日々閉塞感の中で Mr.Dennyを祝い、Fake Newsを厭う

駒沢 仁也

日頃閉塞感を覚える者にとって、沖縄知事選での素晴らしい選挙結果は嬉しかった。
新知事に選ばれた玉城デニー氏は、自らを「戦後沖縄のシンボル」と称し、ニューヨークタイムズは「海兵隊員の息子」が沖縄米軍基地に挑むとの見出しを付けた記事で、「私の父の国のデモクラシーが、私を拒否することはできまい」とのDenny発言を引用した。
玉城新知事に大きな期待を抱くのはその出自だけではなく、2009年の衆議院議員初当選から一貫して小沢一郎率いる民主党、生活の党、未来の党で活動し、選挙出馬までは自由党の幹事長も務めていた信念の政治家としての実績を評価するためである。
近頃は、折角野党共闘なりで首長に選ばれても、「客観的現実の壁」を理由に簡単に変心し選挙公約を平気で破る傾向がある。原発再稼働問題での三反園鹿児島県・泉田新潟県前知事、そして日米合意の見直しと基地の県外移設を公約しながら一転して辺野古埋め立てを承認した仲井眞元知事などである。
しかし小沢一郎氏自身はもちろんの事だが、氏の“仲間たち”は、風を利用はしても風になびくことはない胆力の持ち主たちである。岩手県知事達増拓也、参議院新潟野党共闘候補 森ゆう子参議院議員に、独自の存在感を発揮する参院東京地方区山本太郎もいる中で、菅直人・野田佳彦政権の消費税増税に反対を貫き、反小沢キャンペーンにも屈しなかった衆議院議員玉城デニーは、新鮮さと力強い信頼感を兼ね備えている。
上述したNYTの記事(2018年9月25日付け)では、「沖縄の第三海兵隊の司令官であるエリック・M・スミス中将は、彼のオフィスでのインタビュー中、辺野古周辺の20マイルほど南に広がった海を眺めながら、どんな新基地のロケーションについても東京とのネゴはOkinawa次第だ。「これは、まったく日本の政府内部の問題です」と語った。(クーリエジャポン2018.9.30掲載、但し翻訳は、表題を始め各所に意訳が見られるので、原文に当たられたい)。(General Smith said it would be up to Okinawa to negotiate with Tokyo over the location of any new bases. “That is really an internal question for government of Japan,” he said. New York Times Sept.25,2018との言質を取っている。
従来から辺野古新基地移転は、主として日本側の意向によると言われていたが、この将軍はNew York Times東京支局長に対して明確に、「どんな新基地の場所の問題」は日本の国内問題で、日本政府の案件だと指摘している。
当然のように玉城デニー県知事は、日本政府の政策転換への戦いへと進まざるを得ず、大変困難なものになる。しかし一方、デニー氏の唱える近隣アジア地域の成長のエネルギーを積極的に吸収し、沖縄の力を倍加して世界への発信基地にするという政策はリアルであり、この新リーダーの先導で実現できるものと信じたい。
 沖縄の問題を考えると、必然的にアメリカでの政治動向に興味が湧く。11月6日の中間選挙は秒読みに入ってきているが、民主党への支持は盛り上がらないまま、NYT・ワシントンポストWaPoなどの新聞メディアと三大ネットワークとそのケーブル局の反トランプキャンペーンだけが空回りしている感じが強く、既得権益層の期待した“Blue wave”(民主党のシンボル青色の勝利の波)の起こる気配は見えない。 また、トランプ大統領就任当初より飽きずに二年間続いてきた“大統領選でのロシアの介入によるヒラリー落選”とのキャンペーンは、証拠ゼロの話ばなしばかりで食傷気味だけでなく、元々の発端とされたトランプ・ドシィエーdossierの作成には、ヒラリー・クリントン選対本部とDNC(民主党全国委員会)がFBIと共に資金と便宜供与をしたもので、英MI6の対ソビエト担当元工作員Christopher SteeleとFBI幹部複数名の直接関与があったことが実証され、急速に下火になってきている。しかし、共和党議員の証人喚問と情報公開請求は、これまた、連綿と続いており最終的にはローゼンスタイン司法副長官の辞任または解任が視野に入ってきており、既得権益受益者群と現職大統領とのし烈な権力闘争もクライマックスに差し掛かり目が離せない。   
この数か月続いた最高裁判事の議会承認手続き過程の終了間際に、民主党側から突如持ち出されたカバノー判事候補の高校時代のレイプ未遂事件では、自称被害者の当時15歳のフォード教授(Palo Alto Universityパロ・アルト大学という学生数1081人という小さな大学)が、共和党議員の質問時間各5分を集約して代表質問した性犯罪事件専門女性検察官Rachel Mitchellの「いつどこで誰が」の一時間に及ぶ丁寧な質問(尋問という形ではなく)に全く答えられなかったことで、この“女性の敵”カバノー判事という反トランプキャンペーンがFake Newsであることが歴然としたことなどにより、民主党の勢いは陰りを増している様相である。
  このオルターへの投稿のために、日本ではこのカバノー判事事件がどのように扱われているかを探してビジネス・インサイダー渡邊裕子 Oct. 03, 2018の「【全米騒然】米最高裁判事候補が10代に起こした性暴力疑惑——過去をかばい合うエリート男性たち」という記事を見つけたが、これぞ典型的なFake Newsの日本版であると分かったので、少し触れてみたい。
  渡邊女史は,この事件のメディアの扱いと人々の関心について「2018年9月27日に上院司法委員会で行われた告発者とカバノー氏の公聴会は、国民的、歴史的イベントになった。主要チャンネルは、軒並み通常の番組をキャンセルし、バーもホテルもジムも飛行機の機内も、ありとあらゆる場所に置かれたテレビが公聴会の様子をライブで映していた」と国中の関心事であったことを書いて、ここに嘘はない。実際この一部二部と昼食をはさんで合計9時間余りの議会証言の生中継は、2000万人以上の視聴者があったと言われる。 しかし、第一部でのクリスチーヌ・フォード教授(51歳)は、最初から15歳の少女のような無垢な女の子といった作り声での証言であり胡散臭さを滲ませていたが、議会ライブ中継で最も関心の高かった共和党側のRachel Mitchellによる代表質問(静かなる尋問)について一切触れていないのは、典型的なFake News仕立てである。日本の大メディアは、独自で取材することを怠りがちで、米国Main stream Media(MSM)を模倣しながら、事件の本質を次々に希釈してゆき理解が出来ないようにする。それが意図的であるのか、編集権者の忖度での誇張と歪曲なのかは不確かではない。しかし、このカバナー判事議会承認過程はすべて中継され、しかも速記録も公開されているので、記者が確認してみようという気になれば、簡単に事実関係がチェックできる。この著者渡辺女史は、最初から#MeToo運動家の主張を検証なしに受け入れて、疑わしいことは有罪であるという立場で論理建てをしているので、共和党側のEvidenceの検証のためのMitchell検察官とフォード女史の問答で浮かび上がる客観的な疑念も無視してしまっている。無責任なWeb上の記事であり、著者の好きなように情報を処理しても良いようなものだが、硬派の思索家で7万近くのフォロワーを持つ想田和弘 @KazuhiroSoda Oct 10 が渡辺女史の記事を引用リツイートして、「渡邊裕子氏による先日の論考の続編。今度の中間選挙は米国のデモクラシー存続をかけた極めて重要な選挙だと思う。→【カバノー最高裁判事承認】米中間選挙へ女性たちの怒りが広がる」(BUSINESS INSIDER https://www.businessinsider.jp/post-177005 via @BIJapan)と書いているのを見ると、社会的な影響もあるのがわかったので、ある程度の批判的指摘も必要かとも思う。時間の関係で、多くは書けないが、カバノ―最高裁判事の承認過程でのフォード女史によるアキュゼーション非難事件を語るには、少なくとも次の資料は最低限度見てから書くか論評して貰いたい。

① 性犯罪事件専門検察官(25年以上のキャリア) Rachel Mitchell's complete questioning of Christine Blasey Ford, without interruptions, 1,245,000 回視聴4861 1000 共有保存PBS NewsHour 2018/09/27
https://www.youtube.com/watch?v=-gKa8ZIwE7g&t=1253s
② Rachel Mitchell's Memorandum Analysis of Dr. Christine Ford’s Allegations 共和党議員全員に向けた議会証言でフォード女史への質疑に関するミッチェル女史の正式メモ
 (https://www.jimhopper.com/pdf/mitchell_memo_highlighted.pdf

Fake Newsとは、ウソを書くことに限らず、事象の部分を切り取り、誇張し、他の部分を見えなくする事ではないかと思っている。

沖縄の玉城新知事の活躍も、米本国の中間選挙結果も直接影響があると考えながら、カバノー判事を巡る人格破壊糾弾キャンペーンを見ていると、検察当局と裁判所がマスメディアの大合唱の下に、小沢一郎氏を陸山会事件として仕立て上げ、代表辞任に追い込んだことがオーバーラップして見えてくる。
オルタに投稿するのは初めてですが、オルタは執筆メンバーから見ても、穏健的な改革派的自由主義者の集まりのようであり、私のような激昂の正義追及型には、違和感を持たれると思い、今まで控えていましたが、ご努力を重ねてこられた編集長も亡くなられてしまったので、既存オルタに対するオルタという位置付で広場に受けいれて頂ければ幸いです。沖縄でのDennyさんの勝利についてだけ書くつもりが、脱線してしまい長くなりましたが、まだ閉塞感はしこりのように残っております。
米国中間選挙の結果はどうなるのか、FBIと司法省対トランプはどうなるのか? 毎日が、Netflixの連続映画以上に面白い。しかも現実だから。