【沖縄の地鳴り】

編集後記と辺野古関連月表 2016.5.17〜6.16

仲井 富


<編集後記> 

 今月の最大のテーマは沖縄県議選だった。宜野湾市長選挙で大敗したオール沖縄側の態勢立て直しが問われる選挙だった。しかし宜野湾の敗北が良かったとさえ思う。2月にも書いたが、勝ち続けることの不安があった。どこかで敗けないと締まらない。それが宜野湾の大敗で緊張感となり、米軍属の強姦殺人という直前の事態と相まって翁長知事の言うオール沖縄最初の与党となった選挙で勝利できた。

 これで7月の参院選の展望が開けたと言える。だが油断できない不測の事態は今度はこちら側に起きることをも想定して万全の気配りを願いたいものだ。県民大会をめぐって、地位協定の改定に止めたい自公と海兵隊基地撤去のオール沖縄との綱引きがあるようだ。だが翁長知事もしばしば発言しているように地位協定の改定は、かの仲井真知事時代でさえ、知事自身がアメリカに行って訴えた。それは言うは易く実現しなかった。肝心の本土政党の自民、民進さえ口にしないのだ。もはや地位協定改定だけを求めるだけでは前進はない、という認識が今回の強殺事件で明らかとなったことだ。

 注目すべきは公明の二股膏薬的中立姿勢だ。それは今回の軽減税率決定、三万円支給でさらに自民寄りが明確になった、4名の県議を出した地区以外は徹底的に自民候補者のテコ入れをしたが敗北したのだ。宜野湾選挙でも公明推薦の舛添知事や進次郎を送り込んだ。しかし小泉進次郎の「人寄せパンダ」も限界がある。宜野湾では効果があったが、和歌山県の市長選挙では敗北した。また彼自身の地元の横須賀市長選挙では二年前に現職に敗退している。いつまで「人寄せパンダ」であり続けるのか聞いてみたいものだ。

 今月の動きで注目したいのは、保守九市長会で、明確に「辺野古移設」を支持する宮古、石垣両市への自衛隊配備計画だ。石垣市では反対派の水源地帯への移設計画に反対するデモが起こり、与党もそれを無視できなくなっている、宮古では自衛隊配備反対の女性候補がトップ当選を果した。また太田海軍司令官の遺族の女性二人が、辺野古現地で反対派を激励したことも大きい出来事と思う。退役米軍人の辺野古反対の座り込みに続いて、日本海軍の司令官の遺族まで辺野古反対派を激励するという広がりを注目したい。

<辺野古関連月表 2016.5.17〜6.16>

◆16・6・16
 翁長雄志知事は16日午前、「オール沖縄会議」が19日に開催する県民大会に参加すると明らかにした。県庁で記者団に語った。知事は超党派の開催にならなかったことを念頭に、「パーフェクトがよかったが参加することが知事の役割で、県民の期待に応えることにもなる」と意義を説明した。大会決議にある「在沖米海兵隊の撤退」に関しては、「『撤退』の中には自民が訴える基地の整理縮小や与党が求める全面撤退なども含まれる」と述べ、政党ごとに温度差がある基地問題の解決方法を包含していると説明。普天間飛行場の県外移設を求め、名護市辺野古の新基地建設は阻止するという自身の公約に変わりはないと強調した。超党派の開催に至らなかったことには、「オール沖縄も自民、公明も大変近づく努力をした」と指摘。「現時点では保革を乗り越える作業を一歩一歩進めている段階だ」と述べた。

◆16・6・15
 【宮古島】宮古島への陸上自衛隊配備計画で、市議会与党市議8人でつくる有志会(眞榮城彦会長)と公明党市議2人でつくる議員団(富永元順代表)は14日、市内最大の地下水取水地「白川田水源流域」の近くにある旧大福牧場周辺での施設建設見直しを防衛省に早期に申し入れるよう下地敏彦市長に要請した。市議会与党議員が計画反対を表明するのは初めて。

◆16・6・14
 沖縄戦で自決した太田實海軍司令官の四女文子さん(85)と八女八千代さん(78)が14日午前、名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前を訪れた。新基地建設に反対する集会に参加し、「平和のために頑張っている皆さんを見て、父も喜んでいると思う」と激励した。

◆16・6・6
 米海軍第7艦隊と在日米海軍は6日、日本国内にいるすべての海軍兵に対し、基地内外での飲酒を禁止したと発表した。破った場合は「厳しく対処する方針」という。沖縄県で米軍嘉手納基地所属の海軍兵が酒に酔った状態で交通事故を起こし、逮捕された事件などを受けた異例の対応とみられる。(2016年6月5日付沖縄タイムスより)

 オスプレイ、米では苦情で飛行経路変更も 下院に法案提出
【平安名純代・米国特約記者】米国防予算の大枠を定める2017米会計年度(16年10月〜17年9月)米国防権限法案の下院案に、米軍用機による飛行訓練時の飛行経路や高度などを調査し、違反が認められた場合は飛行経路の変更を含めた是正措置の検討を義務付ける条項が盛り込まれたことが3日までに分かった。
 米首都ワシントン近郊のヴァージニア州で、海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイによる騒音や振動に関する住民からの苦情が増加しているのを受け、同州選出のダン・ベイヤー下院議員(民主)が提出した。

◆16・6・5
 沖縄県議会議員選挙で翁長与党の「オール沖縄」勢力が、27議席獲得して勝利。翁長知事は大勝利と表現した。野党は自民等15議席、中立は公明4議席など6議席となった。公明は辺野古移設には反対しており、辺野古移設反対に限れば与党勢力は31議席となった。

◆16・5・27
 任期満了に伴う第12回県議会議員選挙が27日午前、告示され13選挙区の定数48に対し、午前10時現在で70人が立候補を届け出た。6月5日投開票までの政治決戦が幕を開け、県内各地で候補者が第一声を上げ有権者に支持を訴えた。

◆16・5・26
 在沖米海兵隊が事件・事故の防止などを目的に新任兵士を対象に開く研修で、沖縄を蔑視する偏った内容を教えていた問題で、翁長雄志知事は26日、「上から目線の最たるものだ」と批判した。県庁で記者団の取材に応じた。翁長氏は、沖縄戦やその後の米軍統治など沖縄の歴史に触れ「(米国は)歴史などを分析しながら沖縄をどう扱うか考えている」と述べ、沖縄への駐留を前提に兵士への教育が実施されているとの認識を示した。

◆16・5・25
 元海兵隊員で米軍属の男が女性の遺体を遺棄したとして逮捕された事件で、辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議は25日、「元米兵による残虐な蛮行糾弾! 犠牲者を追悼し米軍の撤退を求める緊急県民集会」を北谷町の米軍嘉手納基地第1ゲート前で開いた。主催者発表で約4千人が集まった。参加者らは幾度となく再発防止の徹底と綱紀粛正を求めてきたにもかかわらず、米軍人や軍属の事件事故が後を絶たないと指摘。「県民は怒りの限界点を超えた。これ以上の基地の重圧に耐えることはできない」と訴え、米軍の撤退を求めた。

◆16・5・23
 【ワシントン共同】米国防総省のデービス報道部長は23日、沖縄県の女性会社員に対する死体遺棄容疑で米軍属のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)が逮捕されたことについて、日米地位協定の抜本改定に消極的な姿勢を示した。デービス氏は「われわれは長年にわたって地位協定の運用改善で対応してきた。今後も継続していく」と述べ、従来の米政府の立場を繰り返した。再発防止策に関し「今回のような事件は、訓練や夜間外出禁止の措置によって防ぐことができるものだとは思わない」との認識を示した。

◆16・5・23
 安倍首相は23日午前、米軍属の男が沖縄県うるま市の女性会社員の遺体を遺棄した疑いで逮捕された事件への対応をめぐり、首相官邸で沖縄県の翁長(おなが)雄志(たけし)知事と会談し、オバマ米大統領に厳正な対処を求める意向を伝えた。翁長氏は日米地位協定の見直しを含む対応を要求した。翁長氏は「綱紀粛正と再発防止は何百回と聞かされたが、何も変わっていない。米軍基地があるが故の犯罪であり、大きな怒りと悲しみを禁じ得ない」と述べた。基地負担の軽減も改めて要請し、「オバマ大統領に直接話をしたい。その機会を作るようお願いする」と会談の設定を求めた。

◆16・5・23
 公明党県本の金城勉幹事長は23日、米軍関係者による事件事故の解決策として「海兵隊は沖縄から撤退してもらうことが必要だ」と述べた。公明県本が海兵隊の全面撤退要求に言及するのは初めて。米軍属女性死体遺棄事件を受けた本紙の県内政党座談会の席上、発言した。金城氏は「日米同盟の必要性は理解している。問題は(政府が)過度に沖縄に基地を集中させ、押し付けてきたことで、特に海兵隊の問題は事件事故の多発、海兵隊に起因するものが数多く出てきた。海兵隊の取り扱いについて厳しく対応しなければならない」と指摘した。その上で、森本敏元防衛相が米軍普天間飛行場の県内移設に軍事的合理性はないと指摘したことも挙げ「政府はこれまで海兵隊について抑止力や地理的優位性などで説明してきたが、軍事的な意味合いはなく、受け入れ先がないと言って政治的に沖縄に押し付けていることも明らかになっている。それを踏まえれば、沖縄に海兵隊はいらない」と述べた。

◆16・5・21
 うるま市の会社員の女性の遺体が恩納村安富祖の山中で発見された米軍属女性死体遺棄事件で、死体遺棄容疑で逮捕、送検された与那原町与那原の元米海兵隊員で米軍属のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)が「女性に性的な暴行を加えた。抵抗されたので殺害した」などと供述していることが21日、捜査関係者の話で分かった。

◆16・5・20
 米軍属女性死体遺棄事件を受け「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)など16団体は20日、県庁で会見し、沖縄から全ての基地・軍隊を撤去するよう日米両政府に求めた。同会などは22日午後2時から、北中城村の米軍キャンプ瑞慶覧ゲート前で抗議集会を開くことも発表した。
 要求書は、(1)被害者を取り巻く人々への謝罪とケア(2)真実を究明し、加害者への厳正な処罰(3)沖縄に暮らす人々の安全な社会を実現するため、沖縄から全ての基地・軍隊を撤退させる—を求めている。

◆16・5・19
 沖縄県で女性が行方不明になった事件で、米軍属の男が死体遺棄容疑で逮捕されたことについて、米国訪問を終えて帰国した沖縄県の翁長雄志知事は19日夜、成田空港で記者団に「痛恨の極み。県民の命と財産を守り、幸せを願う知事としては言葉が出ない」と厳しい表情で語った。 翁長知事は「将来の夢も希望もある20歳の女性で、ぜひとも生きていてほしいと願っていた」と話した。繰り返される米軍関係者による事件については「(米軍側は)『良き隣人として頑張りたい』と言うが、こういう形になる。基地を70年間背負ってきたことにより、埋もれた事件事故も何千とある」と指摘した。
 うるま市大田の会社員の女性(20)が4月下旬から行方不明になっている事件で、沖縄県警は19日、死体遺棄容疑で、元海兵隊員で米軍属の男(32)=与那原町=を緊急逮捕した。容疑者は「動かなくなった女性を雑木林に捨てた」と、容疑を認めているという

◆16・5・19
 【ミネアポリス=琉球新聞・問山栄恵ワシントン特派員】訪米中の翁長雄志知事は18日午前(日本時間19日未明)、1996年に橋本龍太郎首相(当時)と米軍普天間飛行場の返還合意を発表した元駐日米大使のウォルター・モンデール氏(元副大統領)と会談し、普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を訴えた。翁長知事は、辺野古移設に県民の反対世論が根強いため新基地建設は難しいと伝え、現行の移設計画を見直すよう理解を求めた。会談は非公開で行われた。会談後、翁長知事は記者団に「大変、有意義な話をした。やはり普天間の返還合意の当事者なので、その時の事情に詳しい」と強調。「話の内容は感銘を受け、勇気づけられた」と感想を述べた。

◆16・5・17
 【ワシントン=琉球新聞・問山栄恵本紙特派員】訪米中の翁長雄志知事は17日、コクラン上院歳出委員長(共和)と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題の解決に向け、米政府が県民から直接、意見を聞く取り組みをするよう求めた。コクラン氏は「米政府から知事や沖縄の声を聞くために特使を送り、解決策を話し合うことをしているのか」と質問した。これに対し、翁長知事は「日米両政府は辺野古が唯一と繰り返すのみだ」と指摘し、「米国から沖縄の声を直接、聞く耳があればありがたい」と強調した。翁長知事はコクラン氏ら上下両院の連邦議員7人と下院議員の補佐官1人の計8人と面談。ワシントンでの要請行動を終えた。

 (「沖縄の地鳴り」欄編集者・オルタ編集委員)


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