編集後記130

[【編集後記】

加藤 宣幸


◎今月号は「朝日新聞」事件に焦点を当てた。これが一新聞社の誤報・謝罪事件を超えて、何か歴史の転換点に仕立て上げられつつあるように思えるからだ。まず、政治部長から朝日新聞西部本社代表まで務め、広い意味では当事者でもあったOBの羽原清雅氏には自己批判も含めて率直に『OBから見た「朝日新聞」謝罪問題』として寄稿をお願いした。かってNHK社会部記者として話題のジャーナリスト池上彰氏と同僚だった大原雄氏に『鳥瞰的」朝日論。新聞が、皆、ダメになる日。〜朝日誤報事件の対応と右派ジャーナリズムの跋扈〜』として歴史を繰り返さないための視点から、そして国会関連の仕事に携わりながら自らのブログ(http://kenuchka.seesaa.net/)で10年以上も鋭い政治・文化評論を発信しつづける気鋭の政治研究者藤生健氏には『それで良いのか:朝日の誤報叩き』との論考を戴いた。

誤報事件の事実経過は、朝日新聞が過ちを認めて第三者による検証を進め、各種メデイアが報じているようなものならば、まさにトップマネージメントの問題だ。まず社長以下役員が経営責任を明らかにして出直すべきである。私事だが、かつて戦後期の社会党本部に勤務していた頃、何人かの優秀な朝日新聞政治部記者たちとの交流があった。後に社長となった一柳東一郎氏はその一人だが、彼は89年に起きた写真部員の捏造として知られる「沖縄サンゴ事件」が起きたとき直ちに責任をとって社長を辞任した。

新聞記事に誤りは宿命だとしても、その訂正と謝罪の仕方によって事態は大きく変わる。本号で大原雄氏はこの事件を『10年後か、20年後、今回の朝日新聞の誤報事件と後処理は、「新たな戦前」の言論史のターニングポイントになっていたというようなことにはしたくない』と始末のあと朝日自体が委縮し転換することを危惧する。

すでに、朝日新聞取材班は『新聞と戦争』、『新聞と昭和』、など出版物として「戦争と朝日」についての検証結果を公刊している。戦争は新聞拡大の「母」だが、同時に政権や軍と持ちつ持たれつにする。1937年(昭和12年)頃、私たち小学生にとって朝日新聞の東京・ロンドン間訪欧飛行に成功した社機「神風号」の飯沼操縦士・塚越機関士は英雄だった。国民的熱狂は機名や飛行時間予測の応募葉書が532万通を超え、朝日新聞はその熱狂を、この年7月の盧溝橋事件で本格化する日中戦争に合わせて軍用機献納の大キャンペーンを展開し大いに部数を拡大する。

注目すべきは、この前年(1936年)の2・26事件で軍に批判的だとして朝日新聞本社が反乱軍に襲撃され、輪転機は難を免れたが活字台はひっくり返されたことだ。検証された朝日の歴史では、数度の「社論転換」が筆禍事件やテロの後、委縮と自主規制ということで戦争協力の度を深めている。今回の事件でこれを繰り返えさないためには国民の監視と協力が不可欠である。

◎今月から【コラム】に共同通信客員論説委員岡田充氏に加わって戴いた。モスクワ・台北・香港支局長などを歴任し、中台両岸関係に詳しく尖閣解決策の提言を続けるジャーナリストだ。大いに期待したい。なお今月の『日中間の不理解に挑む』は編集部の手落ちで休載となりお詫びします。【オルタの視点】は全国民が注目する11月の知事選を目前にした沖縄の政治状況を『沖縄知事選の展望 —保革統一候補に至る曲折—』として仲井富氏に分析して頂いた。【自由へのひろば】ではアメリカ人政治学者イヴォ・プルシェエク氏の質問への回答を村山政権当時の政策策定者4人・元社会党中央執行委員船橋成幸・元社会党政策審議会長早川勝・元村山内閣総理大臣秘書官園田原三・元社会党政策審議会事務局長浜谷惇の各氏の共同討議という形でまとめて戴いた。

【書評】オルタ執筆者の福岡愛子さんが翻訳された大著『1968 パリに吹いた「東風」—フランス知識人と文化大革命—』をかつて「ベ平連」で活動され、いまも作家・評論家として「マスコミ九条の会」や反原発運動などでも活躍される小中陽太郎氏に、さらに鈴木真奈美著『日本はなぜ原発を輸出するのか』は新鋭の政治研究者・法政大学政策科学研究所特任研究員の苫米地真理氏に評して戴いた。

◎【日誌】9月24日生産性本部・労働研究センター・龍井葉二・「非正規雇用と労働運動」。29日妙心寺・仏教に親しむ会。

10月3日学士会館・北東アジア動態研究会・「日朝関係の展望と課題」・菱木一美。6日学士会館・木村知義・荒木重雄・懇談。7日第2議員会館・プログレス研究会・「集団自衛権」。8日自宅・朝日問題懇談・石郷岡・飯田・羽原・南雲・初岡・浜谷・篠原・荒木。10日教育会館・ソシアルアジア研究会・「ヘイトスピーチとは何か」師岡康子。14日議員会館・ND代表団訪中報告。懇親会・近藤昭一・猿田佐世他。17日赤坂天府・村山富市・久保孝雄・竹中一雄。18日東海大校友会館・河上民雄偲ぶ会・福永文夫。神奈川県民センター・「神奈川から平和を拓く集い」・野中広務・柳沢協二・我部政男・朱建栄。19日明大・「領土問題を考える」シンポ・岡田充・若宮啓文・岩下明裕・高野孟。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎「佛教に親しむ」シリーズ(2)  元桜美林大学教授 荒木重雄


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