編集後記145

【編集後記】

加藤 宣幸


◎今、世界は大きな変化の時代に入っている。私たちは世界をどのように見て、どう向き合うのか。オルタは新年号の巻頭に久保孝雄氏の『大転換の時代 — せめぎあう新・旧の「世界秩序」— 』を載せた。先年、日本を良く識る英国の碩学ロンドン大学ドナルド・ドーア教授にお会いする機会があったが「日本外務省は日米軍事同盟強化を念仏のように唱えるだけで、外交はすべて米国に追随し、国際的に通用しない論理<固有の領土>論を振りかざして日本周辺の島々(尖閣・北方四島・竹島等)の領有権を近隣諸国と争うだけしか仕事をしていない」と手厳しい指摘をされた。これは何も外務省だけでなく日本国民の多くも政府やマスコミから流される一方的な情報に慣らされ、占領期を過ぎても世界を一極支配時代のアメリカという巨大なプリズムを通してしか見てこなかったと思う。

◎冷戦崩壊前後の1989年ごろ、フランシス・フクヤマ氏が「民主主義・自由経済が最終的に勝利し、平和と自由が無制限に維持される」から「歴史は終わった」と謳ったが、今のアメリカはまだ巨大な軍事・政治・経済力を持つが世界を一極支配した時代はすでに過ぎている。ハンチントン教授は『文明の衝突』で多極支配の時代と論じたが、混乱の続くシリア、サウジとイランの宗派対立、依然として不安定なアフガン・イラク情勢、さらに中国の台頭、平和・統合・経済発展を誇ったヨーロッパの揺らぎ、そしてISの出現におののく世界を見ると、むしろ無極時代であり、私たちは複眼で世界の底流を見るべきであろう。

◎現在、世界の主要国はアメリカ主導による対テロ戦争一色だが、果たして武力だけでテロは撲滅できるのか。アメリカは10年以上もアフガン・イラク戦争に膨大な金と血を流しても(4兆ドルの国費・米兵数万人・イラク市民数十万人の死傷など)何も解決できず、テロの脅威は世界に広がっている。アメリカはこれから何をするのか。その舵を取るのは誰か。世界は固唾を呑む。2月1日から始まる大統領予備選挙の直前情報をアメリカから緊急に武田尚子さんの報告を、さらに初岡昌一郎氏には、アメリカを代表する国際問題専門誌『フォーリン・アフェアーズ』の『IS(イスラム国)をどう考えるか』特集を紹介して頂いた。

◎不条理なイラク戦争に反対して一人ひとりの市民が声を上げようと、2004年の3月に創刊された私たちの「メールマガジン・オルタ」は、ささやかな手づくりのWEBメデイアだが、11年の歩みの中で少しずつ前進してきた。新しい年は編集体制をさらに整え12年目の歩みを着実に踏み出したい。昨年7月、30人の方々に編集委員をお引き受け頂いた。まだ運営は軌道に乗っていないが【沖縄の地鳴り】欄は仲井富氏、【「労働映画」のリアル】は鈴木不二一氏による責任編集システムができた。これからも分野ごとの責任編集体制を進めて内容の濃い記事を創ったり、志を同じくする各種グループのメディアと積極的に連携を図って相互の記事交換や執筆者交流を図るなど、WEBメディアならでの特性を生かしたい。

◎2016年1月現在の『メールマガジン・オルタ』メディア概況は、月間定期配信数約20,400通。執筆者総数約299名。HPの訪問者月間平均約23,800名。主な配信先はメディア関係者、研究者、市民運動家などオピニオンリーダー層を含む個人読者。海外は米国約399名・中国約128名・タイ約117名・英国約69名・ドイツ約32名等の他、中南米・中東・アフリカ等少数ながら世界各国に視聴者がいる。その他『YouTube』による動画配信および月例『オルタ・オープンセミナー』を開催している。

◎【お知らせ】オルタ109号から144号まで、ミャンマーのヤンゴンから毎月『ミャンマー通信』をご寄稿頂いた中嶋滋氏は、旧臘、3年間のITUCミャンマー事務所長任期を無事終え帰国されたので毎月の現地報告は打ち切り、今後は随時ご寄稿を頂きます。

◎【日誌】12月21日:青山・丹羽宇一郎事務所・岡田充・荒木重雄。22日:岩波セミナールーム・自衛隊を活かす会・柳沢協二・石山永一郎・伊勢崎賢治他。25日:神楽坂・竹中一郎。26日:巣鴨・忘年会・木村朗・ユンカ−マン他。

12016年1月1日:家族の会。3日:映画『杉原千畝』。4日:大河原雅子事務所。7日:神楽坂・福岡良行・小林吉雄・森泰見。8日:九段・ソシアルアジア研究会・古賀連合総研理事長。9日:自宅・朱建栄・徐正根・石郷岡建・岡田充・竹中一雄。11日:自宅・仲井富。12日:学士会館・中嶋滋・白井和宏。14日:生活クラブ・ユーエイジェンシー解散総会。15日:参議院会館・大河原雅子勝手連準備会。17日:自宅・加藤公男・藤田裕喜。18日:医科歯科大・定期検診。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎『朝鮮・台湾植民地の歴史と記憶〜ポストコロニアルの視点から〜』
   司会 朱建栄  東洋学園教授
   徐正根     山梨県立大学教授
   岡田充     共同通信客員論説委員

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■オルタ編集委員名簿

(顧問) 久保 孝雄(元神奈川県副知事・アジアサイエンス協会名誉会長)
(顧問) 竹中 一雄(元国民経済研究協会会長)
荒木 重雄(元桜美林大学教授・元NHKプロジューサー)
石郷岡 建(元毎日新聞特別編集委員・元日本大学教授)
井上 定彦(島根県立大学名誉教授)
岡田 充 (共同通信客員論説委員・桜美林大学講師)
岡田 一郎(日本大学・小山高専・成徳大学講師)
大原 雄(元NHK社会部記者・日本ペンクラブ理事)
大類 善啓(方正友好交流の会事務局長・エスペランチスト)
木村 知義(元NHKアナウンサー・北東アジア動態研究会代表)
北岡 和義(元日本大学特任教授・ジャーナリスト)
龍井 葉二(元連合聡合生活開発研究所・副所長)
高沢 英子(エッセーイスト)
武田 尚子(アメリカ在住・翻訳家)
白井 和宏 (市民セクター政策機構専務・「社会運動」編集長)
朱 建栄(東洋学園大学教授)
鈴木 不二一(NPO働く文化ネット理事)
南雲 智(大妻女子大学教授)
仲井 富(公害問題研究会代表)
中嶋 滋(前ミャンマー駐在・ITUC代表)
初岡 昌一郎(姫路獨協大学名誉教授・ソシアルアジア研究会代表)
羽原 清雅(元朝日新聞政治部長・元朝日新聞西部本社社長)
浜谷 惇(社団法人・生活経済政策研究所参与)
福岡 愛子(社会学者・翻訳家)
藤生 健(プログレス研究会幹事)
リヒテルズ直子(オランダ在住・教育社会研究者)
徐 正根(山梨県立大学教授)
編集部/加藤 宣幸山田 高苫米地 真理藤田 裕喜・金子 達昭


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