【編集後記】

加藤 宣幸


◎私は‘60年安保の「昂揚と挫折」を実感した世代として、安保法制の「強行採決」の後、反対運動側がどうなるのか気がかりで、9・19後初の本格的集会となる10月8日の『戦争法廃止・安倍内閣退陣・総がかり行動集会』(文京シビックホール・1750人参加)に出かけた。会場は安保法制を闘った学者の会、弁護士会、立憲デモクラシーの会、シールズ、女性の会などの市民団体や野党各党の連帯挨拶で、闘いはこれからだという熱気に包まれ‘60年直後にはなかった状況を感じて少し安堵する。

◎‘60年の当時、空前の大デモも「強行採決」のあとは潮が引くように人波が瞬く間に消え、法案の成立・岸退陣と引き換えに経済重視をかかげて登場した池田内閣以降の保守長期政権時代を許すことになった。ナチス・ヒットラーは『大衆とは忘れやすいものだ』とうそぶき、着々とファッショ体制をつくり上げたが、安倍政権もこれに倣うかのように立憲デモクラシー破壊を過去にしようと、早くも‘60年の成功体験に学んでGDP600兆円実現などと目くらましの宣伝活動を始めた。

◎私たちが権力側の忘却政策と立ち向かうには彼らの暴挙を執拗に記憶し続けるだけでなく、それに反対することを政治的意思として表現しなくてはならない。SEALDsの若者たちは、『民主主義はこれだ』と個人の自由意思による多彩なデモを創りだし、『民主主義』が院内だけのものでないことを示して多くの人々を鼓舞した。しかし私たちの政治的意志表示はデモで終わるものではない。彼らも言うように、これから始まる違憲訴訟・市民集会・言論・出版活動などを切れ目なく積み重ね、まずは安倍内閣の暴走阻止一点に絞って、野党共闘の実現を図りつつ来年の参議院選挙につなげたい。

◎安倍首相は子供だましのポンチ絵や、はぐらかし答弁を繰り返しながら採決を強行し、いわゆる「戦争法案」を「成立」させた。この間、一向に国民の理解・支持が広がらないのに業を煮やし、一貫して政府支持を隠さない産経・読売新聞系のTV局には頻繁に、お友達を会長に送り込んだNHKをも多用し、法案に批判的なTV局にはほとんど出ないという露骨なメディア操作をした。多くの国民は安保審議放映の不十分なNHKの報道姿勢に疑問を感じていたが、この事情をNHKのOB大原雄氏に『NHKテレビは、いわゆる「戦争法案」をいかに伝えたか』として詳しく解明して頂いた。

◎今月から新しいコラム【「労働映画」のリアル】が始まる。コーナー新設の企図は、編集を担当する鈴木不二一氏(NPO働く文化ネット理事)が「連載を始めるにあたって」として「映像作品を通して見えてくる働く者の仕事と暮らしの実相について、多角的に、自由闊達に、そして何よりも映画を観ることの楽しさを大切にしながら、肩ひじ張らずに語り合うサロンのようなコーナーを作りたいと思います」と抱負を述べるが、大いに期待したい。なおこの欄の編集には鈴木氏とともに大原雄氏(日本ペンクラブ理事)も参加する。

◎オルタは創刊11年目を迎え、編集内容のより充実を目指して編集委員を決め、9月28日第一回オルタ編集委員懇談会を神田神保町・新世界菜館で開いた。編集基調やより読みやすくするための提案など活発な議論を行うとともに、編集委員の朱建栄東洋学園大学教授・徐正根山梨県立大学教授・岡田充共同通信客員論説委員3氏からそれぞれトルコ・韓国・マレーシア各国への出張・近況報告があった。

◎10月11日、「砂川学習館」・「砂川秋まつりひろば」の『砂川闘争60周年現地集会』に行く。午前は『流血の記録 砂川』など記録映画上映、午後は屋外集会が多くの参加者で盛り上がった。当時デモ隊の一人として参加した私には、14年間も砂川訴訟を闘われた人権派で女性弁護士の草分け相磯まつ江弁護士(93歳)が車いすで挨拶されたのが特に感慨深かった。同時に大変な情熱と行動力で集会を成功させた故宮岡政雄・反対同盟副隊長の次女で砂川平和ひろばを主宰する福島京子さんのご努力に心から敬意を表したい。

◎【オルタ編集委員名簿】「メールマガジン・オルタ」は創刊11年目に入り編集の充実を図り、WEBメディアの特性を創って一層の発展を目指すため、編集委員制度をつくった。本格的な運営はこれからだが鋭意読者の期待に応えたい。

◎【日誌】9月23日:飯田橋・仕事館ホール・「沖縄の自己決定権」シンポ・新垣毅・阿部浩己他。24日:自宅・金子達昭。25日:稲城・仏教に親しむ会。26日:ベルサール九段・大河原雅子の会。28日:神保町・オルタ編集委員懇談会。30日:学士会館・大原雄・鈴木不二一。

10月1日:日比谷公会堂・浅沼稲次郎を偲び未来を語る会。3日:麻布台セミナーハウス・北東アジア研究交流セミナー。4日:神保町・小枝すみ子の会・平岡秀夫。8日:文京シビックホール・10・8戦争法廃止!安倍内閣退陣!総がかり行動集会。11日:砂川映画祭・砂川平和まつり。15日:自宅・岡田宰弁護士・岡田充・仲井富。19日:関西大学丸の内キャンパス・「NPOと政治」研究会・五野井郁夫・中野晃一。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎北東アジアの平和構築をどう進めるか   鳩山友紀夫元首相
◎仏教に親しむシリーズ「日本仏教の発展と教え」(8) 荒木重雄・元桜美林大学教授
◎脱原発運動をどう進めるか        三上 治(政治評論家)


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