原子力に代わるエネルギーとしての天然ガス

■ 原子力に代わるエネルギーとしての天然ガス    望月 喜市

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 福島第1原発の未曾有の大事故で、日本の原発政策は大きな転機を迎えている。
  現在稼働している原発発電を直ちに止めることは、現実的ではない。しかし、
この事故以前に構想されていた、原発の新設を中核とする将来のエネルギー供給
プロジェクトは、原発を縮小し、全廃する方向のエネルギー政策に転換すべきだ
と考える。

 現在の現実的エネルギー政策についての議論では、3つの視点が必要だ。電力
消費が上昇する今夏までの短期的な施策、次に、2~3年後を着地点とした中期
的施策、そして、10年以上を見込んだ長期的な施策である。 まず今夏までに
は如何なる対処法を取っても首都圏の電力不足は回避できない。

したがって需要サイドの節約で対応するしかない。この中には、計画停電や、企
業メーカー・商業施設・娯楽、スポーツ施設などの電力消費の節約、家庭での節
電(クーラーの温度引上げ、その他)などあらゆる節電効果対策が含まれる。
  次に中期的な施策では、太陽光などの普及に時間がかる新エネルギー代替政策
も間に合わない。電力不足の穴を埋める選択肢は、比較的安定している、LNG
か、もしくは化石燃料の高度利用しかない。

「火力発電所の増設には、1~2年を要する。今すぐに建設に着手して、やっと
来年夏に間に合うタイミングだ」と専門家はいう。LNGの利用に異を唱える人
は少ない。政府は火力発電の拡充を急ぐべきだ 。この趨勢を利用して、LNG
でなく,気体ガスのままの天然ガス(PLガス=パイプラインガス)利用体制の
構築(日本縦貫幹線パイプと、そこから分岐する中小のパイプネットの構築)を
5年ほどの期間で実施する運動を始動させるえきである(朝倉堅五プロジェク
ト。朝倉氏によれば、そのコストは1兆円強ですむという。)。もちろんLNP
の輸入拡大は続くが、LNPを消費地点に届けるためにも、パイプライイン網は
ひつようだ。
 
最後に、長期的な施策では今後10年のレンジで考えれば、原子力の構成比が
著しく低下し、その穴埋めを太陽光(太陽熱)や風力で埋めようとしても、発電
コストや敷地面積で原子力には及ばない。しかしこれは、原発の社会的コストを
無視した計算であり、それを計上すれば、コストは遥かに大きくなる。さらに地
震国日本では、今度のような事故の可能性は高い。それに加えて、原発は消費地
を遠く離れて建設されるから、送電ロスも大きな問題だ。

したがって、大容量発電が可能で、効率が高い、ガス火力と分散発電が可能な
コージェネシステム(消費地点での発電と給熱が可能で熱効率は80%近いと言わ
れている。究極の地産地消)を導入すべきだ。この時点でガスパイプ網が日本国
土に張り巡らされていれば、LNGでなく生ガスでの利用が可能になり、サハリ
ンからパイプで北海道経由で東京・新潟方面への輸送する構想が現実味を帯びて
くる。将来、コジミノ港とコルサコフ港からのLNG輸出は、日本を含むアジ
ア・太平洋方面へ向かって拡大するので、LNG価格は上昇するであろう。

その場合、LNGより安く、(LCA:ライフ・サイクル・アセスメントで評
価した)エネルギー効率と環境負荷で優れているPLガス輸入の相対メリットが
享受できるのだ。しかも、PLガスは、北海道経由となることから、ガス輸送コ
ストの点で、本州方面より有利である。当面LNGの緊急輸入とガス火力発電で対
応するとしても、長期的には日本に張り巡らされた天然ガスの供給システムを構
築すべきだ。そうしないと、

21世紀後半段階では、中国・韓国とのエネルギーコスト競争で大きなハンデ
キャップを負う事にことになろう。 さらに、天然ガスは、燃料として利用する
だけでなく、『ガス改質』によって水素を取り出し、燃料電池に利用する技術も
急速に発達している。また、石油化学の代わるガス化学産業も展望されている。
北海道は、天然ガス高度利用の一大先進地区に変貌する夢も、空想ではなくなる
時期も50年のレンジをとればやってこよう。(KM) その2:天然ガスを巡
る需給体制の変化と展望:(次回に続く)

(筆者は北海道大学名誉教授)

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