グローバル化を深く知る

グローバル化を深く知る              柴田 敬三

   ~日本はガラパゴス化している?~
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 小学校での英語教育、社内公用語を英語に、企業の世界展開。官僚の国家試験
にTOEFL? TPPの賛成、反対? 歴史認識や従軍慰安婦問題、ヘイトス
ピーチにみる、世界からの厳しい視線。日本は今、どうしたらよいのでしょうか?
グローバル化は待ったなし!

 国家戦略の大胆な見直しをしないと、日本衰退?
 日本は、戻れない。突き進め世界へ! 守ろう未来を。

 なぜ今、グローバル化対策か?

 羅針盤の無い船で、荒海に投げ出された? これがグローバル化を読み切れず
20年以上も思考停止している日本の姿ではないでしょうか。
 日本の20~30年後、100年後を見据えて、「ほんの木」は、あえてグローバル
化を推測し、直言します。
 皆様のお子さんや孫の未来と生活のお役に立つことを願って……。


1)グローバル化って一体何がどうなるの?


 日本国憲法より上位の概念の「世界人権宣言」ってご存知ですか? あの各条
文は「すべて人は、」で始まります。一方、世界に誇る日本国憲法は、「日本国
民は」が主語です。前者がグローバルな世界、後者がローカルな一国主義、と捉
えてもよいと思います。(さらに、自民改憲は、「日本国は、」だそう、これだ
と国家主義?)

 交通技術の発達で、人、物は地球上を行き来し、インターネットの普及で、金
融も情報も今や瞬時に国境を越えます。さらに、ネットとグローバル化の共通言
語は英語となりました。好き嫌いや、文化相対主義、つまりどの国や民族の文化、
言語も互いに尊重される、のは当然のこととは言え、ビジネスや国際政治には英
語が世界語となってしまいました。

■プラスもマイナスもある、グローバル化
 グローバル化には、正と負の両面があります。さらに、グローバル化は、すで
に引き返せない領域に突入したと言ってもよいと思われます。ならば、グローバ
ル化を前提に、荒海で生きてゆくための羅針盤が問われる時代です。

 例えば、アベノミクス(私はアブネーのミックスと称してますが(笑))での
株の乱高下は、世界の機関投資(機)家(ヘッジファンド、日本を含む)が日本
の株式市場の5~7割を日々売り買いし、相場を決めてしまいます。彼ら相場師は、
乱高下こそ勝負所なのです。長期保有中心の日本人株主は、いい迷惑ですが、コ
ンピューターで瞬時にプログラム化された技術を駆使するプロには勝てないでし
ょう。安倍内閣、日銀や日本の官僚では歯が立ちません。

 為替レートもしかり、景気もビジネスも中国やアメリカ、EU等の経済動向に
モロに影響され、日本一国の経済ですら日本でコントロールできないのがグロー
バル化の荒波です。

■世界経済やルールは平準化されてゆく
 長いスパンでみれば、世界が平準化されてゆくことがグローバル化の流れです。
賃金の安い、税の安い国に生産拠点を移す多国籍(無国籍)化する巨大企業、彼
らも時と共にさらに最適地へと場所を変える。理論的にはいつしか世界は平準化
します。

 従って強い国は自国に有利なルールを、他国に押しつける。国際政治は必ずそ
の動きを示します。EUはグローバル化が進化すると、こうなってゆくというひ
とつの例と言えます。統一通貨、統一ルールで、あるエリア全体を守ろうとしま
す。TPPもアメリカがアジア経済を支配したいルール作り、とも考えられます。

 こうした力の勝負の中で、平和のために必要なのが、グローバル・フェアネス
(公正さ)、グローバルな民主主義、自由、人権です。
 軍事力に頼らず、核や原発を廃絶し、世界の平和と安全を守り、等しく世界が
発展するためにも、一国主義からの脱皮、その国家戦略の重要性が求められます。
日本の混乱は国家としての未来への戦略不在が根本原因です。


2)ガラパゴス化すると私たちはどうなるの


 グローバル化には反対、日本は日本で。日本の伝統文化を守り、日本語で論理
に磨きをかけ日本民族は永久に……、とかたくなな国家主義者は、日本にも世界
にもいます。一種の鎖国主義。自給自足が可能な時代ならば、一理あります。当
り前ですが、誰も、日本は日本語で日本らしい国をより良く高めてゆくことに異
論はありません。また、TPP反対、遺伝子組換作物反対、食の安全こそ守るべ
き。格差拡大の新自由主義反対の人々もいます(私などこの中の一人です)。し
かし、貿易を軸に、資源を始め物や技術を交換し合って、世界は共生してきまし
た。日本も世界との共生に多大な恩恵を授かって今日があります。

 それはそれで必要として、一方、今より更にグローバル化すると、世界はどう
なり、日本はどこに向かうのか、について少しでも深く理解しておくことは、日
本の国にとってのみならず、あなたやあなたの子どもたち、さらにずっと先の世
代に、より幸せな状況を考える上で大切なビジョンです。

 日本はどうなる? 以下はもちろん仮説です。しかし、恐らく、多くがこの仮
説の様に推移すると私は考えています。(予言や占いではありません(笑)、
1980年頃からの30年以上の仮説がほぼ的中している確信の上での仮説です)

■世界のグローバル化
 現状、良し悪しは別に、アメリカの巨大な世界支配力は今後も不変と見るべき
です。次が中国の発展と力の向上。人口13億のマーケットを持ち、世界中に華僑
のネットワークがあり、かつ経済成長中です。対米国債も最多です。

 アジアでは次がインド。やはり人口数と教育力、英語力。また、中国同様世界
に散在する人的パワーは、今後20~30年で頭角を表わすはずです。

 EUは、人間の民主的レベルも経済的レベルも高く、世界の成熟国の先頭を走
ります。米中が協力関係になればEUは結束。ロシアは内政次第。中国同様民主
化の進行次第です。

■さて日本はどこへ行く?
 日本は、グローバル化以前に問題を抱えすぎました。日本国内のネックとなる
事情を列挙します。

 ①世界一の少子・高齢化。②世界一の1000兆円を越える財政の赤字。③日本国
債が暴落するリスク、これは海外のヘッジファンド(機関投資(機)家)のえじ
き? ④原発事故リスク=大地震リスクが高すぎ。⑤英語能力が世界最低のレベ
ル。⑥人権・民主主義意識が低い。⑦世界中に、全人口の1%(120万人)しか出
て行ってない。日本語と文化にひきこもり。世界的ネットワークが弱い。

 ⑧新しい経済成長モデルが不在。⑨官僚機構がグローバル化されてない。⑩政
治も同じく世界から非難されるナショナリズム化。⑪地方都市の衰退。⑫公共事
業や年金、医療、介護の財源が枯渇。⑬男尊女卑、家制度、家父長制など、儒教
型社会(鎖国型国家主義)から脱出できない。⑭自己主張の無い、非個人主義。
⑮貧困率の高さ。

 これらガラパゴス化を克服できないと、グローバル化する世界から孤立する危
険性があります。今の日本は、孤立化の方向へ歩を進めていると言っても過言で
はないでしょう。


3)日本が辿ってきた過去にこそ問題が…


 日本の今日はガラパゴス化状態である、と判定せざるを得ない事件が、この所
多発しています。例えば、安倍内閣、保守的自民党政治家や、日本維新の会の石
原、橋下共同代表に見られる、日本の第2次世界大戦への歴史観(あの戦争は侵
略ではないとする歴史観)、同、靖国参拝。あるいは、従軍慰安婦(性的奴隷)
の問題発言などは、非人権国家と見られ世界から顰蹙を買っています。

 批判は中・韓のみならずアメリカや国連から、またEUからもです。その上に
この右傾化した、ゆがんだナショナリズムが、グローバルな人権、民主主義のス
タンダードに合致しないことが理解できない、認識力の貧困さが問題です。世界
の見る価値基準からズレたまま、そのズレが見えない点で、まさにガラパゴスで
す。

 教育も、世界の基準から一人独自の形で進んでいます。また先日、外務省官僚
が、国連で日本の人権感覚の鈍さを正され、思わず「黙れ!」と発言し、出席各
国からあきれられ、苦笑がもれた、との報道が東京新聞でなされました。これも
ガラパゴス官僚のなせる技です。

 事ほどさように、あらゆる情報が、日本語でなされようが、国連内で起きてい
ようが、筒抜けになるのが、グローバル時代なのです。

■従軍慰安婦、ヘイトスピーチに鈍感?
 なぜ日本が、こうした世界基準との認識の乖離を伴って、グローバル化の前で
立ち往生してしまったのかは、日本の辿ってきた過去や歴史に問題の根源を見る
ことができます。東洋のガラパゴスは以下のプロセスにありそうです。

①官僚機構の、内なる有能、外に無能力。大激変する世界に追いつけず、問題を
 先送りし、内にこもるのみ。(国家的戦略の不在)
②戦争責任を日本内でもアジア全体に対しても、フェアにやり切ってない。従っ
 て、台頭するアジア経済に対し、マネーの力以外に、リーダーシップを取れず、
 中韓に敗北気味。
③日本語力が先、英語だけではダメ、の様な神学論争にずっと明け暮れて、英語
 力で商売、かけ引き、政治、裁判をやれない人材不足。
④政治が世襲化し、内向き。自民党政権の長期化が、日本ガラパゴス化の一因。
⑤アメリカの植民地が日本。日米安保、日米地位協定、沖縄基地、TPP、原発
 他、一式、経済もアメリカのシナリオに従う国が日本。独自能力無し。誰も解
 決できない?
⑥一方、民族主義、愛国心がゆがんで存在。東京や大阪のコリアンタウンでのヘ
 イトスピーチ、それのどこが問題かもわからずにいる法的規制の無い日本。人
 権感覚ゼロ。原因は自民党の右傾化ブーム悪用とマスコミの及び腰。

などを見ると、日本ガラパゴス現象の原因は明解です。また、この間、これら
日本病とも言うべき課題を批判し、相対化できない、日本語のマスメディアは、
やはりグローバル化に最も立ち遅れた事業体と言えます。すべて、日本病は、国
内マーケットの中のみで金がもうかっていたことによる安心感と、世界を読めな
い荒波恐怖症。民主的改革やる気ゼロ病です。

■グローバル・スタンダードの見えない日本
 グローバル化で、今日、あわてふためき、小学校からの英語教育だ、教える人
材がいない、などの右往左往ぶりを見ていると、日本人は、問題を予知する能力
が無い。問題が発生すると、極力責任を回避する。問題そのものを先送りするこ
とが当面の答え、という傾向が目立ちます。多分これも日本の文化です(笑)。

 観光立国だ! と叫んで、英語力のない国に、また、放射能や大地震と原発事
故リスクにある日本に、一体どれだけ世界の人が来るでしょうか。

 アジアの金融センターはシンガポールに奪われました。シンガポールは、リー
クアンユー首相の国家戦略で、英語を公用語にしたことから始まり、今、法人税
を下げることにより、(私は各国の法人税下げ合戦は邪道と考えますが)地歩を
固めました。

 ヘイトスピーチのみならず、日本人は概して特に欧米系以外の外国人に排他的
であり、この体質をあらゆる民族と人権尊重の多国籍化社会に切り換える国家戦
略にしないと、人権、自由と公正で多様性を前提とする民主主義に基づく、グロ
ーバルな世界に、足を踏み入れることができないでしょう。

 海外にいる日本人約120万人がもし、ヘイトスピーチをされても、あなたは平
気でいられるでしょうか? 今の日本はそれです。


4)日本は戻れない 戦略的グローバル化を


 そろそろグローバル化の結論を書きます。つまり、日本はこれから、どうした
らよいか。国家戦略の必要性です。以下は私の考えです。30年先、50年、100年、
いやそれ以上先の日本が世界の中で尊敬を受け、幸せに生きてゆくための処方箋
です。特効薬はありません(笑)。

 まず、考えるべきは、日本の元首は誰か? という点。現在、自民党は改憲を
目指し、象徴天皇を元首にする方針で動いています。世界人権宣言の人間の平等
とかけ離れる改憲です。(日本は大統領制~共和制~国民がトップを選ぶ政治体
制でなく、議員を国民が選び、議員が首相を選ぶ、議院内閣制です。)

 次にグローバル化は嫌だ、だから日本人は日本に引きこもりたい、との自給自
足は恐らく全く無理です。北朝鮮に日本はなれません。後戻りできないグローバ
ル化社会。ならば正々堂々、その世界へ突入し、戦略的に、安心や安全を確保し
ながら、地位を固める方法が、未来の世代への何よりの貢献のはずです。

■日本国内派も海外派も共に助け合う日本へ
 一方それでも、日本語を愛し、春に桜に親しみ、日本の文化、祭りや食を楽し
み、人生を全うしたい人々は沢山いるはずです。それも一理アリです。とすると、
日本が好き、故郷の山や川がなつかしい、ここで一生を送りたい、という人々も
幸せに日本で生きられ、かつ、グローバル化する世界に参加する人々や企業も、
同様に共存できる体制が、国家戦略の必要条件ではないでしょうか。

 ならばどうするか、が答えになります。

 まず、世界人権宣言を、日本人の根本的文化にすること。これが第一。世界で
最も、自由で人権感覚を持ち、公正で多様性に富み、多民族社会を良しとし、フ
ェアな国民として民主主義の最先進成熟国を築く。30年あれば可能です。民主主
義感覚とフェアな心は、日本が世界と対等にやってゆける、第一の条件です。他
国から、今の安倍政権や自民党、維新の会の橋下さんの様に後ろ指をさされませ
ん。

■国家の費用で教育立国、格差ゼロの国へ
 次に、日本語での論理力を高める教育は当然の前提として、同時に全てを国家
の費用でバイリンガル化、英語を公用語にすることは、世界へ出る最も強力な道
具です。民主主義力と英語力。できれば第2外国語を北京語(中国語)にする。
これも台頭するアジアを見据えれば「ねばならない」条件だと思うのです。

 さらに、ムダな道路や公共事業に金を散財するより親の経済力で格差が生まれ
ぬよう、税金により教育立国で国を作り換える必要性もあります。人材は宝です。
そして、人口の少なくとも10%以上、つまり1200万人規模の人々が世界に出入り
する。世界のマーケットでビジネスを行う。日本を愛し、日本で生きる人々の技
術やノウハウを、世界に売り込む。結果、世界の最先端技術を、日本に集積して
ゆく。日本を背負った小さなビジネスマンが沢山、英語力と民主主義力で世界に
出る。これは必ず日本を救います。

 理由のひとつは、例えばもし再度の大地震等で、原発事故が発生し、首都圏や
関西圏に人が住めなくなったら、まず子ども、若者を世界に疎開してもらう国家
戦略が必要となるかもしれません。世界に1200万人の日本人が住んでいたら、未
来の宝を簡単に助けてくれるでしょう。それが日本人が永遠に失いたくない文化
としての、共助の心です。

 日本の多国籍企業と共に出て海外で働くもよし、日本にいて日本の農業や中小
個人、大企業でビジネスにまい進するのもよし、あらゆる可能性を、後の世代に
引き渡しませんか。グローバル化は、新しい日本と日本人を作り出す、大きなヒ
ントとチャンスだと思うからです。


5)教育、メディア、政治がグローバル化のキーワード


 いかがでしょうか。私の考えは荒唐無稽でしょうか。論理の飛躍でしょうか。
今までのように官僚機構がシナリオを書き、国会でその台本で芝居をする自民党
を始めとする政治家たちの国家方針に、グローバル戦略があったでしょうか。私
には全く見当りません。

 もちろん、簡単には解けない、困難な課題ばかりの日本です。アメリカとの関
係を対等化できない。対等化に向かうと、民族主義的軍国主義、ナショナリズム
が台頭する。外から圧力をかけられると、(わざと刺激したり)ナショナリズム
に火がつきやすい。どの国も同じ構図です。今の日本の姿です。

 これらを克服する道は、たったひとつです。日本人の持つ、平和の心、争いを
さける人道性、人を助ける精神、これらの美徳を民主主義と英語力で人材を育て
世界の中で生かすやり方です。私は、必ず尊敬される日本に、生まれ変われると
思います。

 それには、まず、自国の安全を高める。つまり、原発をゼロにし、廃炉へ。そ
して、教育を全面的に公的資金とし、作り換える。教師も再トレーニングです。
そのために、例えばオランダの社会のあり方、教育方法には、注目すべきものが
沢山あります。(小社刊『祖国よ安心と幸せの国となれ』リヒテルズ直子著をご
参考に)

 今の日本は、未来への国家戦略がありません。まず、世界人権宣言を身につけ、
マスコミがグローバル化して、伝える中身を、民主的、人権的、公正さ、多様性
を持った、ジャーナリズムに切換える。それも日本のグローバル化の重要な柱の
ひとつになるかもしれません。教育、メディア、非世襲政治がキーワードです。

 (筆者は株式会社ほんの木・代表 shibata@honnoki.co.jp)

柴田 敬三

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