【読者のこだま】

中国の一般の人たちが良く書かれているレポート   今井 正敏

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 中国の改革開放の先端都市広東省の深せん市に居住される佐藤美和子さんの「
中国人の日本観・日本人観(中編)」の貴重なレポート、拝読しています。 9
6年春、二度目の留学のために訪中された佐藤さん。僅か5年の間に起こった北
京のあまりの変化に、「かなり戸惑いました」と驚かれ、特に物質面が飛躍的に
豊かになった状況が、体験を通された眼で、具体的に記述され、「この頃は、反
日感情は殆ど感じませんでした。逆に、その頃急激に増えた韓国人留学生やビジ
ネスマンの評判の悪さが日本人の評価を上げる格好となっていました」とのレポ
ートに目が引かれました。

 96年は、今から10年前の時代。この96年の1月に橋本龍太郎内閣が発足、
その橋本首相は、7月に誕生日を理由に「総理大臣」として靖国神社に参拝して
いるが、中国や韓国からは、目だった反発は起こらなかった。
 佐藤さんの96年当時の現地体験レポートをお読みして、10年前の日中関係
は、まだそれほどギクシャクはしていなかったのだと感じた。

 佐藤さんは、最初の留学からこの96年の二度目の留学の5年の間に、中国が
大きく変化した事例をいくつか紹介されているが、その一つが、「日本製家電へ
の盲信的な感情が薄れつつあった」とある。
 このことは、この5年より少しあとのことになるが、テレビの生産台数が日本
を抜いて中国が世界一になったこと、また家電メーカーの「ハイアール」が、世
界のトップクラスに躍進したことなどからも、佐藤さんが感じられたことがよく
裏付けされている。

 次に佐藤さんは、この96年当時、中国全土どこでも日本人ツアー客や修学旅
行生を見かけるようになっていたが、そのころよく言われたのが「日本人は大人
しくて扱いやすい」!ということであったということをレポートされている。
 「自己主張の激しい欧米人よりやり易い、なーんて人を馬鹿にしたような事を
言う人にたくさん出会いました」とのこと。この中国人の「日本人観」に対して
佐藤さんは、「私は何か問題が発生すれば、面倒でも自分が納得するまで交渉し、
絶対に泣き寝入りはしないようにしています」と述べておられる。
 そして、佐藤さんは、「もし私が簡単に引き下がれば、(日本人くみし易し)
と相手に思わせてしまい、結果ほかの日本人に迷惑をかけると思うので、おかし
いと思えば私はとことん食い下がります」-この佐藤さんの広い視野とゆるぎな
い決意に思わず拍手。

 こうした佐藤さんの姿勢に対して、たいていの相手は「あんた、ホントに日本
人か?日本人ってのは大人しくて言うことをよく聞く奴らだと思っていたが、あ
んたみたいな言う事聞かない日本人もいるんだなあ」と驚いて、「とっても失礼
な感想を述べるんですよね~。心の中で思うだけにしておけばいいのに、わざわ
ざ口にしちゃうストレートさが、中国人の面白いところです。でもこの事柄から
も、いかに多くの日本人が泣き寝入りしているかが分かるってもんでしょう?」
と佐藤さんは書かれている。
 このあたりに、中国語がしゃべれて、中国の一般の人たちの間に臆することな
く入ってゆける佐藤さんの真価が、いきいきとよく表現されている。

 佐藤さんは、上記の流れのまとめとして、「政府、一般人共に見られる日本人
のこういう事なかれ主義や交渉下手が、昨年の反日デモ騒ぎに見られるように、
中国人の日本人観を助長させたような気がします。(中略)基本的に中国人は強
いものが大好きです。強いものを好み、強いものには逆らわない中国。もし去年
の反日騒ぎの対象が日本ではなく、アメリカやロシアなどであれば、あれほどの
騒ぎにはならなかったのではないでしょうか」と結んでおられる。 佐藤さんの
一般人としての眼で、中国人の「日本観、日本人観」の姿を見られた中国からの
ナマの現地レポート、期待にたがわず、大いに勉強になりました。ありがとうご
ざいました。次回を楽しみにお待ちしています。
                       (元日青協本部役員)
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