二人の「その言や良し」

二人の「その言や良し」       今井 正敏

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 「鳥のまさに死なんとするやその声哀し。人のまさに逝かんとするやその言や良し」。よく知られている『論語』の中に出てくる文言だが、後世、「死」や「逝く」が省かれて、「その言や良し」が独り立ちするようになった。
  今回の安倍退陣のドタバタ劇で、私の記憶に残る「その言や良し」が二つあった。
  その第一は、福田康夫氏が総裁に選ばれたとき、「靖国神社に参拝しますか」と記者に問われ、答えた言葉。
  「他国が嫌やがっていることはいたしません」。
  まさに簡にして明瞭な返答。
  小泉の時代、国をあげた騒ぎになり、安倍になってからも尾を引いた首相の靖国神社参拝の問題が、このひと言で、早々に、過去の問題になった。まさに「その言や良し」。
  ただ福田氏は、首相になってからの所信表明や、代表質問でも、靖国問題にはひと言も触れていない。これは何を意味するのか。

 「その言や良し」の二番目は、小沢民主党代表が、最大の焦点である「テロ特措法」に対する発言。
  小沢代表は、9月初めの記者会見で、朝日新聞によれば次のように語った。 「アフガン戦争は『これは米国の戦争だ』とブッシュ大統領が始めた戦争で国連安保理決議で認められた活動と性格が違う。米国が自衛権を行使して踏み切った対テロ戦争に、海上自衛隊が後方支援すれば、『明白な集団的自衛権の行使』で、憲法違反にあたる。したがって、無制限に認められるものではない」。
  「その言や良し」小沢発言は、「テロ対策特措法」継続に対して、民主党は賛成できないとする理由を、明確に示した。

 この「オルタ」が発信されるころは、政府が新しく提案する給油と水の補給に限定した「新テロ特措法」をめぐる論議が白熱しているころと思われるので、小沢代表の「その言や良し」がどのようにからんで国会審議が進められるか、注視していたい。
  小沢代表は、『世界』の11月号に「今こそ国際安全保障の原則確立を」と題した論文で、「インド洋での給油活動は、国連活動でもない米軍等の活動に対する後方支援であり、(憲法が禁じる)集団的自衛権の行使をほぼ無制限に認めない限り、日本が支援できるはずがない」と述べていて、発言がブレていない。

 小沢代表がインド洋における給油活動を「違憲」としたことに対して、福田首相は、9月9日の衆院予算委員会において、「給油活動は憲法9条が禁じる武力行使に当らず、憲法に抵触することではない」、「給油活動は非戦闘地域での活動であり、憲法違反ではない」と答弁している。
  これは小沢発言の真意をマトからはずした反論のようにも思われる。
  小沢発言は、よく読めばわかるが、給油活動は、「集団的自衛権」の行使であり、この「集団的自衛権」は、憲法で禁じられているため違憲であるといっているので、「武力行使」とか、「戦闘地域」とかという文言は使っていない。このあたりは憲法問題にからむ大変重要なポイントなので、「オルタ」でも論議を深めて欲しい。


追記
  「オルタ」45号では、トップの篠原先生の「日本型農業は一ヘクタール営農にあり」と、富田共同代表の「苦悩する農村でのたゆまぬ挑戦」の実践的体験記、共に読みごたえがあり、大変勉強になった。
  小生は小作百姓の農家の生まれ、青年期には農業青年が主体だった青年団活動に深く関係していたこともあって、特に農村、農業の問題には老齢期に入って強い関心を持っている。今回の企画は、非常にタイミングのよいものでした。
  吉田春子さんの「ガン闘病記」は、小生も肉親をガンで失っており、身にしみて深い感動にひたりながら読みました。
  また、毎号楽しみにしております佐藤美和子さんの「深センからの便り」が今回はお休みで、少々気落ちしました。
  ざっと、45号の読後感を書きましたが、ますます充実する「オルタ」を毎号心待ちにしています。

               (元日本青年団協議会本部役員)

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