加藤宣幸さんを悼む

土居 英雄

 唐突な訃報でした。ただただご冥福をお祈りするしかありませんでした。
 数年前のこと、学生時代からの親友、矢野凱也さん(府立電機工業学校でのクラスメート以来の仲)と共々、米寿を迎えられたお祝いの集いがもたれています。
 加藤さんも矢野さんも、暴走拡大一途の軍国主義国家が崩壊し、激動の昭和期を目の当りにされた、まさに歴史の生き証人でした。

 お二人はいち早く、政治の流れに身を投じ、生き階のある社会創りを目指す日本社会党に軸足をおかれています。
 55年体制と呼ばれていた政治状況が停滞し、労働運動のうねりが弱まる中でも、流れに棹をさし、初心忘れず、社会構造変革のエネルギーを支えとして終生、生き抜かれたお二人でした。
 そのお二方ともども、後年、病がちであった矢野さんが先に身罷り、そしてこのたびの加藤さんの旅立ち。いやおうなく、諸行無常、生者必滅の寂寞たる思いを禁じえません。

 メールマガジン「オルタ」170号の最終項、編集後記を開いた直後、目が釘付けになったのでした。編集スタッフ仲井富氏による編集後記の追記! 亡くなる前日に打ち合わせをされているだけに、仲井氏をはじめ編集スタッフみなさんの驚きと困惑ぶり、察して余りあるものを感じたことでした。

 いま、机上に、メールマガジン「オルタ」編集後記集㈵を置いています。創刊以来の「オルタ」100号を記念しての各号のレジュメ特集です(A5判221頁)。
 この出版を当初、ご本人はご存知なかった由。「オルタ」代表としてひたむきに心血を注いでいる父親をねぎらいたいとの思いから娘さんの加藤真希子さんが考え出されたことのよう。
 そのゲラ刷りを見せられた加藤代表、「一瞬、本当に驚いた」と、あとがきにあります。立派な仕上がりです。
 この一冊で、オルタの歩み、軌跡が浮かび上がり、時代の流れが読み取れるまたとない記念誌となっています。

 多彩な執筆陣によってオルタナティブを論じ、毎月20日、休みなく発信されてきたメールマガジン「オルタ」。
 社会の動向を見つめ、社会通念として共有されているかに見える常識や慣習といった思考パターンを問い直す、そうした視点に立っての「オルタ」。
 蒙を啓いてくれる大事な一灯だ、とみておりました。「オルタ」代表、加藤宣幸さんの意志が引き継がれたことを願わずにおれません。

 莫逆の友であった矢野凱也さんと天国で、必ずや再開されたことでしょう。
 「おお、やってきたか、少し早すぎたんじゃないか」と、肩をたたきあっているお二方の姿を想像します。
 切にご冥福をお祈り申し上げます。 (2018.3.28)

 (「オルタ」愛読者)

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