第117号(2013.9.20)

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メールマガジン「オルタ」117号(2013.9.20)

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『奴らを通すな!(ノーパサラン!)レイシストと闘おう!』
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中国公船の接近の意図は何か
2つの文書と3つのキーワード—    岡田 充

日本政府による尖閣諸島(中国名釣魚島)の三島「国有化」から9月11日(2012年)で丸一年。尖閣周辺海域には、中国の公船が毎日のように現れ、海上保安庁の巡視船と並走ゲームを演じている。メディアはそれを「中国当局の船が尖閣周辺の領海や接続水域を航行するのは○×日連続」などと報道。イチローの4000本安打記録じゃあるまいに…。中国公船は「9・11」以前は、一部例外を除けば12カイリには入らないようにしていたから、中国の対応は「国有化」を境に明らかに変化した。


永続敗戦論からの展望     白井 聡

本年三月に、私は『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)と題する著作を上梓した。本書が提起する「永続敗戦」という概念が着想されるにあたり、「二つの起源」を挙げることができる。・『永続敗戦論』の執筆動機 ひとつには、二〇一〇年の鳩山由紀夫政権の崩壊劇である。普天間基地を国外ないし沖縄県外に移そうとして政権は倒れた。この事件は、本質的に言えば、「アメリカの意思」と「日本国民の意思」のどちらをとるか取捨選択を迫られて、前者をとらざるを得なかった、ということだ。アメリカによって間接的に解任されたと言ってもよい。ところが、鳩山政権の末期、メディアはひたすら鳩山氏の政治手法の拙劣さや性格に攻撃を集中させていた。


奴らを通すな!—日本版レイシストと闘うために—    有田 芳生

「ある人びとから憎悪を取り除いてみたまえ。彼らは信念なき人間になるだろう」(エリック・ホッファー)。ヘイトスピーチ(差別扇動)への関心の度合いは人によってそれぞれだ。問題が視野に入っている人もいれば、知識として知っているだけの人もいる。あるいは ニュースで見たこと、聞いたことがあっても、自分がかかわることではないという人ももちろんいるだろう。しかし日本人がこの課題からどんな距離にあろうと も、聞くに堪えない差別言辞は当事者の生身の身体を深く傷つける。精神の内面は外から見えないが、「言葉の暴力」は文字通りナイフと同じ機能を持っている。差別に反対し根絶を求める立場に立てば、たとえ酷い内容であろうともまずは現実から眼を背けるわけにはいかない。


世界一奇怪な米国農業なぜ米国はTPPと遺伝子組み替え、バイエタが必要なのか?〜        濱田 幸生

米国ほど、世界の中で食糧が「戦略武器」だと自覚している国はないでしょう。米国ウィスコンシン大学に留学したある日本人研究者は、教授からこのような言葉を聞いたたといいます。「諸君らは、アメリカの威信を担っている。アメリカの農産物は政治上の武器だ。だから安くていいものを沢山作りなさい。それが世界をコントロールする道具になる。たとえば東の海の上に浮んだ小さな国は(※わが日本のこと。小さな島で悪かったな)よく働く。でも勝手に動かれては不都合だからその行き先を引っぱれ。」(大江正章「農業という仕事」)ここまで露骨に言われると日本人としては燃えますなぁ。米国の食料戦略の第1ターゲットはわが国だということです。


≪連載≫海外論潮短評(72)

楽観的成長幻想を打ち砕く大減速世界経済の牽引車、新興経済市場の曲り角—                       初岡 昌一郎

ロンドンの『エコノミスト』誌7月27日号が、社説トップと巻頭のブリーフィングという解説欄で、中国、ブラジル。南アフリカ、ロシアのBRICをはじめとする新興経済諸国の経済が減速期に入り、これが世界の楽観的経済見通しに冷水を浴びせていると論じている。以下はその要約。これらの記事は無署名なので、同誌編集部の見解である。


≪連載≫宗教・民族から見た同時代世界    

華人社会を支える三教複合宗教 荒木 重雄

近年、合理主義的無宗教やキリスト教の広がりが著しいといわれる香港、台湾、東南アジアの華人社会であるが、中国の伝統に連なる宗教文化は、現地の固有文化と融合しながら、依然、濃厚に息づいている。異邦人にはなかなか内部まで入り込めないその実態を、シンガポールを例に、アラン・エリオットの著作(『シンガポールのシャーマニズム』春秋社刊)の手引きも借りて瞥見してみよう。


≪連載≫落穂拾記(26)

岩手県大槌町 被災2年半後を寸見する 羽原 清雅

東日本大震災から2年半。岩手県大槌町の復興の現状をのぞいた。わずか3日だけの現場取材なので、あくまでも「寸見」にすぎない。現地の息吹をわずかながら、お伝えしたい。じつは、筆者の政治記者時代の仲間であった但木汎さんが、岩手県下の記者をリタイアしたあと、この大槌町の期限付職員として、犠牲者の丹念な記録つくりや町の広報などに取り組んでおり、案内をしてくれたのである。ただし、小生が見聞きした範囲と、町の資料などをもとにしており、間違いの責は当然筆者にある。 


【横丁茶話】

八月残暑日乗                  西村 徹

注目すべきは海軍工作兵に関する件である。海軍は一貫して朝鮮人を受け入れなかった。したがって海軍工作兵はすべて日本人である。その日本人が日常的に樫の棍棒で殴打された。加害者は大日本帝国であることに変わりはないが奴隷扱いされたのは朝鮮人だけでなく日本人も含まれていたのである。


【北から南から】

ビルマ/ミャンマー通信(9)     中嶋 滋

今、ミャンマーは雨期の末期を迎えつつあり、この時期特有の激しい雨が時折ヤンゴンを襲います。しかし、ほんの短い間ですが陽の目を見ることが出来る日が増えてきているようで、季節の移ろいを感じさせます。個人的には、少しでも油断をすると鞄や靴、衣類から枕やベッドシーツに至るまで、ありとあらゆる物がカビで覆われるという忌まわしい季節の一日でも早い終焉を願っているのですが、これも小忠実に手入れをしながら乾期への移行を待つ以外の手は無いようです      


【特別報告】

経産省の一角に脱原発テントは存続している(4)       三上 治

テントは三年目に入った。テント裁判第三回口頭弁論も終えて、秋の陣と呼ばれる日々になる。経産省前のテントの入り口に張り出されている日付表には738日目(9月17日現在)とある。9月11日(水)には経産省包囲の怒りのヒューマンチエーンを含めた2周年記念の集会が行われ約1000名が結集し久しぶりの盛況だった。三年目に入るテントの今後は予断を許さぬところもあるが、闘いの基盤は揺るいでいない。政府の動向を注視して,闘いを進める。


【エッセー】

ジェンダー、いま、女性の役割の再構築を目指してできること(3)     高沢 英子

第2次大戦後、世界はそれまでの、国ごとの、あるいは民族的な枠組みを超え、よきにつけ、悪しきにつけ、ひとつの運命共同体として、お互いをより身近に感じ、必然的に連帯意識を抱くような状況になってきている。これには情報網や、交通網の、飛躍的な発達という事情が、大きく関連しているのはいうまでもない。フェミニズムの運動にしても、前述のフランスのボーヴォワールの日本語訳「第2の性」論に続いて、1963年代にアメリカのベティ・フリーダンの「フェミニン・ミスティーク」日本語訳「新しい女性の創造」の主張による、これまでの誤って作られた女性像の大胆な破壊宣言が出されたことは、前回の武田尚子さんの論説にも上げられているとおりである。どちらも、いち早く日本語に訳されて、日本でも、識者のあいだに大きな論議を巻き起こした。


【書評】
米国の「中立姿勢」の背景を解明

『尖閣衝突は沖縄返還に始まる』 (矢吹 晋 著 刊)    岡田 充

日本政府による尖閣諸島(中国名;釣魚島)3島の国有化(2012年9月11日)から1年。日本では日中間の対立ばかりが大きく報道されてきた。しかし主役は、中国と台湾だけではない。もうひとりのメーンプレーヤーである米国の役回りを正確に認識しなければ、過ちをくり返しかねない。そこで紹介するのは「21世紀中国総研」のディレクター、矢吹晋・横浜市立大名誉教授の新著[尖閣衝突は沖縄返還に始まる――日米中三角関係の頂点](花伝社 2013年8月)である。


【オルタのこだま】

オルタ116号の感想      武田 尚子

116号,たいはんを読ませていただきましたが、4週間前に手首をくじき.2 日前から左手でなんとか数行のメールだけ書けるようになりました。一進一退で、きのうからようやくセラピーに入りましたが6週間続くようなので.ちゃんと したお便りを書けないので、ともかく短信をします。

オルタ116号を読んで      豊間根 龍児

116号を読ませていただきました。何時ものことながら、「なるほど」の連続で、理解不足ながら一読者として勉強させていただきました。有難うございました。・アジアと世界に背を:6年間体制:参院選:民主への期待大きかっただけに反動は大きい。自民の徹底争点隠し、なるほどそうでした。抱えている多くの問題、どれもこれも大変なものばかり、先行き本当に心配です。分裂気味の民主、ばらばらの野党、全く頼りにならない。自民・公明の良識派に取りあえず頼りたいところですが・・。


【俳句】   富田 昌宏

(思い出)かいがいしや金婚の妻障子張る 蜩の声をおとして飲む紅茶


【川柳】   横 風 人

文化なく アジア進出 金ばかり  集自権 悪夢を忘れ やってくる


【編集後記】

◎日本人にとって1945年からの8月は6日広島・9日長崎の被曝とつづき、ポッダム宣言受諾から15日の敗戦と、まさに「戦争と平和」「人間と国家」とは何かを考え、そして鎮魂の月でもある。ピユリツアー賞に輝く名著『敗北を抱きしめて』の著者ジヨン・W・ダワー氏は敗戦を日本人がどのように受け止め、それを克服したかについて、その心情に深く立ち入って克明に描き、多くの人々の共感と感動を生んだ。今年の8月、私たちが畏敬するこの米国の碩学は、カナダの外交官で高名な日本研究者E・H・ノーマンの「著書に導かれ、われわれはいかに過去を忘却し、いかに記憶するのか」を問うとして『忘却の仕方、記憶のしかた―日本・アメリカ・戦争―』を岩波書店から上梓した。彼はこのなかで、現代の日本がかかえる多くの問題を鋭く指摘している。