【沖縄の地鳴り】

支持率逆転が招いた辺野古工事中断と岩手県知事選不戦敗け

仲井 富


 安倍政権に対する有権者の批判はかつてない厳しさとなった。昨年12月総選挙では圧勝したものの、対決型の知事選挙ではもろい。安倍政権発足以来、東京、北海道を除いて各地で敗北している。まず昨年7月の滋賀県知事選挙、11月の沖縄県知事選挙、今年に入って、1月の佐賀県知事選挙、さらに8月の埼玉県知事選挙と4連敗である。埼玉県知事選挙では、敗北を見越して本部推薦はしなかった。しかも9月に予定されていた岩手県知事選挙は、元民主党の参議を担いで、小沢勢力一掃の意気込みで自民党本部が取り組んできた。だが、安保法案をめぐる7月以降の不手際、特に安倍側近議員のお粗末な放言、さらに首相側近の文化人百田尚樹氏の、沖縄の二紙を潰せという暴言や普天間基地の歴史を無視した発言などが、沖縄県民のみならず本土の世論をも刺激した。

 9月末に予定されている、安保関連法案の始末をつけるまでは、知事選挙の連敗を避けたいという思惑が、小沢勢力一掃の県知事選を不戦敗けとする政治判断となった。自民党ほど独自に緻密な世論調査を行う政党はいない。先の沖縄県知事選挙でも、昨年7月段階の自民党独自の世論調査で「翁長強し、仲井真落選」という結果となった。自民党本部は候補者の変更を県連に迫ったが、仲井真に代る候補者はいない、という県連の判断にまかせた。結果は11月県知事選挙で10万票の大差での敗北となった。今回の岩手県知事選挙でも独自の事前調査で「ダブルスコアで敗北」との結果が、不戦敗けを選んだといわれている。

 多くは知られていないが、8月2日に投開票された仙台市議選(定数55)の結果も衝撃を与えた。自民党は最多16議席を確保したものの2候補が落選。前回全5選挙区で押さえたトップ当選も今回はゼロに終わった。公明党も1議席増やして9議席と全員当選したが得票率を下げた。替って躍進したのが共産党だ。7名全員が当選し3選挙区でトップ当選を果たした。投票率が約5ポイント下がったなかで得票率を3ポイント余アップさせた。同市議選での共産党のトップ当選は、平成元年の政令市移行後初めてだ。民主党も前回選の7議席から2議席増やし、全員当選した。「安全保障関連法案で逆風が吹いていると認めざるを得ない」。首相官邸で8月4日開かれた政府与党連絡会議で、井上義久公明党幹事長が述べたという。

 政権与党たる「平和の党」公明党の内部にも公然たる反乱が起きている。創価大学等の教員や学生らが、実名を公表して「安保関連法案は平和の党たる公明党の結党趣旨に反する」と池田創価学会名誉会長の「不戦哲学」を掲げて署名運動を始めた。ブログ「対話を求めて 静かに創価学会を去るために」には「このブログには、創価学会は宗教ではなく詐欺団体だ、と気づいた創価学会員と元創価学会員の切実な体験のコメントが1万件以上寄せられています。創価に疑問を感じている学会員のみなさんは、ぜひこの真実の叫びを読んでいただきたい」と訴えている。公明党を離党した地方議員が「安保関連法案反対」の声を各地で上げ始めた。「サヨナラ公明党」という運動が結党以来初めて巻き起こっている。

 さらに、翁長沖縄県知事が切り札として用意した「辺野古許認可に瑕疵あり。辺野古埋め立て免許の取り消し」が8月末に実行されるという状況になった。この二つの難問を安保関連法案採決のために先延ばししたというのが、今回の辺野古工事一カ月中断の狙いであることは衆目の一致するところだ。今回の一カ月休戦、沖縄県と政府との直接対話についての評価はさまざまである。しかし、沖縄における知事選挙勝利と12月の総選挙における選挙区全勝、それに呼応する300日余にわたる辺野古座り込みを中心とする反対運動の存在が、一カ月間の休戦をかちとった原動力であったことは間違いない。それを可能にしたのは沖縄のみならず、辺野古問題についての本土世論も大きく作用している。

◆変化した沖縄基地問題への本土世論 過半数が政府対応批判へ

 かつて、辺野古問題への政府対応についての世論調査では、本土と沖縄には大きな差があった。だが、翁長新知事の面会要求を半年近く拒否し続けた安倍政権の高圧的な態度に対して、沖縄県民のみならず本土世論も反発した。米軍普天間飛行場移設問題に関する全国紙の4月の世論調査で、名護市辺野古への移設を進める政府の姿勢を「評価しない」とする声が多数を占める傾向が出はじめたのである。4月中旬に実施した朝日の調査では安倍政権の対応を「評価しない」が55%となり「評価する」の25%を大きく上回った。毎日の調査は政府の進め方への賛否を聞き、「反対」が53%で「賛成」は34%だった。読売は翁長雄志知事と菅義偉官房長官の初会談が行われた5日までの3日間で実施し「評価しない」と「評価する」が41%と拮抗(きっこう)した。翁長知事と安倍晋三首相が会談した17日からの3日間で行われた日経調査は、辺野古移設計画を「見直すべきだ」が47%で「計画通り移設すべきだ」は36%。4月下旬に実施された産経調査は辺野古移設に「反対」が44.7%で「賛成」の39.9%を上回った。翁長知事が菅氏や首相との会談で、沖縄が辺野古移設に反対する理由などを直接説明したことなどが報道されたこともあり、政権の進め方に批判的な意見や辺野古移設そのものへの反対が広がり始めたのである(琉球新報2015年5月4日)。これは安保関連法案に対する反対運動の高まりと連動している。原発再稼働反対運動から、安保関連法案への批判とデモが、国会周辺のみならず、全国に広がる中で、「辺野古ノー」の国会包囲デモも相次いで行われた。いわば本土の反原発、反安保関連法と反辺野古新基地は一体のものとなった。さらに7月の報道各社世論調査が大きく変化した。産経新聞や読売新聞でさえ安倍政権の支持、不支持が逆転した。

(図 内閣支持率)
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◆産経・読売でも支持・不支持が逆転

 安倍政権の支持率は6月までは、ほぼすべての世論調査で、安保法案に対する批判を持ちつつも、有権者の過半数が安倍政権を支持してきた。ところが7月の世論調査で一変した。まず毎日新聞が7月4、5日にかけて行った全国世論調査で、初めて支持、不支持が逆転した。安倍政権の支持率は5月の前回調査から3ポイント減の42%、不支持は同7ポイント増の43%で、2012年の安倍政権発足後初めて支持不支持が逆転した。毎日調査をきっかけとして、それ以降の各社の世論調査で、同じく支持、不支持の逆転が起こった。安倍政権や自民党にとっては逆風が世論調査で吹きまくった。毎日の7月17・18日の調査ではさらに不支持率が上昇。内閣支持率は35%に下落、不支持率は51%に上昇した。

 その前後、NHK、時事通信、共同通信、朝日新聞、産経フジ、読売新聞、日経新聞などの報道7社の世論調査結果が相次いで発表された。時事通信を除くすべての報道各社による世論調査は、不支持率が支持率を上回る結果となった。とりわけ特徴的なのは、安倍政権の後ろ盾として政権の広報紙的な役割を果たし、一貫して安保法案支持を表明してきた産経、読売の調査結果が衝撃的だった。安倍政権が衆議院での会期延長の強行採決を行った直後の7月18・19日の調査結果では、安倍政権支持39.3%(前回46.1%)不支持52.6%(前回42.4%)と逆転した。前回より10ポイント以上の下落だった。

◆産経の不支持率52.6%は各社調査でトップ

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が7月18、19両日に実施した合同世論調査(電話世論調査 全国の成人男女1000人)によると、第2次安倍晋三内閣の発足以降、支持率と不支持率が初めて逆転した。支持率は39.3%で、前回調査(6月27、28両日実施)より6.8ポイント減少。不支持率は52.6%で、10.2ポイント上昇した。安倍首相は20日のフジテレビ番組で支持率の下落について「残念ながら安全保障関連法案への支持が低く、理解が進んでいないことがこういう結果になっているのかと思った」と述べた。その一方で「支持率だけのために政治をやっているわけではない」と強調した。政党支持率は自民党が前回調査より1.1ポイント減の33.7%。民主党は0.7ポイント減の9.8%だった。衆院で可決された安全保障関連法案の成立に関しては42.1%が「必要」、49.7%が「必要でない」と回答(産経新聞15・7・21)。

 注目すべきは、産経調査における不支持率の上昇である。不支持率の52.6%という数字は、7月に行われた各社世論調査で最高の不支持率だ。第2位は共同の51.6%、第3位は毎日の51%、第4位が日経の50%と続く。政府広報紙と評される産経新聞でさえ安倍内閣不支持が50%を超えたということ自体、政権不信の高まりを証明するものだ。これについて安倍首相は「理解が進んでいないことがこういう結果になっているのかと思った」と述べた。その一方で「支持率だけのために政治をやっているわけではない」と述べたが、国内主要マスコミの世論調査の大勢は、安倍内閣不支持、安保法案不支持、今国会での通過反対の方向が明確に現れた。支持率低下について、産経新聞は「“暴走”応援団のありがた迷惑… 支持率も急落、困惑ぎみの安倍政権」という記事を載せた。そのなかで「このまま支持率が下がり続け、世論が離れれば、悲願の憲法改正どころではない。ひいきの引き倒しだな」と、今回の勉強会騒動に、ある自民党幹部は自嘲気味に語った。「ひいきが過ぎて、政権が引き倒されたのでは元も子もない」と身内の側近議員の暴走発言を批判した(産経15・7・5)。その結果が7月17、18日の安倍内閣不支持過半数となった。以下、産経及び読売新聞の世論調査結果について考察して見たい。

◆無党派層と女性の支持激減 産経・FNNの合同世論調査

 安全保障関連法案が「必要」との回答が42.1%と、前回調査(6月27、28両日実施)より6.9ポイント減少した。回答者の38%を占める無党派層の理解が広がらず、年代別でも男性の20〜40代や女性のほぼ全年代で「支持派」が顕著に減った。政府はより丁寧な説明が求められそうだと述べている。支持政党別にみると「必要」との回答は自民70.6%(前回比2.2ポイント増)、公明73%(同11.6ポイント増)。与党支持層では理解が広がりつつあるが、逆に無党派層では「必要」25.3%(同11.5ポイント減)、「不要」67.1%(同13.4ポイント増)と不要論が拡大した。「必要」との回答を男女・年代別に見ると、前回より増えたのは女性20代の45.9%(同8.2ポイント増)だけ。男性50代と60代以上はともに50%超で、約1ポイントの微減にとどまった。一方、男性20代が46.9%で20.3ポイント激減したのをはじめ、男性30代45.1%(同11ポイント減)▽男性40代37.5%(同12.5ポイント減)▽女性30代32.1%(同11.5ポイント減)▽女性50代37%(同10.9ポイント減)——と、多くの年代で2ケタの減少となった。

◆産経調査で安保法案違憲と9条改憲反対が6割

 法案について、合憲・違憲のいずれの説明が納得できるかとの質問では「合憲」21.9%(同0.2ポイント増)、「違憲」59%(同1.3ポイント増)と大きな変化はなかったとしているが、産経新聞でさえ、「違憲」と見る者が6割に近く、合憲とするものは2割と言う数字は、厳しい世論を反映したものといえる。一方、「衆院で審議が尽くされたと思わない」との回答が計7割にのぼっており、「強引な採決」の印象が法案の支持・不支持に影響した可能性がある。また「今の国会で、安全保障法案成立させることについて」問うた。「賛成」は29.0%、「反対」は63.4%と圧倒的に今国会の延長による法案成立に反対している。さらに興味深いのは、「安保法関連法案に関し、安倍政権は「合憲」と主張しているが、憲法学者などの間では「合憲」と「違憲」で見解が分かれている。どちらの説明がより納得できるか」との問いに「合憲論」21.9%、「違憲論」59%と、圧倒的に安保関連法案は「違憲」との見解を支持している。

 「憲法9条改正に賛成か、反対か」については「賛成」33.5%、「反対59.5%と、9条改憲に反対が6割に上った。常に改憲世論をリードしてきた産経新聞でさえ、9条改憲反対が多数となったという事実は重い。9条改憲反対の護憲政党は、国会の議席数10%にも満たない共産、社民のみの少数勢力だ。だが、肝心の自民、公明の支持者や無党派層や婦人層などが、9条改憲に「ノー」という意思を表明するようになった。安倍政権の「拡大解釈による集団的自衛権容認」が、憲法9条に対する関心を高め、「9条を含めた改憲容認」の世論は少数派となった。自公と安倍政権のまやかしの集団的自衛権容認が、従来の改憲論者たる保守派の論客をも敵に回した。右翼の改憲論者たる小林よしのりでさえ「安倍の解釈改憲のまやかしによって、正当な手続きを経た日本国憲法の改正という目標を達成することが困難になった」と嘆く始末だ。護憲政党少数派の日本政治のなかで、姿なき護憲勢力が国民の過半数に上ったのは、皮肉にも安倍政権の安易な解釈改憲強行の結果なのである。

◆読売新聞調査の特徴 過去の植民地支配や侵略を反省が55%

 売新聞の世論調査は7月24から26日にかけて実施した(電話全国世論調査 有効回答1059人)。安倍内閣を「支持する」は43%、「支持しない」は49%だった。「安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか」との質問に「賛成」38%、「反対」51%となった。「安全保障関連法案を、今開かれている国会で成立させることについて」の質問に対して「賛成」26%、「反対」64%。「安全保障関連法案が成立すれば、日本が外国から武力攻撃を受けることを防ぐ力、いわゆる抑止力が高まると思いますか、そうは思いませんか」については「抑止力が高まる」36%、「そうは思わない」が54%となった。「安全保障関連法案は、野党の多くが採決に参加しない中、衆議院本会議で、自民党、公明党などの賛成多数で可決された。与党が採決をしたことは、適切だと思いますか」については「適切だ」が29%、「適切ではない」61%とこれまた圧倒的に与党の強行採決を批判する結果となった。「安倍首相は、戦後70年の首相談話で、これまでの首相談話を全体として引き継ぐとしています。新しい談話には、これまでの談話にあった、過去の植民地支配や侵略に対する反省やおわびについての表現を、入れるべきだと思いますか」に対しては、「入れるべきだ」55%、「そうは思わない」30%と過去の総理談話を継承することを求めた。「2020年夏の東京オリンピックとパラリンピックで使用される、新たな国立競技場の建設計画を、安倍首相が白紙に戻し、見直すと決めたことを評価しますか」については「評価する」83%、「評価しない」11%となった。

 以上が読売新聞の世論調査結果であるが、最も重要な点は、過去の侵略行為について、反省やお詫びを「入れるべきだ」が55%、「そうは思わない」30%。となった。これが伏線となって「過去の植民地支配や侵略に対する反省やおわびを明確にすべき」という社説につながった。全体として読売のアンケートには、誘導的な質問項目が多い。例えばQ1「安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか」という設問自体がすでに、安全保障法案は、国際社会へ貢献し自衛隊の活動を拡大する、という前提に立っている。にもかかわらず回答者の5割以上が「ノー」と回答している。しかも世論対策のため、安保法案強行採決直後に安倍首相行った「国立競技場建設計画を白紙に戻したことを評価しますか」と問うている。たしかに83%が「評価する」と回答している。しかし安保法案に対する「ノー」の声を抑える切り札にはなりえなかった。

◆女性と無党派層の離反を強調

 読売新聞は、以下のように世論調査の傾向を分析している。
 ——本社全国世論調査で初めて内閣不支持率が支持率を上回ったのは、女性や無党派層の間で、安全保障関連法案への理解が広がらず、不支持率が大きく上昇したためだ。男性の内閣支持率は49%で、前回調査(7月3〜5日)より6ポイント低下したものの不支持率の44%を上回っている。しかし、女性の支持率は38%で、前回から7ポイント下落した。不支持率は53%と前回から11ポイント上昇し、初めて支持率を上回った。

(図 安倍内閣の支持・不支持率の変化)
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 女性の間では、安保関連法案について批判的な意見が多い。与党が衆院本会議で、野党の多くが採決に参加しない中で採決したことを「適切ではない」とした人は、男性は57%だったが、女性は64%と高い。安保関連法案の今国会での成立についても、男性の「反対」は61%(前回63%)とほぼ横ばいだが、女性の「反対」は67%(同63%)に上昇した。政府・与党が法案の内容を十分に説明しているかについて、女性の「そうは思わない」は84%(同81%)に達している。無党派層では、内閣不支持率が上昇して68%になったほか、安保関連法案の説明が不十分だとする人は初めて9割を超え、91%となった。27日から始まる参院の審議の中で、政府与党にはますます丁寧な説明が求められそうだ。——

◆政党支持率と内閣支持率の関連性 民主党支持率は低迷

 読売新聞の調査では政党支持率は以下の通りである。
自民党36 民主党8 維新の党2 公明党3 共産党5 社民党0 支持政党なし41

 産経新聞の調査では政党支持率は以下の通りである。
自民党33.7 民主党9.8 維新の党5.3 公明党3.7 共産党5.4 次世代の党0.5 社民党1.5 生活の党0.8 日本を元気にする会0 新党改革0.1 支持政党なし38.0

 7月の各社世論調査でも、ほぼ同様の傾向だ。自民党支持率は最低が時事通信の23.6%で最高は読売の36%の間にあり、減少傾向にあるが内閣支持率のような劇的変化はまだ起こっていない。政党支持率と内閣支持率の合計が50%前後になると政権崩壊の危機と言われているが、まだそこまでは到達していない。とくに民主党は共同通信の11.2%が最高で、最低は時事通信の5.5%となっている。共産党は比較的上昇傾向にあるが、最高は共同通信の7.3%、最低は時事の1.7%と支持率4、5%の間を行き来している。

 圧倒的なのは支持政党なしの無党派層の存在だ。前記読売新聞の図表でも明らかだが、無党派層31%のうち68%、じつに7割近くが安倍政権不支持を表明している。女性の不支持率53%とともに自公政権にとっては不気味な存在となったといえる。これらの人々が、今後の投票行動でどう判断するか。新たな政局展開が可能となってきた。とりわけ「平和の党」を自任してきた公明党に対する、内部からの公然たる批判、反発の高まりも見落としてはならない。

 自民党という政党は修正能力が高い政党だ。変わり身の早さが政権崩壊の危機を救ってきた。最近では、福島原発事故後、福島自民県連はいち早く「原発ゼロ」を掲げて地方選を勝利した。福島県内では、自民を含む各党が「脱原発」で足並みをそろえている。県議会は昨年10月、県内の原発10基すべての廃炉を求める請願を採択した。共産党系の団体が提出したものだったが、自民、民主、公明各党も一部を除いて賛成に回った。自民党福島県連は、独自に作成した衆院選公約集の筆頭に「脱原発」を掲げた。

 沖縄では民主党が投げ捨てた「辺野古海外県外」の旗を掲げて、010年の参院選、知事選、012年の総選挙をしのいだ。民主党政権の最大の誤謬は世論に対する修正能力が皆無だったことだ。したがって国政選挙4連敗、地方選挙2連敗と010年以来6連敗にもかかわらず、なぜ敗北したのかの根本的反省もない。政権支持率が逆転すると、読売社説のように「侵略の反省とお詫び」に対する首相談話に注文を付け、辺野古工事中断、岩手県知事選不戦敗けなど、一歩後退の姿勢を見せながら安保関連法案の成立を考える。この目論見が今後の世論にどう反映するか眼を離せない展開となった。

 (筆者は公害問題研究会代表)


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