編集後記121

【編集後記】


                       加藤 宣幸

◎メールマガジン「オルタ」は2004年3月に『一人ひとりが声を上げて平和を創ろう』、『戦争・国家・人間』を考えようとイラク戦争の不条理に反対する市民の声として創刊され、今年、創刊10年の記念年を迎える。昔から10年一区切り、10年一昔ともいうが、忙しい現代ではどうか。一瞬であるのか。まして「オルタ」をメデイアの歴史として見れば短い。それでも私個人としては80歳の手習いでデジタル・メデイアと真剣に向き合った10年であった。素晴らしい執筆者との出会い、畏敬する方々との別れ、喜びと悲しみの日々に思いは尽きない。しかし今は執筆者の方々、多くの読者、支えてくれた友人や家族に心から感謝しつつ次のステップに踏み出す時だと決意した。そして尊敬するジヤーナリストむのたけじ氏の『一人が動かなければ何も始まらない。しかし一人だけでは何もできない』という言葉を強く噛みしめる。

◎旧臘、評判の映画『永遠のO(ゼロ)』と『ハンナ・アーレント』を見た。それぞれ満席だったのは作品が時代への危機感を映していたからなのか。前者は同名のベストセラーの映画化で当時の超高性能戦闘機ゼロ戦を駆った軍人が特攻に散る苦悩を、後者は著書『全体主義の起源』で名高いハンナ・アーレントのプリズムを通して、ナチスのユダヤ人虐殺執行役人アイヒマンが普通の人間であることに焦点をあて、彼女の生きざまを描いたものだ。それは、戦争という同時代を生きた私にとって、まさに『戦争・国家・人間』を深く考えさせるものだった。国家権力は無慈悲に民衆を戦争に狩り出す。そしてつねに悲劇の主役は民衆だ。その痛みを感じられない為政者の権力行使ほど怖いものはない。

発足1年の第二次安倍内閣はまさに戦争の痛みを知らない総理によって日本を戦争の出来る国にしつつある。しかし、これはサンフランシスコ講和体制・日本国新憲法体制への明らかな挑戦なのだ。年末の靖国参拝には中韓だけでなく、米国からさえ異例の「失望」声明を出され、EU・ロシアなどからも批判された。それは世界が安倍路線に第二次大戦結果の否定を感じたからであろう。国内では安倍にナショナリズムを煽られたからか野党やマスコミの追及が弱く見える。国民的熱狂のうちに国際連盟を脱退した昭和史の悪夢を思い出すまでもなく、私たちは政府の中国包囲などという一方的宣伝に載せられ、実は逆に国際的孤立の道を歩んではいないか。今は検証・思案が要る時だ。

私たちが、耳を傾けたいのは各国政府の批判だけでなく内外知識人の声だ。今まで日本のマスコミが伝える世界の声とは殆どアメリカの視点からだ。しかもそれは、アーミテージ・グリーン両氏などに代表される共和党系『知日派』(ジャパンハンドラーズ)によって占められ、民主党系や知識人の声は殆ど聞かれなかった。ところが今回はアメリカのというよりも世界の知性といわれる人々が声明を出した。それは世界から畏敬される言語学者ノーム・チョムスキー、歴史学者ジヨン・ダワーなどの著名な学者や、アカデミー賞受賞映画監督マイケル・ムーア、オリバー・ストーンなどが名前をつらねる『沖縄の海兵隊基地建設に向けての合意への非難声明』である。(オルタ本号【運動資料】に全文掲載)また国内では3.11後日本に帰化した文学者ドナルド・キーン、原発廃止運動の先頭に立つ作家大江健三郎や瀬戸内寂聴など多くの学者・知識人が声を上げている。

◎オルタ今月号の編集キーワードは『米国』『中国』『原発』『沖縄』『フクシマ』『安倍』『格差』などに焦点を置いた。久保孝雄氏に『加速するアメリカの衰退 「時代逆行」する日本政治―安倍政治で「日米同盟」も亀裂深まる―』で世界史的な視点からの大局観。田村紀雄氏に田中正造100年忌からフクシマと谷中村の相似を指摘する『「谷中村から福島原発被害地へ」の一世紀』。李妍焱氏に悪化する日中政府関係と両国市民活動について『日中間で、地道に、個人として、そしてNGO人同士で』。そして井上定彦氏の【書評】『中国の市民社会』。西村徹氏には米国政府声明について『「失望」と「がっかり」とは違うのか?』。鈴木宏昌氏には深刻化する世界の格差問題について『拡がり続ける世界の所得格差』。沖縄については【運動資料】として米国知識人による『沖縄基地合意非難声明』と荒木重雄氏の【書評】『沖縄独立研究序説』。で、それぞれ主張して頂いた。

◎【日誌】12月25日表参道・コンサート・家族。26日初岡・荒木忘年会・平塚。
28日羽原・浜谷・山口年末懇親会・神田。
1月1日家族・新年会。8日篠原令・仙川。10日中嶋・グランドパレス。11日~13日信州・松本・小林吉男。17日ソシアルアジア研究会・石郷岡・初岡。

◎【休載】佐藤美和子『中国・深セン便り』、中嶋滋『ミャンマー通信』、高沢英子『ジェンダー、今女性の役割の再構築を目指してできること』は今月号休載になりますのでご了承願います。 


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