【沖縄の地鳴り】

宜野湾市長選挙—「オール沖縄」立直しの急

平良 知二


 普天間飛行場を抱える宜野湾市の市長選挙(1月24日)は、政府・自民党などが推す現職の佐喜真淳氏が当選した。翁長県知事ら、いわゆる「オール沖縄」の候補者は大差の敗北であった。大きな差の開きもあって「辺野古新基地」に反対する多くの人たちが落胆したことは間違いない。
 選挙前から現職の強さは知られていたが、新基地反対派は「オール沖縄」の支持の“厚み”に期待したところがあったようだ。その厚みが機能しなかったということか、翁長知事の奮闘だけが印象的だった。政府首脳は“それ見よ”とばかりに「オール沖縄」批判を展開している。しゃくではあるが、冷静に受け止めて事態の転換を図る必要がある。

 新基地反対の候補者の敗因がいくつか言われている中で、若い世代の動向が気になる。当日のNHKの出口調査で、20代や30代の若い層の大半が現職を支持していた。新基地反対の候補者とはかなりの差があった。現職の勝利は若年層をつかんだことが大きかったようだ。
 その理由はいろいろあろう。現職の「普天間基地の金網を引っ倒そう!」といった絶叫的な演説が、普天間基地撤去への力強い行動宣言として若い世代に受けたのかも知れない。
 「辺野古」云々は“封鎖”して、目の前の、今ある普天間基地の閉鎖問題に関心を呼び寄せたともいえる。戦後から復帰以来の沖縄の苦渋の歩みを生きてきた高年代の者と違い、若い世代には今、現実をすぐに打開したいという思いが強いのだろう。

 いずれにしても、若者にも「辺野古新基地」のもつ意味を理解させる取り組みが迫られている。安保法制論議のとき、若者のシールズが立ち上がったように、若い世代の問題意識は薄くはない。しかし、若者と接する機会がほとんどない自分が言うのも何だが、先の出口調査での差は驚きであった。若い世代の考え方みたいなものを改めて感じさせられた。
 将来を担う世代だけに“構造的な沖縄差別”の問題を深く洞察するような力になってほしい、と願うばかりである。

 今年は参院選と県議選がある。
 「辺野古新基地」をめぐり、どういう主張が繰り広げられるか、大いに注目されるが、その論戦はいま進行中の「辺野古新基地」裁判(3つの訴訟がある)の行方にもよる。
 裁判所(福岡高裁那覇支部)は訴訟のひとつについて、国と県に和解案を提起している。国、県ともその案に対する結論をまだ出していない。県は拒否の姿勢だ。
 これら裁判の論戦は注目されるが、一方で「オール沖縄」の裁判所前の集会に若い世代が少ない。開催時間の関係かとも思われるが、もっと多くの姿があってもいい。
 気になるところである。

 (元沖縄タイムス編集局長)


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