労働映画のスターたち・邦画編(4)

【「労働映画」のリアル】

第4回 労働映画のスターたち・邦画編(4)

清水 浩之


●労働映画のスターたち・邦画編(4) 真木 よう子     /清水 浩之

 いま、多くの若い女性が憧れる女優さん。彼女の髪型やファッションは日本全国(いや、東アジア全域か)の女性に影響を及ぼし、スクリーンやテレビのモニター越しに、彼女のように生きたい、働いてみたいという思いを寄せられる存在。NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010)で、坂本龍馬の妻・おりょう役を演じたことから一気に知名度が上がったが、それ以前にも映画『パッチギ!』(2005/井筒和幸)やドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007)などで、男性に負けず劣らず気の 強い「アネゴ」系のキャラクターを演じ、注目されていた。ブレイク後は役柄の幅も更に広がり、男性から見て「オンナっぽい」キャラから、女性から見ても「オトコらしい」キャラまで演じられる貴重な存在に成長している。男子も女子も憧れる 《ヨーコ先輩》、そんな彼女の出演歴を「労働映画」の視点から辿ってみましょう。

 1982年、千葉県出身。兄と2人の弟に囲まれた子供時代だったそうで、「オトコらしさ」のルーツはここにあるのかも知れない。中学卒業後、仲代達矢が主宰する俳優養成所・無名塾に合格し、女優としての活動を始める。2001年から数多くの映画・テレビに出演。クールな存在感とナチュラルな演技で、端役から主人公の友人・同僚役へと着実にステップアップを続けていく。そして2006年、映画『ゆれる』(監督/西川美和)で主人公の元恋人役を演じ、「山路ふみ子映画賞」新人女優賞を受賞した。

 その後は、サバサバした雰囲気とハスキーな声を持ち味として、ドラマ『SP』、『MOZU』(2014)などでの警察官役、ドラマ『カレ、夫、男友達』(2011)、映画『すーちゃん まいちゃん さわこさん』(2013/御法川修)などでのキャリアウーマン役を得意とする一方、映画『さよなら渓谷』(2013/大森立嗣)、ドラマ『最高の離婚』(2013)などでの「色っぽいお姉さん」や、ドラマ『遅咲きのヒマワリ』(2012)の新米医師、映画『そして父になる』(2013/是枝裕和)でのしっかり者の母親まで、その役柄は従来の男女の境界を超えて広がっていく。2008年にはテレビ東京の深夜ドラマ『週刊真木よう子』で、毎週違う人生を歩む主人公12人をきちんと演じ分けてみせた(ちなみに、ブリッ子を演じると「女性が嫌いな女性キャラ」で知られるさとう珠緒さんに似ることも判明)。

 2015年のドラマ『問題のあるレストラン』は、「ただ、いい仕事がしたい」と願う主人公が、セクハラ・パワハラで職場を支配しようとする男たちに叛旗を翻し、同様に女として社会の壁にぶつかっていた“七人の侍”を集めてレストランを起業する痛快な「革命」物語。もはや志村喬の役どころに到達したヨーコ先輩(筆者より歳下ですが印象としては「先輩」)、優しさと凛々しさを兼ね備え、男女の間の「壁崩壊」を体現する存在として、これからも活躍し続けていただきたいです。
(NPO法人働く文化ネット「労働映画百選通信」No.04より)

 (しみず ひろゆき 映像ディレクター・映画祭コーディネーター)

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●労働映画短信

◎「労働映画アンケート・あなたの注目労働映画は?」/Webアンケートにご協力ください。http://hatarakubunka.net/または、「労働映画事業」で検索!/1月末まで受け付けています。

◎働く文化ネット第25回労働映画鑑賞会〜交通安全の最前線にて〜/上映作品:『ドキュメント 路上』(1964年/54分 監督:土本典昭)交通地獄の中で、違反や危険なしには働けないタクシー労働者の過酷な労働実態に迫る。/2016年2月4日(木)18:30〜/ (18:00開場)神田駿河台・連合会館2階201会議室<http://rengokaikan.jp/access/>/参加費無料・申込不要

◎働く文化ネットでは、日本映画百年の歴史が産んだ「労働映画」の中から100本を選び、日本の労働映画の豊かな世界を明らかにする作業を進めています。詳しくは働く文化ネット・労働映画スペシャルサイト<http://hatarakubunka.net/> 参照。

◎【上映情報】労働映画列島! 2016年1月〜2月 < http://goo.gl/cw1Jxv> ※【労働映画列島】で検索!

◇新作ロードショー
『白鯨との闘い』《1月16日(土)から 東京・新宿ピカデリーほかで公開》19世紀を舞台に、白い大型のマッコウクジラと捕鯨船の乗組員たちとの壮絶なバトルを描いたサバイバルドラマ。(2015年 アメリカ 監督:ロン・ハワード)

『火の山のマリア』《2月13日(土)から 東京・岩波ホールで公開、全国順次公開予定》活火山の麓に暮らす17歳の少女。貧しい両親は地主の嫁になることを望むが、彼女はコーヒー農園で働く男に惹かれていた…。マヤ民族の生活を通して、グアテマラの社会問題を描いたヒューマンドラマ。(2015年 グアテマラ、フランス 監督:ハイロ・ブスタマンテ)

『牡蠣工場』《2月 東京・渋谷 シアターイメージフォーラムほかで公開、全国順次公開予定》『選挙』『精神』などで知られる想田和弘の「観察映画」第6作。岡山・瀬戸内市牛窓にある牡蠣の加工場で働く人々を記録したドキュメンタリー。(2015年 日本 監督:想田和弘)

◇名画座・特集上映
【東京 京橋 フィルムセンター】1/16〜2/28「キューバ映画特集」…怒りのキューバ/低開発の記憶/天国の晩餐/他
【東京 角川シネマ新宿】1/16〜2/11「市川崑 光と影の仕草」…黒い十人の女/破戒/満員電車/私は二歳/他
【東京 早稲田松竹】1/30〜2/5「サタジット・レイ監督特集」…ビッグ・シティ/チャルラータ
【川崎 チネチッタ】1/23〜29 チネチッタ名画座 第44回 『生きる』(1952年 監督:黒澤明)
【秋田県民会館】1/30・31「あきたクラシックシネマ なつかしの喜劇」…おかしな奴/あゝ軍歌/喜劇・大安旅行/他
【大阪 九条 シネ・ヌーヴォ】1/30〜3/11「市川崑 光と影の仕草」…暁の追跡/プーサン/満員電車/他
【広島市映像文化ライブラリー】1/20〜24「PFFアワード・セレクション」…モーターズ/山守クリップ工場の辺り/他
【山口情報芸術センター】1/8〜24「映画女優・宮下順子をトッた監督たち」…赫い髪の女/火まつり/牧野村物語/他
【福岡市総合図書館】2/3〜3/6「韓国映画1934−1959 創造と開花」…漁火/授業料/ソウルの休日/他


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