランド・ジャーナル』1996年夏号  畜産処理加工処理工場は、これまで「沈黙の工場」と呼ばれてきた。アメリカ では毎年、286の畜産処理加工処理工場が密かに1250万トン余りの動物の死 体、脂肪、食肉廃棄物を処理している。市民のための監視運動ニュース・レ ター『PRウォッチ』がいうように、「この業界は、一般市民の大半がその存在 を知らずにいるのをよいことにしている。」

 

  『シティー・ペーパー』(City Paper)紙のバン・スミス記者は、昨年夏ボルチ モア市のバレー・プロテインズ工場を訪ねているが、その時目撃したのは動物 の死体組織をフライ処理する前にすりつぶして濾過する大型タンクであった。

  これには、「イヌ、ネコ、アライグマ、ポッサム、シカ、キツネ、へビの死 骸」をはじめ「サーカスの子象の死体」、「勤務執行中に事故死した」警察ク オーターホース

(訳注:アメリカ西部で改良された強靭なウマで競馬にも使わ れる)の死体などが入っていた。

 ボルチモア市の動物収容所では、月間平均1824匹の動物の死体をバレー・プ ロテインズ工場に引き渡す。昨年、同工場では1億5000万ポンドにのぼる鮮度 の落ちた食肉と厨房油脂を加工して、8000万ポンドにのぼる商品用食肉、骨 粉、獣脂、イエロー・グリースを製造している。

 いまから30年前なら畜産処理 加工処理工場に搬入された動物の死体は大半が小規模の市場や食肉処理場から 出たものだった。ところが、ファーストフード・レストランが増加したお陰 で、同工場の「原料」の約半分は厨房油脂とフライ用油で占められている。  

」ペットや野性動物の死体を処理して飼料化する作業は、「わが社として、あ まり宣伝したくない企業活動です」とは、バレー・プロテインズ社のJ・J・ス ミス社長が『シティー・ペーパー』紙に語った言葉である。動物死体の処理は 「公共事業としてであり、利潤のためではない」とも同社長はいっている。 「(ペットの死体には)蛋白質が少ない上に、毛ばかり多くて処理に手間取 る」というのだ。

 『シティー・ペーパー』によると、バレー・プロテインズ社は、動物の非食 用臓器と脂肪精製済み材料をアルポ社、ハインツ社、ハルストン・ピューリナ 社などに販売している。これについてバレー・プロテインズ社側は、ペット フード・メーカーとしては、「再処理ペット肉の危険性について非常に神経を 使っている」から、「死んだペットから生じる副産物」は、これらメーカーに は納品していない、と主張している。

 プロテインズ社の生産ラインは、

 (1)清潔な食肉と骨の加工ラインと

、(2)死ん だペットと野生動物の加工ラインの2本立てになっている。

 ところが、スミス 記者はこう書いている。「蛋白質材料は、この2加工ラインの製品を混ぜ合わ せたものだ。だから同社製の肉・骨粉には、ペットと野生動物から出た材料が 含まれており、その約5%が乾燥ペットフード・メーカーにわたっている‥ ‥」  米国農務省の1991年度報告によると、「1983年に生産された食肉・骨粉、乾 燥血液食、フェザー・ミールは約790万ポンドであった。

 このうち34%が ペットフード、34%が家畜飼料、20%がブタの飼料、10%が肉牛、乳牛飼料に 使われた。」  豚肉や鶏肉に使った飼料を介して広がる伝染性の海綿状脳症(TSE)の恐怖は、 狂牛病の恐怖をはるかに上回る。汚染されたペットフードを通じて家庭のペッ トがTSEにさらされる危険性は、ハンバーガーを食べる人間が直面する危険性 の3倍以上にもなる。------GS           

 (訳:T.I.) 出典:"A Look Inside a Rendering Plant",Earth Island jounal, Summer1996.