北海道が燃えた日

北の便り(13)

寒い北海道が暑く燃えた日     南 忠男

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(1)北海道日本ハムファイターズが日本一に

 10月26日「北海道日本ハムファイターズ」が本拠地の札幌ドームで「中日ド
ラゴンズ」に4-1で逆転勝ち、4勝1敗の成績で優勝して北海道民に対し大き
な夢と感動を与えてくれた。

 日本ハムファイターズは2004年に東京から札幌へ本拠地を移転、「北海道日
本ハムファイターズ」と改称し、「道民球団」として再出発してわずか3年目の
快挙である。

 球団自身も地域密着型をめざして努力してきたが、ドームが揺れるような観衆
の声援はもちろんのこと、広い北海道のすみずみで展開されるテレビ観戦による
応援の盛り上がりなどは当初予想もされなかったことである。

 日本ハム優勝の決定打は北海道民の一丸となった声援に後押しされたことで
ある。7月以降、札幌ドームでの勝率は8割を超えて、応援も一段と熱気を帯び
押せ押せムードに包まれていた。

 日本シリーズでの日本ハムは、敵地のナゴヤドームでは初戦で負けたものの、
第2戦を逆転勝ちして、1勝1敗の対の記録で本拠地札幌ドームにもどって来た。
「札幌ドームで日本一の胴上げを見たい」という熱狂的なフアンの声援は広い北
海道中にコダマした。

 第3戦から第5戦までの3試合とも4万2千の観衆で札幌ドームは満席にな
ったばかりか、この三日間は北海道民の多くがテレビで観戦し声援を送った。

 日本ハムが優勝まであと一勝という、26日の第5戦(HTB放映)の平均視
聴率(札幌地区、ビデオリサーチ調べ)は52.5%を記録し、テレビ朝日系で全
国中継された各地の平均視聴率は、関東地区で25.5%、名古屋地区で31.4%、
関西地区で26.5%であったと北海道新聞が報じている。中日ドラゴンズの根拠
地である名古屋地区の31,4%と比較しても21.1%リードしている。

 「北海道日本ハムファイターズ」が日本一になったことに加え、名古屋を根拠
地とする「中日ドラゴンズ」を相手にして4勝1敗という成績で圧勝したところ
に特別の意義がある。

 不況の谷間から脱出できないでいる北海道と、販売台数世界一に迫るトヨタ自
動車を抱え、日本で最も景気のよい名古屋ブロックの対決で、北海道が勝利した
ことである。

 他人が見れば空騒ぎと映り、馬鹿馬鹿しく思うかもしれないが、私は郷土愛と
連帯意識の発露と賞賛したい。

 北海道には独特の挨拶言葉がある。冬になれば毎日のように雪が降るが、近所
同士、友人同士が顔を合わせると出てくる言葉は「よく降りますね」だ。雪の降
らない日は放射冷却現象で極度に冷え込むが、出てくる言葉は「今日はシバレま
すね」である。この「よく降りますね」「今日はシバレますね」という挨拶言葉
は、積雪寒冷地に住む住民~北海道人~の自然との闘いへの連帯の呼びかけであ
る。

(2)旭川市に革新市長~28年振りに奪還

 日本シリーズの第3~5戦が札幌ドームで闘われている24日~26日が丁度中
盤戦となった旭川市長選挙(10月26日投票)で、民主党・連合推薦の西川将人
氏が、自民・公明両党の推す候補を接戦で破って当選した。新人5人が競う暑い
戦いであったが、旭川市では、28年振りの革新市長の誕生である。
 
 28年前の五十嵐広三市長が37歳での当選であったのに、奇しくも西川氏も
37歳で道内の首長では最年少。全国の市長の中で三番目に若いと言われる。
 
 五十嵐革新市長が誕生したのは、1963年の統一地方選挙で、60年安保以降の
民主主義運動の高揚期であった。
 
 いま、旭山動物園の入園者数は日本一に達しているが、開園は五十嵐市長時代
にさかのぼることになる。
 
 「平和通り買物公園」は歩行者天国として、人間優先の地方自治を全国に先駆
けて実施したものである。現在の買物公園は、大型店の郊外への集中によって日
に日にさびれ、中心街の活性化という全国共通の課題を抱えている。
 
 五十嵐市長の時代は高度経済成長の中にあって、住民税や地方交付税が右肩上
がりに増えた時代で、三割自治と言われながらも住民の輿望に応える各種施策の
展開も容易であった。
 
 しかし現在の旭川市の財政実態は、借金まみれで財政再建団体転落の寸前にあ
り、次々と事業の縮小をしなければならない状況に追い込まれている。人口減に
加えての高齢化の波は地方自治体が多くの荷物を背負わされることになる。
 
 財政再建・市役所改革、経済の活性化、住民福祉等々多様な住民要求に応える
ことは容易でない。
 
 いま、求められるのは発想の転換である。第一はハコモノや給付事業の見直し
である。新しいハコモノではなく、現在の施設が有効に活用されているかについ
ての点検・見直しからはじめなければならない。
 
 給付事業についても、例えば、敬老の日に市長が「長寿祝い金」を配って歩く
ような事業は愚劣である。健康や趣味を活かす生きがい活動、社会参加の機会を
創るための誘導施策こそが自治体に求められる。
 
 第二は住民参加の問題である。住民参加と云えば、住民参加の審議会、アンケ
ート調査などがあるが、どちらかと云うと「御用聞行政」となっているので、住
民の主体的参加の手法について再検討されなければならない。
 
 第三は情報公開である。各市町村とも立派な広報誌を月刊で発行しているし、
HPの開設も全市町村に普及しているが、住民参加の起爆剤になるような情報公
開にはなっていない。
 
 市役所改革を各候補とも最優先課題としてあげていたし、当選した西川氏が、
自治労の推薦を受けた候補であるがため、職員に甘く、思い切った行政改革がで
きないのではないのかとの懸念もあるが、職員の数とか類似市との比較とかの表
層的な情報ではなく、政策の優先順位を市民自身が考えることのできるような質
の高い情報公開が行われなければならない。
 
 地方自治は民主主義の学校と言われるが、「あれも・これも」といった量的時
代から、優先順位という質の時代を迎え、情報公開に民主主義の学校としての真
価を発揮してもらいたい。
 
 ここに、28年以来の革新市長の誕生と札幌に次いでの北海道第二の都市旭川
での革新市長の誕生の意義が求められる。

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