北の大地から 旧軍都の亡霊

■【北から南から】

北 の大地から  旧軍都の亡霊      靖国「遊就館」旭川版              南 忠男


  ◇軍都旭川


  戦前の旭川は軍都であった。精鋭第7師団が駐屯し、駅前通りは「師団通り」
と呼称されていた。
  戦後は「平和通り」に改称され、五十嵐革新市政時代には、全国に先駆け
「歩行者天国」に改装された。
  旭川には二つの文学館がある。「三浦綾子記念文学館」と「井上靖記念館」
である。三浦綾子については小説「氷点」が、1963年、朝日新聞の懸賞小説に
入選してから文学活動が始まり、「道ありき」「石狩峠」「泥流地帯」「積木
の箱」「銃口」その他数多くの名著を残し、1999年77歳で他界された。作品の
いずれもが、旭川市とその周辺を舞台にしたものであり、名実共に旭川の作家
である。

  他方、井上 靖は、父親が旧第7師団の軍人で、旭川の軍官舎で靖が生まれ
ただけの話で旭川での活動も、旭川を舞台にした作品も見られない。従って、
井上 靖を語る場合は「軍都旭川」から始まることになる。


  ◇新装された「北鎮記念館」


   1936(昭和11)年に、当時の第7師団の兵営の一角に「北鎮記念館」が建
てられたが、70数年を経過した昨年5月、総額4億円の巨費~国民の血税を投じ
て「新・北鎮記念館」が新装オープンされた。当日は当時の久間防衛大臣(そ
の後、アメリカの広島・長崎への原爆投下は「しょうがない」発言で罷免に追
い込まれる)も出席してテープカット等、完成記念行事が行われた。
  北鎮記念館の「北鎮」と云う意味は、明治維新後北海道に開拓使をおいて国
策で北海道の開拓を進めたのは、当時のロシアの南下政策に対抗して国を守る
と云うことが第一義的目的であったことを象徴する言葉である。


  ◇旧軍都旭川と第7師団


  1896(明治29)年札幌に新設され、1901(明治34)年に旭川に移駐した第7
師団は日本陸軍最大規模のものであった。日露戦争、シベリア出兵、中国侵略
の15年戦争・太平洋戦争などで大きな役割を果たしている。なかでも、ノモン
ハン事件、アツツ島玉砕で多大の死者・負傷者を出したのはこの第7師団であ
る。戦後、自衛隊の創設にともなって、旧第7師団の兵営跡地に創設されたの
が自衛隊の第2師団である。
  旭川にある北海道護国神社も靖国神社の地方版であり、ここには靖国神社の
境内にある「遊就館」に匹敵する侵略戦争を賛美する数々の物品が陳列されて
いる。新・北鎮記念館はこの北海道護国神社と国道40号線を挟んで真向かいの
自衛隊駐屯地内に建設されている。
  この新・北鎮記念館には明治の屯田兵時代から日露戦争、昭和の15年侵略戦
争、太平洋戦争そして戦後の自衛隊第2師団など戦争・軍備の歴史的展示品が
陳列されている。


  ◇海外派兵・イラク戦争への参戦


  2003(平成15)年12月、イラクの南部都市サマーワに宿営して活動した、事
実上の海外派兵には旭川の陸上自衛隊第2師団460人が参加した。当時、略称
「イラク特別措置法」の国会審議で、イラクへの自衛隊の派遣は「人道復興支
援活動」であり、活動のエリアは「非戦闘地域」に限定するもので、憲法が禁
止する海外派兵ではないと強弁する当時の小泉内閣で「非戦闘地域」とはイラ
クのどの地域を指すのかとの追求に対して、「自衛隊の行くところが非戦闘地
域だ」との答弁にならない答弁で終始したが、海外派兵の事実を隠蔽すること
はできなかった。


  ◇自衛隊の質的転換と新・北鎮記念館の新装オープン


  自衛隊が「防衛省」に昇格したり、インド洋で続けられている給油活動がア
メリカのイラク戦争に加担するものである事実は、自衛隊の質的転換を意味す
るものである。
  新・北鎮記念館の新装オープンは、この自衛隊の質的転換と軌を一にするも
のだ。
  北鎮記念館の新しいパンフレットには、自衛隊の「国際貢献」を宣伝し、海
外派兵を強調している。いわく、「國際社会の平和と安全を確保・維持するた
めに行われる・・・・活動等に協力することは我が国の国際的責任と義務で
す。第2師団は、平成5年3月~9月の間実施した、第2次カンボジア派遣施
設大隊への参加をスタートに各種の~国際平和協力活動~國際緊急援助活動~
に参加しております」と。


◇形骸化させてはならない「平和都市宣言」


  冒頭で述べたように、旭川市のメンストリートの「師団通り」が戦後「平和
通り~歩行者天国」になり、「平和都市宣言」を高々と掲げてきたが、陸自隊
第2師団のイラク派兵の際に、黄色い旗やハンケチを掲げて送り出したり、新
・北鎮記念館の建設に協力する防衛族議員・企業家・一部市民団体の存在は
「平和都市宣言」の空洞化をめざすものである。
  海外派兵と云う自衛隊の質的転換を阻止するために「憲法9条を守る会」など
平和と民主主義を守る市民の連帯の輪を広げていかなければならない。5月3
日の憲法記念日は私も老骨にムチを打って運動に参加したい。
        
                       (筆者は旭川市在住) 

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