【オルタの視点】 

<インタビュー>

なぜTPPに反対すべきか〜山田正彦元農相に聞く

山田 正彦・聞き手:北岡 和義


【北岡和義】(以下、北岡) 今日はTPPについて反対運動の先頭に立ってこられた先生に、大詰めを迎え国会審議を前にして、なぜ私たちがTPPに反対すべきかをお聞きしたいと思います。

【山田正彦】(以下、山田) TPPは分かりにくいと多くの人から言われますがよく説明したり、ここにあるパンフ、私の書いた本などを読んでくれた人は、良く分かった、反対しなくてはと言ってくれます。例えばこの『そうだったのか!TPP』というパンフは1部5円ですが50万部も出ました。また私の『TPP24のギモン』という小冊子(1部100円)は1万部がすぐ売れて、今6万4千部です。だから国民は関心を持っています。政府やマスコミがTPPの本質を国民に知らせようとしないのです。

【北岡】 交渉が秘密交渉なので国民はさっぱりわからない。安倍政権も前の民主党もTPP推進派の基本的な狙いはどこにあったのでしょうか。

【山田】 政府もアメリカも、関税が撤廃されていけば自由貿易で輸出が伸びそれだけ生産も伸びて雇用が増える。だからすべてプラスで良くなる。関税を撤廃することで安いものが入ってくるから暮らしもよくなり win-win の関係だと言ってきたわけです。
 しかしNAFTAも20年前にカナダとメキシコとアメリカでやって、たしかにアメリカからレッドコーン、トウモロコシなどが最初の年に800万トン流れたがメキシコの小さな350万戸の農家が倒産して南西部からアメリカに入った。その代りにアメリカ人が500万人失業したのは、アメリカの自動車産業などがメキシコに4,000工場出ていったからです。今メキシコの自動車産業は世界で4番目の輸出国です。

 結局そうしてどんどん人件費が下がり、42年前の水準までアメリカ人の給料が減った。ここでアジアとTPPをやって、ベトナム、マレーシアから安い労働力が入ってきたら大変だ。このTPPやったらアメリカの1%の大企業にはプラスになる。しかし、ほとんどのアメリカ人は泣き目にあうから反対なのだとアメリカの労働組合はTPP断固反対で頑張っている。そしてアメリカの環境団体も全て反対している。彼らは大統領選だけでなく下院議員の総選挙でも一人でもTPPに賛成するやついたら必ず落とすと息巻いています。

【北岡】 結局自由貿易主義というものはプラス面があると同時に強いものが勝つということですね。

【山田】 弱肉強食の市場に投げ込まれるのだから、資本力のある方が必ず勝つ。アメリカはこの20年で中小企業がほとんどなくなった。日本はまだ中小企業が80%で日本経済を支えている。その市場競争を制限なくやろうというのです。例えば本来なら医療・教育・介護・水あるいは主食などは、ただ市場経済、弱肉強食の市場に投げればいいという問題ではない。

【北岡】 それは結局公的機関、あるいは政治というものが関与すべき部分があるはずなのに、それがなくなるということですか。

【山田】 そうです。そういう社会的資本というのはみんなで守らなければいけない。今回のTPP協定は、私たちが国から受ける医療・教育などのサービス、そして地方自治体から受ける水・医療・介護・福祉とかいうサービスは約70兆円の市場ですが、これらを全て例外なく郵政民営化のように民営化するというのです。言い換えれば、すべてを市場の弱肉強食の原理でやらうというのがTPPです。多くの人は関税の問題だと思っていますがむしろ狙いはこちらなのです。

【北岡】 アメリカの大統領選挙では、民主党のクリントンも共和党のトランプもTPPに反対しています。オバマ政権は政権交代前に議会の承認をとろうとしていますが、そんなことが可能でしょうか。

【山田】 アメリカ国民の7割が反対しています。だから大統領候補になる人は共和党でも十何人いましたがみんなTPP反対で選挙では賛成といえない。オバマが何で強硬に進めるのかよくわかりませんが、ウォール街から選挙資金も貰っているし、軍産複合体の国だから戦争だけは避けようとしてこのTPPだけは妥協しているのかもしれません。しかし民主党の議員も、アメリカ大統領に外交交渉権限がないから、ファースト・トラックボーンは大統領に外交権限を与えるという法律を一票差で去年成立させましたから、本当に際どいところなのです。今回、大統領選挙と同時に下院議員の選挙がありますが、ここでは共和党のお茶会グループがいわゆるISDS条項にえらい反対でトランプは移民問題でメキシコに壁を作れと叫ぶ状況ですから、来年1月から新しい議会が始まったら通りません。

【北岡】 批准できないということですか。

【山田】 今年の2月4日に署名した今度の協定では2年以内に12カ国のうちの6カ国以上、そのうちGDPの85%の国が批准できなければ流れます。アメリカか日本が批准できなければ流れる仕組みです。

【北岡】 アメリカでそんなに大きな反対があるのに日本では安倍政権は何が何でもやると言う狙いはなんでしょうか。財界の要請ですか。

【山田】 実際にはトヨタにしても30年後の関税撤廃でしかも部品は中国やタイなど各国でつくり、日本は組み立て工場ですから原産地比率が高いとメリットがない。
 ただメリットがあるとすれば麻生総理が2013年にアメリカに日本の水道事業は全て民営化すると約束したように、これから水事業や教育参入などについてアメリカがやっているように、株式会社の公立学校をどんどん作るとトップは言っています。アメリカはオバマ政権になって公立学校4,000校を閉鎖し民間の学校にして、それをアメリカのチャイルドなんとかという最大手の会社にやらせた。今それが大変な状況で、金持ちじゃないと教育を受けられない。公立学校は荒れて授業ができない。その間に30万人の教職員をクビにした。それをこれから日本でやるという話です。TPPを読むと教育・介護・健康保険も見直しを約束している。

 もうアフラックの医療保険を認めたので交通事故の自賠責保険みたいなものが公的保険で、あとは民間医療保険に変わる。ですから金持ちでないと医療を受けられない世の中になるのは間違い無い。新しい分野では、例えば高速道路は国有事業ですがあれも民営化する。ニュージーランドはやりましたが、日本の144の国立病院を民営化して独立行政法人に衣替えし、アメリカの株式会社に売ってしまうのです。オリックスなど一部の企業には利益があっても日本国民にはなんのメリットもない。
 こんなものをなんでやろうとしているのか。私が甘利元大臣の番記者から聞いた話ですが、オフレコで番記者が『今回のTPPで日本のために何を勝ち取ったのか』と聞いたら、『彼は何も言わずにしばらく考えて、安全保障のこと、尖閣の話をしきりにしていました。』というのです。

【北岡】 それはどのような意味になりますか。

【山田】 本当はそんなこと全然ないのだが、安倍の頭の中には、いわゆる中国の脅威があるからという理由で、アメリカから武器を買って、尖閣を守ってもらうためにアメリカに日本をすべて合わせること、そして日本を戦争ができる国にすること、この二つしかない。
 日本の政治家というのはアメリカに行くとみんな何でもいうことを聞く。鳩山さんみたいに基地を断わったり、小沢さんのように第7艦隊だけでいい、あとはみんなアメリカに帰れと言ったら、結局検察庁から特捜が入った。アメリカの飴と鞭。飴はお金です。ドル紙幣だって色はついてないから、我々政治家やっているとそういう話があります。アメリカの企業は政治家への献金は青天井なので、アメリカの法律では日本の政治家にいくら献金しても罰せられない。日本ではバレたら外国企業からの献金は禁止されるが、日本の子会社使ってやるとかいくらでも抜け道がある。

 ファイザーというアメリカの製薬会社がアイルランドのアラガンという製薬会社を買収してそこに本社移すと、本社を移しただけで日本円で9兆8千億円節税できる。アメリカは売り上げで42%の事業税、アイルランドは34%。その差額だけで9兆8千億円。桁が違う。製薬の業界だけで毎年5千億円政治献金している。児玉誉士夫はロッキードの時に20億円もらった。あれはもう30年、40年前で今は桁が違うと思う。
 それから我々は国会議員になった時からアメリカに盗聴されている。不正献金、選挙違反とかは選挙が終わって何年もたったのに挙げられたりする。やろうと思ったらいつでもやられます。女性問題なんかも全部調べ上げている。週刊誌などメディアを金で動かす。「電通」が巨大なメディア支配をしている。その電通はアメリカ・ウォール街と20年も前からしっかり繋がっている。だからそういう中で下手すると政治的に殺されることもある。

【北岡】 怖いですね。

【山田】 何しろ無駄なのに東京地検特捜部が20人も30人も入ってくるのですから。

【北岡】 TPPの交渉にはやっぱりそういう裏というか背景があるということですか。

【山田】 私は、そういうことがなければ、日本を売るような、どう考えてもメリットがないTPPを、日本の政治家がそれをわからずにやっているとは思えない。だからウォール街から脅かされ軍産複合体から脅されているということもあり得ると思う。

【北岡】 日本では安倍政権が国会審議を強行しようとしていますが。

【山田】 自民党は2009年、2012年の総選挙で『TPP断固反対、交渉させない、嘘つかない、ブレない』と言って農民票をかっさらって政権交代した。今は手のひら返しでTPPやろうとしている。

【北岡】 逆に安倍政権はTPPで問題を抱えていると理解していいでしょうか。

【山田】 安倍政権が問題を抱えているというよりも安倍政権そのものが本当におかしい。南スーダンでも先進国がみんな引いているところに日本がのこのこ出ていって、あそこの国民を守りますという。戦争になるに決まっているのです。それなのに自衛隊員を安全で安心なところに行かせるのだから心配いらないという。安倍政権は国民を騙している。

【北岡】 山田さんのご意見はどれだけ日本国民一般に知られているとお考えですか。

【山田】 全くメディアが取り上げませんからね。

【北岡】 やっぱりメディアの問題が大きいですか。

【山田】 大きいですね。僕はTPP反対のデモによく参加しますが、アメリカのワシントンポストやAP通信は記事にし、イギリスのガーディアン紙は一面の半分に私たちのデモの写真を載せたりします。

【北岡】 アメリカでは報道されるが日本のメディアは報道しない。

【山田】 マスコミはTPPのことを何も報道しないのに今国会の最大の争点はTPPだと言っている。メディアは何かTPPの中身を報道しましたか? ただ農業と経済の問題だというだけで、いわゆる表現の自由、インターネットの自由、こういうメルマガの規制もあることなどを報じない。これは知的財産権の18章の80条に政府の法律で規制すると書いてある。

【北岡】 安倍政権は憲法改正の自民党案で、かなり国の権限を強め、個人の権利を抑えて、国家のためにみたいな、昔の日本に戻っていく政策をとってメディア規制をやろうとしています。TPPもそういう安倍政権のやり方の一環と捉えていいでしょうか。

【山田】 まさにそうです。安倍政権はいわゆる1%の富裕層のために日本を犠牲にしまいかねない独裁政権になりつつある。

【北岡】 安倍政権はTPPを強行突破で通すのですか。

【山田】 そうですね。ベトナムが、ああいう国だからTPPを7月には通すと思ったら来年まで持ち越し、オーストラリアも来年になりそうです。今の所アメリカが不透明なのに通そうとしているのが日本です。ニュージーランドは国民の多くが反対なので閣議で見合わせている。チリとペルーは国会議員の多数が反対している。

【北岡】 アメリカは来年の1月20日過ぎてしまえばもう反対の大統領が出るから、何れにしてもオバマは年内にやらなきゃアメリカは批准できない筈ですか。

【山田】 ただ一つ怖いのは、日米並行協議というのがある。これをぜひ詳しく調べて下さい。これが出た時、私はブログでミズーリ号以来の日本の降伏文書だと書いた。これ読んで貰らえれば分かるのですが、アメリカのとは書いてないが外国の資本家の要望を各省庁は聞いて、そのできるものを宮内や竹中平蔵とかがいる規制改革会議に付託する。規制改革会議の提言に日本政府は従うと書いてある。

【北岡】 規制改革会議というのは事実上の規制緩和会議で、宮内さん竹中さんは徹底した緩和論者です。

【山田】 だからTPPの内容を規制改革会議に付託して、規制改革会議は今度のTPP承認の法案と同時に11関連法案と労働三法を見直すのです。規制改革会議は正当な理由がなくても3ヶ月分の給料を払えば正社員でもいつでも解雇できると言っている。これは労働三法の改正をこの国会でやってしまおうということで、多くの国民は知らないのです。いいかえればできるだけ正社員を無くして、非正規にしようというのが一億総活躍の安倍の考え、アメリカの考え、規制改革会議の考えともいえるのです。

【北岡】 連合の動きはどうですか。

【山田】 TPPに賛成している。

【北岡】 そうすると安倍政治を推進していくわけですか。

【山田】 だって、連合の中心になっているのは三菱などの基幹労連です。

【北岡】 電気、自動車、など大きいところですね。

【山田】 ただ自治労もTPPを本気で考え出し、日教組も反対の署名活動を始めた。明後日は全水道に行きますがJR総連など傘下の団体は結構みんな話せばよくわかってくれる。勉強して貰えば皆わかる。

【北岡】 安倍に突破させないためにはこの3ヶ月は正念場ですね。

【山田】 日本を突破してもアメリカが批准できなければ本来なら消えます。しかしアメリカは再交渉を求めたり、いろんな形でやってくる。私が日米並行協議で一番気にしているのは労働三法の同時改正です。もうひとつ心配なのは著作権の問題です。みんな著作権の期限が50年が70年になる程度だと思っているけど、大きなのは申告罪から非申告罪になることです。それは私たちがみんな著作権法違反やっていることになるのです。
 TPP協定の内容を読むと、こうして話す時や会議やるときに共通の資料としてコピーしますが、あれ電磁機内記録で、著作権に違反するのです。これが非申告罪になるとどうなるかというと、これまではそれに対して著作権者—新聞社とか、あるいは Facebook で私がやったやつを拡散してくれた人に、私がこれは承認してないのにやったとか言わない限り罪になることはなかった。新聞社は今まで私を告訴することはなかったし、これからもないと思うけれども、これからは新聞社が言わなくても警察はそれを元にして私を逮捕することができる。

【北岡】 なんでもできるということですね。

【山田】 なんでもできます。しかもTPP協定77条とか80条をずっと読んでいくと刑罰も拘禁刑を科せる。懲役、禁固、そして罰金を併科する。罰金については二度としないように高額の罰金をかけろと書いてある。それを誰も国民は知らない。そうなるとアメリカは訴訟世界だから、著作権侵害の場合にも日本だったら慰謝料10万か20万かせいぜい100万だ。アメリカは二桁違う。

【北岡】 よく知っています。

【山田】 1億2億ってザラです。

【北岡】 アメリカには刑罰に関して punishment という考え方がありますので賠償金もそうですから、相手が痛いと思う額が膨らむのだと思います。

【山田】 著作権の賠償額もTPP協定の中に詳しく書いてある。将来に対する著作権の期待した利益に対してなされた著作権侵害に対して刑罰、損害を求められる。最初から法定賠償にする。1千万とか2億とか3億とか、損害を立証しなくても、日本のように取れる。そうなったら北岡さんにしたってもう勝手なこと喋れなくなりますよ。完全に表現の自由、言論の自由が失われていく。みんな萎縮する。
 これは、その大事な法案がTPP協定と一緒に関連法案として、今回批准と同時に日本で国内法として成立しようとしているのです。これは、大変なことになっているのだけど国民が誰も騒がない。だから今日アメリカのトーマス加藤とも話したのですが、なんで日本人は幕末以来の独立の危機になっているのに誰も騒がないのだといわれた。

【北岡】 メディアでTPPを担当する記者はそのことを分かっている筈ですが。

【山田】 まあ、ここまでわかっているメディアはそうないかもしれない。

【北岡】 普通のシンポジウムでも著作権のことは期限問題ぐらいしか言わない。

【山田】 アメリカは莫大な金を使って各分野に随分手当てしているようだ。

【北岡】 メディアの報道は基本的にTPPについては、日本の農業は壊滅的な打撃を受けるとか、あるいは山田さんご自身も農水大臣もおやりになったから、山田さんが反対するのは農家を守るためだと非常に矮小化している。しかし事実は、日本そのものが広範に変わっていくもので大変重要で怖い話ですね。

【山田】 怖い話です。この本を読んでいただければいいんです。これ6,300ページの本を基にして、さっきの表現の自由の話も、労働三法の話も書いてあります。これは8月に出版して一刷りはすぐ売り切れて、二刷り三刷りになっています。

【北岡】 TPPの中には、一般の人が理解でき難いことがいっぱいある気がしますが。

【山田】 いっぱい問題が多いから、こうして話すとわかってくれる。

【北岡】 先生がお作りになった冊子(『TPP24のギモン』)を読めばかなり本質的なことがわかりますか。

【山田】 わかりますよ。これは分析チームで24の疑問を分担して書いたもので1冊100円で飛ぶように売れてもう6万4千部です。国民は関心があるのです。

【北岡】 わからないからみんな読みたい。

【山田】 私の専門書でこんな分厚いものでも三刷りになっている。

【北岡】 山田さんの主張に対する政治的な応援団は国会の中でどのくらいいますか。

【山田】 民主党の中でも解散する前には大河原雅子さんもふくめてTPP反対論は結構多かったけれど、野田(佳彦)が突然解散したときには、TPPに反対する者は公認しない、公認して貰いたかったらTPPに反対しませんと誓約書を書けといったので少なくなった。

【北岡】 山田さんが当時の民主党を離れた最大の理由はそこですか。

【山田】 そうです。なんでそこまでやるかというとアメリカの巨大な力の後押しです。安倍にしてもアメリカの言うことはなんでもハイハイです。

【北岡】 アメリカの次期政権が反対ということは世界が知っている公約です。アメリカで批准出来なかったら日本は宙に浮きますが。

【山田】 だから日本はさっさと批准して、安部の任期があるうちに国内法を変えてしまうというのがアメリカの狙いでもある。日本に真っ先に批准させて国内法をどんどん変えさせアメリカの希望通りにする。日米年次要求といって、郵便局の民営化とか、50年間アメリカが日本に対して企んできた日本のアメリカ化、教育のアメリカ化、これを今ここで総仕上げしようとしている。日本が批准しなくても法律を変えさせた方が手っとり早いと彼らは考えている。私達はこういうパンフなどを一生懸命配りまくったり、オルタのような市民メデイアも頑張って草の根の運動を続ける必要がある。

【北岡】 民進党は野田幹事長ですから民進党そのものが推進になびく危険性があり、蓮舫民進党ではとても阻止どころではないと思いますが。

【山田】 蓮舫は拙速な今国会でのTPP承認には反対だと言っていますが野党のなかで数からしても民進党が一番頑張らなきゃいけない。

【北岡】 TPPはこれまで外務省のホームページで「環太平洋経済連携協定」と呼ばれていましたが協定の成文が出来ると「経済」が消えて「環太平洋連携協定」となってますが。

【山田】 それが本質です。公式な会議で、日本は(アメリカ合衆国)51番目の州とか自民党の議員が言いましたが、彼らはアメリカ国日本と本気で思っているとしか考えられない。だから今国会で通そうとしている。私は10月3日からアメリカに行き、ライアン下院議長、バーニー・サンダース氏に会おうとアポ取っています。出来れば日本に来て欲しいと要請したい。

【北岡】 面白いです。サンダースは来るんじゃないですか。

【山田】 難しいとは思うけれどもやれるだけのことはやりたい。選挙が終われば来るかもしれないが、こっちに間に合わない可能性もある。衆議院を強行採決されてもまだ参議院が残っている。

【北岡】 年内にもうそういう場面が予想されるのですか。

【山田】 数がありますから安倍は12月いっぱいで強行採決すると言っている。あまり時間がないので今バタバタやっている。

【北岡】 今TPPは非常に大事な時に来ていて各論をお聞きしたいのですが、膨大なものを30分や1時間でご説明いただけません。ただ1点だけですが2年近く甘利さんは何を喋って来たんですか。

【山田】 官僚に丸投げでアメリカの言う通りにやれとしか言わなかったと思う。

【北岡】 真相は30年くらいたたないとわからないのでしょうが、山田さんのお話を聞くとかなり怖い話です。日本はアメリカべったりでやっていく戦略的な転換点ということですが、アメリカ自体も大きく変わらざるを得なくなっています。

【山田】 弱肉強食の新自由主義というのを、EUでもアメリカでも多くの学者が反対し、そういう世論も強くなっている。日本だけが逆方向に走っている。

【北岡】 長時間有難うございました。これからも先生のご奮闘を期待しています。

<プロフィール>
 山田正彦 1942年生まれ。長崎県出身。早稲田大学卒。
      弁護士。元農林大臣。衆議院議員(5期)。
 北岡和義 1942年生まれ。三重県出身。南山大学卒。
      読売新聞記者。元日本大学教授。オルタ編集委員。

※ この記事は2016年9月20日、東京平河町・山田事務所で採録したもので文責はオルタ編集部にあります。


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