■俳句                             富田 昌宏

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  農といふ一字の重み水温む

  売られゆく牛の瞳や春夕焼

  美辞麗句省く弔辞や二月昼

  啓蟄や土噛みしままシヨ ベルカー

  陽炎や杭一本の馬の墓

  走り根の大地掴みて木々芽吹く

  粗衣粗食生きて傘寿や花見酒

  師の色紙掛けて彩どる桜草

  まうしろに山ある暮らし春障る

  春愁や亡妻(つま)の残せし走りメモ

       (俳句結社『渋柿』代表同人)

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