【編集後記】

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◎日本女子柔道のナショナルチーム国際強化選手15名が園田監督らの暴力行為な
どをJOCに告発したことで社会の注目は日本スポーツ界の体質問題に集まった。
しかしこの事件が意味するものは単に柔道や日本スポーツ界内部に限られた問題
なのか、それとも広く日本社会に根差すものなのか。日本は世界経済フォーラム
の2012年男女平等指数(ジエンダー・ギャップ)では世界135国中なんと101位と
いう惨めな状態にある。中国に対して何かと先進国風を吹かす日本だが北欧各国
が上位を占める中、中国67位のはるか後塵を拝している。

これらについて、1981年に米国WSF(女性スポーツ財団)日本支部(WSFジ
ャパン)を設立して代表に就任し『女性スポーツに携わる人たちが抱える諸問題
を考えながら女性スポーツの発展を図る』ことを掲げて活動し、長い間Jリーグ
理事も務められ、この分野でフロントランナーの役割を果たされてきた法政大学
スポーツ健康学部三ツ谷洋子教授にご寄稿を戴いた。

◎予想されたように安倍首相はTPP参加に踏み切った。私たちはTPP参加に
反対してきたが、これからも各分野について、その危険性を具体的に指摘し続け
ていきたい。『遺伝子組み換え食品』分野もその一つである。これについてはま
だ多くの国民がその危険性を深く認識していないように思われる。しかし、ベト
ナム戦争で多くの人命を奪った枯葉剤や猛毒PCBをつくった米国の大企業モン
サント社などいくつかの巨大多国籍バイテク企業は全世界で着々と大規模な事業
を展開している。

世界で10社ほどのバイテク大企業が種子・化学肥料・農薬・食品加工・物流など
食品産業の生産から流通の大部分を支配し、遺伝子組み換え食品普及のために米
国だけで宣伝費を2億5000万ドルも使っている。これは安全神話をつくりあげた
原子力ムラと全く同じ構図だ。フランスの映画監督ジャン・ポール・ジョー氏は
まさに「遺伝子組み換えと原発の技術は全く似ている」と喝破した。

日本では遺伝子組み換え食品の危険性について、生活クラブ生協を先頭に全国の
生協が反対運動に取り組んでいる。しかし、その取り組みにも濃淡があるなど、
ことの重大性に比べ国民への危機意識の広がりは十分とはいえない。

この3月、白水社からアンデイ・リーズ著・白井和宏訳『遺伝子組み換え食品の
真実』が刊行された。これを農業に従事しながらオルタに毎号鋭い視点から提言
を寄せられる濱田幸生氏に、本の推薦を兼ね問題の重要性を論じて戴いた。なお
訳者の白井氏は神奈川生活者ネット事務局長を7年間務めた後、英国ブラッドフ
ォード大大学院に留学し、生活クラブ生協連合会企画部長を歴任した生協活動家
で、訳著書は先にオルタでも紹介した『緑の政治ガイドブック』(ちくま新書)
など多数。

◎今年3月20日でイラク戦争開戦10年になる。イラク戦争とは一体何だったのか。
ありもしない大量破壊兵器の存在を理由に戦争を仕掛け、無辜の人々を殺傷し、
村や町を破壊し何が残ったのか。多くの人々の暮らしを奪い、深刻な宗派対立を
よみがえらせた。アメリカ側でも4400人の戦死者のほか、なんと89万人の米兵が
病院で治療を受け、復員軍人に対する各種補償金支出だけで日本の年間国家支出
に相当する1兆ドルに達するとされ、自らその膨大な負担に苦しむ。

小泉自民党政権も、これを支持し復興支援として自衛隊を派遣したが、まともに
総轄をしようともしない。この戦争を政治・経済・文化など幅広い分野で健筆を
振われる気鋭の評論家藤生健氏が『イラク開戦に見る政治決断の限界』として論
じた。

◎今月の【米国レポート】は武田尚子さんが訪日されるなどのため休載になり、
その代わりに北朝鮮問題で特に注目を集める韓国事情について元韓国外交官で駐
ノールウエー大使を勤められた梁世勲氏から【韓国レポート】が寄せられた。こ
れはソシアルアジア研究会で発表したものを校閲して戴いたもので、韓国政府の
意向などは関係ない梁氏個人の意見である。【投稿】には児童ポルノ規制問題に
ついて政治学者の岡田一郎氏から『児童ポルノ規制法改定に際しての留意点』と
いう問題提起があった。

◎【日誌】3月22日法政大学・大原社研・加藤勘十資料整理・木下研究員と会食。
23日明治大学・社会環境学会公開セミナー「地球環境問題と意識改革。政治・経
済・社会及び意識のパラダイム・シフト」中村信埼玉大教授。阿野貴司近大教
授・新谷昇埼玉大研究員。24日オルタHP/アドレス整理。26日東工大キャンパ
ス・公共カフエ「ネット選挙解禁で何が変わるか」高橋茂氏。

4月4日白井和宏・岡田一郎・横田克己・柴田敬三氏らと会食懇談。5日仏教に親
しむ会・横浜三溪園。7日成城。チャリテーコンサート。9日大原社研・勘十資料
整理。五十嵐仁教授と懇親。13日神戸栄光教会。河上民雄偲ぶ会。14日大阪・西
村徹・木村寛・荒木伝・堀内慎一郎・土居厚子氏等と懇親。15日神田・学士会館
でオランダから来日されたリヒテルズ・直子さんと初岡・横田・柴田氏らと懇談
会食。
                           (加藤 宣幸 記)

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