■ 【オルタのこだま】

濱田氏の農業論について           高沢 英子

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  農村が抱えている深刻な問題に一つ一つ向き合って解決を捜し求めようとする
真摯な態度。ユーモアを交えて語られる苦い現実。
現実の行政の貧しさや社会構造の変化によって解体せざるを得ない農村の実態が
具体的な事象でいきいきと語られ、想像以上の危機的状況に胸が寒くなります。

 子供の頃の思い出を手繰り寄せてみました。戦前ですが,決して牧歌的な状況
とはいえなかった記憶があります。外見ののどかさ、美しさとは裏腹に、農家の
実態、お百姓の生活の内実は極度にきびしいものでした。それをいうなら、江戸
時代にまで遡ることになります。歴史的な社会構造はこの国ばかりとはいえない
が、常に土に向き合って食糧という大切なものを生産する人たちに厳しかったと
思います。

 近代になり、工業生産の飛躍的な発展とそれに伴う社会構造の変革、民主化の
波が、農民をやむなく縛り付けていた様々な拘束を取り外してゆくにつれ、若い
世代がこの報いの少ない辛い仕事に喜びを見出すよりも、他に心が動いてゆくの
は当然の成り行きともいえましょう。
  しかし、大切な食糧の自給もおぼつかない列島に住んで、不安は広がるばかり
です。

 生産者であり消費者でもある国民のみんながこの実態を見つめて立ち上がらな
い限り、解決は難しいと思いながら、少しずつ明るい兆しも報告される紙面に今
後も注目し、私たち主婦に出来ることは何か、を考えてゆきたいと思います。
     (筆者はエッセイスト・東京・大田区在住)

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