今井 正敏15

■投書

今井 正敏

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 『オルタ』14号の緊急特集:韓国と中国で何が起きているのか。――で冒頭の石郷岡建氏の論文に続いて5氏の意見が載っており、それぞれ詳しく拝読し大変勉強になりました。

 1956年に日本青年団協議会(日青協)の最初の訪中団に加わって建国7年目の新中国を訪れました。

 以来、日中友好運動にかかわりを持つようになった私にとって最近の日中間の関係悪化は極めて残念な事態で心を痛めておりますが、石郷岡論文と5氏の意見に共通しているのは

 船橋氏が述べておられる「日本が21世紀における平和と共生の世界へ、新たな展望を拓くためには、日中両国の友好と協力の増進を第一義的に重大な国の施策とすべきである。(中略)日中関係はいま歴史的な岐路にある。」――に集約できるように思う。

 しかし、現実の流れは友好と協力の方向にに進んでいないのです。この原因を突きつめると、そのトップはなんと言っても小泉首相の「靖国参拝」にあります。

 サンケイや読売以外の新聞各紙、共同通信、NHKなどの世論調査では国民の60%以上が「参拝はやめた方がよい」としているのに小泉首相は「取りやめます」とは明言しない。

 なぜ、彼が参拝にこだわり続けるのか。

 単に遺族会にたいする配慮や選挙公約だからではなく次のような彼なりの確信によるものだろう。

(1) 米国との関係強化を最優先施策にしている小泉首相はブッシュ政権が中国がアジアや世界で発言力が増すのを望まず、したがって日中友好強化を好まないことを知っていて友好を阻害する「靖国参拝」を有効に使おうとしている。
(2)「靖国参拝」を続ければ日中関係は悪化するが日本国内のナショナリズムは高まるから関係改善に動かない。
(3)日中関係の悪化は自衛隊の増強、軍拡の口実に使えるので「靖国参拝」を続ける。
(4)自民党内では参拝支持派が増えており、旧竹下派・橋本派に多かった中国重視派は少なくなっているので党内から突き上げられない。
(5)日中関係の悪化を国際的に見ると中国に対する不信感、共産党一党支    配についての懐疑心が大きくなっているので関係の悪化をそう気にしないでよい。
 これらの理由を総括してみると「参拝を続けることは彼の立場からすればマイナスよりプラスが大きい」と判断して参拝を続けようとしていると思う。

 こうした動きに対し前記の5氏の中の工藤邦彦氏は「いま、わが国を覆っているのは、アメリカに身を寄せながら大きく膨らんできた『親米的自国主義』(形容矛盾だが)にもとずく戦後政治経済の《衰退モデル》であるというのが本当のところではないか。

 その衰退性は今日の政権やその政治経済的基盤たる勢力が現在の世界の軸心からずり落ちつつあることによって、ますます明白に示されようとしている。(中略)この史上最も軽薄な「総理大臣」の在任期の間に、日本はユーラシア大陸のほとんどすべての場所で情勢に取り残され、ただ、アメリカに言うままに行動しながら、自らのいる場所を失いつつある。」と鋭く指摘されているが、そのとうりだと思う。

 今年は中国にとって抗日戦争勝利60周年の節目の年だが、小泉首相の「適切な考慮」が「靖国参拝」ということになれば中国の「反日」の炎が全土に広がることにもなるので、これからの動きに目を離せない。