新外交イニシアティブ(ND) これからの沖縄外交を考える

新外交イニシアティブ(ND) これからの沖縄外交を考える

事務局長・弁護士 猿田 佐世
事務局次長 巖谷 陽次郎


新外交イニシアティブ(ND)は、日本に存在する多様な声を「外交」に運ぶシンクタンクである。NDは、多くの外交問題の中でも在沖米軍基地問題に積極的に取り組んできた。シンポジウムや研究会を日米各地で開催し、また、稲嶺進名護市長や沖縄選出の国会議員の方々、また、沖縄の市民の方々の米首都ワシントンDCにおけるロビーイング活動等を企画・同行するなどしながら、直接的に沖縄の声を米国政府に伝えるという活動を続けている。また、沖縄返還交渉の米側の担当者であったモートン・ハルペリン氏(元米NSCスタッフ)を約半世紀ぶりに沖縄に招聘するなどもしている。

下記、幾つかの論考を掲載させていただきながら、この間の新外交イニシアティブの活動報告などを通じて沖縄基地問題についての様々な声を紹介し、また、今後の沖縄外交のあるべき姿を検討してみたい。

<目次>
■■■長期的視点に立った戦略的な沖縄の外交を ~沖縄県知事選を経て
■■■2014年名護市長訪米行動を振り返る(5/15-24)
■■■シンポジウム開催・提言活動
〇「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」(1/10・於:名護市)
〇「『沖縄』そして『日本』における米軍基地問題とは何か」(3/5・於:那覇市)
〇設立一周年記念(沖縄)・『虚像の抑止力』出版記念シンポジウム
「どうする米軍基地・集団的自衛権-オキナワの選択-」(8/25・於:那覇市)
〇「基地の島、沖縄の今を考える-返還交渉当事者、ハルペリン氏を囲んで-」(9/18・於:那覇市)
■■■研究・調査・出版活動(書籍『虚像の抑止力』書評)

■■■新外交イニシアティブ(ND)とは
●NDご入会のお願い

■■■長期的視点に立った戦略的な沖縄の外交を ~沖縄県知事選を経て(執筆:事務局長・弁護士 猿田佐世/事務局次長 巖谷陽次郎)

● 大差をつけて翁長雄志氏が沖縄県知事に当選した。この結果について、多くの米メディアが翁長氏の「日米政府に沖縄のメッセージを伝える」との発言を引用しながら報道した。では、どのように米国に声を伝えていくべきか。

新外交イニシアティブ(ND)ではこれまで、ワシントンを軸に、米国が沖縄の問題をどう見るか、ワシントンにこの問題をどう伝えていくかという視点から、沖縄の基地問題に関わってきた。例えば、私たちNDのメンバーで稲嶺進名護市長の二度の訪米行動の企画・同行を担当した。その際には、米政府関係者、連邦議会議員やシンクタンク研究者との面談、ブルッキングス研究所や米連邦議会調査局とのグループディスカッション、一般公開の講演会、メディアの個別取材等の行程を設定する等して、名護市長の声を米国の人々に伝えるべく活動のサポートを行った(名護市は2013年NDに団体会員として加入)。

もっとも、尖閣問題や歴史問題、TPPなどに米国の日本専門家の意識が移るにつれ、ワシントンにおける沖縄米軍基地の議論は停滞し、話題に上る頻度も低下してきている現実がある。名護市長の訪米では「(このような訪問は)こういう声が存在することを私たちに思い出させる」との声まで聞かれた(リチャード・ブッシュ氏、ブルッキングス研究所)。また、仲井真弘多前知事による2013年末の辺野古埋立て承認により、それまで辺野古案に反対していた「知日派」にも辺野古推進に回る者が出始めていた。ワシントンにて「既に終わった問題」とされつつあるこの問題を、米国の中で再び議論させるような働きかけが急務である。
 
では、誰にどう働きかけるべきか。国務省・国防省(軍)や米議会への訴えはもちろん重要である。またワシントンでは、政府外の人々も政策決定に重要な影響を及ぼし、この力は「権力の半影(ケント・カルダー氏、ジョンス・ホプキンス大学)」とも評されるが、この「権力の半影」にいる人々とも信頼関係を構築しながら、沖縄への理解を深めてもらうことが必要である。ワシントンは世界中の問題についてアジェンダセッティング(議題設定)能力を有しており、ここでの議論は日本政府を揺り動かす。

米国においても相手に応じた個別具体的な働きかけが欠かせない。例えば、海兵隊グアム移転予算は米議会により国防権限法という法律で凍結された。対議員ロビーでは法律の、例えば国防権限法の、条文案の検討から行うべきである。「権力の半影」の中心に位置するシンクタンクにおいて、海兵隊の運用を再検討するシンポ・研究会の開催も有用だろう。辺野古移設反対の米議員・識者との協力体制の構築も早急な課題である。また、さらなる人員の受け入れを可能とする基地を有する米各州・地方自治体への働きかけなど、取り組むべき課題は多い。

なお、ワシントンの交渉では民主主義や人権の観点に加え、安全保障政策の観点から物事を語らなければ聞く耳をもってもらえない。この点、日本政府は「抑止力」により海兵隊の沖縄駐留を理由づけるが、海兵隊をどの場面で用いることを前提に「抑止力」を述べているのか。中国からの攻撃か北朝鮮か台中関係か。そのときに海兵隊はどう機能し、なぜ海兵隊は沖縄にいなければならないのか。細かく分析すると、抑止力の観点からも米海兵隊が沖縄にいる必然性はないことがわかる。

詳細は書籍『虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発安全保障政策の新機軸(ND編・旬報社)』をお読みいただきたい。このような安全保障の視点からの分析を、ワシントンの安保専門家と共に深めていくことも重要である。

翁長知事は沖縄県ワシントン事務所の設立を選挙公約に挙げた。米政府そして「権力の半影」の中に人間関係を作り、沖縄の声を浸透させ、ひいては日米両政府が既存の合意を変更できるような環境作りを行わねばならない。日米外交を動かしているのはごく限られた数の人々である。その中で信頼関係を築き、情報を伝えていく。大使館も日本企業もこの方法で日米外交を作ってきている。なお、知事訪米は最大の成果を上げられるようタイミングを見ながら行われるべきである。

事態はすぐには変わらないだろうが、鳩山政権の教訓を踏まえ即効性を求めてはならない。国内外での着実な取り組みが継続されてこそ変化が生まれるだろう。過去に例を見ない戦略的恒常的な翁長外交、そして、オール沖縄での継続的な米国への働きかけが事態を変化させていくだろう。NDではそれを全面的にサポートしていきたい。

■■■2014年名護市長訪米行動を振り返る(5/15-24) (執筆:猿田佐世)
http://www.nd-initiative.org/topics/844/ 

●辺野古を抱える名護市の稲嶺進名護市長はこれまでに二度の訪米ロビー活動を行っており、その企画・同行はNDが担当してきた。下記、本年5月15~24日に行われた名護市長の訪米活動を振り返る論考を掲載する。(2014年6月5日~7日 沖縄タイムス掲載)

〇 今回の訪米行動に向けては、4カ月近い準備をしてきた。多くの方の協力を得て、米政府、連邦議会、シンクタンク関係者との面談、また、議会調査局やブルッキングス研究所におけるグループ討論など、計48件の行程を設定。特に今回は「一般市民へ思いを伝えたい」との市長の希望を受け、13件のメディア個別取材および4件の一般公開の講演の機会を設定した。

 国務省・国防総省のカウンターパートがワシントン不在だったために政府面談が国務省日本副部長に限られてしまったが、250人以上と直接意見交換する機会を持ち、また、ニューヨーク・タイムズ、ブルームバーグなど多くのメディアが詳細な記事を掲載したことは大きな成果であった。

 多くの米国の人々は、沖縄の基地問題に関心がない。政策決定権者の集まるワシントンにも沖縄の声が届くことは少なく、今回のような訪問は「こういう声が存在することを私たちに思い出させる」(リチャード・ブッシュ・ブルッキングス研究所東アジア政策研究センターディレクター)機会として大変重要である。
 
「もう沖縄からの訪問者には会いたくない。どれだけアドバイスをしても、いかに米国社会に訴えるかではなく、沖縄でどう報道されるかを考えての訪米ばかりだ」。3年前、辺野古移設に反対するスティーブ・クレモンズ氏(ザ・アトランティック編集者)からこう直言された。

 確かに、沖縄での報道も重要であるが、せっかくの訪米である。限られた条件の中でいかに効果的に米国に声を伝えるか、それを実践するのがNDの任務である。
 
この5年間、私は、ワシントンでロビーイングを行い、沖縄選出を含む日本の国会議員等の訪米活動をサポートしてきた。2年前まで住んでいたワシントンでは、日米外交を垣間見る機会を得たが、普天間基地の県外移設を求める首相の声すら既存の外交チャンネルには届いていなかった。「外交チャンネルがあまりに限られている」との思いに駆られていたところ、沖縄の知人から「なぜ沖縄の声は米国に届かないのか、何か動いてくれないか」と声がかかり、ウチナー3世の夫に背中を押され、ワシントンでの活動を始めた。政治・外交の各テーマについて、国境を越えた情報収集、情報発信、政策提言を行うシンクタンク「新外交イニシアティブ」を昨年8月に立ちあげ、現在に至っている。名護市はNDの団体会員である。

〇 訪米コーディネートでは、講演などの企画や面談依頼先をまず検討する。日米の多くの人々とのやりとりの中で新たなアイデアが生まれ、多くの協力を得ながら実行に移していく。
 今回の多数の現地メディアの取材は多くの友人の紹介で実現した。シンクタンクでの講演やラウンドテーブル(円卓会議)もその協力なしには行えなかったし、市民対象の講演会の開催には多くのボランティアが協力の手を挙げてくださった。この広がりだけでも訪米の意義があると実感する。

 ワシントンで日米関係に影響力を与えうる人々は、大きく分けて三層ある。国務省を代表とする米政府、シンクタンク等の研究員、連邦議会関係者である。
 
シンクタンクは元政府関係者や日本専門家からなり、報告書の発表や政権担当者との人間関係、自らの政権入りなどを通じて米政府の政策に直接・間接の影響を及ぼす。議会関係者の多くは日本の問題にほとんど関心がないが、場合によって予算などを通じて強い影響力を持つ。
 
面談はこの三層の人々を中心に行うが、特に連邦議会については、あまり関心を持っていない層に働き掛けることになるため、メールや電話はもちろんであるが、持てるネットワークを駆使しながら各方面から接触し、またオフィスを直接訪れて訪米日程の最後の瞬間までアポ入れに尽力する。米政府・議会には世界中からのアプローチがあり、一議員であっても容易にアポが入る状況にはない。これは、沖縄に限ったことではなく、多くの日本の国会議員の訪米でも同様である。
 
さらに今回は、2年前の前回の市長訪米とは異なる事情もあった(前回も当方でコーディネートを担当)。現在、米関係者の間では安倍政権のナショナリスト的外交政策、尖閣・歴史問題、そして直近では集団的自衛権の行使の問題に関心が集まり「沖縄の基地問題に触れようとする人はほとんどいない」との発言すら耳にする状況であった。何ら事態は解決していないにもかかわらず、関心が薄れている状況に憤りを覚えるが、合わせて継続的な働きかけの重要性を痛感する。

 実際に、米国の「知日派」には、辺野古移設に慎重な姿勢を示す有力者も少なくない。今回、名護市長が面談したジェームズ・ジョーンズ元大佐(元大統領補佐官)やジム・ウェブ元上院議員は辺野古案反対の意を改めて述べていたし、今回不在で面談はかなわなかったが、日本の保守派がその影響力を求めて頼りにするリチャード・アーミテージ元国務副長官も現行案以外の検討を求めている。継続的働きかけを怠らず、これらの声をさらに広げて、日米両政府の中の柔軟な立場を耕していくプロセスが必要になろう。

〇 ワシントンへの訴えは継続的に行う必要がある。議員は入れ替わり、もともと関心がない人々も少なくないため、すぐ忘れられてしまう。沖縄の国会議員や首長の訪米は、象徴として大きな意味を持つが、1度の訪米では面談数にも議論の深まりにも限界があるため、ワシントンに根差した継続的働き掛けが必要である。議会の動向や米国の政策の変化について関連事項をあぶりだしながら、その時々に働きかけ方を判断する必要がある。法案や予算の詳細な検討も必要であろう。

 メディアなどでは面談した相手の地位が注目されるが、働き掛けるべき相手は多い。議会に限っても、軍事・歳出・外交の各委員会のメンバーもさることながら、所属委員会にかかわらず環境や人権の視点から共闘できる議員の存在が重要になる。

 今回の訪米では、議会戦略を冷静に練る視点が手薄になってしまったことは反省点だ。補佐官レベルも含めて興味関心の合う相手をみつけ共に活動する必要がある。

 また、相手と同じ「言語」で話す必要がある。ワシントンでは軍事戦略的視点で議論が展開し、ヒューマンストーリーや具体的戦略を伴わない平和指向は軽視される傾向にある。海兵隊の沖縄駐留が抑止力維持の観点から必要かという議論は避けて通れない。

 他方、米国の歴史が人々の喜びや悲しみで動いてきたことも忘れてはならない。思いに共感した一般の人々が協力してくれることも多い。場を見定め、言葉を選ばねばならない。
 そして、何よりも、沖縄の声を真に代弁する人がワシントンに常駐し、人間関係をつくりながら適切な働き掛けを継続的に行う必要がある。

なお、多くの米国人が、日本政府さえ「辺野古案は駄目だ。」と主張すれば米国は受け入れる、と話す。ジョーンズ元大佐が「日本政府が変わらねばならない」と言ったように、日本国内の対策は当然ながらより重要である。
 しかし、それを前提にしながらも、ワシントンからの影響力を得ながら日本政府の政策に変化を与えることは有用だろう。集団的自衛権行使の問題でも、多くの政治家がワシントンに渡り、米「知日派」からお墨付きを得ようと躍起になっている。それは日本で大きく報道され日本政府の政策に影響を与える。彼らばかりにワシントンの「拡声器効果」を利用させてはならない。

■■■シンポジウム開催・提言活動(映像はこちら:http://www.nd-initiative.org/nd_video/

●NDは2013年8月の設立以降、19回のシンポジウムを東京、沖縄、ニューヨーク、ワシントン等で開催し、沖縄基地問題を巡る様々な声を伝えてきた。例えば、2013年12月末、仲井真前沖縄県知事が辺野古埋立を承認した直後、名護市において大規模なシンポジウムを急遽企画・開催し、立ち見も出る1200人にお集まりいただき、沖縄の方から「奇跡だ」との言葉をいただいたこともある。その9日後の名護市の選挙では稲嶺進市長が再選を果たした。
 
また、米側で沖縄返還に関わった元米政府高官のモートン・ハルペリン氏を約半世紀ぶりに沖縄に招聘し、普天間・嘉手納基地や辺野古等を案内した後、氏に「辺野古は美しい。ここを埋立てるのには反対だ」という氏の感想を踏まえてのシンポジウムの開催も行っている。
 下記、これら貴重な発言を多く含むシンポの様子を幾つか選んで報告する。

〇「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」(1/10・於:名護市)
http://www.nd-initiative.org/topics/410/
2013年末の仲井眞弘多沖縄県知事の辺野古沖埋め立て承認を受け、2週間後の2014年1月10日、シンポジウム「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」を沖縄県名護市で緊急開催した。1000人の会場は満席となり、参加者は立ち見も含め1200人に上った。

柳澤協二ND理事の基調講演に続き、マイク・モチヅキND理事のワシントンDCからのビデオメッセージを上映。続いて、柳澤理事、稲嶺進氏(名護市長)、仲里利信氏(元沖縄県議会議長・元自民党沖縄県本部顧問)、前泊博盛氏(沖縄国際大学教授・前琉球新報論説委員長)が加わってのパネルディスカッションを行った。(コーディネーター:ND事務局長猿田)。

【基調講演・柳澤協二ND理事】
 「基地の危険の除去が普天間の問題の本質であるにもかかわらず、日本政府が、『辺野古への移設が普天間返還の条件である』とすることで、問題の本質を『移設の問題』にすり替えたため、問題の解決が進まなくなった」

「今や『沖縄海兵隊は中国からのミサイル3発で全滅する』ということは軍事常識となっており、いざというときに頼れない武力を抑止力とは言えない。また離島防衛のために沖縄に海兵隊が必要だとの議論もあるが、自衛隊が海兵隊としての機能を持つようになっている上、日米ガイドラインにも『離島防衛は自衛隊の役割である』と明記されているのであるから、理論的に成り立たない」

【マイク・モチヅキND理事(メッセージ)】
「辺野古埋め立ては反対意見がある上、埋め立ての技術上の問題も多く、困難だ」
「長期的には、海兵隊員のほとんどはグアム、ハワイ、米国本土といった場所に配備されていくことになる。そこから沖縄やアジア太平洋地域の他の戦略的地点に行けばいいため、沖縄に本格的な恒久基地を置く必要はない」

【稲嶺進氏(名護市長)】
「知事承認後も、埋め立ての遂行には多くの点について名護市長の許可が必要だ」
「(海外有識者の辺野古移設反対の声明に触れ)私の主張は世界から見ても常識である」「移設強行ならオール沖縄でもっと大きな動きが出てくる」
「オスプレイの飛ぶところに観光客は来ない。キャンプシュワブを撤去し、多様性の海を返してもらい、2万人の雇用を生むところにしたい」

【仲里利信氏(元沖縄県議会議長・元自民党沖縄県本部顧問)】
「辺野古に基地が作られると、沖縄が今後も要塞とされてしまう」
「何度も抜本的改定を訴えてきたにもかかわらず、何も変わっていない」

【前泊博盛氏(沖縄国際大学教授・前琉球新報論説委員長)】
「(沖縄振興予算は、実際には全国の財源の少ない地域に交付される予算と同様であるのにも関わらず)沖縄だけは政府の言うことを聞かないと交付されない。なぜ沖縄だけが恫喝されなければならないのか」

「仲井眞知事が基地と引換に3400億を手に入れたと言われているが、97年には4700億円の数字があった」
「このとき沖縄が一番基地移設に反対したからこの数字がついた。その後落ちていったが、仲井眞知事が県内は無理だと主張したときから金額があがった。権力の横暴だ」
「基地の跡地利用についての知事の調査報告では、基地返還の経済的効果は1兆円であった」

〇「『沖縄』そして『日本』における米軍基地問題とは何か」(3/5・於:那覇市)
http://www.nd-initiative.org/topics/851/
鳥越俊太郎ND理事の基調講演の後、平良朝敬氏(かりゆしグループCEO)、長元朝浩氏(沖縄タイムス専任論説委員)を交え、沖縄における米軍基地問題の意味、および、日本全体における米軍基地問題に対する意識やその捉え方等について議論をし、今後の解決策を探った。(司会・コーディネーター:ND事務局長猿田)

【基調講演・鳥越俊太郎ND理事】
「アメリカの国会議員や軍事関係者からも『普天間や名護に海兵隊を常駐させないでいいのではないか』という議論が出ている。ハワイ、グアムという線から対処できるということも言われている。しかし日本のメディアからはそういったアメリカの声が伝わってこない」
「アフガニスタンやイラクなど過去のアメリカの戦闘行為を見ても、アメリカは最初に空軍が爆撃を行い、空から主要な軍事基地を攻撃していく。次に出て行くのは航空母艦、戦艦である。最後に地上での戦闘に入っていくのが海兵隊であり、海兵隊は最初に戦闘に入っていくわけではない。海兵隊はグアムやハワイからアジアのどこにでも展開することができる。沖縄に固執する必要はないはずなのだが、アメリカに従属的な日本の姿勢を変えなければ沖縄の問題は解決しない」

【平良朝敬氏(かりゆしグループCEO)】
「かりゆしグループは観光業であるが、観光は平和がないと成り立たない平和産業である。1990年以降、県内への観光入域客数は増加しているし、米軍基地が返還され、その跡地を利用した那覇市新都心や北谷町も発展している」
「沖縄の経済の仕組みは変わった。経済の観点からみても沖縄に基地はいらないといえる。沖縄は経済に自信を持っていい」

【長元朝浩氏(沖縄タイムス専任論説委員)】
「今『沖縄』と『日本』のメディアには温度差という言葉では表すことができない溝がある。辺野古埋め立て移設を巡る動きの中で、これまで沖縄の保守陣営の中心にいた人たちの中から、政府のやり方に反対する新しい動きが出てきている。名護市長選の結果は一条の光だったのではないか。その光を解決につなぐため、どういう取り組みをすればいいのか、それが沖縄の人に科せられた課題である」

〇設立一周年記念(沖縄)・『虚像の抑止力』出版記念シンポジウム
「どうする米軍基地・集団的自衛権-オキナワの選択-」(8/25・於:那覇市)
新外交イニシアティブ(ND)の設立一周年、およびND初となる書籍『虚像の抑止力―沖縄・東京・ワシントン発 安全保障の新機軸―』(ND編・旬報社)の出版(下記に詳述)を記念したシンポジウム「どうする米軍基地・集団的自衛権―オキナワの選択―」を沖縄県那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハのホール、ニライカナイで開催した。来場者数は800人に上り、会場は満席となった。

『虚像の抑止力』の著者5人のうち、柳澤協二ND理事(元内閣官房副長官補)、半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)、屋良朝博氏(元沖縄タイムス論説委員)、そして猿田佐世ND事務局長の4人が登壇し、沖縄に米軍基地を置き続ける理由として、そして集団的自衛権の行使容認の理由として日本政府が主張する「抑止力」について、安全保障の観点から議論を展開した。

【柳澤協二ND理事】
「日本政府は『海兵隊は沖縄にいないと抑止力にならない』と言っていたが、(普天間飛行場のオスプレイを佐賀空港に暫定移転して)5年間も沖縄にいなくても良いというのは、『抑止力』について政府自身の論理の破綻を示している」
 
「尖閣諸島の有事については、上陸を阻止するのは海上保安庁、自衛隊の治安出動で十分間に合う。仮に上陸されてしまった後は、米空軍・海軍に頼ることはあっても、海兵隊はすぐには近づけないため、離島防衛のために海兵隊が沖縄にいる必要性は無い」

「日本政府が辺野古沖への移設を強硬していることについては、沖縄からノーを突きつけ、米国政府に伝えることが重要である」
 「集団的自衛権行使容認の閣議決定については、集団的自衛権の負の側面が語られておらず、下手に行使してしまえば沖縄にミサイルが飛んでくるという危険もある。安倍首相にとって『血の同盟』が自己実現であるのであれば、それを防ぐのが私の自己実現である」

【マイク・モチヅキND理事(メッセージ)】 
「北朝鮮や台湾海峡で有事が起こっても海兵隊の出番は無い」
「尖閣諸島について米国と中国が戦争するメリットは双方にないため、尖閣諸島に対する在日海兵隊の意味は無くなっている」

【半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)】
「2012年の米軍再編見直しにより、在沖海兵隊の主力実践部隊のグアム移転が決定した。これにより沖縄駐留の意義は抑止力では説明できなくなった」
「政府の安全保障政策は、付け焼き刃になっている。ほとんど沖縄にいない海兵隊が駐留する沖縄の米軍基地に『抑止力』という中身はなく、『抑止力』は偽物だということをはっきり示している」
 
「イラク特別措置法、周辺事態法や、昨年末の特秘密保護法制定、国家安全保障戦略の策定、今年の集団的自衛権容認の閣議決定など、対米公約に基づき、日本は法に基づき戦争ができるよう整備を進めてきた」

「日本は米国の要求全てにイエスと言い続けてきた。イエスと言った内容を実現するため、今度は日本政府が各地方に対して強制してきた。日米の歪んだ『主従関係』が国と地方との関係においても反映されており、その典型的な例が沖縄である」
 「沖縄の人たちはもう十分がんばっている。これからは我々東京の人間ががんばらなくてはならない」

【屋良朝博氏(元沖縄タイムス論説委員・フリージャーナリスト)】
「沖縄の海兵隊は現在、アジア太平洋地域における人道支援活動や災害救助訓練を活発に行っており、各国と安全保障のネットワークを構築している。安全保障環境の悪化を主張し、靖国神社を参拝した安倍首相こそが、海兵隊の努力を台無しにしている」
「海兵隊は沖縄どころか日本駐留の必然性もない。全て政治で決められ、『抑止力』や『地理的優位性』を理由として沖縄が『現実的』で終わる」
「抑止は『ゆくし(嘘)』である」

【猿田佐世ND事務局長】
 「ワシントン(米国議会、政府等)で沖縄について知っている人は、ほんのひと握りしかいない。その他は知識も興味もない」
「ワシントンは物事を軍事戦略で考えている。基地の県内移設に反対する沖縄の声をワシントンに届けるには、安全保障の理論が必要」

〇「基地の島、沖縄の今を考える-返還交渉当事者、ハルペリン氏を囲んで-」(9/18・於:那覇市)
沖縄返還に関する米政府の交渉担当者を務めたモートン・ハルペリン氏を47年ぶりに沖縄に招聘し、新外交イニシアティブ(ND)と琉球新報の共催により、シンポジウムを沖縄県那覇市の琉球新報ホールにて開催した。当日は約650人が来場し、会場は満席となった。
前半はハルペリン氏の基調講演が行われ、後半には大田昌秀氏(元沖縄県知事)と佐藤学氏(沖縄国際大教授)を加え、パネルディスカッションを行った。(司会・コーディネーター:潮平芳和氏(琉球新報編集局長)、猿田ND事務局長)

【基調講演・モートン・ハルペリン氏(元米国安全保障会議(NSC)スタッフ)】
「返還当時の沖縄は、島全体が米軍基地であるかのように米軍によって統治されていた」「沖縄はもう島全体が米軍基地という程ではないが、沖縄返還に向けて作業をしていたときに考えていたよりも、多くの基地が残っている」
 
「(普天間飛行場の辺野古への移設計画について)この問題は返還の問題を解決する以上に長い時間がかかっている。新しい基地の建設が政治的に困難なのだということを、日本政府がアメリカ政府に説明しようとしないが、しっかりと説明すべきだ」
「(普天間基地問題の解決策について)日米両政府が政治的な部分を考慮に入れなければならない」
「(海兵隊の「抑止力」論について)海兵隊の意義を抑止力だというのであれば、誰が何をすることに対して抑止するのか、必要性についてその正当性を問い直すことで、望む形での解決策が見つかるのではないか」
「アメリカでは、国防費の削減により軍の支出削減に大きな圧力がかかっているということを踏まえると、海兵隊の戦力を日本に置く考えはアメリカにない」
「アメリカ人の多くは沖縄の米軍基地の現状を理解していないが、アメリカ政府は沖縄の人々の沖縄の人の感情がどれだけ深いか理解するべきだ。数ヶ月以内に、アメリカの一般の人の目を引くような出来事(県知事選)があるのではないか」

【大田昌秀氏(元沖縄県知事)】
「(米軍の日本駐留について)日本側にも大きな財政負担が生じる。世論調査では沖縄県民の8割以上が普天間基地の辺野古移設に反対している」
「辺野古移設は絶対に容認できない」
「沖縄をアジア太平洋地域の軍事的要石ではなく、平和を発信する島にしていこう」

【佐藤学氏(沖縄国際大教授)】
「日本政府は安全保障のために何が必要かという吟味をせず、アメリカ側に沖縄の難しさを伝えていない。沖縄が『便利』なところと扱われているのではないか」
「戦争をする経済的な余裕がなくなったアメリカと、辺野古の基地建設が中国と戦争するための担保と考える日本側には乖離がある」
「(辺野古への基地建設について)沖縄はこのままでは、北東アジアの核非武装地域の平和構想に逆行する存在になってしまう」

■■■研究・調査・出版活動
 NDでは、研究者やジャーナリストによる研究会を定期的に開催し、アジア・太平洋地域における外交の諸問題について議論を行っている(「アジア・太平洋地域における新しい外交を求めて」)。また、「日米地位協定 国際比較・政策提言プロジェクト」や「日米エネルギー連携プロジェクト」などの調査・政策提言活動も行っている。
今回はその中で、研究会での議論をもとに出版したND初の書籍『虚像の抑止力―沖縄・東京・ワシントン発 安全保障の新機軸―』(ND編・旬報社)を紹介する。
http://www.nd-initiative.org/topics/863/

著者:柳澤協二(ND理事/元内閣官房副長官補)
マイク・モチヅキ(ND理事/ジョージ・ワシントン大学教授)
半田滋(東京新聞論説兼編集委員)
屋良朝博(元沖縄タイムス論説委員/フリージャーナリスト)
猿田佐世(ND事務局長/弁護士)

■■■新外交イニシアティブ(ND)とは
新外交イニシアティブ(ND)は、「外交に声なき声を届ける」という理念により設立されたシンクタンクである(2013年8月設立)。理事は、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、藤原帰一(東京大学教授)、マイク・モチヅキ(ジョージ・ワシントン大学教授)、山口二郎(法政大学教授)、柳澤協二(元内閣官房副長官補)各氏である。米軍基地、日米地位協定、集団的自衛権など外交・安全保障をめぐる問題や、日中・日韓関係、エネルギー・原発問題などの課題について、シンポジウムや研究会の開催、情報の収集・発信と政策提言、政府やメディアへの直接の働きかけなどを行っている。

在沖米軍基地問題に関しては、事務局長の猿田佐世(弁護士)がワシントンで外交サポートを続けてきた経験から、米国が沖縄の問題をどう見るか、ワシントンにこの問題をどう伝えていくかという視点から関わってきた。猿田は自ら米議会・政府に対しロビーイングを行うほか、沖縄からの国会議員や名護市長を含む多くの訪米団を企画・同行し、また「日米地位協定 政策提言プロジェクト」をはじめとする調査・研究活動、シンポジウム、学者による研究会の開催等を行ってきている。

●NDご入会のお願い
NDの「外交に声なき声を届ける」活動は、会員の皆さまの会費に支えられています。活動をさらに充実させるべく、多くの皆さまの会員登録をお待ちしています。NDの趣旨にご理解をいただける方には、会員としてご支援・ご協力・ご利用いただければ幸いです。お申込みは、下記ウェブサイトからクレジット決済ページにお進みいただくか、事務局まで、お名前・ご住所・E-mail・電話番号をお知らせの上、年会費(個人会員12000円)を下記口座にお振込みください。
http://www.nd-initiative.org/onegai.html

【会員特典】
1.NDの発信する情報をまとめた、メールニュースとニュースレターのご送付
2.米国各紙の政治・外交・日本関係の記事を翻訳したウィークリーニュースの
  ご送付
3.会員専用イベント(非公開の研究会・理事との食事会など)へのご招待
4.NDが開催するシンポジウムや講演会等への参加費割引と優先入場

〇NDへご寄付をお寄せください。
NDでは、現在下記プロジェクトを進めております。プロジェクト実施に際しての各種文献調査や現地調査、ワシントンでの提言活動等について、皆さまからの温かいご寄付をお寄せいただければ大変幸いに存じます。ご支援いただけます場合には、下記口座にお振り込みください。

・歴史認識問題政策提言プロジェクト
・日米原発エネルギープロジェクト
・日米地位協定 国際比較・政策提言プロジェクト
・普天間米軍基地返還に関する政策提言プロジェクト

【郵便局からのご送金】
郵便振替口座 口座番号 00190-3-633335
口座名義 New Diplomacy Initiative
【他行からのご送金】
ゆうちょ銀行 〇一九店 (019) 当座 0633335
口座名義 New Diplomacy Initiative

【お問い合わせ】
新外交イニシアティブ事務局
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-15-9 さわだビル5F
03-3948-7255(FAX:03-3355-0445)
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