固定価格買い取り制度一年の成果と課題

【運動資料】

固定価格買取制度一年の成果と課題

公益財団法人 自然エネルギー財団

 固定価格買取制度が導入されて一年が経過するのに合わせ、公益財団法人自然エネルギー財団は、日本のFITの一年間の成果と課題について評価を行いましたのでお知らせします。概要は以下のとおりです。詳細につきましては、次ページ以降をご覧下さい(あるいは、当財団ホームページ http://jref.or.jp/
をご覧ください)。

■■ 概要 

1.FIT導入による大きな成果

 2013年6月末日で固定価格買取制度(以下、FIT)導入後一年が経過する。導入成果については2013年2月末日までのものしか公表されていないが、一年間の制度運用によって、FITは、自然エネルギーの普及拡大を大きく後押しする制度であることが明らかになった。自然エネルギーに対する膨大な投資需要は、様々な業種からの新規参入や新たなビジネスモデルを生み出し、民間の技術開発を刺激するなど、民間主導の環境エネルギー技術への投資と技術革新の機運を高めている。

2.さらなる自然エネルギー普及に向けたFITの課題

 FITの運用で見えてきた様々な課題も明らかになった。とりわけ以下の4項目が重要である。

(1)電力会社による自然エネルギーの接続制限・接続拒否が、普及を阻害して
  いる。
(2)自然エネルギーの導入目標値がなく、買取価格の見通しがないため、自然
  エネルギーへの投資判断を促す予見可能性に欠けている。
(3)回避可能費用(*1)が過小評価されており、賦課金が過大になっている。
(4)買取の枠だけ取得し、システムコストの低下を待った導入が可能となる運
  用システムになっている。

 これらには早急に対応し、改善すべきである。政府は、長期的に自然エネルギーを主力電源として育てていくという原則を確認することが不可欠である。その上で、FITの設計においては、費用負担の低減、健全な産業育成をいかに図っていくかという長期的戦略に基づき、透明性をもった議論と適切な修正を行っていくことが求められる。

以上

 (*1)回避可能費用とは、電力会社が自然エネルギーを買い取ることにより、
  本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることが出来た費用をいう。

■■ 詳細版 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
1.FIT導入による大きな成果

(1)自然エネルギーの飛躍的導入

 2012年7月から2013年2月までの8ヶ月で運転開始した自然エネルギー発電設備は合計135万kWになった。また、今後の導入予定も合わせた設備認定量は、1,306万kWにものぼる。これら認定設備がすべて運転開始すれば、自然エネルギーの総設備容量は3,337万kWに達する(*図1参照)。その年間発電量は約820億kWhとなり、100万kWの原子力発電13.4基分に相当する(*2)。

  *図1 自然エネルギー発電の累積設備容量
  http://www.alter-magazine.jp/backno/image/116_9-1.jpg

 (*2)設備利用率70%とおき、100万kWの原子力発電1基あたり年間61.3億
  kWhの発電量で想定している。

(2)新たな民間活力の創出

 FITは、自然エネルギーに対する投資需要の高まりを受けて、自然エネルギーの多様な導入モデルや技術開発に関する民間の取り組みが活発化している。例えば、「農電併業」や「分譲ソーラー」、「屋根貸し制度」、「市民ファンド」など導入モデルの開発とその展開が全国各地で行われ、様々な投資機会が生み出されている。また、太陽光発電の設置工法の開発、小型地熱発電技術などの開発など、企業の間で発電技術・製品の開発機運が高まり、環境技術のイノベーションを後押ししている。

(3)地域の活性化に貢献している

 1)これまで活用方法が見いだせなかった土地の有効活用につながっている。工場跡地、廃棄物処分場跡地、炭鉱跡地など未利用地を有効活用できるようなった。実際に工場立地動向調査(速報)によれば、2012年の工場立地面積は前年の3倍に急増した。この増加分のほとんどは電気業の利用地の増大であり、太陽光発電等の導入によるものと推察される。

 2)新たな雇用の増加にもつながる。太陽光発電についてはメガソーラー建設時に数十名程度の雇用を生み出し、バイオマス発電(5MW)は、燃料調達も含め運転開始後も50名程度の雇用創出につながる(*3)と推定されており、各地での開発事業による雇用効果は大きい。

 (*3)衆議院経済産業委員会会議録第183回第18号より。

2.さらなる自然エネルギー普及に向けたFITの課題

(1)自然エネルギーの系統接続制限・接続拒否

 自然エネルギー事業者に対する系統接続の要請に電力会社から接続制限・接続拒否の回答がなされる案件が相当数ある(*4)。特に、太陽光発電の大規模導入案件が集中する北海道電力は、2000kW以上の太陽光発電の受け入れ総量を40万kWに抑制する方針を打ち出した。また、系統への接続費用についても多くの事業者が疑問を持っており、競争原理の導入や情報の透明化など改善の余地が大きい。

 こうした問題は、自然エネルギーの普及を阻害している。この原因は次の2点にあると考える。

 1)自然エネルギーの優先給電ルールが不十分である。電力系統利用協議会は、自然エネルギーのうち太陽光や風力といった自然変動電源に対する優先的に取り扱うようルールの改正を行った。しかし、自然エネルギーの給電は、全国融通の活用、原子力発電などの長期固定電源の出力抑制より先に出力抑制対象になっており、優先されているとはいえない。

 2)電力会社は系統容量が足りないことを理由に接続拒否あるいは接続の制限ができる。このため、電力会社には、自然エネルギーを系統に受け入れるインセンティブがない。早急に、電力会社が自然エネルギーを系統に受け入れるために、系統の増強等を行うよう、義務化あるいは適切なインセンティブの付与を行うべきである。

 (*4)詳しくは、自然エネルギー財団(2013)「いますぐに「優先接続」の
  導入が必要である」を参照のこと。

(2)自然エネルギーへの投資判断を促す予見可能性に欠ける

 1)次年度の買取価格について予見できないことは、事業者にとっては大きなリスクになる。これに対しては、将来の買取価格の見通しをある程度与えておくことが有効であり、それと同時に発電設備メーカーに対する製品コストの引き下げ圧力にもなるメリットもある。

 2)新しく検討されているエネルギー基本計画でも、自然エネルギーの導入目標値が示されない可能性もあり(*5)、長期的な自然エネルギー市場の展望が不透明である。しかし、長期的な市場展望は、発電に関する様々な機器・部材を製造するメーカーの設備投資判断に多大な影響を与えるため、市場展望の指標となる野心的な長期目標の設定が不可欠である。

 (*5)2013年3月閣議後の会見において、茂木経済産業大臣は「今年の末の時
  点でエネルギーのベストミックスを確定するということは、なかなか難しい
  のではないか」と発言したとされている。「茂木経済産業大臣の閣議後記者
  会見の概要」より。

(3)回避可能費用が過小評価されており、賦課金が過大になっている

 政府は回避可能費用(*6)を算定するのに、全電源平均可変費用を用いている。全電源平均可変費用は、水力発電、原子力発電、火力発電などすべての電源の可変費(燃料費が大部分である)を送電端電力量で割ったものである。

 これは、現在の回避可能費用の計算方法が、電力会社が実際に支出をまぬがれている費用よりも、低く見積もられていることを意味する。なぜならば、電力会社は、新たに自然エネルギー電力が増えれば、経済性の観点から最も経済性の悪い調整電源(石油火力発電)から落としていく運用をとるからである。したがって、回避可能費用は、最も経済性の悪い調整電源の発電費用と見積もるのが妥当である。
 現在のように回避可能費用が過小評価されることで、再エネ賦課金は高く見積もられ、それだけ国民負担が大きくなっている。政府はこうした実態を踏まえ、適切な回避可能費用の算定を行うべきである。

 (*6)回避可能費用とは、電力会社が自然エネルギーを買い取ることにより、
  本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることが出来た費用をいう。
  再生可能エネルギーの課徴金単価は、買取費用総額から回避可能費用を差し
  引き、全販売電力量で割った値である。

(4)その他の問題

 1)現在のFITの設備認定の運用では、太陽光パネルのメーカーの変更、機材型番の変更、事業者の変更、所在地の変更も軽微な変更とされている。また、事業者の運転開始時期に関して基準が示されていない。こうした運用システムでは、高い買取価格での設備認定を取得し、太陽光発電システムの価格の下落をまって、安く導入することで、高い利潤を得ることが可能である。こうした制度の悪用につながらないよう、対応を早急にすべきである。

 2)自然エネルギー資源が豊富にある地域といえども様々な規制によって立地が制限されており、自然エネルギー普及の大きな障害になっている。例えば、現状では第一種農地では農地転用が認められず、農地への立地が困難になっている。これは耕作放棄地においても同様である。しかし、風力発電の場合、専有面積は極めて小さく農業との共存が可能であり、売電収入等により農業振興にも貢献しうる。これらを踏まえ、農業と共存可能な自然エネルギーの導入の条件を整備すべきである。

 3)電気事業法の改正案は参議院で採決されず廃案となり、その方向性が極めて不透明になっている。しかし、自然エネルギー普及のためには、送電網の中立かつ広域運用、電力市場の活性化など、電気事業規制改革が欠かせない。次の国会ではこの改革を前進させるためのさらなる議論が望まれる。

                            (2013年6月28日)
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