【投稿】

ネットで知る最近少し気になるアレコレ 4月

河口宏司

*3月30日に行われたウクライナ大統領予備選で、世論調査通り役者・プロジューサー・シナリオライターでありながらエンターテイメント関係でいくつかの会社を経営し、 常時 約二千人を雇用しているゼレンスキー(41)が、二位の現職ポロシェンコ大統領の二倍の得票を得て4月21日の決選投票に臨む。現職のポロシェンコ大統領は、資産売却を公言しながらも会社経営を続けており、 2016年Forbesのウクライナ長者番付で8億5800万ドル(6位)だった。 ソ連崩壊後の90年にカカオの輸入業務で財を成し、 1996年創業にもかかわらず チョコレートなど菓子類の製造販売で、 2017の Top 100 Confectionery Companies では堂々の24位(売上8億ドル、従業員1万人)(森永22位同9億ドル)をはじめ自動車・バス製造業および国内最大の都市バス会社など100社以上を経営しているが、公的地位を利用した汚職のうわさが絶えないでいる。

 ウクライナは、内戦を抱えながら汚職大国で、 Corruption Perceptions Index – 腐敗認識指標(CPI)で2017年ウクライナ120位 ヨーロッパ諸国内では断トツの最下位にある。

ロシアとの経済が一体化していたものが分断され、現大統領のEUとNATO参加を目指す姿勢から、欧米からの巨額の融資を取得するために内戦を利用したとも指摘されているが、IMFや欧州委員会からは、汚職摘発委員会( National Anti-Corruption Bureau の設置を義務付けられているほどである。2014年のユーロマイダンでは、マケイン上院議員と 米国務省国務次官補(欧州・ユーラシア担当) ヌーランド 女史の 行動がハイライトを浴びたが、バイデン合衆国副大統領もキエフを7回も訪問し、ウクライナ議会で汚職撲滅を命じる演説もしている。

 従って、大統領予備選で全くの素人が、自分は誠実に、「国民の下僕」(公僕)として働くという宣言をしただけの若手有名人のゼレンスキー氏がトップに立ち、4月18日現在の世論調査でも70対30で、4月21日の決選投票での勝利が確実視されていることが理解できる。

 ポロシェンコ側は、相手側を徹底的にロシアの回し者、プーチンの手先、イスラエルに逃避した第二の富豪コロマイスキーの配下の者とのネガキャンで、国中の幹線道路にだしたビルボードは プ ーチンとポロシェンコの大きな顔写真をのせ、「プーチンか自分か?ロシアの傘下か、自由なヨーロッパかの選択か?」と問いかけ、ゼレンスキーは根拠もなくロシアの回し者とされた。ゼレンスキーが「分断された人々とともに歩き共生社会を訴えた選挙キャンペーンフィルム(https://www.youtube.com/watch?v=PffxAFB-x1I)を改ざんし、「人々の先頭に立って分断された道を行くゼレンスキー」をダンプカーで吹っ飛ばすというネガキャンペーン映像(https://www.youtube.com/watch?v=rtca7dOfrXQ)を「それぞれには自分の道(生きざま)がある」とし、麻薬を連想させる画像も流した。これは殺害を予告するものともとらえられ警備を強化したという。

 選挙での逆転のためには、なりふり構わず権力を行使してくること(①内戦の突然の激化➁非常事態宣言での選挙の延期③開票結果の改竄➃対立候補者の事故)などの危険も予想されたため、ゼレンスキーは大統領との一緒のTV共演も断ってきたが、唯一、オリンピックスタジアムでの4月19日の公開討論会の開催を要求した。   
 老獪なポロシェンコ大統領とのデベートを避けてきたのは、五年以上の政治キャリアがある現職との討論で具体的事案での返答には弱いこともあるが、公式には「今まで政治家の言葉の巧みさには騙され続けてきた。言うことと実際の政治はかけ離れていて、議論することは何の意味もない。誠意をもって国民のための政治をすることが大切なので、言葉ではない」としてきた。

しかし、投票日前前日(前日は選挙活動休止日)の大観衆の前であれば大統領との討論会に応じるとした。この4月19日現地時間19:00からの討論会をネットで視聴したが、七万人収容のオリンピックスタジアムを半分に分けて二つのステージを設け、デベートの始まる二時間前から、双方を応援するミュージシャンが双方のステージで演奏した。動員された警官一万人。ポロシェンコ大統領側のスタんドは、地方からもバスで動員して九割がた埋めたが、反対に人気の高いゼレンスキー側は2割程度の入りで、支援聴衆では圧倒的に差がついた。自分の人気を過信し、現職大統領陣営の動員力を計算に入れなかった致命的誤りではないかと危惧する。しかし、企画は注目を浴び、海外も含め150のTV局の中継または撮影がおこなわれた。

 正式発表では、聴衆は22000人だったが、ポロシェンコ大統領はアジテーションが上手く、「反ロシアと内戦中の軍の最高司令官を、才能はあるのは認めるが役者に任せるわけにはいかない」と壇上に傷病軍人も立ち愛国主義に訴えた。明日の選挙は予断を許されない。

*4月11日

 ロンドンのエクワドル大使館に大使の要請で入館した警官隊に、この大使館ですでに7年間も避難し、エクワルドル国籍を取得していたオーストラリア出身のWikiLeaks創始者で天才プログラマーでもある(投稿システムと投稿者の秘密保持に必要)ジュリアン・アサンジが逮捕拘留された。昨年までは大使館内からインタビューや講演会などに参加し、Twitterでの発言もしてきたが、この一年は発言も面会も大使館側から制限され、国籍も剥奪されていた。もともとスエーデンで支持者の女性と恋愛関係にあり、当然性的関係もあったものが、その女性から「性的強要」があったと訴えられ、裁判如何では米国が「軍事秘密情報漏洩容疑」で米国送還を意図し、スエーデンもそれに応じる構えであったためにロンドンに行き、ラファエル ・ コレア大統領の庇護にあったが、氏の2018年5月の退任とレニン・モレノ新大統領の対米政策の変更の犠牲になったものだ。近く行われる次期選挙でのコービン労働党党首の首相就任も予想される中、米側が急いだとも観測されている。米国に送還されると、反逆罪などで死刑、無期懲役もあり得るということだが、エクアドル側は「英国政府と死刑判決が予想される国には送還しない」との確約を得ていると発言しているが、このような結果で残念である。

*4月18日

 いわゆる「ロシアゲート捜査」を22ヵ月してきたMuller特別捜査官の報告が法律に基づく「秘密保持項目」のみをRedactされた全文が公表された。

 読んでみるといろいろ面白いことがあるが、ここでは先に述べたWikiLeaksについてのみ触れたい。

  Barr司法長官の冒頭のスピーチで、今回の「ロシアゲート」は、サンクトペテルブルグのGRU傘下のインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)がハッキングし、米国大統領選挙に介入したものだが、そのようなロシア側の企図にトランプ本人はもとよりアメリカ人は一切参加していないと断言した。Barr長官は、ロシア側がハッキングで盗んだメールを「 transferred to WikiLeaks for publication. WikiLeaks then made a series of document dumps 」(ウイキリークスに送付し、それをウイキリークスは拡散した)。特別捜査官はトランプ選挙関係者がこれらに関与したかも捜査したが、そういう事実はなかった。また、「Under applicable law, publication of these types of materials would not be criminal unless the publisher also participated in the underlying hacking conspiracy.」(現行法では、このような種類のものの配布(刊行)自体は、刊行者(発行者)がハッキングに参与していない限り犯罪ではない」と断言してくれている。

こういう判断があれば、ロンドンでのアサンジの逮捕拘束で心配した、米国での反逆罪の恐れが薄れたように思い、これを報告するものです。

もちろん予断は許されないが、Barr司法長官の公式な場での判断は尊重されようし、トランプ大統領が「自分はウィキリークスのことは知らない、司法長官のマターだろう?」と知らないふりをしたのも、このBarr司法長官の判断を事前に知っていたからかもしれないと思ったりしている。

また、一方、ウクライナとバイデン副大統領の関係が、息子のHunter のウクライナ汚職の疑惑が深まり、民主党大統領予備選挙での人気が高いといわれるバイデン大統領実現への障害となりそうな気配もあり、今日話題にした三件が、偶然にも繋がっているようで面白い。

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