【沖縄の地鳴り】

第一回辺野古協議:翁長知事との一問一答(抜粋)/沖縄タイムス


●はじめに
 沖縄タイムスは、8月12日の辺野古協議 普天間移設問題・辺野古新基地 普天間移設問題について菅官房長官との会談後、翁長雄志知事と記者団との一問一答(全文)掲載した。以下はその抜粋である。特に注目したいのは、普天間基地の危険性除去が辺野古新基地建設の原点だという一連の政府の態度に翁長知事は「原点は米軍に制接収されたことだ。自ら奪っておいて、危険だからお前たちが負担しろ。それができなければ代替案を出せというのは、私は日本の政治の堕落と言っている」と改めて沖縄の姿勢を明確にしたことである。(AN)

<記者> 今日の初会合はどのような事を菅官房長官に伝えたか。

◆抑止力の問題について
<知事> 昨日(の懇談で)沖縄の思い等を、原点みたいな話をさせてもらい、沖縄の思いは大変理解ができましたとの話も昨日はありました。今日は個別の話をするという風にしていたけれども、それは今日一日の時間としては十二分にできたのかなと思っております。UH60とハワイに行った時のMV22について触れたのは、やはり、そういった形で視察をされて、日常的に、そういうことが行われていることについて、県民は向かい合っているんですよと、いうような事を今日(事故が)起きたときに、改めて申し上げるのは大変重要だろうと思って、いろいろ話をする前に、そのことに触れた。私はこう思っていると、いうことについて、時間いっぱい話しをさせてもらいました。

 その内容は、一つは、抑止力の問題も、私の方から改めて提起をさせてもらいました。一つの大きなものは、沖縄の1県にこれだけ米軍基地を押しつけておくと、日本全体で安全保障を守るという気概が、他の国に見えないので、むしろ抑止力からいうと、沖縄だけに頼るというのは、日米、日本の安全保障という意味でおかしいのではないかと、いうような話から、一つ一つ抑止力についての話しもさせてもらいました。この機動的、即応性、一体性。これが海兵隊が沖縄にいる理由だという形で防衛省も話をしておりましたから、その機動性、即応性、一体性というものが、この沖縄でなければならない理由にはなりませんよと、いうような事で、佐世保の事とか、いろいろ本土にある基地の話もしながら、それから、一体となってやるという意味でも、沖縄の海兵隊は揚陸艦がありませんので、こういったこと等もできないと。こういうのを大変詳しく話をさせてもらいました。

 それから、ジョセフ・ナイさんとか、マイク・モチヅキさんなどが、「沖縄はもう近すぎて、中国の弾道ミサイルに耐えられない」と、こういう固定的な、要塞的な抑止力というのは、大変脆弱性があるというような話もされておりますから、そういった話もさせてもらってですね、沖縄はその意味からいうと、むしろ今日までの沖縄と言うよりも、これから以降はそういうリスクを伴うので、抑止力から言うと、もっと分散をして、やるべきではないかと、いうような話もさせてもらいました。(菅官房長官は)「思いはわかる」とか、言っていることは、どちらかというと聞き役にまわって、話をされておりました。私が言ったことを、県民の皆さま方にもしっかり伝えないといけませんから、私が言ったことを改めてもう一回やりたいと思います。

◆基地の負担軽減・普天間基地の危険性除去が原点ではない
 それから基地の負担軽減という意味でも、それから普天間の危険性除去、この2点についても違いを話をさせてもらいました。普天間の基地の世界一危険というものの除去が、原点だという話が今日までされていました。それに私はそれが原点ではありませんよと。戦後、普天間の住民がいない間に強制収容をされて、つくられた基地なんですよ、それが原点なんですよと。改めて、日米一緒ですから、自分が奪った基地が世界一危険になったから、老朽化したから、またお前たちに(新たな基地を)出せというのは、こんな理不尽なことはないんじゃないんですかと。こういうことをどう思います、というような話をしたら、昨日の(懇談で)沖縄と思いが乖離があったことを踏まえて、「原点がやっぱり違うんですね。私などは日米合意が原点になっておりますが、知事の場合には、そういうことになるので、その辺が今なかなか埋まらないんですね」というような話しをしておりました。

 そういうものをやる中で、基地負担軽減についても、よく嘉手納以南などは着々と進んでいると話をしますけれども、私がよく申し上げているように、たった0.7%しか縮小されないじゃないですかと。それから、嘉手納以南、いつ返されるかもわからんような書き方じゃないですかと。それから返されたとしても、73.8が73.1%に、0.7%しか減らないじゃないですかと。それから防衛大臣も含めて、いろんな方々が、沖縄担当の委員会の委員長とか、中枢にいる政治家が沖縄に来ても、その話をしたら皆びっくりして、「嘉手納以南がこれだけ返っても、本当に0.7%しか減らないのか」「沖縄の面積の半分にもならないのか」というような質問をほとんど100%、そういう返事ですよと。本土の政治家あるいは政府の方々もまったくご存じないんですかねというような話も私からさせてもらっています。これについても、(長官から)明確なものはございませんでした。

 あと、KC130。これも岩国に移転をしたということで、一つの成果として挙げられていますけれども、KC130は15機岩国に行っておりますが、その時は普天間には63機あった。だから15減りましたから、48機になった。ところがその後、攻撃用ヘリコプターと大型ヘリが10機配備され、今58機になってますよと。だからKC130が岩国に移って、負担軽減しましたよと言うんですけれども、そのあと違う機種が10機きて、こうなってると話をしたら、(長官は)「これは初めて聞いた。防衛大臣にも伝えておきます」というような話をされておりました。

◆原点は米軍の強制接収であり政府と出発点が異なる
 森本さんの著書の話とかジョセフ・ナイさんとか、マイク・モチヅキさんとかマケインさんとかが話したことを紹介しながらの今の話でしたので、基地問題については個別的な形で私なりに踏み込んで話をしました。それから、官房長官からは今言ったように、原点が例えば危険性除去の日米合同委員会が原点と思っていたけれども、知事は強制接収されたのが原点だということで、ある意味では原点が違っていてここまできたんだということは感じたという話の中で、私だけではなく、おそらく閣僚のことだと思いますが、聞いてもらえるようにしたいですねという話でした。そして、今日はUSJ、あるは西普天間あるいはキャンプキンザーも見てきたので、その見てきた中でこういう問題も全力で解決、あるいは促進というか応援をしていきたいという話をしていました。それについては大変ご苦労様ですという話をしました。

<記者> 菅官房長官が感想で、普天間の原点の部分で大きな隔たりを感じたとおっしゃった。1カ月の協議の中でその隔たりをどう埋めるか。今後の協議はどういう順序で議論を組み立てるか。

<知事> 隔たりは、今日お話しした中にも結局は日米合同委員会のことに日本政府がアメリカとの関係で迫られていることですので、沖縄の気持ちは伝わったのかなと、伝わってもそれに答えられない日本政府のものを少し感じましたけれども、これはしかし、そういった表現を菅さんがやったわけじゃないので、私がそうだろうと決めつけることはできませんが、私なりのものは沖縄の意見というものはなかなか今日まで聞く機会はなかったんだなぁと言うのが、内閣の皆さん方も私はあるのではないかと思っています。

 先日大手の新聞の東京のシンポジウムでも話をしましたが、私たちは県外移設ということでしっかりと認識をもっていますので、どこそこと言われても、これは難しいと、できないということは伝えていますから、そういった問題を解決する時には、だから私はいつも「原点は強制接収されたことなんですよと、自ら奪っておいて、またおまえたちが負担しろとか、それができなければ代替案を出せというのは、だから私は日本の政治の堕落と言っているじゃないですか」というような話までしているので、その意味から言うと、沖縄県ではなく、その中で問題を解決してもらいたいということを言っています。

 (沖縄タイムス 2015・8・12)


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