編集後記124

【編集後記】

加藤 宣幸

◎4月10日日本弁護士連合会が主催する『集団的自衛権と憲法—「積極的平和主義」を問う』というシンポジュームに行く。北沢俊美元防衛大臣・阪田雅裕元内閣法制局長官などの解釈改憲による安倍首相の集団的自衛権行使を批判し、400人を超える聴衆が共感した。ただ、パネラーの一人、谷口真由美大阪国際大学准教授は国民の大多数は「集団的自衛権」をよく知らない。今や日弁連はリベラル派の拠点なのだから、皆さんは身近な例を引いて分かりやすく人々に説明して欲しいと訴えた。全く同感である。

◎「集団自衛権」とは何か遠いことと思う国民も袴田事件には衝撃をうけた。驚くべきことに警察・検察が証拠をでっち上げ、一人の市民を死刑囚として48年も拘禁し、裁判長が『これ以上拘置を続けるのは耐え難いほど正義に反する』とまで言ったのだ。数年前、検察の横暴に『国家の罠』という言葉が流行った。袴田事件は『罠』どころか『国家の犯罪』だがマスコミの追及は甘い。これを再審に持ちこみ、袴田さんの命を救ったのは、権力の横暴を見破り、粘り強く戦った一人のジャーナリスト高杉晋吾氏だ。その経緯と検察の「即時抗告」について『袴田事件即時抗告の意味するもの—袴田無実を35年前に明らかにした著者は訴える!—』として本人に緊急執筆して頂いた。「検察の即時抗告は、権力のでっち上げ自由自在体制の安倍政権の下での維持発展宣言だ」というのが高杉氏の主張だ。繰り返すが35年前にもしも高杉氏が一冊の本を書かなければ検察は事件を闇に葬り袴田さんの命は刑場の露と消えたのだ。

◎多くの日本人には馴染の少ないクリミヤ半島に次いで同じウクライナ東部に紛争が広がり、あわや米ソ対決時代の再来かと世界に緊張が走った。洪水のようなアメリカ発の情報からはロシアの横暴だけが映し出される。しかし事態はそう単純ではなさそうである。オルタはいずれ専門家の見解を求めるとしても今号では独自に情勢を分析する濱田幸生氏の『ウクライナ紛争・新たな帝国主義時代の始まり』という見解を載せた。

◎【社会運動研究】『社会環境としての結社密度』という鈴木不二一氏の論考は、NPOについて多くのことを考えさせる。戦後の一時期労働組合は日本の民主化・社会改革の旗手であったが、原発再稼働やTPPに賛成する組合があったりして、今ではすっかり輝きを失った。では各種NPOがそれに代われるのか。研究が進むことを期待したい。

◎今月は『アジアにつながるリユース・リサイクル』としてNPO「WE21ジャパン」の報告を頂いた。1998年に神奈川で少数の婦人が立ち上げた組織が、今や総事業高3億5000万円・寄付品購入者数462,000人・参加ボランテイア延べ人数41000人(2012年度)となり、活動は26ヵ国70のプロジェクトにも関わっているという。注目するのは、事業規模だけでなく、基地・脱原発・環境破壊・秘密保護法などに姿勢を明らかにしていることだ。近く東京にも進出するというから大いに期待したい。

◎急逝されたオルタ共同代表富田昌宏氏の遺稿となった『人生流転の危機をどう克服するか—目指すは憲法九条の普及—』は俳句の指導を受けた仲井富氏がまとめた。追悼文は西村徹氏の『富田さん さようなら』と仲井富氏の『俳句の師 富田昌宏氏の急死を悼む』である。私は、リハビリが効いたというので病院に見舞ったが施設には行かなかった。自宅に移って3日目の訃報にはまったく驚いた。私と富田さんとの付き合いはわずか十数年と短いが、私の属した社会党青年部と富田さんとの交流は、青年団活動を通じて長く深かった。 

「温厚篤実」な農業者富田さんは地元にしっかりと根を下ろし、多くの俳句同人を指導しながら「九条の会」活動に励んだ。「オルタ」の共同代表になったいきさつは遺稿にある。栃木に住み、PCはやらないから適任ではないとしきりに固辞されたが、実務はないからとなって貰った。そして毎月季節の便りと10句が送られてきた。もう読めないのは何とも淋しいが、富田さんにはいつまでもオルタの発展を見守って欲しい。富田さん、さようなら。

◎今月から新しく定期寄稿者として元NHK政治部記者で日本ペンクラブ前理事の大原雄氏に加わって戴いた。広い視野を持つだけでなく、『歌舞伎めであ』というサイトも主宰する歌舞伎通で、南米事情にも詳しい方だ。オルタの新しい地平を開いてくださると思う。

◎【日誌】3月20日新宿・岩根サロン。22日昼・飯田橋・矢野凱也君。夜飯田・岡田・堀内・杉本・河上民雄偲ぶ会関係者懇談。24日夜・羽原清雅氏執筆打ち合わせ。25日ひ孫・卒業式。26日共同通信社・不安定研究会27日浜谷惇氏運動史研究打ち合わせ。30日自宅・家族花見会。31日夜・石郷岡建氏執筆打ち合わせ。

4月1日夜・豊間根龍兒・荒木重雄執筆者懇談。4日午後・ソシアルアジア研究会。6日岩波ホール・「ワレサ」鑑賞。8日午後・夜・荒木重雄氏・編集企画打ち合わせ。9日夜・栃木・富田昌宏氏通夜。10日夜・弁護士会館・『集団自衛権と憲法』シンポジューム。10日鎌倉・円覚寺・座禅会。11日鎌倉散歩。13日教育会館・『脱原発社会の創造』シンポジューム15日朝・広田家資料見学・夜萩野弘二氏懇談。17日午後・朱建栄氏・岡田充氏対談・ビデオ取材。

                           (加藤宣幸 記)

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

○尖閣問題;朱建栄東洋学園大学教授・岡田充共同通信客員論説委員対談。
○佛教に親しむ会講話。荒木重雄元桜美林大学教授


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