中国広東的結婚披露宴

■【北から南から】

『中国広東的結婚披露宴』           佐藤 美和子

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  今年は例年に比べて、やけに雨天や台風の多い、大当たり年な深センです。
  深センを含む広東省はスコールの多い地域だというのに、なぜだかちっとも排
水を考慮した都市計画がなされていません。道路の水はけが異様に悪いせいで、
毎年どこかの町で道路浸水が起こってしまいます。私が広東省に来てから浸水遭
遇はすでに数回、地元の人も慣れっこなのか、多少の浸水なぞニュースにもなり
ません。みなさんもテレビの海外ニュースで、ズボンの裾を腿まで巻くり上げ、
脱いだ靴を手に下げ荷物を頭の上に乗っけて、膝高までに溢れた茶色いドロ水の
中をジャバジャバと歩いている人々の映像、見たことありませんか?私も日本で
そんな映像を見ていた頃は、まさか将来自分も地元の人に混じって、汚水のなか
を裸足で歩くハメになるだなんて思いもよりませんでした・・・・・。

 たとえば日本だったら、雨水が道路に溜まらず側溝に流れていくように、道路
中央が高めになるよう設計されていたり、水はけのよい素材を開発利用したりし
ていることと思います。しかしこちらではそういう工夫はあまりされていないら
しく、たいした雨量でもないのに簡単に路上が水溜りだらけになってしまいます
。おまけにどうも広東人は表面が滑らかな床石タイルがお好きなようで、そうい
う地面は濡れるとスケートリンクのようにツルツル滑るのです。すっころばない
よう、慎重に歩かないといけないので、雨の日の外出は必要以上にグッタリ疲れ
てしまいます。広東人は雨が多くて湿度の高い気候にあわせてか、オシャレな洋
服を着ていても足元は素足に薄っぺらなビーチサンダル、という人を老若男女問
わずよく見かけます。確かにビーチサンダルなら、滑らかな石タイル張りの地面
でも滑りにくいのでしょうけど・・・・・そのコーディネイトはちょっと変です
~。それに、ビーチサンダルだと足が濡れてもすぐ乾くと考えるのか、広東人は
水溜りにもお構いなしで入っていきます。南方人は北方人に比べ、良く言えば大
らか、悪く言えば大雑把~なタイプが多いのですが、こういうところにもその特
徴が現れているよ
うです。

 そんなラフな広東人、結婚披露宴に出席するときにもそのラフさが炸裂します
(笑)。
元々中国では、披露宴の列席者に対するドレスコードは特にありません。日本だ
と、女性は着物やドレスを着て、しかも花嫁とドレスの色がかぶらないように気
をつけるなど、こまごまとしたタブーや決まりごとでがんじがらめですよね。中
国では、普段着よりちょっぴり小奇麗めな外出着でオッケ~!いった感じです。
深セン経済特区内の高級ホテルで開かれるような披露宴だと、多少はドレスアッ
プするのが一般的になってきているようですが、同じ深センでも特区外エリアや
東莞市などの田舎の方では、レストラン披露宴がほとんどです。そんな所では、
ドレスどころか場合によっては普通のスーツ姿でも目立ってしまうことがあるの
ですよ。なので、男性ならポロシャツやワイシャツ(ノーネクタイ)にスラック
ス、といった休日カジュアルスタイルが多いですね。女性でも、普段着より心持
ちオシャレした程度で、Tシャツ姿やスッピン女性もけっこういたりします。

 こちら広東では、もーっとスゴイ人たちがいます。同じ中国人である北方人も
これには驚くそうなのですが、なんと下着のランニングシャツに短パン、素足に
サンダル履きといった格好で披露宴に出席しちゃう中年男性がいるのですよ!ま
るで、週末にお父さんが庭いじりしているときのようなラフさ・・・・・そんな
格好の参列者は、新郎新婦の親戚のおじさんだったりすることが多いのですが、
ある時はなんと新郎の父親が!ランニングと短パン姿で、新郎新婦と一緒のひな
壇に座っていた事もありました。私はてっきり列席者のおじさんが、酔っ払って
座る所を間違えているのかと思っちゃいましたよ!

 とは言え、これは決して彼らが経済的に苦しいからではありません。むしろ大
テーブルが20~50卓ほどもずらりと並んだ大規模宴会場で、テーブル上だって広
東の披露宴には欠かせない子豚の丸焼きを始め、大量の料理が溢れんばかりに並
ぶような、豪勢な披露宴が開けるほど裕福だったりするのです。『食は広州に在
り』と謳われ、また外食産業が発達した広東では、裕福な家庭でもエンゲル係数
が他の省よりダントツに高いといいます。食べる事には費用をいとわない反面、
着るものに関しては飾らない人が多いという事なのでしょう。それでもさすがに
、披露宴でのランニング姿は飾らなすぎ!だと思いますが・・・・・(笑)。

 実は私、日本では結婚式や披露宴に出席するのが少々苦手です。ヘアメイクし
てもらうために、早めに美容院を探して予約したり、衣装も毎回同じにならない
ように数着揃えなきゃならなかったり、それに合わせたバッグや靴を考えて、も
のすごい出費と労力がかかるからです。招待されたら、失礼ながら(わ~、大変
なことになっちゃったよぉ)なーんて心のなかで思ってしまうのです。

 でも中国の披露宴、特に広東では、ランニングで出席する人がいるほどに出席
者には何も求められません。ただご祝儀だけを準備して、あとはラフな格好で出
席したら同じテーブルの人たちとワイワイお喋りしてお料理を堪能すればいいの
です。出し物を頼まれることも、長々しいスピーチもないので、たびたび食事の
手を止めて拝聴しなければ、なーんてこともナシ!遅刻や途中退席に誰一人眉を
ひそめる者もなく、三々五々に集まって楽しんで満腹になったらどんどん勝手に
帰って行っていいのです。

 当初はあまりのラフさに、「新郎新婦に対して失礼にはならないの?」と戸惑
いましたが、今では中国の披露宴は美味しいし楽しいし気を張らずに済むしで、
招かれると嬉しく思うほどです。気張らず気軽に参加できる披露宴なので、気苦
労がないぶん純粋に新郎新婦を祝う気持ちもどんどん沸いちゃうってなもんです
よ。

 ちなみに中国のご祝儀の相場は、5年前の東莞の田舎の鎮では20代の同僚同士
だと100元(当時のレートで約1600円)、30代や直属の上司などで2~300元(320
0~4800円)くらいなもんでした。経営陣クラスの上司や我々外国人は多めに包
む事を期待されるので、500~1000元(8000~16000円)。面白いのでは、オリン
ピック開催日と同じく、縁起のよい8という数字を重ねて「888元」包む人もあ
ります。またこれが北京上海の都市部の話となると、20代同僚でも相場が300~5
00元にドンと跳ね上がりますし、甥姪など、自分より下の世代の身内の結婚式で
は数千元包むこともあるようです。日本では立場の違いを考慮しても、相場の差
なんてせいぜい2~3倍程度ですよね。でも中国では、立場の違いや地域によって
、相場が数十倍にも開くのです。これも、一つの経済格差の表れなのでしょうね
。 
      (筆者は在深セン・日本語講師)

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