【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(1)

留学生ではありません。「呼び寄せ家族」の若者(1)

坪野 和子


 人は、国籍や民族で人間性、能力、決まるものなのでしょうか?? 本来住んでいるはずの土地を離れて生活している人々は現地の人々から「郷に入っては郷に従え」を強制されるべきものなのでしょうか?? 現地と同化することと現地で共存することとは別なのではないでしょうか??
 「移民」「在住外国人」の視点からの日本。生の声をお伝えします。
 今回からの連載です。よろしくお願いいたします。尚、事例については、個人が特定できないよう事実をまとめることもありますし、お店の店主などむしろ名前を出してほしい人についてはそのままお伝えいたします。今回は在住外国人公立高校生の話です。

◆ 1. 「呼び寄せ家族」という来日スタイル

 誰もが自らの意思で来日し、在住したわけではありません。親から呼び寄せられて日本に来ることになった…そういう事情を持つ若者もいるのです。日本の小学校高学年から中学生年齢で呼ばれてきました。
 Aさんは「親と一緒に暮らせる…それだけで嬉しかった」
 Bさんは「見知らぬおばさんみたいな母親に急に呼ばれてなんで??って思った」
 Cさんは「え?? 本当のお父さんって日本人?? お母さん、出稼ぎだと思っていた」
 Dさんは「空手の国の本場に住めるんだ!! お父さんありがとう!!」
 Eさんは「おかあさん、日本人のカレシとうまくいっているから…ね」
 Fさんは「ああ…オヤジ、商売うまくいっているんだ。じゃ、オレも日本でがんばってみようかな」
 その他いろいろ。留学生とは事情が違います。

◆ 2. 「なぜ日本に来たの…」って訊かないで

 ある女の子。おばあさんに育てられました。母親は難民資格で日本在住。母国でバツイチ。日本で同じ国の男性と再婚。彼女の弟が生まれた。そして離婚。さらに日本人の男性と婚約。そこで母親は家事労働を負担してくれる実の娘を呼び寄せました。それでも彼女は日本で勉強することを望み、学年を下げて高校に入学。ですが、彼女にとって辛い友達の質問を浴びさせられるのでした。
 「なんで日本に来たの?」「日本のどこが良くて日本に留学したの?」「日本のどこが好きなの?」
 「…」日本語能力がそこまで対応できなかったことのみならず、彼女の心の中で「日本に来たくて日本に来たのではない。日本が好きで日本に来たのではない。母親の都合だから」
 彼女の母国の習慣で断ることができなかったから日本に来たのです。
 実際、彼女の日本生活は、希望があるようなものではありませんでした。弟がだらしないと母親は彼女に文句を言い、「大学なんか行かないで工場で働いて」と言い、バイトと家事と勉強という生活で常に睡眠不足が続いていました。留学生でも日本国籍でもないので給付型奨学金を得る機会がほとんどありません。それでも彼女はがんばって日本の大学に進学しました。

※奨学金については後日別の若者の話で

◆ 3. What's PE? (体育って何?)

 ちょっと軽い話題で。必修体育の授業がある国は意外と少ないということをご存じでしょうか?? 授業の中で行っている国の多くは選択授業で、科内クラブ活動のようにさらに選択できます。しかし日本では、とてもキツいトレーニングやマラソン大会なども存在します。ラジオ体操を全部覚えなくてはなりません。服装に対しても厳しいきまりがあります。特に女子は「私の国では生理がはじまる4年生で体育はなくなるのに。生理のたびに今日は見学させてくださいって言うのがイヤです」と言います。
 ある日、中国人男子生徒が真顔で言いました。「日本の自衛隊と中国の人民解放軍が陸上戦になったら中国負けるよ、先生。軍隊でもないのにみんながこんなに鍛えていたら勝てるはずないよ」
 (…そういえば、JICAの体育教師募集国って…。なるほど)

 前回までの連載のまとめとして、音楽(世界の愛のかけあい歌)と連載の内容を息子の視点で撮影したミニドキュメンタリー上映でおしゃべりするイベントを企画しております。美味しいチベット&ブータン料理も楽しんでいただき、このイベントのための特別裏メニューも考えております。

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 日 時:2016年11月13日(日)18時開場 18時半開演
 場 所:チベットレストラン「タシデレ」03-6457-7255 都営新宿線曙橋A4下車
 参加費:¥3000(お食事+お茶)アルコール別途 ※受付でお申し付けください
  ※ハラル・ヴェジタリアンの方は参加表明の時お伝えください
 お問い合わせ・参加表明:坪野まで amalags@aol.com (自主企画用)
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 (高校日本語コミュニケーションアドバイザー&専門学校時間講師)


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