放射能の雲の下で生きる~私たち農民は最初に汚染地域に放たれたカナリア~

■ 農業は死の床か再生のときか                     濱田 幸生

     放射能の雲の下で生きる
  ~私たち農民は最初に汚染地域に放たれたカナリア~
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■放射能の暫定規制値は農業者の作業安全規制値ではないのか?


  放射能問題を語るときにいちばん忘れられていることは、農家被曝です。食品
被曝は本だけで数多く出ていますが、農家被曝を扱った本はまったくありませ
ん。いや、ニュースにもネットにすら登場しません。あたかも初めから「なかっ
た」かのようにです。しかし、考えてもいただきたいのです。農産物の「検出限
界以下」の超微量の低線量被曝が問題となるのならば、それが生産された大地の
上で歩き、土埃を吸い込み、手で直に触り働き、地元の野菜を食べている私たち
農民はどうなるのでしょうか。

 農産物や土壌の線量を測定するのは食品衛生のためである、という大きな誤解
を正さねばなりません。日本には放射能汚染を規制する法律がないために、放射
能を放出することは「合法」です。しかし、まったく放射能を規制する法律がな
いわけではありません。「原子炉等規制法」です。これは原子力施設の内部環境
を規制する法律ですが、そこにはこうあります。「平方メートルあたり4万ベク
レルを超える建物や労働環境は、国が放射線管理区域に指定せねばならない。」

 平方メートル当たり4万ベクレルという数値は、実はチェルノブイリで示され
た旧ソ連の汚染区域の3万7000bq/m2以上と対応する国際基準値です。
この4万bq/m2という原子炉等規制法の数値は、日本が採用しているキログラム単
位に換算すれば、2000bq/kgに相当します。

 日本の土壌残径規制値はいくつですか?そう、5000bq/kgです。私たち農民は原
子力施設で定めた安全基準の2.5倍以上もの濃度が「安全の閾値」だと信じ込ま
されてきたのです。 私たち農民は、日々原子力施設内部ですら危険水域である
「放射線管理区域」で仕事をさせられていたのです。

 ふざけるのもいいかげんにしてほしい!政府は農民の健康などこれっぽっちも
考えていないから、こんな馬鹿げて高い暫定規制値を作るのです。 二本松の
500bqが検出された水田では3000bq/kgの土壌放射線量が測定されています。その
とき、マスコミは大騒ぎを演じました。 彼らは消費者がこれを食べさせられた
ら、という角度のみで報じました。 なにか忘れてはいませんか。そこで働いて
いる人間がいるのですよ。泥をこね全身泥まみれで働く私たち農民がそこにいる
のですよ。

 西日本の人は超低線量の送り火の灰ですら恐怖しているというのに、私たちは
「放射線管理区域」というれっきとした高濃度汚染地帯を「安全」だと信じ込ま
されてきたのです。 日本政府とマスコミは高濃度汚染地帯で働く人々より、た
まに一口二口食べる人たちの方を向いて仕事をしています。 農民を見ろ!私た
ち農民の今そこにある危険を見なさい!暫定規制値は、農民の労働環境安全基準
値ではないのか。
 
  私たち農家が汚染区域に生きているなら、それを強いられているのならば、私
たちはいやがおうでもそれと闘う最前線にいることになります。 私たち農民が
最初に汚染地域に放たれたカナリアであり、それを除去する本隊なのです。 暫
定規制値を下げるのはあたりまえ。問題は、そこからどうして継続的に放射線
量を確実に下げていくのかに、日本は国家を上げて叡知を集めねばなりません。

 既に、農家は自主的に自らの汚染された大地を浄化し始めています。これは闘
いです。しかも長期間に渡る闘いです。 私たちは農地だけを浄化すればいいわ
けではありません。それを包む里山の森林、水系、そして住宅地も含めてきれい
にしていかねばなりません。つまり地域の包括的除染をせねばならないのです。
空からの汚染マップ一枚に7か月もかかる国は信用できません。いや、「汚染」
であることすら認めようとしない国は信用するに値しません。

 私たちは農家が協力し合って測定し、自分の故郷を浄化していくつもりです。
県や国の「安全宣言」などは聞き飽きました。 ほんとうの「安全宣言」を自分
たちで出さねばなりません。出口のないトンネルの中でそう考えました。


■地域の包括的除染活動と暫定規制値引き下げは実は一緒のこと


  結論から言えば、私は段階的暫定規制値引き下げ論者です。そして包括的にす
べての食品の規制値見直しと、今後の地域の包括的除染の展望を政府が明らかに
するべき時期だと考えています。 物事には短期、中期、長期というタイム・ス
パンがあります。
 
  暫定規制値は大規模原発災害に際して、直ちに平時の規制値を当てはめるわけ
にいかないことから緊急避難的に作られた非常時規制値です。短期的措置の最た
るもので、1年以内に見直さないと禍根を残します。どのような禍根かといえば
  ひとつは、国内市場に対して、「あいかわらず農産物は高濃度汚染を続けてい
る」という誤ったメッセージを発信してしまうことです。  現実には地衣類な
ど一部を除いて、ほぼ完全に放射能汚染は検出されていないのですが、警戒感の
強い消費者は頑として信じようとしません。これはかつて政府が情報の虚偽と隠
蔽を繰り返した反動です。  

 また、農業者からの側の挙証証明とでもいうべき自らの田畑の土壌測定は遅々
として進まないのが現状です。原因は色々ありますが、震災から回復してないと
ころに半年間の売り上げの壊滅状態が続き、そしてその上に測定など無理だ、と
いうのが本音でしょう。
 
  私はこの短期的で時期は7か月目で終了したと思っています。  では、中期的
にはなにを考えたらいいのかと言えば、やはり汚染された田畑の回復を中心に据
えた大規模、かつ徹底的な除染活動と同時進行する暫定規制値の見直しです。
  短期的な個人作業ではなく、農業-商業-一般住民-教育関係者まで網羅した地
域総ぐるみとなった包括的な地域除染活動がすぐにでも必要です。これには市行
政のみならず、県、国レベルの政策が必要なことはいうまでもありません。その
時に問題となるのが暫定規制値です。

 ここで暫定規制値が残した禍根の二つ目の問題がでてきます。
  暫定規制値の性格は、いわば「高く検出されるかもしれない農産物のセーフ
ティネット」にすぎず、汚染された田畑の上で働く私たち農作業者の健康などみ
じんも考えていなかった、という問題です。たとえば、もっとも重要なすべての
農業生産の基盤であり、また農業者の健康に直結する土壌暫定規制値は、チェル
ノブイリの「汚染区域」指定の3万7千bq/m2以上をはるかに超える10万bq/m2(*キ
ログラム換算で5000bq)です。

 つまり、土壌暫定規制値を引き下げるためには、いかにして現に今そこにある
放射性物質を除染するのか、あるいは封じ込めるのかに対して明確な展望がなけ
ればならないのです。 それぬきで、最初に上げた、消費市場への誤った信号へ
の恐れのみでこの暫定規制値を捉えると、地域の一部としての田畑の放射能汚染
の現実しか見ないことになります。私が暫定規制値引き下げと除染はまったく同
じことだと言うのはそのためです。

 おそらく除染-封じ込め活動は10年では済まないでしょう。政権担当能力を欠
いた民主党政権がこのまま任期一杯まで続くのならまったく見通しが立たない事
態に追い込まれます。 チェルノブイリでは当初の日本流にいえば野菜の暫定規
制値が3700bqから13年かけて40bqまで落としたという事例は参考になります。日
本でも間違いなくそれ以上かかるでしょう。
 
  そう考えると、暫定規制値のみを引き下げてもなんの意味もないことになりま
す。仮に40bqが可能な田んぼがあったとしても、その田んぼを囲む耕作放棄田畑
や森林からは絶えず放射性物質が照射されているわけです。すると地域線量は減
らず、いかにコメの移行率0.0026という極微量だとしても、この危険を看視する
わけにはいきません。

 最後に長期的なことについてですが。これは危険きわまりない原子力発電から
いかに脱却するかでしょう。脱原発という言い方がいいのならそう言ってもかま
いません。 しかし私は現在の脱原発運動に参加する気はしません。体質的に違
うといえばそれまでですが、あれは主に都市生活者の運動です。消費者の食と生
活に対する脅威によって拡がった運動で、私たち食の作り手側と相当にすれ違っ
ています。

 放射能汚染された農業をどうするのかについて誰も真剣に考えようとしていな
い状況です。脱原発運動の一角を担うゼロリスク派は、食と農を分断し対立させ
る危険性すらあると思っています。私は農業者として自分の田畑や地域からもう
一回脱原発を考え直す時間はたっぷりあると思っています。なぜなら、脱原発と
いう大きなテーマは国のエネルギー政策の根幹にふれますから、地域の包括的除
染-暫定規制値の見直し作業といった中期的な展望が開けてからゆっくりと考え
ればいいのです。

 現在、私たちの地域の測定グループでは新米はすべて「検出限界以下」でし
た。しかし現実問題として地域のスクリーニングがまったくといっていいほどさ
れていない状況では大きな不安が残ります。というのはあまりに国が指示した予
備検査は粗雑そのものであり、隣町の鉾田は52bqが出ましたが、予備検査はわず
かに3カ所でした。話になりません。ザルも極まれりです。そして新米に対する
スクリーニングも例の調子です。ですから、おっしゃるような「個人の目標」と
してならともかく、暫定規制値の抜本的手直しとなると、先に述べたようなさま
ざまなことを考え合わせていかねばならないと思います。


■ 東日本のものは食べないとおっしゃる方へ


「低線量被曝脅威説派」とでもいうべき人々がいます。未だ放射線医学界では極
少派ですが、世論の一角では存在感のある学説です。 先鋭な消費者の中や、西
日本ではむしろ多数派になりつつある学説なのかもしれません。いや、学説一般
というよりも科学的「思想」、あるいは「哲学」といったほうがいいでしょう。

 さて、低線量をどこに基準を置くのかという目安は諸説あるようですが、農産
物の放射線量で5~10ベクレル/kg、空間線量で毎時0.6~1マイクロシーベルトと
いったところでしょうか。 この派の特徴は、内部被曝を大きな脅威とすること
です。ホットパーティカルを体内に取り込むことは高線量の被曝にも劣らない危
険だと考えています。ですから、内部被曝の主原因である農産物などに厳重な注
意を払い、それこそが最大の関心事のようです。
 
  ある時、私が農産物の「検出限界以下」とされる20ベクレル以下の線量測定
は、測定技術として難しいのだと言ったところ、この考え方の方からこんな返事
を頂戴しました。「低線量が計測できないのなら、やっぱり危なそうな地域の農
産物を拒否したのは間違いではなかった」 なるほどねぇ、そうなっちゃうの、
といったところです。

 低線量が測ることが困難で、「検出限界以下」になってしまうのならば、いっ
そうヤバそうな県のものはまとめて拒否だ、というわけです。 なんとも乱暴な
意見ですが、現にそのように状況は進行しています。「ヤバそうな県」の代表格
である私たち茨城県や福島県の農産物の苦戦状況は泥沼化しています。

 では、この「低線量被曝脅威派」が安心できる状況とはどんなことでしょう
か? それはすべての農産物から放射性物質の検出がゼロになることです。そし
てその農産物を育てる大地の放射線量も同じくゼロになることです。 おそらく
ここまでいかないと、この派の人たちの「安全・安心」はないのではないでしょ
うか。

 私たち福島や茨城の農民は今必死に放射能と闘っています。さまざまな研究機
関と協同して、知見を集めて、自分の田畑を測定し、マップを作り、放射能の除
染や封じ込めの努力を積み重ねています。 しかし、この派にとってそれは無意
味なことなのです。なぜなら、ぜったいに放射能が「ゼロ」になることはないか
らです。

 おそらくは私たちの地域で土壌線量が50~70ベクレル/kgを切ることはありえ
ないでしょう。 もともとのバックグランドには大地と宇宙からの自然放射線量
があり、かつ、60年代の核実験の残留があり、今回の事故で放出された放射線量
もその中に紛れ込んでしまうからです。

 農産物もこの土壌からの移行率は品種によっても異なりますが、おおよそ百分
の1から千分の1の単位のオーダーですから、逆に言えば、5ベクレルの放射能汚
染をしてしまうためには、その土壌はその百倍から千倍の線量がなくてはならな
いわけです。 とすれば、仮に低線量派が摂取上限のように言う5ベクレルが検
出されたとすれば、その土壌は500bq~5千bq/kgなくてはならないことになります。

 これは平方メートル単位換算でその20倍ですから、1万~10万bq/m2となりま
す。チェルノブイリの「汚染区域」指定は3万7千bq/m2以上ですから、10万bq/m2
は避難区域のホットスポットを狙って作物を作らない限りありえない数値です。

 ですから、高濃度被曝をしてしまった飯館村などは徹底した除染を自治体ぐる
みでしようとしています。 しかし、このような努力は無駄だとこの派の人たち
は思っています。そんな努力より、さっさと逃げればいいじゃないか、頑張って
いる奴がいるからかえって迷惑なんだよ、と。
 
  農産物にしても、作っても低線量は計れないのだから、どうせあなたの地域は
全部丸ごと拒否されるんだし、やったって無駄じゃないの、と思っています。
つまりは、今さら「被爆地」はなにをしても無駄だからなにもするな、と。国や
東電に補償金もらって都会のアパートに越してきなよ、除染やったって終わりが
ないんだからさ、というわけです。

 このような言辞は私の空想ではなく、実際にこの手の台詞をお聞きになったこ
とがあるでしょう。 いいでしょう。そうしましょう。除染活動や測定などバカ
バカしい努力ですから止めましょう。 これは楽でいい。私たち「被爆地」の農
家は復興なんて考えずに、補償金で暮らして昼寝していればいいのですから(笑
い)。
  つまり、低線量被曝脅威派の人々の言う通りにすれば、除染などはやる必要がな
くなるということになります。「低線量が計れないのだから丸ごと拒否」というこ
の派の人たちの考え方に沿えばそうなります。

 低線量脅威派、別名ゼロリスク派は、どこまでが危険で、どこからはこの状況で
許容すべきかという閾値をもちません。目標値がないのです。「閾値なし線形モデ
ル仮説」の極端な解釈であるために、一切の閾値は存在しません。 たとえ今5ベク
レルだと言っていても、明日には3に、そしてやがては0.5に、そしてゼロをと要求
をエスカレーションすることでしょう。この派に農民や漁民はいないでしょうから
(まったくいないとも思いませんが)、言うだけで済みます。
 
しかし、私たちはそれを実現せねばならない役割です。たとえば、現に今自分の田
畑が100ベクレルの土壌線量があれば、来春までには70くらいまで低減しようなどと
計画をたてています。 そして冬の間に裏の山林の落ち葉を集めて処分せにゃあなら
んか、などと計画しています。 あるいは堆肥設計も見直してゼオライトやカリ、木
質を増やして熟成期間も増やすなどの努力もしているでしょう。 そしてそれの基礎
となる土壌測定もシコシコと続けて、そのデータに一喜一憂しています。私たち農民
はそんな生き物なのです。

 低線量被曝脅威派の人たちは、えてして自分のことだけしか見ていません。自分
の健康、子供の健康、それは大事です。かけがえもなく大切な宝です。誰もそれを否
定できません。 しかし、現実にこの社会に放射能は降ってしまったのです。だから
危険な食品を拒否するのは正当な権利でした。ただし、緊急避難的には、です。

 あの忌まわしい大震災から今日で7か月たちました。 もう少し視野を拡げて
みませ
んか。ひとつはこの先の時間へと、そしてもうひとつは今この時代を共有しているは
ずの東日本へと。 覚悟していただきたいのは、この放射能との闘いは長いのです。
おそらくは5年、10年は優にかかるでしょう。 いつまでも西日本と輸入食品の
ものし
か食べない、と言っていられますか。緊急避難としてはそれでもよかったかもし
れませ
んが、そんな生活が今後も続けられるでしょうか。
 
ひと口ふた口食べて危険ならば、私たち「被爆地」の住民や農家はその数千倍、数
万倍のリスクの上で生活しています。そして私たち東日本の人間は、よりよい環境
を取り戻すべく闘っています。それは自分だけが被曝をしないというのではなく、
地域が放射能の枷から逃れることです。社会全体で、地域全体で線量を徐々に下げ
ていくことを目指すことです。


■ベラルーシにおける放射能食品放射能規制値


  ベラルーシに調査に赴かれ福島で放射能と闘っておられる方からデータを頂戴
いたしました。「被曝」現地で闘っている人たちは意外なほど明るいのに驚かされ
ます。目標を持って着々と測定器具を集め、どのようにしたら線量を減らして行け
るのかを具体現実の問題として取り組んでいます。柏市では商売上手な人が測定
ショプを始めて大盛況のようですが、福島県ではこの方たちのような民間のボラ
ンティア団体が多く活躍しています。測定器材も、私たちのようなウン十万円のも
のではなく本格的なガンマスペクロメータや、なんとホールボディカウンターま
で備えています。これには驚いた。同じ福島県の東和町の測定グループは、企業が
賛同してここも本格的な器材で測定しています。

 この測定運動の成果は、地域にあるホットスポットの発見に生かされました。文
科省のヘリ測定もやらないよりましなのですが、現実には上空からわからないホ
ットスポットは多数あり、実地に現地を歩かないと分かりません。この現地民間測
定グループの活躍で地域がスクリーニングされてしまったことになり、東和町で
はひとつの検出も記録されませんでした。

 お隣には今回500bq出してしまった二本松市の地点があり、事前に東和町のよう
なスクリーニングがされたのならば、あのような悲劇は回避できたはずでした。
  これから福島県は雪が降ります。もう一月もないでしょう。雪が降れば、除染は
おろか計測すら難しくなります。そこまで押し迫って国はようやく除染だと言う
のですからなんともやる気があるのかどうかまで疑われます。

 ある方に国にもっと要求してみたらどうか、という声がありましたが、私たちは
しないでしょうね。最近は政府に怒りすら覚えなくなりました。 政府など関係あ
りません。あのような国という「団体」はなんの役にも立ちません。期待していると
遅くなるだけで、くだらない交渉をやっているより行動が先です。
 
さて、以下がベラルーシ現地に言って入手された食品の規制値データです。ネッ
ト情報で切り貼りしたものではなく、現地で同じ放射能と闘うベラルーシの人た
ちとの交流から得たものです。  ご好意で転載を許可されましたが、一部のみ
を掲載するにとどめます。ご覧いただければおわかりのように事故直後から現在ま
で4回も改訂されており、その都度急激に規制値は落ちていっています。 今日本で
も問題となっているきのこは、丁寧に生と乾燥とにわけて規制値を変えています。
 
  野菜などは3700bq/kgから40bq/kgまで13年かけて実に0.01%まで落としていま
す。これは政府の徹底した除染作業と並行になされた結果であり、除染をサボター
ジュし続けた日本とは違います。 除染して地域線量が下がるから、農産物の線量
も安心できる規制値に落ち着いていくので、その反対ではありません。そのために
必要なことは、測定に基づく汚染マップづくり、除染方法の検討、そして除染活動
です。ここで目標線量が明確になれば、それの結果を受けて規制値を下げることが
可能になるのです。

 よく「暫定規制値は信用できない」と叫ぶ人は大勢いますが、どこまでこのよう
な一連の流れを知って言っているのでしょうか。逆に福島県では農業をやめろと
か、20ベクレル以下まで表示しろとか現実を無視した空論が飛び交っている有り
様です。これでは何も始まりません。放射能と闘っている現場の人の足を引っ張っ
ているだけです。あくまでも食品規制値は、地域の包括的除染とひとつになって検
討されるべきもので、蛍光灯の密室で検討するだけのものではないのです。


■ベラルーシにおける食品規制値の推移(抜粋)


                      単位ベクレル/kg       
86年    88年    92年    96年   99年
・水       370    18.5   18.5   18.5     10
・野菜    3700    740    185  100     40
・果物           同上                70
・牛肉   3700   2960    600    600     500
・パン   -    370   370   100     60
・豚肉・鶏肉  7400   1850   185    185     40
・きのこ(生) -     -   370    370    370
・きのこ(乾燥) - 11100   3700   3700   2500
・牛乳    370    370   111    111  100
・幼児食品   -    1850              37


■森林の放射性物質残留測定結果


  遅れていた森林の測定結果が出始めています。調査によれば、6月から8月までに
測定された去年の落ち葉からは高い線量が測定されています。セシウム134、137の
合計が平均5000ベクレル/kg弱といった数値です。

 一方、同時期に測定された今年の緑葉からは平均300bq/kg強ていどの線量しか
測定されておらず、放射性物質は大部分が去年の落ち葉に吸収されたことが分か
ります。そして8月~9月に測定された今年の落ち葉からは平均1300bq/kg弱でし
た。昨年の30分の1でした。樹皮の放射線量を示す落ち枝からは、平均1300bq/kg弱
が測定されました。まとめてみます。測定単位はキログラムですので、平方メート
ル単位に換算するには20倍してください。

・去年の落ち葉のセシウム合計・・・平均5000bq/kg=>10万bq/平方メートル
・同上・今年の緑葉・・・・・・・・・ 平均300/kg=>6000bq/m2
・同上・今年の落ち葉・・・・・・・・平均1300/kg=>26000bq/m2
・同上・落ち枝・・・・・・・・・・・平均1300/kg=>26000bq/m2

また、筑波大の恩田教授らによって福島県の計画的避難区域内(川俣町)の森林も
測定されています。測定単位は平方メートルです。
・広葉樹林の土壌内セシウム合計・・・・・・・・・・・・・71万bq/m2
・同上・杉の若歳林・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47万
・同上・壮齢林・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91万

この筑波大の測定では、若歳林の土壌表面からは約1割ていどの線量しか測定され
ませんでした。しかし同時に測定された壮齢林では樹間が広いために5割が地表面
から測定されました。

 これらの測定結果を見ると、3月から4月に森林に降った放射性物質は、若歳林に
おいては大部分の約9割が地表面の落ち葉に吸収されたことが分かります。
  落ち枝の測定から、樹の表面にもセシウムが沈着していることがわかります。
ただし、今年の落ち葉からは急激に線量が低下したことがわかります。低減率は約
30分の1ですので、使用量をあやまらねば堆肥化が可能なレベルの堆肥規制値の
400bq以下です。

 残念ながら、去年の落ち葉は茨城県においても使用は不可能だと思われます。
福島県の避難地域内森林は、チェルノブイリの55万5000bq以上の「強制移住区域」
レベルなので、しっかりとした除染作業が不可欠です。それ以外の被爆地地域の森
林も、森林公園や里山レジャー施設などの人と触れ合う場所、そして田畑に森林か
らの水を利用している農地は、去年の落ち葉を除去することが必要です。  
  
        (筆者は茨城県・行方市在住・農業者)

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