【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(13)

私のかわいいパキスタン人生徒たち(4) パキスタン人はうそつきか?(2)

坪野 和子


 先月、ツーリズムエキスポという大きなイベントがあり、ブータン政府観光局ブースのお手伝いをしました。いや、正確にはひとりのブータン人の通訳ボランティアをしました。空港の迎えから彼女とべったり毎日、名刺印刷、買い物、観光、すべて!! ものすごく大変な日々でしたが、いろいろな経験になりました。ヒマラヤ圏では友達が来るとべったりつきあうのが常識です。またブータンではボランティア、特に環境問題のボランティアであれば有給休暇を取ることができます。自分の国の常識が世界の常識だろうと思いこんでいるのは、誰にもあることなのだなと。今回はパキスタン人のうそに関して…誰というのでなく。

◆ 2-2.パキスタン人はうそつきか??(前回の続き)

前回の会話「あなた、きょうだい、なんにん??」「10人」…うそでした。きょうだいは5人。うそというより冗談のつもりのようでしたが、日本人の常識一夫一婦少ないきょうだいではなく、「おかあさん、なんにん」という私の反応が予想外だったのでした。

「学校に早く来て私と一緒に提出物を終わらせる? 家で、自分で終わらせる?」「早く来ます」…当日、いつまで待っても学校に来ない…「仕事が早く終わったから自分でやりました」…いいんだけど…それなら連絡してくれれば心配しなかったのに…。

「やります、やりますってちゃんとやらないんだから!!」これはパキスタン人と友だち付き合いがある人すべてからききます。口約束はすぐに忘れてしまうようです。ですが、仕事であればその場で行動しているようです。

「ムスリムの男、それはやらない」宗教上の理由で拒否する。これは簡単にこちらも拒否できるうそです。「あなたは "ムスリムの男"とイコールだけど、"ムスリムの男"とあなたは≠であり≒なのですから、それは人と状況でちがいます」

◆ 3.思いつきで話す・時間の変化で忘れる・瞬発力で動く(火事場のナントカ)

 思いつきで話すのは、国・民族関係なくそういう人はいます。インド人も割合そういう人が多いのですが、国の体質としてお役所仕事なので、過程を踏んで思いつきが消えていく現実があるように思います。日本人であれば、後先考えないんだから、あることないこと全部しゃべるんだから…と陰口の対象になるので、頻度が低いように感じます。結果が出ればその陰口が消えるのかというと「今回はうまくいったけれど」ともう一度陰口を言われることになったりもするように思います。

 「不言実行」が日本人のうそつきにならない護身なのだと南アジアの人たちの言動を見て感じるようになりました。南アジアの多くの人は組織的な動きでないかぎりスケジュールを細かく気にすることは少ないように感じます。その場その場で行動し、「まだ先のこと」を考えないようです。また細かくメモを取る習慣がないようなので、日本に馴染んでから…それでも紙切れに簡単に書き留める感じです。商売関係でトラブルを起こしやすいのはそこにあるようです。

 とはいえ、何かを実行しはじめたら、普段のデレッとしたあれこれは何だったの??というシーンに何度も出逢いました。私の場合、亡命チベット人(インドだけでなくアメリカなど)が何度もギリギリになってなんとかなってしまっている様子を見ています。先日、お手伝いしたブータン人の友人もそうでした(場所が日本だったから疲れましたが)。私の生徒たちも同じです。インド人もパキスタン人も。前日または当日に教えたことを試験で点数として出していました。この瞬発力はなんなの?

◆ 4.うそかまことか神のみぞ知る

 「先生、僕、学校ですぐうそをつくと言われるけれど、言ったときは、その時の本当の気持ち」
 「そうね、でもその通りではなかったからうそになる」
 「先生、どうしたらうそにならない、どうしたらうそついたと言われない、うそをついたと自分でどうやってわかる?」
 「そうね、何か言ったら覚えていること、何か言ったらその通りになるように行動すること」
 「先生、自分でどうわかる?」
 「ひとつ答えていなかったわね。あなたたちは神様がいるから、うそか本当か知っているでしょ。神様が知っているでしょ。私は仏教徒だから神様がいない、自分で考えなければいけない。でも私は日本人だからたくさん神様がいる国の人。知っている神様を探せばいいのかもしれない」
 「僕は、お祈りが終わって考えればいいんだね、わかった」

 次回に続く。次回はバングラデシュ人のハラールのお肉屋さん。

 (高校日本語講師&専門学校時間講師)

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