【読者の声】

公明党の加憲「三項」、安倍首相の「三項」、そして共産党の閣外協力

堀 利和
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 7月12日中野で開かれた「市民連合 緊急シンポジウム STOP安倍政治・改憲を許さない市民集会」に参加しました。そこでテーマになった憲法第9条の「三項」の問題です。

 私にとっては話が不完全燃焼でした。私の見解は以下の通りです。

 公明党がすでに10年ほど前、9条の加憲として三項を示しています。それを私なりに理解すれば、公明党は自衛隊を合憲としていますから、つまり、三項の自衛隊の規定は、「専守防衛」といういわばロープで自衛隊をぐるぐる巻きに縛るというものです。自衛隊を合憲として明確に規定するとともに、同時に、「専守防衛」の域に留めるというものです。

 しかし、これに対して、安倍首相のそれは全く異なります。次元が違います。というのは、一昨年の戦争法、安全保障関連法の成立にあります。つまり、関連法の成立以前と以後、すなわち、公明党の三項と安倍首相の三項とでは自衛隊の規定が全く異なります。

 4月から5月にかけての北朝鮮に対する米軍の「威嚇」です。カールビンソンと海上自衛隊のイージス艦の合同演習、米軍の燃料補給艦を護衛艦「いずも」が防護したことです。しかも、それは、日本海側ではなく太平洋側の、四国から九州にかけての海域での防護、いずれもがシンガポールに行く途中での防護行為でした。北朝鮮が米軍のこの燃料補給艦を狙えるわけがありません。その防護は実績作りです。関連法の限定された集団的自衛権の実験と実績作りに他なりません。

 第9条第一項に、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する、とあります。安倍首相は、海上自衛隊が「直接威嚇」してはいない、と弁明するでしょう。違憲行為ではないと。

 しかし、それは、米軍との一体化において「威嚇」行為です。演習であれ防護であれ、それは米軍と自衛隊の一体化による北朝鮮への「威嚇」行為となります。
 したがって、公明党の加憲の三項の追加既定の「専守防衛」とそれは大きく異なり、限定された集団的自衛権の「威嚇」行為を前提にした自衛隊、その規定となります。安倍首相の三項は、自衛隊を一体化した「威嚇」行為を付与したものとならざるをえません。

 このように、公明党と安倍首相の「三項」の自衛隊規定は大きく異なるのは明らかです。
 三項の条文がまだどのようになるかはわかりませんが、として、長谷部恭男憲法学者(シンポジウムのパネラー)は言いましたが、今述べたように、「威嚇」行為が前提として規定される自衛隊を位置付ける、すかして見ればそのように条文化されると思います。
 内閣法制局はもちろん、一項の「威嚇」と一見矛盾しないように三項の条文を書くでしょう。そのような書きぶりをして、三項が一項の違憲にならないように、9条内に齟齬が生じないようにするでしょう。実態はともかく。

 これが私の見解ですが、昨日の集会はここまで踏み込んでいませんでした。いたってファジーでした。私の中に不満が残った次第です。

 公明党(山口代表)と自民党(安倍首相)の間に楔を打ち込むべきです。市民連合は、公明党に対して勝手に抱きつき作戦を行うべきと考えます。大キャンペーンを張るべきです。公明党に対して勝手に、正式に、今こそ行うべきでしょう。

 また、余談ですが、民進党から共産党までの野党共闘は賛成です。しかし、そこには「政権論」が出てきます。基本政策の違う民進党と共産党、これは格好の攻撃の的となります。反論は、反動に対してはアンチしかなく、安倍政権よりマシな内閣だからということになります。

 野党共闘の「政権論」で重要なのは、共産党が閣外協力に徹することです。それを、志位委員長が記者会見で明らかにすることです。というのは、基本政策が違う内閣、共産党が大臣を内閣に送り込めば、予算委員会で追及されます。内閣不一致で、一日にして内閣は崩壊します。

 攻撃の材料を一つでも和らげるためにも、志位委員長に先の見解表明を実現するよう、市民連合が水面下で動くべき、それは他の野党ではできない、やってはならないと思います。先手必勝。攻撃の材料を与えないことです。また国民には、その「意外性」のインパクトによって、政権のリアリズムが生まれてきます。

 水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』の「危機」は行き詰った資本主義に代わる新たなシステムが無いこと、これが「危機」なのです。自公に代わる政権の受け皿、それが無いこと、国民の期待に応えられる受け皿が無いこと、それが私たちの「危機」です。

 反動にはアンチしかありませんが、「危機」を乗り越える政治的ビヘイビアが今求められ、それを創造しなければならないと考えます。

 (元参議院議員)

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