民意でなく小沢忖度では民主党に未来はない

■ 民意でなく小沢忖度では民主党に未来はない       仲井 富

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●自殺の自民党から自滅の民主党へ


  2月27日の長崎県知事選挙で、民主党推薦候補が、かなりの差で自公の候
補者に敗北すると予測されている。あわてることはない。すでに昨年9月の政権
発足以降、民主党は宮城県知事選挙をはじめとして地方自治体選挙で敗北を重ね
ているのだ。ただその事実を直視も反省もせず、今日に至っているにすぎない。
わたしは昨年の都議選挙の民主党過半数について、本誌に以下のように書いた。
「自民の郵政選挙3分の2は、わずか2年間で崩れた。民主の都議選大勝も薄氷
の勝利だ。しっかりしないと風に頼った選挙結果は崩れ去る」。この予想は、早
くも民主党政権の凋落となって現実のものとなりつつある。昨年の自民党の惨敗
を作家の高橋源一郎氏は「民主党の勝利の実態は、自民党の自殺的なミスによる
結果であり、民主党が支持されたというものではない」と述べた。民主党は安倍
政権以来の自民党の自殺的ミスに救われて選挙に勝利したが、その自民党の敗北
を教訓とはせず、同じく自滅的な過ちを冒しつつある。

 民主党は野党の攻撃によってではなく、自らの自滅的行為によって、崩壊の危
機に直面しているのだ。それを直視しないで、いまだに衆議院の絶対多数と参議
院の単独過半数という小沢的幻想に安住しているところに、危機の本質がある。
その根本原因は民主党が政権獲得以後、国民との約束を守るという政治の原則と、
民意を尊重するという当然のことを忘れ去った姿勢にある。まかり通っている
のは小沢幹事長の、つぎの参議院選挙で単独過半数という、党利党略の選挙至上
主義のみである。そして最大の危機は、このような政権と党の姿勢に批判も対案
も出てこない民主党の体制にある。以下具体的に述べてみよう。

1、官房機密費公開という約束を放棄した官房長官の姿勢
2、沖縄の名護市長選挙の結果を斟酌しないという官房長官発言
3、総選挙で基地の県外国外移転を公約しながらそれを蹂躙する閣僚
4、昨年の総選挙以降の自治体選挙で負け続けいることへの反省なし
5、鳩山、小沢の金銭問題に毅然たる態度をとらず擁護し続ける姿勢
6、ダム問題の見直しをいいながら審議会に反対派委員は入れない
7、自民党支持組織の取り込みだけで無党派層は疎外するやりかた
8、小沢幹事長の意向を忖度するだけの党運営体制
9、行政の無駄排除の大前提たる国会議員の削減を放棄している

 数え上げればきりがないが、鳩山政権と小沢民主党は、負けず劣らず、総選挙
で国民に約束してきたことを誠実に実行しようとする姿勢に欠けている。きちん
と対応すべき金銭問題、基地問題にたいしてあまりにも不誠実である。加えて民
主党に投票した有権者が望んだ、旧自民党政権の金権政治の打破、官僚組織の改
革、あるいは国会の改革、無駄な行政組織の打破など、目に見える形で示したの
は、予算の仕分け作業だけであり、これも枝野氏を行政刷新担当相にしたが、今
後にかかっている。以上のなかで、2、3点重要なことがらを指摘してみたい。


●民意を「斟酌しない」平野官房長官の暴言


 
  鳩山内閣の、自滅的行為のなかで最大の戦犯は、平野官房長官の存在だろう。
鳩山内閣の支持率急落の原因は、閣内が不一致で明確な原則がないことだと指摘
される。とりわけ内閣を束ねる官房長官の力量が問われる。かつては自民党でも
伊東、後藤田、野中など人格、識見総理なみの人材が官房長官だった。小泉内閣
から急に小粒になり、安倍、福田、麻生と小物のお友達官房長官が続いた。鳩山
内閣も有害無益な平野官房長官の存在がガンとなっている。就任早々「官房機密
費なんてあるんですか、知らなかった」と白を切った。ここから「うそつき」と
いうイメージになった。こんどは「官房機密費はないが報償費はある」などとい
い、自民党時代とおなじく14億円の予算を計上した。野党時代に公開する法案
まで作成していた民主党政権の情報開示の基本方針に誠実なら、予算減額なり、
一定の期間をおいてどういう使い方をしたかを公開するというのが当然だ。

 平野は普天間移転問題を座長として取りまとめるとして沖縄に飛んだ。しかし
根本的なことを忘れ去っている。沖縄県知事と会談する前に、すくなくとも首相
名代として、沖縄戦没者の霊に花束をささげて「戦中、戦後沖縄県民の耐え難い
労苦に感謝する」というくらいの礼儀が必要であった。そういう礼儀もわきまえ
ないのは、内閣の番頭たる官房長官として失格である。沖縄県民の戦争の犠牲、
戦後のアメリカ支配からの祖国復帰闘争の歴史と痛みを知らないで、基地問題の
解決などできるはずがない。極め付けが、沖縄県名護市長選挙における、民主党
推薦の反対派市長の当選を「選挙結果を斟酌しない」と公言したことだ。

 しかも「法的措置まで考える」とまで言った。三里塚のように強制収用もあり
うるという暴言である。まるで反対派市長の当選が迷惑だといわんばかりの姿勢
だった。この後、沖縄選出の社民党代議士が憤慨して「ぶん殴りたい」と抗議し
た。当然である。自民党の石破茂政調会長も「民意を無視するも甚だしい。私で
もぶん殴りたい」と沖縄の地元紙で述べている。(1月31日琉球新報)評論家
の佐藤優氏も同日の新聞で、「恥知らずの平野氏発言、民意に背く暴論を許すな
」と批判している。どう考えてもこういう、労組、企業のお抱えで苦労なしの選
挙をやってきた無能な男に、沖縄問題のまとめ役なぞできるわけが無い。あえて
平野を起用した小沢や鳩山の責任も問われる。お茶坊主は使い勝手がいいし、官
房機密費も使いやすいと考えたのだろうが、政権崩壊の因を作ったといえよう。


●県外国外移転の選挙公約を無視した防衛大臣ら


  北沢防衛大臣の発言も、沖縄及び国民に対する責任放棄の発言である。就任早
々、沖縄現地入りしたが、「辺野古以外に適地はない」と発言して、沖縄県民の
民意を逆なでした。県外国外基地移転は民主党の選挙における約束事である。そ
の結果、総選挙では自民、公明は本土復帰後、はじめて一名の当選者もなく惨敗
した。当然、民主党の閣僚として、この事実を背負って発言しなければならない。
それを反故にして、アメリカとの約束を重視するというのは、民主主義の否定
である。まずアメリカに対して、沖縄の民意は完全に国外県外移転で一致したと
いう事実を伝えて今後の交渉を行うべきである。

 にもかかわらず防衛官僚や外務官僚、親米保守など、アメリカに依存すること
で生き延びてきた連中の言葉だけを尊重した。加えてアメリカの意向を忖度しな
ければ大変なことになるという、軽重浮薄なマスコミの思い込みに毒されている。
政権が変れば前政権の対外的な約束事にも変化が出るのは当然だ。アメリカが
怒っているなどと、アメリカの意向だけを忖度する意見が多いが、政権交代の結
果を尊重せよとの正論もあることを忘れてはならない。

 元外務省国際情報局長の孫崎享氏は「選挙結果の無視は日米安保にマイナス、
国際約束よりも政策の妥当性が優先する」と以下のように述べている。(毎日新
聞2月5日)
  名護市長選挙の結果、名護市への移設は難しくなった。政府が結果を無視し 
て5月に名護市移設を決めれば、沖縄で反基地運動が激化して長期的には日米安
保にマイナスとなる。日本の報道機関はアメリカ側の発言をうけて、普天間問題
で日米関係は悪化すると報道してきた。それは本当だろうか。民主党政権はチェ
ンジを掲げ総選挙に大勝した。それは50年にわたる自民党時代の政策の再検討
を意味する。当然外交も、普天間飛行場問題も含まれる。こうした流れは民主主
義国家の基本原則だ。米国もオバマの政権になり、イラク戦争への立場を変えた。
東欧諸国へのミサイル防衛施設の配備も変えた。国際約束よりも政策の妥当性
の検討が当然優先する。

 残念なことは以上のような、民主国家における政権交代の見識と常識が、民主
党の官房長官以下の閣僚にないということだ。民意を尊重するという基本原則を
忘れ、アメリカの意向云々だけで政策を推進する政権など、存在する価値もない。


●前世紀の自民党幹事長小沢を頂く民主党の不幸


 国民目線から見ると今の民主党は異常である。たしかに昔とはちがって政権政
党である。権力闘争だからある程度の守りの姿勢は当然だ。だがなんの議論もな
しにシャンシャンと小沢留任をみとめた民主党大会を傍聴していて、これではか
つての自民党より言論の自由がないと感じた。誰もがどの程度小沢の話を信じて
いるのかは疑わしいが、党大会で小沢留任をみとめた民主党は、鳩山首相、菅副
総理をも含めて小沢と検察の戦いの一方に加担し、ともに心中することを覚悟し
たことになる。わたしもそれはそれなりの決意がなければできないことであり、
民主党が当面、小沢留任で参議院選挙を戦うという決意表明として受け止めるに
やぶさかではない。だが総選挙で、自民党に見切りをつけて民主党に投じた有権
者を納得させるだけの党内論議がなされたとはいえない。

 こういう閉鎖的な民主党のあり方に疑問と不信が高まるのは必至である。鳩山
内閣の支持率は下がり続けている。民主党の支持率下落も必至である。小沢なし
では夜の明けぬ民主党だが、それは国会議員レベルの話だ。民主党に投票した有
権者、とりわけ自民党支持者の3割、政党支持なし層の5割は、国民生活第一と
いいながら国民に目を向けない民主党にうんざりしている。幸か不幸か大敗した
自民党に復元力がなく救われているが、それは日本の政治にとって不幸なことで
ある。総選挙後の民主党は、異論を封じ、小沢の意向を忖度するだけの議員集団
に成り下がっている。民主党政権を快く思わずこれを倒したい官僚や大企業、利
権集団がその背後にあるのは当然だ。それならば公然たる大会や国会の議論で、
検察ファッショの実態と検察の恥部を暴露し議論していくべきではないか。

 小沢幹事長は1990年海部内閣の当時の幹事長だ。政権交代の熱意には敬意を表
するが、細川、羽田と2度にわたって政権をつぶした。そして社会党を追いやっ
て自民党と連立を組ませる結果を招いた。社会党が消滅したのは自業自得だが、
結果として自民党政権延命のカンフル剤となった。その後、自ら自自連立へ、そ
して自自公連立へと走り、またもや自民党延命に力を貸した。政権獲得というが
、小沢と社会党は自民党を助けて自滅した。その政治的道義的責任は重い。すこ
しは反省しているかと思えばそうではない。

 民主党代表として参院選に勝利するや、唐突に福田政権との大連立を画策、党
内で否定され、やめるやめないの一騒動、そのつぎが献金疑惑での代表辞任騒ぎ
。やっと代表代行で総選挙に勝った。そのまま参院選挙まで選挙担当でやってお
ればよいのに、幹事長職に復帰した。ここで民主党の世代交代や若返りを阻害し
た。そしてまたもや政治資金疑惑で大騒ぎである。どう考えてもこの前世紀の遺
物の「自民党幹事長」を民主党が戴くのは時代錯誤もはなはだしい。小沢がやろ
うとしていることはかつて自民党を支えてきた業界団体を傘下に収めて自民党を
ぶっつぶすことにある。だが、結果として業界団体に加えて連合という最も古い
体質の労働団体をかかえて選挙組織をつくり、新しい自民党をつくろうというこ
とにすぎない。だが選挙の帰趨を決定する無党派層には何の関係もない。無党派
層といわれる、国民の三割か四割の支持なくしては小選挙区あるいは一人区が2
9県になる参院選挙での勝利はない。すでにその予兆は総選挙直後の宮城県知事
選挙や堺市長選、鎌倉市長選での敗北、神戸市長選での失速などで明らかになっ
ている。自民党が沖縄県議選で敗北以来の、地方選挙に現れた民意を無視し、3
分の2という議席
に安住し続けた結果、惨敗した。もはや有権者は民意を無視した民主党に参議院
の単独過半数を与えるほど寛容でも愚鈍でもない。「民意を斟酌せず、アメリカ
と小沢の意向を忖度する」民主党に未来はない。

             (筆者は公害問題研究会代表)

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